問題児たちが異世界から来るそうですよ? 〜全ての神々〜 作:八風
それから小一時間して黒ウサギから箱庭の説明があった。
その後、黒ウサギのコミュニティに向かっていた。
「ジン坊ちゃーン! 新しい方を連れてきましたよー!」
はっと顔を上げる。外門前の街道から黒ウサギと女性二人が歩いてきた。
「お帰り、黒ウサギ。そちらの御三人が?」
「はいな、こちらの御四人様がーーー」
クルリ、と振り返る黒ウサギ。
カチン、と固まる黒ウサギ。
「……え、あれ? もう一人いませんでしたっけ? ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から問題児ってオーラを放っている殿方が」
「ああ、十六夜くんのこと? 彼なら"ちょっと世界の果てを見てくるぜ!"と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」
それを聞いて街道の真ん中で呆然となった黒ウサギは、ウサ耳を逆立てて問いただす。
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「"止めてくれるなよ"と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか⁉」
「"黒ウサギには言うなよ"と言われたから」
「僕はいなくなってたことも気付かなかったよー」
「嘘です、絶対嘘です! 実は面倒くさかっただけでしょう御三人さん!」
「「「うん」」」
まさかこんな問題児ばかりなんて、と黒ウサギはガクリ、と前のめりになる。
それとは対象的にジンは蒼白になって叫んだ。
「た、大変です! "世界の果て"にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に"世界の果て"付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ちできません!」
「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?………斬新?」
「彼は素晴らしい人だったよ…」
「冗談を言っている場合じゃありません!」
ジンは必死に事の重大さを訴えるが、三人は叱られても肩を竦めるだけである。
黒ウサギはため息を吐きつつ立ち上がった。
「はあ…ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった。黒ウサギはどうする?」
「問題児を捕まえに参ります。事のついでに"箱庭の貴族"と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」
黒ウサギは怒りのオーラを全身から噴出させ、黒い髪を淡い緋色に染めていく。外門めがけて空高く飛び上がった。
「一刻程で戻ります! 皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ございませ!」
黒ウサギは全力で跳躍して弾丸のように飛び去り視界から消え去っていった。
「……。箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」
「ウサギ達は箱庭の創始者の眷族。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが……」
そう、と飛鳥は空返事をする。飛鳥は心配そうにしているジンに向き直り、
「黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、御言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」
「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。二人の名前は?」
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」
「春日部耀」
「あと、そこに…あれ? 凛くんはどこに行ったのかしら」
「いない…ね。」
「ま、まさか黒ウサギを追っていったんじゃ」
「あら、何もできなそうな感じだったのに、結構すごいのね」
「まあ、いないなら先行こう」
「そ、そうですね。黒ウサギがいれば大丈夫でしょうし」
「さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくださると嬉しいわ」
飛鳥はジンの手を取ると、胸を躍らせるような笑顔で箱庭の外門をくぐるのだった。
*
「あれー、ウサギちゃん確かこっちのほうに跳んでいったはずなんだけどなー。間違えたかなー。それとも韋駄天の速さでも追いつかなかったってこと?」
十六夜を探している黒ウサギをすぐに追って半刻が過ぎている。
適当に真っ直ぐ神速で走ってきただけなので迷ったのかもしれない。
神懸かりをといて辺りを見回しても見当たらないので、凛は戻ろうとしていたときだった。
突如、大地を揺らす地響きが森全体に広がったのだ。凛は音のしたほうを見ると
近くで巨大な水柱が幾つも立ち上がっている。
「おっ、発見♪」
凛はそちらへ向かって森を抜けると大河の岸辺に出た。
そこで黒ウサギを見つけて声をかけようとすると
「あれ、凛か? 何だ黒ウサギまでいるじゃねぇか。どうしたんだその髪の色」
背後から十六夜の声がした。
凛は見つけた喜びで、黒ウサギは怒りを込めて勢い良く振り返る。
「もう、一体何処まで来ているんですか⁉ しかもなぜに凛さんまでいらっしゃるのです⁉」
「"世界の果て"まで来ているんですよ、っと。まあそんなに起こるなよ。なあ、凛」
「そうそう、こんな面白そうなのに」
十六夜は小憎たらしい笑顔で、凛は屈託のない笑顔で答えた。
「しかしいい脚だな。こんな短時間で俺に追いつけるとは思わなかったぜ二人とも」
「僕は思ったより時間がかかってビックリだよー」
「むっ、当然です。黒ウサギは"箱庭の貴族"と謳われる優秀な貴種です。その黒ウサギが」
アレ? と黒ウサギは首を傾げる。
(黒ウサギが……半刻以上もの時間、追いつけなかった……さらには追いつかれた……?)
ウサギは創始者の眷族である。その駆ける姿は疾風より速く、その力は生半可な修羅神仏では手が出せない程だ。
「ま、まあ、それはともかく! 十六夜さんが無事でよかったデス。水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ」
「水神? ああ、アレのことか?」
すると川面から白くて長い巨大が鎌首を起こし、
『まだ……まだ試練は終わってないぞ、小僧‼』
それは身の丈三十尺強はある巨躯の大蛇だった。
「おおー、知らない神様だー」
「蛇神…! って、どうやったらこんなに怒らせられるんですか十六夜さん⁉」
蛇神が甲高い咆哮を響かせると、巻き上がる風が水柱を上げて立ち昇る。
周囲を見ると、捻じ切れた木々が散乱していた。
あの水流に巻き込まれたかわ最後、人間の胴体など容赦なく千切れ飛ぶのは間違いない。
「十六夜さん、凛さん、下がって!」
「何を言ってやがる。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺が売って、奴が買った喧嘩だ。手を出せばお前から潰すぞ」
「大丈夫だよ、ウサギちゃん。あの程度なら」
十六夜の言葉に蛇神は息を荒くして応える。
『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる』
「寝言は寝て言え。決闘は敗者を決めて終わるんだよ」
その傲慢極まりない台詞に黒ウサギも蛇神も呆れて閉口した。
しかし、凛は笑っていた。
(僕と遊んでくれそうな人が見つかった)
『フン、その戯言が貴様の最期だ!』
竜巻く水柱が三本、それぞれが生き物のように唸り、蛇のように襲い掛かる。
「ハッ、しゃらくせえ‼」
十六夜は竜巻く激流の中、ただ腕の一振りで嵐をなぎ払った。
「嘘⁉」
『馬鹿な⁉』
驚愕する二つの声。
蛇神は全霊の一撃を弾かれ放心するが、十六夜はそれを見逃さなかった。
「ま、中々だったぜオマエ」
胸元に飛び込んだ十六夜の蹴りは蛇神の胴体を打ち、蛇神の巨躯は空高く打ち上げられ川に落下した。
黒ウサギは呆然としていた。
(人間が……神格を倒した⁉ それも只の腕力で⁉ そんなデタラメがーーー!)
「おい、どうした? ボッーとしていると胸とか脚とか揉むぞ?」
「え、きゃあ!」
十六夜は黒ウサギの脇下や内股に絡むように手を伸ばしていた。
押しのけて飛び退く黒ウサギは叫ぶ。
「な、ば、おば、貴方はお馬鹿です⁉ 二百年守ってきた黒ウサギの貞操に傷をつけるつもりですか⁉」
「二百年守った貞操? うわ、超傷つけたい」
「僕も混ざりたいなー。一番は十六夜くんに譲るよー」
「よし、ノッた!」
「お馬鹿⁉ いいえ、お馬鹿‼‼」
「まあ、そんなことより十六夜くん。僕とあそんでくれないかな?」
そんなこと、と言われたことにショックを受けながら黒ウサギは凛の纏う雰囲気が変わったことに気付く。
「ハッ、凛。お前ではこっちが楽しめそうにないんだが」
「それはどうかな。破壊を持って創造を為すシヴァよ我に顕現せよ」
霞むような速度で凛は十六夜に回し蹴りを放った。
それはまさしく破壊神の名に相応しい威力を持ったものだった。
「なっ⁉」
十六夜は咄嗟に両腕で蹴りを受け止めた。
そのまま、木々を薙ぎ倒しながら十六夜は数十m吹き飛ばされた。
「防がれたか。さすがだねー」
またしても黒ウサギは神格のギフトを容易く打ち破った十六夜をあそこまで吹き飛ばすことに驚愕していた。さらに
(嘘⁉ 凛さんに神格が…。そんなことはあるハズないのですよ⁉)
視界が晴れると十六夜の姿が見えた。
「オイ、やるじゃねぇか。面白くなってきたなぁ‼」
十六夜は大地を踏み砕く爆音させ、凛に向かった。
それに対して凛も真っ正面から受ける。
二人の拳がぶつかった。凄まじい衝撃が生まれ二人とも吹き飛ぶ。
二人とも直ぐに起き上がるが、異変に気付く。
(あれ、シヴァの神懸かりが消えてる⁇ まだ時間は過ぎてないはずなのに)
そこに黒ウサギの今にも泣きそうな叫び声が聞こえた。
「御二人ともやめてくださーい‼ コミュニティの仲間なのですよ⁉ 争うのは止めてください」
その声を聞いた二人は何ともいたたまれなく、顔を見合わせ苦笑した。
「ごめんね、ウサギちゃん。久しぶりに遊んでくれそうな人見つけたたからさー。そんな、泣かないでー、もう絶対しないからー」
「絶対ですよ‼ 」
「うん、約束するよー」
凛は黒ウサギの頭を撫でた。
十六夜も何も言わずに黒ウサギを見て頷いた。
「な、ならギフトを頂いて帰るのですよ」
黒ウサギは若干頬を赤めながら、逃げるように大蛇に近寄っていった。
とりあえず凛の力の一旦を見せることができましたー。長くなってしまったかな?
できるだけ凛が関わる場面だけを書いて行こうと思っているのでよろしくお願いします。
また、誤字や脱字などが見つかったら報告して頂ければ幸いです。