問題児たちが異世界から来るそうですよ? 〜全ての神々〜 作:八風
その後、本拠に一同は戻った。
耀は念のために部屋で寝て、凛と飛鳥はそれに付き添っている。
「調子はどうかなー耀ちゃん? まあ、何ともないと思うけどねー」
「ん、大丈夫。むしろ、ここまで安静にしてるので調子悪くなりそう」
「だめよ、春日部さん。傷は凛くんが治してくれたけど、出血がひどかったのだから安静にしてなさい」
耀がつまんない顔をすると、飛鳥が睨む。
凛はいつものように笑っていた。
しかし、こんなに笑ってるのはいつぶりだろうかと凛は思った。
二、三回人生を繰り返すと同じようなことの繰り返しで楽しいことなど何もなかった。
凛は久々にワクワクしていた。これを失いたくはない。
その思い、凛はひとつの提案をする。
「ねえ、二人ともに提案があるんだよねー」
「あら、何かしら?」「なに?」
凛の雰囲気が変わる。
「僕は君達がとても大事だ、居なくなるのは困る」
その言葉に二人は顔を赤く染める。
「そ、それは、い、いきなり過ぎないかしら」
「う、うん。凛どうしたの?」
凛は一歩だけ二人に近付いて、ベットに座っている二人に目線を合わせる。
凛は男か女かわからない顔をしているが、その顔付は端正だ。
そしていつもと違い、凛々しい顔をしている。
その距離感に二人はより顔を赤くする。
「だからね、飛鳥、耀」
「は、はい」
二人は声を揃えて答える。
「一度、僕と決闘しようか。今すぐとは言わないからね」
「え?」
凛は満足気な顔をしているが、二人は頭に疑問符が浮かんでいる。
しかし、凛はいつもの雰囲気のままに考えといてねーと言い残して部屋をあとにした。
二人が再起動したの、それから3分後であった。
*
部屋を出た凛は談話室に向かった。
その途中で部屋に気配が一人分増えているのに気付き、道のりを急ぐ。
凛が部屋に入ると金髪の美少女がいた。
「あれ、また美人さんが増えてるねー」
「おや、今日は随分褒められるな。そして君が凛か。確かに弱そうだ」
「確かに今の僕は弱いだろうねー」
ハハハ、といい笑顔で返事をする凛に、黒ウサギが報告する。
「凛さん、こちらがレティシア様です!」
話には聞いていたので、凛がへえとレティシアを再度確認する。
十六夜がここで我慢できなくなくなったのか、話を戻す。
凛が入ってきたことで大事な話が途切れたからだ。
「再度言うぜ、元・魔王様。心配なら、その身で試してみろ」
それだけ言うと、十六夜は立ち上がる。
十六夜の意図を理解してレティシアは笑い声を上げて立ち上がる。
「そうだな、初めからそうしていればよかったなあ」
「ちょ、ちょっとお二人様?」
「ゲームのルールはどうする?」
「じゃあ、僕が決めよう。二人とも一撃ずつ放ち、立っていた方が勝ち。これでどうかなー?」
「いいね、シンプルイズベストだ」
「私もそれでよい」
頷いた三人は窓から中庭に飛び出した。
二人は天と地に位置して向かい合っている。
間にいる凛が開始を告げる。
レティシアがギフトカードを取り出し、ランスが顕現する。
そのランスを打ち出す、その衝撃で空気が視認できるほど巨大な波紋が広がった。
十六夜は殴りつけた。
槍は鉄塊となり、第三宇宙速度に匹敵する速度でレティシアへと向かう。
彼女が血みどろになる覚悟をしたところで、目の前に影が遮った。
「はい、そこまでー」
そこには軽く片手で鉄塊を受け止めた凛がいた。
(この二人…これほどの才能ならばあるいは…)
レティシアは安堵を覚えた。
そのタイミングで飛び出した黒ウサギがレティシアのギフトカードを掠め取った。
そこには彼女に宿っていた
何とも言えない空気になったので十六夜が屋敷に戻る提案をして、戻ろうとした、まさにその時、異変が起きた。
遠方から褐色の光が差し込み、レティシアがハッとして叫ぶ。
「あの光……ゴーゴンの威光!? まずい、見つかった!」
焦燥の混じった声と共に、レティシアは光から三人をかばおうとしたが、凛がレティシアを引っ張り飛ばし、三人へ笑みを向けると褐色の光を受けて瞬く間に石像になって横たわった。
レティシアや黒ウサギは驚愕した。
更に光の差し込んだ方から、翼の生えた空駆ける靴を装着した騎士風の男達が大挙して押し寄せてきた。
「外したのか! もう手段は選ばん捕獲しろ! 取り逃がしては、箱庭の外とはいえ、交渉相手は―――」
「箱庭の外ですって!?」
黒ウサギの叫びに、彼らは敵意を込めて見る。
「我らが首領が決めた交渉。部外者は黙っていろ」
"ノーネーム"を見下した上での行動、言動に黒ウサギの勘忍袋の緒が爆発した。
黒ウサギは黒髪を淡い緋色に変化させ、威圧感を放つ。
そして右腕を掲げると、雷鳴のような爆音と共に輝く槍が現われる。
そのインドラの槍を黒ウサギが天に向かって打ち出そうとすると、それと同時に十六夜が、
「てい」
「フギャ!」
後ろからウサ耳を引っ張る。すっぽぬけたインドラの槍は箱庭の天井に着弾する。
解放された稲妻と熱量は数kmに渡って天幕を照らした。
その光景を見て騎士風の男達は戦慄する。
「ほ、本物のインドラの武具!? ま、まずい。一時撤退だ!」
「待つので――フギャ!」
再度、十六夜がウサ耳を引っ張る。
「落ち着け! 白夜叉と問題起こしたくないんだろう?」
「しかし、あの無礼者に天誅を」
「もう帰ったぞ」
「えっ? 逃げ足早すぎでしょう!?」
黒ウサギは不可視のギフトだと気付くが十六夜が再度宥める。
諦めた黒ウサギがレティシアを見ると、石化した凛の横で座っていた。
「会ったばかりの私を庇うなど…なんと馬鹿な真似を」
凛の状態を思い出し、黒ウサギも耳をシュンとさせている。
そこで十六夜が声をかける
「しょんぼりしてても意味ねえだろ。詳しい事情を聞きに行くぞ、凛のおかげでどうにかできそうだしな」
最後の意味はわからないが、白夜叉なら詳しい事情を知っているかもしれない、と黒ウサギも八ッとする。
「他の連中も呼んで来い」
そして、十六夜、飛鳥、黒ウサギ、レティシアは"サウザンドアイズ"二一○五三八○外門を目指すのだった。
*
"サウザンドアイズ"の暖簾をくぐって、一同は家屋に向かった。
中に入ると"ペルセウス"のリーダーである、ルイオスがレティシアを見て、
「なんだ親切にも逃げ出した商品を届けに来てくれたのか? 名無しも役に立つじゃない――ー」
その言葉に黒ウサギと飛鳥がキレた。飛鳥が
「黙りなさい!」
ガチン! とルイオスの下顎が閉じ、困惑する。
「不快だわ。そのまま地に頭を伏せてなさい!」
しかし、ルイオスは命令に逆らって、体を起こし、言葉を紡いだ。
「おい、おんな。そんなのが通じるのは――ー格下だけだ、馬鹿が!!」
激怒したルイオスがギフトカードから取り出した鎌を振り下ろすが、十六夜が受け止める。
追撃しようとするが白夜叉が鎌を押さえつける。
「ええい、やめんか戯け共! 話し合いで解決できぬなら門前に放り出すぞ!」
「……。ちっ。けどその女が先に手を出したんだけどね?」
十六夜がニヤリと笑う。
「そいつは違うぜ色男。先に喧嘩を売って来たのはお前らだぜ」
「何を根拠にそんな戯言を言っている。そんな無礼を我々がするはずがないだろう」
「言ったな? 今、"ノーネーム"には石化された仲間がいるんだがこれはなんだ? 商品が逃げ出したのは、こっちの問題じゃないよな。にも係わらず敷地に侵入してきた挙句に、いきなり攻撃を仕掛けてくるとはどういう了見だ?」
「そ、それは何かの間違いだ!」
十六夜の言葉にルイオスが明らかに動揺している。
これを好機と思い十六夜は畳み掛ける。
「そうか、いいんだぜ。こっちはどんだけ調べてもらっても"ノーネーム"としては何もしていないからな」
「くっ。……何が望みだ」
十六夜はハハハ、と獰猛な笑みを浮かべる。
「話が早くて助かるよ。"ノーネーム"は"ペルセウス"との決闘を望む。"ペルセウス"には旗印を賭けてもらうぜ。"ノーネーム"が負けたら何でも聞く。これでどうだ?」
その言葉に白夜叉、黒ウサギ、飛鳥、レティシアが驚く。
白夜叉は意図を理解して言う。
「それぐらいは可能だろうの、ルイオスよ。貴様が名無しと見下したコミュニティにまさか五桁のコミュニティが負けるなんてことはなかろうの?」
ここまで言われてはルイオスも引くことができなくなった。
「いいだろう。"ペルセウス"が勝てばレティシアの返却、そして黒ウサギをもらう」
「いいぜ、乗った!!」
両者とも負けるとは一切思っていない。
ふむ、と白夜叉が頷き提案する。
「なら、そのゲームは"ペルセウス"の伝説を誇示したゲームでするべきだろうの。黒ウサギはわかっておるの?」
急に話を振られて、黒ウサギはドキッとする。
「は、はい。もちろんでございます!」
うむ、と白夜叉が扇子を広げて声高々に宣言する。
「では、二日後にゲームをすることを"サウザンドアイズ"に誓って貰おう! 両者とも異論はないかの?」
ルイオス、"ノーネーム"の一同は頷いた。
*
本拠に戻って談話室には十六夜、黒ウサギ、飛鳥、レティシア、耀、ジン、そして石化している凛の姿があった。
十六夜が耀とジンに経緯を伝えている。
二人は聞き終えると、気合の入った顔で頷いた。
耀は石化した凛を見て、
「そう、それでこうなってるの」
レティシアが怪我をさせたこともあってか、深刻そうに謝罪する。
「すまない! 私のせいで迷惑ばかりかけて」
「ううん、いい。確かに怪我は痛かったけど、凛が治してくれたし。凛は助けたくて助けたんだと思う。凛はいい人だから」
「そうよ! 凛くんは男性として素晴らしいことをしたんだから、あなたがそんな顔しててはダメよ。ゲームには必ず勝つから問題ないわ」
「そうですよレティシア様!! 凛さんはそういう人でございますよ! そして十六夜さん達が元に戻してくれます!」
女性陣がレティシアを励ましている。
その光景を見ながら十六夜が石像に話かける。
「ハハハ、羨ましいな凛。ここまで褒めてもらえて」
「いやー、まったくだよー」
は? という顔を四人はする。
石像から凛の声が確かにしたからだ。
四人が石像を見ると、石像がひび割れて中から光が照らしている。
次の瞬間、石化していた部分が霧散して、凛が出てきた。
「上手くやってくれたみたいだねー、十六夜くん」
「オマエが笑顔であの光に包まれたから、そんなことだと思ったからな」
「そりゃ、ゴーゴンを倒したペルセウスにもなれる僕だよ? ましてや太陽神にかかればこの程度の呪い……」
凛は言葉の途中で後ろから来る冷気に振り向いた。
そこには何とも素晴らしい笑顔を浮かべた四人が近づいてきていた。
「私の心配はどこに行ったのかな?」
「…凛のそういうとこよくない」
「凛くん? 何か言い残すことはないかしら」
「黒ウサギのヴァジュラを体験してみますか?」
"ノーネーム"の敷地内に凛の叫び声が響き渡った。