Girls und Panzer -裏切り戦線- 作:ROGOSS
仕方のないことなのでしょうがね。
そろそろ、別のネット活動サークルが忙しくなりそうなので、更新が遅れるかもしれませんね…。
なるべくは、週末に投稿できるよう頑張りますが…。
「ダメです。さすがに、この警備では隊長を救出にはいけません」
「くそっ……」
天音が囚われていると思われる部屋の前には、十数人もの女子高生達が警備に当たっていた。
相手が素人といえども、倍以上の数を相手にするのは分が悪すぎる。
「よし……まずは、隊員を救いに行く。その後は……」
「車輛の奪還ですね。わかりました。では、さっそく……」
部屋に戻る道を現場指揮官達は進んでいく。
幸いにも、反乱軍の誰ともすれ違うことなく部屋に戻ることができた。
「あれ……あの子は?」
問いを投げかけてきた見張りを問答無用で気絶させると、部屋に入る。
「副隊長! 今なら逃げきれます!」
「どういうことだ……?」
「見張りは私達が全員倒しました」
「殺したのか……?」
「いえ、気絶させただけです」
一瞬の安堵の表情を浮かべた副隊長であったが、すぐに怒ったような表情になる。
なぜ私達が怒られなければならないのか?
現場指揮官達は訳がわからなかった。
「何を怒ってられるのです?」
「天音隊長は、我々にこんなことをしろと命令したか! 馬鹿野郎! 脱走でもするつもりか?」
「え、えぇ……相手は素人です。私達が再度結束すれば、容易に鎮圧できるかと」
「その考えが甘いんだよ! それだけで良いのか? それで、本当に解決になるのか? 天音隊長は、全てを考えて私達に待機命令を出したんだ。指示に従え」
部屋が静まり返る。
普段は、温厚で声など荒げない副隊長が叫んだ。
多くの隊員はその事実から、現場指揮官達がしてはいけないことをしてしまったのだと悟ることができた。
しかし、数人の隊員は立ち上がると現場指揮官の方へ歩いて行った。彼女達はすれ違いざまに、副隊長を睨んでいった。
「副隊長、あなたは臆病風に吹かれている」
「何ですって……?」
「えぇ、そうです! 天音隊長もだ! 我々が捕まっているのは天音隊長のせいだ!」
「待て、お前たち! 待つんだ!」
「今こそ、我々がここを制圧して真なる指揮官が誰かを示そう。ついてこい!」
副隊長の静止を振り切り、十数人のWTFC隊員が列をなして部屋から出ていく。
部屋に残った者のほうが少ないであろう。
ここで、硬い結束で結ばれていた筈の彼女達の団結力に綻びが走った。
指揮官達は、すれ違う女子高生達を次々に無力化していく。
目指すは、格納庫。自分達の戦車をまずは取り戻し、順に島を占拠していく手筈だ。
「もうすぐで、格納庫です」
「よし、全員いつでも行けるようにしろ」
「はいっ!」
「私達が真の英雄になるんだ! 腰抜けどもに、我々の勇姿を見せつけてやろう!」
「
薄暗い通路に強い光が流れ込む。
あそこが格納庫だ。
誰もが、いつどんな不測の事態が起きても対処できるよう身構えた。
そして……
「やっぱり来ましたか」
「なぁ……!」
現場指揮官は絶句した。
こんなはずではない。
頭の中で、これは現実ではないと同じ言葉を繰り返す。
だが、今目の前に広がっている光景が覆るはずもなく……。
「所詮は、こういうことだったんでありますね」
「やっぱり、裏切るんだ」
「皆さん、そうやって……」
廊下を抜けた先は、確かに目指していた格納庫だった。
しかし、抜けた先にあったのは戦車ではなく、パンツァーファウストや手榴弾といった武器を現場指揮官達に向けて構えた、反乱軍であった。
高台には、みほと天音がいる。
現場指揮官は天音を恐る恐る見た。
その顔は、失望と悲しみにあふれている。
「お前たち……どうして……私の命令を……」
そこでようやく、現場指揮官は目を覚ました。
なぜ、このような事をしてしまったのか。どうして、メガネなどの言葉で踊らされてしまったのか。
どれだけ悔いて、後悔しようとも起きてしまった事実は変えられない。
初めて、天音のそんな表情を見た。
豪快でありながら、常に隊員のことを考えている信頼すべき上官の失望した顔は、現場指揮官の胸に突き刺さった。
「私は……ただ……隊長達をお救いして……英雄になろうと……」
「この馬鹿がっ! 英雄? ふざけるな! それがこれか!? こんなものかっ! 大馬鹿野郎!」
「わ、私は……私はっ!」
「見苦しい! お前は、自分の欲望に負けたんだよ。戦車乗り失格だ」
「あ……」
現場指揮官達は、ガックリと肩を落とす。
戦車道を愛し、戦車道を守り、戦車道を誇りに思いWTFCに入隊した。
その志を現場指揮官達は忘れてしまっていた。
みほはゆっくりと、天音へ顔を向けると笑顔を作る。
「天音さん。これが貴女の答えですね。言い訳は聞きたくありません。貴方は、私に仲間などと持ち掛ければ無条件で降伏すると思っていたんですか? いいや、違う。結果はもっと酷い」
「……」
「私を懐柔している間に、武力による制圧を行おうとしていた。最低です。貴女も嘘つきの裏切り者です」
「……すまない、西住」
「謝罪はいりません。もう結構です。帰ってください。貴女方に、私達の神聖な戦場をこれ以上汚されたくはありません。そして、必ず伝えてください。私達を奈落の底へと突き落とした、かつての
みほはそこで言葉を切る。
数秒であろうか、数十秒であろうか。
とても長い時間がたったように感じる。
「私達は裏切り戦線で待っている、と」