原作でどうなるかヒヤヒヤしながら書きました。
――ある所に、1人の少年がいた。
少年の家は、家柄や血筋がどういう訳でもなく、この時代では有名な家だった。何せ皆、なおすという事柄においてとても有用な個性を持っていたから。
対人、対物、なおせる数や強弱などはあっても、皆が自分以外の何かをなおせる個性。
それはこの世界においてそれなりに貴重だった。
だから少年も子供心ながらに漠然と思っていた。
僕もいつか、誰かを救けられる人になれるんだと。
……だが、結局少年が得られた力は、自分しか救えない力だった。
◆
「話? 話だと?
ふざけた事を言うな、何を話すというんだ。俺と貴様が」
「……なんでだろう、ふざけるなって言葉を俺はよく人に言われるんだけど、俺別にふざけてるつもりはないんだ、いつも。
アンタの事をだよ。他でもない、アンタの考えや本心が知りたい。だから話して欲しい。俺もあんたが知りたい事は、なんでも話す」
付いてしまった埃を払いながら、瓦礫の山から降りる。
リビングライフの顔は相変わらずヘルメットで分からないが、ゆっくりとロングコートの中に手を入れているのを見れば、その中に銃を装備しているのだろう。
まぁ、ライフル一丁だけでいるとは思えないから、それには何も言わない。
「……くだらない。俺の事を知ってどうするというんだ。
俺はもう答えを出している。お前を否定するという一点において俺の考えは揺らがない。それに俺は、お前の事を知る必要性はない。もう知っている、お前はいずれ怪物になる。
他人の信念を踏みにじり、ただ希望だけを説く化け物にな」
「そう思ったのは、母さんの所為か?」
その言葉に、リビングライフは何も答えない。
答えないのは、ある意味図星だという事に気付いていないのだろうか。
「母さんとアンタとの間で何があったか何ていうのは俺は分からないけど……アンタも、前の父さんと同じだな。
俺は母さんに憧れているけど、母さんにみたいになろうとは思ってないよ。俺は俺だ」
「知っている。資料や調査を見る限り、お前はお前の母親、センシティとは違う。
だが、それ故にお前の方が厄介だと俺は判断した」
被害者も加害者も仲間も大切な人達も、そして自分自身も。
全てを救う。そんなことが出来るはずがないのだ。それをやろうとした瞬間、人間は人間ではいられない。
そういう機能を授けられた機械になるか、
そういう思想を持った怪物になるしかない。
「お前の夢はお前の許容量を超えている。溢れた正義は近くにいる人間を蝕む。それが分からない貴様ではないはずだ。お前はセンシティの息子であると同時にブレイカーの息子。頭の出来が悪いはずはない。
お前の夢はいつかお前の手を離れ、誰かを壊す」
「……ハァ〜本当にもうなんなのアンタらは!!
父さんに似過ぎだろアンタ!!」
ブレイカーの考えと同じ。
あまりにも、目の前の男には他者という存在が欠けている。
「あのさぁ、全部1人で出来るなんてこっちは最初っから思ってないの!
俺のやりたい事は、1人で出来る範疇をとっくに超えてるよ。だから仲間や友達がいるんだろう?
仲間や友達がいれば、それだけ手の届く範囲が広がる。俺1人がやる必要性はない。俺が救えない奴は、救える友達に手伝ってもらう。そういうもんだろう、人間って」
「綺麗事だ。人を付き従えるなどと、簡単に子供が言って良い話ではない」
リビングライフの言葉に、振武は再び溜息を吐いた。
「付き従える? 馬鹿かよ、そんな事俺がする訳ねぇじゃん。
俺は、お願いすんだよ。頼るんだ、助けて貰って、救けて貰うんだよ」
手を借りなければ立ち上がれないと言うならば、借りれば良い。
自分では触れられないならば、触れられ得る人に頼めば良い。
進む方向が分からなくなったら、分かる人間に聞けば良い。
相互互助というのは、そういうものだろう。
「人の良き部分に訴えると?
それで答えて貰えなかったらどうする気だ? 誰もお前に手を貸さなかったら、お前はそれでも1人で道を歩むというのか?」
「んな事、ありえないね。
全部の人間に認められる事がないのと同じくらい、全部の人間に否定されてる何てことはあり得ない。
――それに、俺は皆を信じてる。俺の友達は、良くも悪くもお人好しな連中ばっかだからな」
クラスの連中は誰か1人が凹んでれば、全力で慰めるような馬鹿だ。
友達連中は、お互いの事を見て、お互いの事を考え始める阿呆ばかりだ。
そういう人生生きにくい位人を大切に思えるから……ヒーローという存在を目指すのだ。1人で抱えていられる優しさではないから。誰かを救けられない自分が気に入らないから。
「……アンタも、そういう人なんじゃねぇのか?」
リビングライフの肩が震える。
「アンタだって、誰かを救いたくてヒーローになったんじゃねぇのか?
有名になりたい金持ちになりたい、勝ちたい、まぁそういう考えがあるのは良いし、俺は別にそういうのがあっても良いと思ってる。
でも、それはヒーローを選ぶ理由にならない。有名になりたいなら芸能界に入れば良い、金を得たいなら商売をすれば良い、勝ちたいならばどんな場ででも良いじゃねぇか。
それでも、誰かを救える仕事を選んだなら、」
振武は真っ直ぐに見つめる。
ヘルメットでリビングライフがどこを見ているかも分からない、ちゃんと目が合っているのか、相手がこちらに興味があるのか、話を聞いてくれるかも分からない。
でも、もし彼もヒーローだと言うのであれば、きっと自分の事を見ていてくれる。
そう信じて、
「アンタも、誰かを救いたいと思ったんじゃないのか?」
「――戯言はもう沢山だ!!」
コートの中から、ニ丁の拳銃を取り出す。
片方はデザートイーグルをモデルとしたセミオート。
片方はマテバをモデルとしたリボルバー。
両方とも形はそれだが性能や構図は大きく違う。同じ弾丸を使用出来るように一から設計した、形は模倣でもオリジナル。
そしてこれが、リビングライフの
「信念を叫びながらも、お前は俺を変えられない!!
変えられない人間にはどうするか、当然武力だ!! 暴力で他者をねじ伏せる時点で、お前はすでにお前の理念を外れている!!」
「……だから、そこも分かってないな。んなもん、
最初から織り込み済みだっつうの!!」
一瞬での間合い詰め。
数メートルという間合いは、今の振武にとってはないようなものだった。
「……っ!!」
リビングライフは銃口を振武に向ける。
弾丸は試験で使われるゴム製の弾。貫通力はなく人を死に至らしめる威力ではないが、それでも当たれば痛く、当たりどころ次第で骨も折れる。
リビングライフはそれでも、躊躇いもなく銃弾を放った。
手や足の末端ではなく、右二の腕部分に2発、左太ももに2発。
「――遅い」
金属で守られた腕と脚で、それを跳ね除けるように弾く。
「震振撃――四王天!!」
振武の拳が、否が応にもリビングライフの腹に突き刺さる。
「ぐっ!?」
空気を吸えない。まるで腹が絞られるような迫る苦しみを堪え、リビングライフはその衝撃を生かしてそのまま後ろに下がった。
間合いを取る。
その為だけに、
「……話を聞かない奴ってのは、頭に血が上ってる連中ばっかなんだよ。
だから俺はそれを冷ますのに付き合ってやる。まぁ、怪我くらいだったら、男の勲章だろう?」
「なっ――」
距離を離したはずなのに、振武はリビングライフの壁のようにぴったりと張り付く。
想像していたよりも、ずっと速い。
「暴力はダメだ。武力だって良いとは言えねぇ。
これは、――俺とアンタの喧嘩だ!!!!」
拳が振動する。
熱を帯び、力を帯びる。
「震振撃――八極!!!!」
もう一度、リビングライフの腹に衝撃が叩き込まれる。
先ほどよりも強力な一撃は、ロングコートの下に着込んでいる防具すら突き抜け、衝撃がリビングライフの殻を横切って背中にまで駆け抜ける。
「ガハッ」
強い。
まるで昔の……あの女の戦い方に似ている。
突っ込んできてぶん殴る。
あれほど似ている似ていると自分から言っていたのに失念していた。
そうだ、あの女は、あの女の息子は、
言葉や銃弾で、退けられるものではなかったと。
◇
母も父も、親類縁者も、誰よりも強い人を癒す治癒の力を持った伯母も。
少年の事を責めたり、かといって腫れ物のように扱う事はなかった。
個性などと言うものは確かに遺伝などで決まる傾向にあるが、所詮それはそれだ。人に向かわないと言うだけで彼の個性は生きると言う事柄において強力。
むしろ、息子が、家族が不幸な理不尽で死ぬ可能性が減ったと、喜んだくらいだ。
だが……少年自身はそうは思わなかった。
なんて使えない個性を得てしまったのだろうと。
これでは誰かを救えない。他の家族のように誰かを救う事が出来ない。ただただ自分を救う事しか出来ないじゃないかと。
しかしそんな彼が見つけたのは……ヒーローという仕事だった。
一見人を救えない、誰かを守れない個性でも、訓練と知恵でそれをカバーする。誰かを守り救う力がないのであれば、誰かを守り救う存在に成れば良い。
少年は、まず己が力と向き合った。
人を直接救う力ではなかったが、それでも自分が前に進む為に必要な力だと認識した。
次に、武器を手に入れた。
超常黎明期以前には有効だった銃器。主力武器にしているヒーローはそう多くはなかったが、ヒーローともなればそれをサポートアイテムとして利用出来た。
その次に、知識を取り入れた。
凡ゆる戦術戦略を吸収し、トラップなどの知識を取り入れた。正面から戦えるほど強くないならば、正面から戦わなければ良い話だ。
しかし。
いくら積み重ねても、周囲に認められる事はなかった。
少年がヒーローを目指していた時代、オールマイトという平和の象徴が確立され、世はどんどん平和になっていく。そんな中で求められるヒーローは単純に事件を解決出来る効率ではなく、人々の模範だと胸を張って言える、綺麗なヒーローだった。
少年の戦い方は、そういう意味では邪道も邪道。
敵を騙し罠に誘い込みはめ殺し、あるいは血みどろになって戦う、一種のバーサーカーのような姿。
それを求めている事務所はどこにもなく、学校の中でさえ居場所はなかった。
それでも、少年は己が腕を磨き続けた。
当然だ。それしか少年は知らない。それが最善の戦い方だと信じていたから。
そして――ある日、理解者を得る。
『君は素晴らしいヒーローになると思うよ。
世の流れに流されず、自分の信じる道を進めるというのは立派だ。それに、君の戦い方は僕の戦い方に極めて近い。うん、良いと思う』
半分笑って半分泣いて、ダーティーに悪人を倒し、崇められずとも人を救い続ける英雄だった。
彼はそれほど大した事を言っているとは思っていなかったんだろうが、少年にとってそれは神の言葉にも匹敵する程嬉しい言葉だった。
だって誰も、自分がヒーローとして素晴らしいなんて、言ってはくれなかったから。
『よっし、君を
君の戦い方に相応しい技術を教えてくれる人を知っているし、僕の戦い方から、学べる部分はあるだろう。君の戦い方が似合う信念を、一緒に見つけよう』
あぁ、何を言っているんだ。
俺はもう見つけた。
貴方の信念こそ、俺が求めていた信念だ。
あとは、それを貫き続ける為の力。
それはもう、俺の中にあるのだから。
◇
「……ぐっ、ゴフッ」
肋骨が三本は逝っている。
内臓に刺さっている、という事はないが、ダメージを負ったのだろう。口の中には血の味がする。
これくらいのダメージであれば
「……アンタの話をもっと聞きたいけど、悪いけどこれは試験だ。しかも、俺だけが勝ちゃ良いって訳じゃない。悪いけど、ハンドカフス付けてとっとと終わらせる」
ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
手には捕縛用のハンドカフス。やはり彼が持っていたのかと納得する。
この状態のまま戦闘は……難しいだろう。ダメージは大きいとは言えすぐに死ぬものではないし、痛みに慣れている。とはいえ、精彩さに欠く戦い方をしていては目の前の子供を打倒出来ないというのはよく分かった。
ジワジワ追い詰める為に手加減していたのが、悪かったようだ。
「くっ」
苦しい体に鞭を打って、片手で防具を外す。幸いボロボロになっているそれは外すのがいつも以上に簡単だった。腹は内出血しているからか鮮やかな紫色。だがそこを注視する必要性はない。
狙うのは、もっと上だ。
「? 何を、」
振武が何かを言う前に、リビングライフの右手首からばね仕掛けで飛び出す銃が、右手の中に収まった。
リボルバー。口径は小さいが殺傷能力は十分。保険の為に用意しておいたものだ。
「動島振武……目の前で自決する敵がいるのも想定しておけ」
そう言いながら、リビングライフは心臓の真上に銃口を突きつけ、連続で何度も自分の胸に弾丸を放った。
息苦しさと、許容量を超えて痛みではなく虚無を与える感覚。
実に慣れ親しんだ、恐怖と冷たさ、そして不思議な安らぎを与える感覚。
動揺し、絶望の顔に染まった動島振武の顔を見て、ザマァ見ろと満足げに、リビングライフの目は閉じられ、
何秒という短い時間の間に、彼は蘇生した。
自分で付けた傷だけではなく、振武に折られた肋骨、内臓の損傷、自分の体が今朝の状態と同じように再生していく。
受動的に死んだ時には、覚醒も再生もだいぶ遅いが、能動的に死を選んだ場合、かなり早い速度でそれは行われる。
少なくとも……目の前で人が自ら死ぬという衝撃の出来事から、動島振武が回復する前には、全ての傷が癒された。
銃を取り、そのまま一瞬で間合いを詰める。防具を脱ぎ捨てて、体が羽のように軽い。
「なっ、」
動島振武が言葉を紡ぐ前に、
「動島流鉄砲術――六連華」
左手に未だ握り締められていたリボルバーの弾丸全てが、
まるでそれは六つの連なる花弁を持った華のように、それは振武の胸の中で咲いた。
「ぐぎっ!?」
貫く事はない。だが鉄の塊で殴打されるよりも強い衝撃に、振武の腹に衝撃が来る。
「俺はリビングライフ――
お前の信念の前などに、膝を折る気は欠片もない」
リビングライフ――修繕寺療自という男の個性。
それは《蘇生》。
死ぬという人間において回避出来ない事柄を、1日に3回だけ退ける事が可能な個性。死ぬ事により、肉体の状態を朝、自身の意識が覚醒した状態にまで強制的に引き戻す。
それが故に、彼は3度だけの不死身を体現する。
絶対に倒れない力、人を救わない代わりに自分の死すら救う男。
自分の信念を貫き続ける為ならば、死んでも前に歩き続ける。
「グッ……たぁ、ちくしょう。
めっちゃかっこいいな、それ」
口に滲んだ血を吐き捨てながらなお、振武はその姿を見て、心からそう言った。
◆
死んでも生き返る個性。
……そう聞いてしまえば、なんて理不尽なものだ。
敵は基本的に相手を殺しても良いと思っている人間が大半だ。そんな中で、自分から殺した奴がもう一回目の前に立っていたら?
もう恐怖しかない。その場で抵抗をやめてしまうかもしれないという位、動揺するだろう。
そこをついて確実に相手を倒す攻撃をして来る……
生き返れるという前提があったからと言って、死を許容出来る人間なんかいないだろう。
それを戦うコマとして受け入れられる彼は、強者だ。
「しかも、同門と来た……父さんに紹介して貰ったのか?」
「銃での近接戦闘というものを考えていた折に、ブレイカーさんに会ってね。
文字通り血反吐を吐く鍛錬だったが、死ぬよりずっとマシなのでな」
「そりゃあ至言だわ」
必死に立ち上がろうとして、ヒビが入った肋骨や傷ついた内臓の痛みに眉を顰める。
振武が与えたダメージをそのまま返されたような状況だ。しかも、彼と違ってこっちは治らない。
「さて、それではどうする? 俺はリセットした事により無傷。そっちはダメージを受けた。
それで俺に勝てるか? 絶対に倒れない人間、抗い続ける人間の前で、お前は俺に勝てるというのか!?
そうだ、それがお前の限界!! お前の弱さだ!!
弱い人間が、俺の信念を、……あの人の信念を否定するな!!!!」
ゴリッと、銃口と頭蓋骨が擦れる音がする。
振武が立ち上がる前に、既に目の前にリビングライフが立っていて、振武の頭に銃口を押し付ける。
あぁ、ヘルメットを取らなくても分かる。
自分の信念を貶された事への怒りと、自分の信念で相手をねじ伏せる喜び。きっと彼の表情は複雑な色に染まっている事だろう。
「……でも、ようやく分かった。アンタがなんで俺に当たり散らすか。いいや、アンタが俺の信念と言葉に既視感やら違和感やら感じていた理由。
アンタ、父さんに……分壊ヒーロー《ブレイカー》に、憧れてたんだ」
ブレイカーの信念に魅せられた。あの信念こそ正義、あの信念こそ本物だとそう思っていたのだろう。
そして、その信念を傷つけた、損なわせた人間に……覚と自分に怒りを覚えたのだろう。
「――あの女は言ったんだ、ブレイカーの信念は悲し過ぎると、」
『誰も信用せず、悪を捌けるのであれば他者も騙し、脅し……って、んなもん悲し過ぎるわよ。自分の体を削って人に分け与えたって、分け与えられた人間だって辛いわ。そんなのは正義とかって言わない……自己犠牲の人身御供だっつうの』
ブレイカーが家族を失い復讐鬼になった時。
リビングライフは、ブレイカーが犯罪者に堕ちてしまうのを良しとはしなかった。そこまでは彼女と同じだったと言えるだろう。
しかし結局リビングライフは、復讐として犯罪者を殺すのではなく、自分が代わりに彼の信念としてその犯罪者を抹殺しようと思ったのだ。
結果は殺し。それは変わらない。
それもこれも一切合切、センシティはまとめて否定した。
殺人によってなされる正義も、ブレイカーの信念も、それを信仰したリビングライフも。一切合切を否定し、止め、結局のところブレイカーもリビングライフも人を殺さずに済んだ。
それに感謝の念を抱く……事はなかった。
むしろ憎悪した。
ヒーローとしてのブレイカーを彼女は綺麗事で殺した。
リビングライフの信念を手を汚さずに否定した。
「あの女に、俺達の考えを否定する権利などない!! 俺はあの女が憎い、お前も憎い!!
俺とブレイカーさんの信念を、何の権利もなしに蹂躙したお前らが、俺は許せない!!」
「………………」
黙っている振武に業を煮やしたのか、リビングライフは苛立つようにヘルメットを片手で外す。
その顔は、ブレイカーの相棒をやっていたという割には随分若い、青年の姿。
「俺はお前が、お前らが嫌いだ」
「……知らねぇよ、んな事」
ゆっくりと立ち上がりながら、振武はリビングライフの目を睨みつける。
「俺はあんたと母さんに何があったか知らないし、俺はそこにはいけない。俺はどうにも出来ない。
でも、多分その場にいたら似たような事したんだろうなぁ……権利なんか関係なく、さ」
もし、それを許容してしまえば。
きっと振武も、ブレイカーも、リビングライフも、ヒーローとしての彼らは終わっていた。どんなに崇高な理想を掲げようとも、人を殺した時点で社会的にも生き物としても、悪なのだ。
「俺は、アンタの生き方だって、父さんの生き方だって綺麗で強くてかっこいいって思う。
だから、俺がもし同じような場面にいたとしても、俺は止める。否定したいんじゃない、守りたいから止めるんだ」
人ととして、
ヒーローとして、
彼らを殺さないように、きっと振武はそうするだろうし、母もきっとそう思って止めたのだろう。
だってそうでなければ、悲し過ぎるから。
「っ、綺麗事だ!!」
「綺麗事実践する仕事だろうが、ヒーローは!!!!
あんたは、ヒーローじゃないのか!?」
その言葉に、リビングライフは焦ったように銃口をさらに押し付ける。
だが、振武はそれに対して動揺しない。例え銃の中に入っている弾丸が、怪我を追わせないように作られたゴム弾ではなく、本物の銃弾だったとしても。
振武は、絶対引き下がらない。
「……本当は、アンタのその苛立ちや、モヤモヤをここで解消出来たら良いんだろうけど、俺にそんな力はない。
俺がやっても解消出来ないもんは出来ない。人の心の中っつうのは、流石に俺が無遠慮に手を突っ込んで良いもんじゃない」
無理に変えようとすれば、相手の心を壊してしまう。
それはしたくはない。
「だけど、これが一つの答えだ。
アンタの方法論、アンタの正しさ、アンタの信念……そいつは絶対じゃない。
勘違いするな、アンタは母さんに負けるんじゃない、ましてや俺に負けるんでもない」
「なに、を、」
リビングライフの言葉に、振武は笑みを浮かべる。
まるで昔のセンシティに似ているような、それでいて全く別の笑顔を、
「アンタは負けたんだ――俺の友達にな」
『報告だよ、条件達成――最初のチームは、動島・蛙吹チーム!』
リカバリーガールの声が、会場いっぱいに響いた。
名前:修繕寺 療自
ヒーロー名:蘇生ヒーロー《リビングライフ》
所属:フリー
Birthday:2月15日
身長:187cm
血液型:AB型
出身地:東京都
好きなもの:クロスワードパズル
戦闘スタイル:遠距離支援・トラップによる陣地戦・近接銃器戦闘
個性:蘇生
1日に3回だけ(生命力・体力などの関係上)死から復活し、それまでに受けた自分の傷をその日の朝意識が覚醒した段階まで治すことが出来る。細胞劣化も戻されるので、実年齢と肉体年齢に齟齬が生まれる。
ちなみに、病気や毒殺の場合発動しないし、ちょっとずつ齟齬が出ているだけなので、普通の人よりも長生きするだけで老衰はします。
性格
理論厨であり相澤を超える効率厨。
冷静沈着で、人によっては冷淡にすら見える言動・行動がある。自分の個性に対して「人を直接救える力ではない」というコンプレックスがあったが、ブレイカーの信念に傾倒しそのコンプレックスは緩和された。
物間くんと同レベルの煽り癖があるが、そもそもあんまり友達がいない所為というのもある
。
図星を突かれると(というより動揺すると)とても感情的になる。
パワー➡︎➡︎D
スピード➡︎➡︎➡︎➡︎B
テクニック➡︎➡︎➡︎➡︎➡︎A
知力➡︎➡︎➡︎➡︎➡︎A
協調性➡︎E
裏話☆メモ
元主人公&モデルがいる。
元々主人公キャラにしようとしていました。
その時はそもそも話がだいぶ違うもので、金髪縦ロールのどデカイハンマー持ったお嬢様ヒーローのサイドキックに無理やりさせられ、なんやかんやヒロアカ本編の裏で起こっている事件を解決していくというバディー物でした。
これはこれで面白そうと思いましたが、世界観を使っているだけであんまり二次創作っぽくないし王道作品を書こうという意図から外れていたのでボツ。
ものとしては割と好きなんですけどね
そして、モデルになったのは、Fateの衛宮切嗣ですね。なんとなくイメージとしてあったって感じです。これはブレイカーにも通じますが、リビングライフの場合全体的にそれっぽいです。
尤もだいぶ魔改造しましたので、あんま切嗣さんっぽくはなくなりましたが。
想像したよりも早く終わってしまう……かも?
自分としては珍しいですが。
次回! 大量のネズミ再び!! チーズ持って待て!!
感想・評価心よりお待ちしております。