強くてニュー霊夢(紅魔郷) 作:天ノ邪鬼 桐絵
博麗霊夢は悪い意味で吹っ切れた。
「なんで、お正月なのに賽銭の一枚も集まらないのかしら……」
博麗霊夢は表情が乏しい。
美しい見た目に反して、無表情で居ることが多く、感情を読み取りずらい。
しかし、内面では、喜怒哀楽は普通の人間と同じくらいにある。
ある正月の日、霊夢は怒りを、悲しみを、そして無念を感じた。
自分は博麗の巫女として、やるべき事をやっている。
しかし、お賽銭が入る訳でもなければ、それによって生活が豊かになることは無い。
お正月くらい、一円でもいいから、参拝してお賽銭を入れてくれる人が居てもいいじゃないかと、そう思った。
「もう、何もかもが、どうでもいい」
霊夢の霊力は、怒りによって膨らんでいく。
霊夢の霊力は青白く透き通っていたが、怒りで黒く、何もかもを拒絶するような見た目に変化する。
それによって、スペルカードも新たに作られていく。
その一枚目の冒頭は、「必然」と書かれていた。
博麗霊夢は、ダークサイドに落ちた。
さながら、某作品のスカイウォーカーのような、全てに絶望し無念を感じ、力による解決で全てを押し通そうとした。
霊夢の能力は「空を飛ぶ程度の能力」だったが、人が魔力でもなく霊力でもなく、ただ空を飛ぶことができるというのは異質である。
しかし、それは「無双転生」という技が示すように、全てから「浮き世離れ」し、何もかもの干渉を受けないという特性でもある。
霊夢の能力は、その時に変化した。「あらゆる干渉を否定し我を通す程度の能力」と。
--数年後の博麗霊夢
博麗霊夢は、幻想郷を飛び出した。
そして、力を持つ者達が、最後に行きつくという聖地に足を踏み入れた。
その場所の名は「MUGEN」という。
ただ強さに自信がある者、力を持ちすぎた神々、常識では計れないような強さの者達があつまる場所。
幻想郷のように、閉鎖された結界のようなものに覆われていて、中で起きた破壊が外に漏れないようにされている。
それはある意味では、強さを持つ者達を、それ以外の者達が隔離したような場所でもあった。
「弱いのに挑むのは罪だ」
霊夢のここでの通りなは「鬼巫女」という。
向かう所では敵が無く、戦いが始まっても瞬殺してしまう。
弱い者では何をされているか認識すらできず、時が止まった中での戦いは、観戦できる者すらすくない。
ここでは、強い者が弱い者をいたぶることは無い。
しかし、強さを認めた相手に対し、戦いを挑むことはある。
強さによってランク分けされていて、普通ランク、強ランク、神ランクと、様々な階級に分かれ、そして好き勝手に挑み・挑まれを繰り返している。
その中で、論外と呼ばれる者達が居て、強さに貪欲であったり、無関心であったり。
はたまた、強き者達と戦いの刹那を楽しんでいる。
霊夢が一つ手を振れば、挑んできたどんな敵も倒れていく。
初手に耐えられぬ者達に、霊夢へ挑む資格すら存在しない。
邪悪さを感じる笑顔を浮かべ、静かに敵を屠っていくその姿は、まさしく「鬼巫女」と呼ばれるに相応しい姿だった。
しかし、霊夢ほどの美少女が浮かべる表情は、抜き身の日本刀のように、美しいものであった。
悪意を感じるような、唇を釣り上げた笑み。
前髪に影を帯びる目元が、輝いていると錯覚しそうなほど厳しい眼光を際立たせる。
ここでは、強さによって全ての扱いが変わる。
最も強き者達は怖れられ、同時にその強さに敬意を抱かれて生活をしていた。