Girls und Panzer -裏切り戦線- 作:ROGOSS
楽しみです。
「カチューシャ、私たちの被害状況は以上よ」
「そう……」
「何よ浮かばない顔をして。そんなにサンダース学校の隊長が気になって?」
「そんなわけないじゃないっ! ただ……少しわからなくなってきてるのよ」
「わからなくなってきている?」
「……とにかく解散よ。島へ来た重戦車の半分は撃破されるわ、知波単学園は擂鉢山を陣取ってから動かないわ……散々よ。明日こそ、元山基地にいるはずのミホーシャ達を撃破するわよ」
「はいはい、わかったわよ」
ダージリンの背中が遠ざかっていくのを見つめながら、カチューシャは大きなため息をついた。何のためにこんな
名誉のため、文部科学省に学校を潰されないため、裏切ったという情報をリークされないために協力しようと決意していた。しかし、それでいいのだろうか? ミホーシャはただ復讐のためだけに戦っているようには思えない。そこには、この国の
「カチューシャ、あなたが間違えるわけない」
「わかっているわよノンナ。そんなこと言われなくても……」
「でしたらっ!」
ノンナがカチューシャの肩を掴む。
初めて彼女が恐ろしいと思ったが、表情に出してはいけないと咄嗟に自制心が働く。
「もっと自信を持ってください。あなたの命令ならばどんなことでもします。死ねと言われれば死ぬ覚悟があります」
「そんなこと言うわけないじゃないっ! もう、いいから。ノンナも部屋に戻りなさい」
「カチューシャ……」
「痛いわよ、肩。そんなに強く掴まないでちょうだい」
「……! 申し訳ありません、カチューシャ」
ノンナはカチューシャの肩を放すと、しばらく呆然と立ち尽くしていた。やがて、何かに引っ張られていくかのようにフラフラと自分のテントへと戻っていった。
信用できる仲間がいるのは嬉しい。信頼してくれる仲間がいるのは心強い。だけど、この恐怖は何だ。
私が
「結局、私もサンダースの隊長と同じように一人なのかもしれないわね」
ここ数日、プライベートではクラーラともまともに話していない。最初は賛同していたが、今はどこかこの蜂起に対して否定的な態度をとっていた。
「なんなのよ。どうすればいいのよ。引き返せるわけないじゃない。このまま、ミホーシャ達を潰すしか……私は私でいることができないのよ……」
○●○●○
「Hi! 久しぶりね、アリサ」
「ケ、ケイッ!」
とある一室にアリサは縄で手を縛られた状態で軟禁されていた。
昼夜関係なく薄暗いその部屋は、中にいるだけで神経をすり減らしていった。
そんな時、尊敬していながらも自らの欲のために蹴落とした元隊長が現れたのだ。
アリサの動揺は半端なものではなかった。
「どう、私を落として隊長になった気分は?」
「……それは」
「素直に答えなさいよ。別に怒ったりはしないわ」
ケイはいつもの調子でアリサに話しかける。
確かに、そこには怒っている様子はない。
むしろ、ダメな後輩に指導しようとしている様子さえある。
「最初は嬉しかったわよ……これで私も隊長なんだって。憧れのサンダースの隊長になれたんだって。だけど……」
「だけど?」
「日が経つうちに誰も私が隊長になることを望んでいないことが分かった。私もケイと同じように今の地位から落とされる。それが怖くて……怖くて私に反抗的な思想を持つ生徒に罰を科せていったの。気が付いたら、みんな私に服従していたわ。私は、恐怖でしか人を支配できなかったの」
「……そうね」
「ごめんなさい……ケイ……あなたじゃなきゃダメだったの……あなたしかいなかったの……あなたから学ぶべきことはたくさんあったの……」
恥も外聞もなく子供のように泣き始めるアリサをケイは抱きしめた。
こんなことをされていい立場ではないことはわかっていたが、今だけはケイの優しさに甘えていたかった。
落ち着きを取り戻していくうちに、アリサは正気に戻るとケイから離れた。
「わ、私がここでケイに甘えるべきじゃないことくらいわかっているわよっ!」
「その割にはしっかり泣いていたじゃない」
「う、うるさいわねっ!」
「Good! 元気になってきたわね。アリサ、私はね、あなたに学んでほしかったの。そしてあなたはちゃんと学んだでしょ。もう二度と同じ失敗をしないでしょ?」
「な、なにを言って……」
「もう、茶番はおしまいよ。逃げるわよ、アリサ」
「へ?」
「今度はみほにもわかってもらわなきゃいけないの。復讐なんて愚かだってことを」