Girls und Panzer -裏切り戦線-   作:ROGOSS

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戦闘シーン難しいですね……。
そろそろ、アンチョビにも闇堕ちさせたいですね。


追跡

 私は知らない。私には関係ない。私は何も悪くない。

 私の力でも……どうにもならないことがあって当然じゃない。

 全部を私のせいにされても……そんなの無理よ!

 ノンナとその腹心によって運び出されていくプラウダ生を見ながら、カチューシャは必死に言い訳を考える。

 激動の夜は既に明けており、各校は被害状況を確認しながら、出撃の時を待っていた。

 

『ちょっと! 何やってるの! 早くしなさい!』

「あ……わ、わかってるわよ! 履帯の跡はもう確認してあるわ! あいつら急いで逃げていったから、隠蔽工作を忘れていったわね。作戦通りよ。ワシーリー部隊は元山まで前進、ニコライ部隊は擂鉢山の確保に向かって。良いわね! ここから部隊を二分割するわ! 明日までに全てを終わらせるわよ!」

 

 全てを言い終えると、カチューシャは自車両のT-34-85へと乗り込む。

 夜襲を仕掛けてきたと思われるクルセイダーの履帯跡は、驚くほどくっきりと残っており、これを辿りクルセイダーを撃破する事が出来れば、蜂起軍の機動力を大きく削ぐことができるとカチューシャは考えていた。

 連合軍が一斉に行動を開始する。

 橋頭保には僅かな物資と生徒を残し、険しい山道へと車両を進める。

 整備されていたと思われる道のすべてが粉々に粉砕されており、連合軍は道なき道を進軍することを余儀なくされていた。

 しかし、陸上の覇者である戦車に舗装された道などという贅沢品は最初から必要とされていない。

 道がないのならすべてを押しつぶし作り出す。火砕流であろうと何であろうと関係はない。大地が続く限り、その全てが自分のものでもあるとでも言ってしまいそうな勢いであった。

 元山は標高100mにも満たない小さな山である。丘と表現したほうが正しいのかもしれないと躊躇ってしまうほどのその山に、かつて旧帝国陸軍の飛行場があり最も恐れられていた戦場の一つであることは有名な話である。

 肉挽き器(ミート・グラインダー)

 近づいただけで肉挽き器で挽いた肉のように成り果ててしまうほどの激戦地には今、国に裏切られた者と仲間を裏切った者達がぶつかり合おうとしていた。

 最初に動き出したのは、連合軍側であった。

 元山までまだ、数キロあるだろうという地点での攻撃であった。

 

「何!? 状況報告をしなさい!」

『マチルダが一両やられた。砲撃地点は不明。いったいどこにいるのかしら……』

「全車警戒態勢! 砲撃音と光を見逃さないで! 一方的に撃たれるのは好きじゃないわ!」

 

 再びの砲撃音。

 先ほどよりも数の多いマズルフラッシュと共に発射された砲弾は、プラウダ主力の一角であるISとシャーマンを撃破する。

 

「見つけたわ! 2時の方向! 砲撃開始!」

 

 カチューシャの号令と共に全車両の砲撃が開始される。 

 だが、蜂起軍の車両撃破の報告が一向に入ってくることはなかった。

 それどころか、マズルフラッシュを確認した者はいるものの、蜂起軍の黒い車体を肉眼で確認したものは誰一人いなかった。

 おかしいわね……今度は砲撃が止んだわ……数でこちらが押しているとは言っても、装填時間のタイムラグで反撃ができるはずなのに……何かがおかしい、どうして相手は動いてこない。

 

「砲撃やめっ!」

 

 奇妙な静寂が戦場に流れる。

 心理的優位に立っている敵ほど恐ろしいものはこの世に存在しないのかもしれない。

 何もしてこない。

 戦車道の試合などと名目上なってはいるが、もはやこれは畜生に堕ちた者同士の血みどろの戦争に過ぎない。

 何でもあり、何をされても文句を言えず、何をしても咎められない。

 理解していても、今まで信じてきた戦車道精神を無意識に守ってしまうカチューシャに最初から勝ち目など無かった。

 

「来たわっ!」

 

 再びの砲撃。

 チャーチルやT-150といった重装甲の戦車が次々に白旗を上げていく。

 

「高速徹甲弾! それもこの規格は……規制から外れたものね! いったいどこからそんなものをっ!」

『いいから早く指示を出しなさいよ!』

『カチューシャ、どうするの?』

「全車怖気づくことはないわ! 弾が変わったから何だっていうの!? T-34、クロムウェルは全速力で窪地へ進撃! 蜂起軍の車両の詳細を確認しなさい!」

 

 快速が自慢の2両が車列から飛び出す。

 まるでその瞬間を狙っていたかのように、砲撃は三度止むと煙幕へと変わっていった。

 だが、時速60km/hを超える戦車の追撃から逃れられるものなど存在しない。

 2両は煙の中を進撃し続ける。

 

『……カチューシャ様』

「どう、何が見えたの!」

『そ、それなのですが……』

 

 困惑した声を出す隊員をカチューシャは睨み付ける。

 何を渋っている。状況が刻一刻と変わっていくこの場では、一秒のロスが命取りになるというのに。

 

「いったい、何を渋っているの! 早く言いなさい!」

『何もいないです』

「はぁ? 意味が分からないわ」

『戦車一台、人っ子一人誰もいないです!』 


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