plus ultraを胸に抱き   作:鎌太郎EX

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episode10 過去は付いて回るもの

 

 

 

 

 まずは、布団を干す。

 掃除をしている時に埃が布団に落ちては意味がない。幸い今日は天気が良く、日光に恵まれている。午後3時ほどまで干しておけば夜には気持ちよく眠りにつけるような布団に変身しているだろう。

 最初の行動としては、押入れの奥や机の中に入っている私物の整理。

 私物はそれほど多くはない。趣味が鍛錬というある意味ストイックな生活なおかげなのか、所為と言うべきなのか。しかし物持ちが良いので、小学校の時の教科書などは多い。流石にもう使わないだろうと言うものを処分しながら、ついでに溜まっている埃を雑巾などで拭き取っていく。

 次に部屋の上にある埃を払う。

 基本的に3日に一回は掃除されている(父が自主的に行っている。息子の部屋に勝手に侵入するのはどうだろう)のでそれほど多く積もっている訳ではないが、今日は細かい部分も念入りにしなければいけない。電灯の笠のような部分(と表現して良いんだろうか)も大事だ。

 流れで机や本棚、箪笥の上などもだ。

 そして最後に、掃除機などをかける。

 一応和室で畳であるものの、机を椅子を置くために絨毯を敷いている部分もあるので、掃除機のモードを切り替えて、細かい所まで掃除機をかける。この時普通の男子高校生ならばベッドの下に18歳以下は鑑賞できないほんの類などを仕舞い込んでいるのだろうが、うちは布団だ。

 残念だったな峰田。

 掃除や整理整頓はそれほど苦とは思わない。

 部屋を綺麗にしていけば自分の心の整理にも大変都合が良い。そして何より体を動かしているのだ。細かい作業や分量計算が必要な料理や、洗濯機を回していれば放置してしまえる洗濯とは違い、自分に何と無く合っていると思える。

 そんな何でもないような事を考えている間に、自室の掃除は終了した。

 満足感からくる溜息を吐いてから、部屋を後にする。

 

「父さん、自分の部屋は終わったよ

 次はどこやる?」

 

「お、結構早いね、さすが振武。

 そうだなぁ〜……じゃあ、道場やってもらえる? 最後の方はモップで水拭きと乾拭きして、ワックス掛けてくれれば良いから」

 

「了解。ワックスって物置にあったっけ?」

 

「うん、よろしく〜」

 

 壊に次の手順の指示を仰いでから、振武は居間を出て行った。

 今日は休み。

 そして――動島家の掃除の日でもある。

 

 

 

 

 

 動島家は広い。

 振一郎、振武、壊が住んでいる本宅部分、門下生は師範代達が出入りする道場に繋がっている部分、そして離れが存在し、さらに震撃習得にも使った土蔵。門下生達も使える中庭、そして裏山がある。

 裏山はそれほどの大きさはないが、家族でやり始めると大変なので、管理会社にお願いしている。

 裏庭は祖父である振一郎の管轄。庭いじりをすると落ち着くのだそうだ。

 しかし、建物内はそう簡単にはいかない。家政婦さんと壊が日常的に掃除しているし、道場周りは門下生達もやってくれるとは言え、日々の汚れとは蓄積されていくものだ。

 だから、月一回には大規模な掃除を行う。

 壊はそもそも家事全般が好きだし、振武も掃除が好きな事もあり、母が死んでここに来てから10年以上、一度も怠ったことがない。

 

「よいしょっと……こんなもんかなぁ」

 

 道場の上の方に積もっている埃をハタキで落としてから、室内用の箒でその埃や塵を取り除く。それから、水に濡らし絞ったモップで一回。さらに濡らしていない乾いたモップで一回。

 モップの毛の部分は付け替えられるようになっているのでいちいち持ち替える必要性はない。非常に便利だ。

 そこまでくれば、あとはワックスを掛けておいて放置だ。今日一日ワックスを掛けたと言えば誰も入ろうとはしないし、今日は道場もお休み。1日放置しておけば乾くだろう。

 そう思い、振武は周囲を見渡す。

 掛け軸と、武術の鍛錬に必要な木刀や棒、薙刀を模した物が掛かっているだけ。必要最低限のものしかおかれていない道場。

 動島流の道着などは個人で管理するので、そういう私物などはない。着替えをする部屋は別なので、当然ロッカーなどもない。

 ……あるとすれば、奥にある開かずの間だけだ。

 

「……気になる」

 

 扉を見ながら小さく呟く。

 開かずの間とは言ったものの、ちゃんと鍵はあるので開くには開く。だがこの中は言わば振一郎だけが入るのを許された部屋なのだ。振武も壊も、何があるのかまるで知らない。

 気になるじゃないか。

 家の中で何が入っているか、どうなっているのか知らない部屋はここだけだ。

 未知というのは、探索したくなってしまうものだ。

 

「まぁ、んな事言っても、鍵が開いてなければ意味ないんだけどなぁ〜」

 

 ここの鍵はいつも祖父が肌身離さず管理しているのだ。

 鍵がかかっていれば、当然入る事は出来ない。

 あはは〜と笑いながら、何となくドアノブに手をかけ回してみると、

 

 ガチャッ。

 

 開いてしまった。

 

「…………………………」

 

 思わず何も言えなくなる。

 いつでもシッカリとしている祖父が鍵をかけ忘れていたという事へのインパクトは強いが、それ以上に開かないと断定していたものが思わず開いてしまったのは流石に驚いた。

 

「……か、鍵が開いているのだもんな。この部屋も掃除しなきゃいけないよな、うん!!」

 

 だれに聞かせるわけでもない、強いていうのであれば自分の心の中の罪悪感に言い聞かせながら、ゆっくりと扉を開ける。

 祖父が定期的に掃除しているのだろうか、思った以上に汚れはない。

 だが問題なのは――その中に置いてあるものだろう。

 

「こりゃ……普通だったら訴えられるぞ」

 

 槍や弓などの銃刀法的にギリギリなものから、リボルバーのハンドガンやライフルと言ったがっつりアウトなものまで、様々な壁一面に飾られている。

 いくつかは見覚えがある。動島家で長く使われている家宝とされている武器だ。何度か祖父が見せてくれても、どこに仕舞ってあるのか解らなかったものは、どうやらこの部屋に仕舞われていたらしい。

 その中には動島振一郎が愛用する刀。

 怪刀《乱丸》。

 動島家の歴史書では、「立てかけただけで壁斬って自ずから倒れた」だの「動島流を極めれば抜かずに斬れる、名刀を超えし怪刀」だの微妙にきな臭い話が書かれていた。

 誇張されているとは言え、一流の達人である振一郎が愛用しているというだけでも、充分業物の証明だと、振武は思っている。

 ――部屋の中央には、紅い鎧甲冑が置かれていた。

 普通の鎧武者が着るようなものとは違い、兜や動きの邪魔をしそうな部分は外され、どこか機能的、現代的なアレンジがされているようにも見える。

 伝統の鎧かとも思ったが、所々鎧を模しているだけで、かなり近代の技術を使っている部分もある。

 鎧甲冑というよりもむしろ――、

 

「ヒーローの、コスチューム?」

 

 ――振武のものではない。

 ――壊のものでも当然ない。

 なら、一体誰の――、

 

 

 

「――ここで何をしている?」

 

 

 

 いきなり聞こえる厳格な声に、思わず姿勢が伸びて振り返る。

 呆れ顔の動島振一郎がそこに立っていた。

 

「あぁ〜……すいません、開いてたからつい」

 

 怒られると判断して、つい敬語で返してしまう。

 

「……開いていたからといって入るな、馬鹿者。

 まぁ、今回は私の落ち度でもある。鍵をかけ忘れるとは、私には中々ない失敗だ。歳は取りたくないものだな」

 

 しかし振一郎は怒ろうとは思っていないらしい。小さく溜息を吐いてから、扉を大きく開ける。

 

「さあ、一緒に出よう。見た所掃除は終わったがまだワックス掛けは終わっていないようだ。ワックス掛けを終えれば、次の指示を壊くんから聞きなさい」

 

「あぁ、うん……」

 

 その言葉に大人しく従って部屋を出ると、振一郎はキッチリと扉を閉め、鍵をかけ、ちゃんとかかっているかを確認するようにドアノブを回した。

 

「……祖父ちゃん。

 

 

 

 ――祖父ちゃんは、ヒーローだったの?」

 

 

 

 ヒーローコスチュームのような装備。

 武器の数々。

 体育祭の時にオールマイトとの関係から連想させる、ワン・フォー・オールとの繋がり。

 もしかしたら、祖父も正義の為に戦ったのではないか。

 そう思い、思わず口に出ていた。

 

 

 

「――違う。私はヒーローなどという高尚な存在になった事は、一度もない」

 

 

 

 それを、振一郎はバッサリと切り捨てる。

 

「ハッキリ言っておこう。

 振武。私は覚やお前とは違う。正義の心や誰かを救いたいという強い信念は、私にはない。

 自身が、ひいては動島が強くあり続ける事、強くなり続ける事――そして、動島流を護る事。私にはそれしかない」

 

 ――強くあれ。

 ただそれだけを純粋に突き詰めてきた動島流。

 そしてその動島流の術理を全て修め、明治維新以降に唯一最強と謳われる初代に近いと言われた存在。

 だからこそ、その存在は、その気配は、その言葉は純粋だった。

 

「振武。この際だから言っておく。

 

 

 

 ――私のようになるな。

 

 

 

 これからの動島流には、私のような外道はいらない。強さを求める余り、人としての機能をそぎ落とす必要性はない。

 人間であれ、振武」

 

 人間であれ。

 その言葉が、まさかここまで重いものだとは思ってもみなかった。

 

「……掃除に戻りなさい。私は、庭の手入れでもしているさ」

 

 そろそろ夏の花の手入れを始めなければ。

 まるで先ほどの空気が嘘かのように、そうにこやかに返すと。振一郎は道場を出て行く。

 

「……あぁ〜、何なんだろう」

 

 動島流。

 自分の知らない闇の部分が、まだまだありそうだ。

 

 

 

 

 

 道場のワックス掛けを終えて、次に頼まれたのは――母の昔の私室の掃除だった。

 動島覚が壊と結婚して家を出るまで、この部屋に住んでいた。いつでも帰って来れるように別宅扱いとして綺麗にし続け――その習慣は、彼女が死んでからも続いている。

 

「……意外とファンシーなんだよなぁ」

 

 いくつか置いてある縫いぐるみ。絨毯が敷かれていて、和室なのに洋室のようにちょっとお洒落なベッドなどが置いてある。

 母と一緒に過ごした時間は長くはないが、こんな趣味だったのかと見る度に意外に感じるのだ。

 この部屋に入るのは初めてではない。だが基本的にこの部屋の掃除や片付けを行うのは父である壊の仕事だった。掃除を任されたのは初めてだ。

 といっても、必ず壊が綺麗にしているので、この部屋に関してはやる事が殆ど残っていない。ちょっと雑巾掛けをして、掃除機をかけるだけだ。

 

「……本とかがキッチリ入っている辺りは、几帳面だよなぁ」

 

 元々そういう並びだったのか、それとも掃除をする壊がやったのか。

 部屋にある本棚も、机の上に立てかけられている本達も丁寧に整理されている。

 ヒーロー関係の法案を纏めた本などの仕事用の物も見えるが、恋愛小説や少女漫画などの女性らしいものもある。ちらっと恋愛指南書系の本や、お洒落に関する物まで置いてある。

 言い方は悪いがそういうのに興味のなさそうな人だったが、中身はちゃんと女子だったのだろう。

 

「……ん?」

 

 そうして本棚を眺めていると、その中でも異彩を放つものがあった。

 真っ白な本。

 表紙も背表紙にも何も書かれず、描かれてもいない。文字通り真っ白な本。

 

「なんだろう……どういう物なんだこれは?」

 

 そういう装丁の本なのかとも思ったが、作りからしても凝った小説のような印象は受けない。

 そっと、中を開いて見る。

 

 

『拝啓、家族の皆さんへ。

 これを読んでいるという事は、私はもう死んでいるか、もしくはそれに準ずる状態に陥っているのでしょう。

 一応言っておくと、これは遺書ではありません。ざっくり言えば、回顧録のようなものです。自分が自分の過去の話を出来ない状態になった時に、だれかに私の話を聞いてもらいたくて書きました。

 これを読んでいるのが夫なのか、父なのか、息子なのか、あるいは私の知らない誰かなのかは分かりません。

 ですが開いたからには、私という存在を知って欲しい。出来れば、忘れないで欲しい。だから、ここでわたしについて語る事にする。

 ――――動島覚』

 

 

「――っ」

 

 その名前に、本を開いている手が止まる。

 その字は、昔見た母の字。

 ――回顧録。

 母の過去の記録。

 ……一瞬、これは父に渡した方が良いのではないかと思えてくる。最初に壊に読んでもらった方が良いのではないかと。

 だがその気持ちに反して、手は自然とページを捲っていた。

 

 

『と言ったは良いものの、何を話せば良いのか……正直、子供の頃の話をあまりする気はない。幼少期は、正直言えば普通だ。母は病気がちな女性で、家ではなく病院で暮らしているような人だった。父は優しいが、性根は武人そのもの。

 だから幼少期は特別輝かしい思い出ではなく、かといって思い出したくない物でもない。

 雄英に通っていた時代、ヒーローになって最初期の時代もあまり記したい事ではない。

 というか雄英時代はキツ過ぎて正直記憶は殆ど飛んでいるし、ヒーロー最初期の話は正直思い出したくないので割愛する。』

 

 

 ……母さん、早速回顧録ではなくなっています。

 普通は何年にどこで生まれたなんて話からスタートでしょう、なに面倒になってショートカットしているんだ。

 そういう所も、また母親らしいと思ってしまうのだが。

 

 

『私が本当の意味でのヒーローになった時――それは今の夫、当時は触合瀬壊と名乗っていた存在に出会ってからだろう。

 最初はいけ好かない男だと思っていたのだが、運命とは分からない。

 まさか初対面で顔をぶん殴った男と結婚して子供を授かり、おまけにこれほど愛するとは、当時は思ってもいなかった。』

 

 

 ……そういえば言ってましたね。

 聞けばとてもシュールな出会いだ。

 

 

『なので、最初から私の過去をお話しするのはめ(文字が塗り潰されている)長くて読んでいる人も困ると思うので、その時くらいから始めよう。

 決して書くのが良い加減面倒臭くなって「あぁこれなら手書きじゃなくてパソコンで作れば良かった誤字脱字の修正とか楽だし」とは全く、これっぽっちも思っていないのは、読んでいる人には分かって欲しい』

 

 

 言い訳し始めた!!

 

「母さん、そこまで面倒臭がりだったのか……」

 

 そんな気がしてはいたのだが。

 

 

『――では、始めよう。

 

 

 

 これは、1人の普通の女が、偽物から本物に至った話だ』

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 地下にある部屋。灯りは最低限に抑えられている部屋。

 そこは一言で説明すれば、いわば研究室のような場所だった。

 ビーカーやフラスコなどの学校でも見かけるような実験に必要な道具から、専門家ではないと一見してなんの道具か分からないものまで様々なモノが置かれ、部屋の壁一面にはビッシリと大きな本棚が自分の存在を主張している。その中には様々な言語で書かれた専門書が収まっている。

 いくつか置かれているテーブルの上に実験道具以外にも、何かの資料と思われる紙の束、本棚から出されっぱなしにしている専門書なども置かれている。

 そんな薄暗い研究室の中で、1人の少年が熱心に一冊のファイルを覗き込んでいた。

 灰色の髪を持つ、獣のような眼光の少年――鉄雄。

 動島知念に付き従っていた少年は、あの時の気の強そうな顔は鳴りを潜め、真剣な表情でファイルを覗き込んでいた。

 

「……何の用だ? 俺は忙しいんだ」

 

 他に誰もいないはずなのに、鉄雄はファイルから目を離さずにそう言い放つ。

 

「鍛錬をサボって随分熱心に見ているね。何か興味深いものでも見つけたのかな?」

 

 一瞬。

 常人であれば瞬き1つしか許されない刹那の瞬間、鉄雄の後ろには女性が立っていた。

 男装の麗人のような趣の女性……動島知念その人だ。

 

「お前には関係ないだろう? 俺はそもそも動島振武を殺す為にあんたから学んでいるんだ。修めたい訳じゃない」

 

「分かっている。だが一応こちらにはこちらのプランがあってね。

 それに……最初の質問に答えていない」

 

 正式には、鉄雄は動島流門下ではない。

 彼女の性格上時々厳しく接するものの、基本は放任主義でいなければいけない。

 しかしわざわざドクターの研究室に侵入し勝手にファイルを漁っているのだ。一応用心棒として敵連合に雇われている身の知念としては、彼の目的を聞かなければいけなかった。

 それを分かっているのか、それとも単に隠すのが面倒になったからなのか。鉄雄はファイルから顔を上げる。

 

「……強くなる方法を探している」

 

「ならば簡単だ。動島を修めろ」

 

「そういうのじゃない……個性を強くする方法だ」

 

 その言葉に、知念は目を丸くする。

 

「十分強いじゃないか。

 先生も随分驚いていらっしゃった。君の個性に合うからといくつかの個性を渡したら、君はそれをあっさり自分の個性と混ぜ合わせ新しいものを生み出したと。

 狙っていないとはいえ、それは中々常人で出来るものではない」

 

 自分のものではない個性を後天的に付与されれば、精神が脆い者……いや、強い者であっても精神が破綻し、脳無材料にならざる終えなくなる。

 しかし、鉄雄はそれを払いのけ今もなお自分の意思を持ち続けている。

 それだけでも十分才能があると言えるだろう。

 だが、鉄雄は首を振った。

 

「確かに個性の自由度は上がったし、もともと出力が高い。

 だがそれだけじゃ意味がない。もっと強くならないと……」

 

 焦るようにそう言うと、またもファイルに視線を戻す。

 ……鉄雄のこのようなストイックな部分を、知念は嫌いにはなれない。どういう目的があったとしても、純粋に力を欲する感情は美しいものだ。

 そう思い、どこか慈愛に満ちた表情でファイルの中をちらりと覗き込み――すぐに相手から取り上げた。

 

「っ!? 何すんだババァ!!」

 

「私をババァと呼ぶな。その口使い物にならないようにするぞ。

 ――これはダメだ。成功例が少なすぎる。別の意味で精神がやられるぞ」

 

 ファイル名《エヴォリミット》。

 進化の限界という意味で作られた造語。

 それは計画名であると同時に、その研究の根幹になっている薬の名称でもある。

 

「あ? なんでだ?

 成功例はあるんだろう?」

 

「あるにはあるが、恐らく君には合わないだろう。結局副作用は完全に消す事は出来なかったし、脳無というもっと有用な存在が出来てから、コストパフォーマンス的にもそちらの方が優先になった。

 この薬は、もう今は作ってすらいないだろう」

 

 それに、と知念は話を続ける。

 

「この薬の研究中厄介なことがあってね。途中で止める事しか出来なかった」

 

「……何があったんだよ」

 

 息を呑みながら聞く鉄雄に、知念は一瞬躊躇ってから――笑みを浮かべた。

 

「そうだな、君の復讐にもあるいは関係があるかもしれない。向こうは我々が絡んでいる事すら知らないかもしれないがね。

 

 

 

 ――話しておこう。

 これは、敵連合の前身と、動島流がぶつかった時の話だ。」

 

 

 

 ――過去語りが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からスピンオフ……紛らわしいですが、振一郎さんの話ではありません!!
覚さんの話をしていきたいと思います。
50万UA記念というのもありますが、ちゃんと話的には繋がっているので。
どうかお楽しみに。


次回! 覚さんが愚痴る。聞く準備をして待て!!


感想・評価心よりお待ちしております。

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