Girls und Panzer -裏切り戦線-   作:ROGOSS

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戦時中は、どこも必死に戦っていますからね。
今回のようなことが実際にあったようです。
ガルパン劇場版が一年間上映するようですね。
すごすぎです!


偽装

 こんな話を知っているだろうか?

 第二次世界大戦中。まだ、ソ連といわれる国があり、アメリカやイギリスといった後に敵対する国と国交があった時代の話だ。

 ドイツとの激戦の末、スターリングラードを含む多くの工業地帯が破壊され、甚大な被害を受けたソ連は急速な戦力再編のためアメリカ製の工業製品を取り入れることにした。

 その結果、主力戦車であったT-34系列やIS戦車の内部がアメリカ製の機器で囲まれていたことがあったそうだ。

 そのためか、当時のソ連兵はアメリカ製品の扱いに長けていたようだ。

 ゆえに、それはそれぞれの国の特色を受け継いでいる各校の生徒にも当てはまることである。

 

「ん……?」

 

 最初に気が付いたのは、隊長車に乗っている通信手だった。

 大隊長の命令を無視した、強硬作戦を実行する際に援軍を求めた本人だからこそ、要請した車両数よりも数台も多く来ていることに気が付いた。

 次に気が付いたのは、同じく隊長車の砲手だった。

 普段、兵站を整備する仕事をしている彼女は、硫黄島へと連れてきたシャーマンの台数と今現在、見えている車両数が合わないことに気が付いた。数え間違いをしたことは考えられない。車両数が変わってしまえば、乗員の食料や燃料の必要量まで変わってしまうからだ。

 嫌な予感がする。

 背筋が凍っていく感覚に襲われた砲手は、アリサへと話しかけようとした。その時だった。

 追従していたシャーマンが爆発を起こし、白旗を上げたのは。

 

「なにっ! なにがあったの!」

「敵襲! 敵の位置は不明!」

 

 アリサはキューポラから顔を出し敵の位置を探し始めた。両側を高い崖で覆われた、細い道を進撃していた。

 敵は崖の上にいる。

 確信にも似た直感にアリサはほくそ笑む。

 絶体絶命のピンチに変わりないが、敵の位置が掴むことができれば対処することができる。

 しかし、いつまで経っても崖上からマズルラッシュを見ることはできない。

 

「どういうことよ! 敵はどこにいるのよ!」

「車長! 実は……」

「何よ、早く言いなさい!」

「援軍を要請した時から違和感を持っていたのですが、硫黄島(ここ)にきた車両数が合わないんです……!」

「……まさか、敵は後ろ!? 全車反転! 敵は後ろにいるわ! おそらくシャーマンよ!」

 

 アリサの指示と予測は今度こそ正しかった。

 だが、同じくモスグリーンのカラーリングのシャーマン同士が撃ち合っている中で、どれが本物の味方で敵であるかを見分けるのは不可能に近かった。

 

「どれが敵ですか!」

「わかるわけないじゃない! 何よ……何なのよ!」

 

 隊長車に衝撃が走る。

 履帯が弾け、砲塔が奇妙な音を立て動きを止めた。誘爆こそしていないが、弾薬庫にも被弾したらしく、砲弾が車内に散らばっていた。

 気が付いた時には、味方車はすべて白旗を上げており、蜂起軍のシャーマンから警棒やパンツァーファウストで武装したプラウダ生がぞろぞろと降りてきていた。

 

「な……プラウダのくせにシャーマンに乗るなんて生意気よっ!」

「車長、そんな文句言っている暇じゃないです!」

「うるさいわね! タカシ、助けなさいよ!」

 

 ハッチがこじ開けられ、プラウダ生が狭い車内になだれ込む。数分後、外には縄で動きを封じられたサンダース生が一列に並べられていた。

 

「なによなによ! 私たちを捕まえて何がしたいのよ!」

「うるさいべっ!」

「その口調……! あなた確か、KV2の……!」

「そんなこと関係ないべっ! 私たちを騙して……悪いのはあんた達だべっ!」

「へっ……騙されたほうが悪いのよ」

「車長! そんなに挑発的な言い方はしないでください!」

 

 仲間に窘められるも、アリサは変わらず挑発的な態度をとったままだ。

 ニーナはそんなアリサを冷めた目で見ながら、蜂起軍本部へ連れていくように指示を出す。鹵獲できないシャーマンはすべての履帯を破壊し、すぐには運用できないよう工作することも怠らなかった。

 

○●○●○

 

「一日目の戦果でありますよ」

「ありがとうございます」

 

 優花理から書類を受け取ると、みほはそれに目を通し始めた。

 数の有利で戦うはずであったであろう連合軍は、すでにその利点を諦めざるを得ないほど被害を受けていた。対して、蜂起軍側はアリサという捕虜の獲得と数台のシャーマンの鹵獲に成功していた。

 圧倒的不利な立場でありながらも、これだけの戦果をあげたというのにみほの顔に笑顔は浮かばない。

 

「まほ隊長は依然行方不明ですか」

「はい。最後に交戦した場所が擂鉢山だということはわかっていますが。擂鉢山はそのまま知波単学園が占拠したようですが動きはありません」

「E-100の損失にまほ隊長の……こればかりは、厳しい戦いを覚悟しなくてはいけませんね」

 


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