問題児たちが異世界から来るそうですよ? 〜全ての神々〜 作:八風
コミュニティに戻る道中、十六夜が問いただしたことにより
現在のコミュニティの状況を黒ウサギは話した。
"ノーネーム"であること。旗印もないこと。
ゲームに参加できるギフトを持つのはジンと黒ウサギだけであること。
そして箱庭を襲う最大の天災―――"魔王"の存在を。
話を聞いた十六夜は三分間黙り込んだ後、
「いいな、それ」
凛も眼をキラキラさせて、
「いいねー」
「――――………は?」
「HA? じゃねえよ。協力するって言ったんだ。もっと喜べ黒ウサギ」
「そうだよー、ウサギちゃん」
不機嫌そうに言う十六夜。楽しそうに言う凛。
「え……あ、あれれ? 今の流れってそんな流れでございました?」
「そんな流れだったぜ。それとも俺らがいらねえのか? 失礼なこと言うと本気で余所行くぞ」
「だ、駄目です駄目です、絶対に駄目です! 十六夜さんと凛さんは私達には必要です!」
「うん、うん。改めましてよろしくねー、ウサギちゃん」
二人の言葉を聞いて黒ウサギは心の中で深く反省する。
(初めからちゃんと説明すればよかったな………ジン坊ちゃん、大丈夫でしょうか)
*
日が暮れた頃に噴水広場で合流し、フォレス・ガロというコミュニティのリーダーであるガルドが許せなくてギフトゲームを申し出た、という話を聞いた黒ウサギは案の定怒っていた。
突然の展開に嵐のような説教と質問が飛び交う。
一方、凛は最早興味を失っていた。子供を人質にとって勢力を広げる奴なんて
今までの人生で腐るほど見てきたがどいつもたかが知れてるからだ。
「な、なんであの短時間に"フォレス・ガロ"のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」
「しかもゲームの日取りは明日!?」
「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」
「準備している時間もお金もありません!」
「一体どういう心算があってのことです!」
「聞いているのですか三人とも!!」
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」
「黙らっしゃい!!!」
誰が言い出したのか、まるで口裏を合わせていたかのような言い訳に激怒する黒ウサギ。
それをニヤニヤと笑って見ていた十六夜が止めに入る。
「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」
「い、十六夜さんは面白ければいいと思ってるかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ? この"
黒ウサギの見せた"契約書類"は"
その内容は凛が見ても確かに自己満足でしかなかった。
しかし、飛鳥たちにとってはそれが大事だった。
それを感じて、黒ウサギは諦めたように頷いた。
「はぁ~……。仕方がない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。"フォレス・ガロ"程度なら十六夜さんや凛さんどちらか一人だけでも楽勝でしょうし」
「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」
「僕はやる気は起きないけど、まあ人々の罪を裁くのも、弱き者に手を差し伸べるのもある神としての役割としてあるから出てもいいけど、そうじゃないよね飛鳥ちゃん?」
「当り前よ。貴方達は参加させないわ」
それを聞いて黒ウサギは慌てて食ってかかる。
「だ、駄目ですよ! 御三人さんはコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」
これに十六夜は真剣な顔で黒ウサギを右手で制する。
「そうじゃねえ。この喧嘩は、コイツらが売った、そしてヤツらが買った。なのに俺らが手を出すのは無粋って言ってるんだよ」
「あら、分かっているじゃない」
「………。ああもう、好きにしてください」
どうせ失う物はないゲーム、もうどうにでもなれと黒ウサギは呟いて肩を落とすのだった。
*
気をとりなおした黒ウサギの提案により、"サイザンドアイズ"にギフトの鑑定をしに行くことになった。
しかし、店に着いた途端に割烹着の女性店員が看板を下げていた。
黒ウサギや十六夜が店員と一悶着していると、
「いぃぃぃぃぃやほぉぉぉぉぉ! 久しぶりだ黒ウサギイィィィィィ」
黒ウサギは店内から爆走してくる着物風の服を着た真っ白い髪の少女に抱きつかれ、少女と共にクルクルと回転して街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。
「きゃあーーーーー………!」
ポチャン。そして遠くなる悲鳴。
凛は羨ましそうにして、
「こ、これは素晴らしい! 僕もお願いしていいかなー」
「そんなサービスはありません」
それに十六夜が横からはいる。
「なんなら有料でもいいぜ」
「やりません」
「なら僕が走ってくるから店員さんはここにいてー」
「意味がわかりません」
三人は真剣だった。
黒ウサギを強襲した白い髪の幼い少女は、黒ウサギの胸に顔を埋めてスリスリしていた。
「白夜叉様! ちょ、ちょっと離れてください!」
白夜叉と呼ばれた少女を無理やり引き剥がし、頭を掴んで店に向かって投げつける。くるくると縦回転した少女を、凛がキャッチする素振りを見せスルー。
そして十六夜が足で受け止めた。
「ゴハァ! お、おんしら、飛んできた初対面の美少女を捕まえもせず、足で受け止めるとは何様だ!」
「僕は凛だよー」
「俺は十六夜様だぜ、以後よろしく和装ロリ」
一連の流れの中で呆気にとられていた飛鳥は、思い出したように白夜叉に話しかける。
「貴方はこの店の人?」
「おお、そうだとも。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
「な、なんだって。ここにはそんな報酬が…。僕を"サウザンドアイズ"に入れてください!」
「何を言ってるんデス! このお馬鹿様!」
水路から上がってきた黒ウサギがすかさずツッコむ。
「いやー、ごめんごめん。実は神様って欲望に忠実なんだよー」
「よしよし、いいだろう。これで遂に黒ウサギが私のペットに」
「なりません! どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」
ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。
その後、一同は白夜叉招かれ暖簾をくぐり、白夜叉の私室にいた。
白夜叉の自己紹介があり、外門について、そして水樹の話になった。
「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?」
「この水樹は十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしたのですよ」
自慢げに黒ウサギが言うと、白夜叉は声を上げて驚いた。
「なんと!? クリアではなく直接的に倒したとな!? ではその童は神格持ちか?」
「いえ、そうは思いません。神格なら……あれ?」
(そういえば凛さんの神格はあの時しか見られなかった…そんなこと)
「どうかしたのか、黒ウサギ」
「い、いえ。もし、神格なら一目見れば分かるはずですし」
「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはず。蛇と人ではドングリの背比べだぞ」
「白夜叉様はあの蛇神とお知り合いだったのですか?」
「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」
小さな胸を張り、豪快に笑う白夜叉。
だがそれを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。
「へえ? じゃあオマエはあのヘビより強いのか?」
「ふふん、当然だ。私は東側の"
"最強の主催者"―――その言葉に問題児4の四人は一斉に瞳を輝かせた。
「なら僕が白夜叉ちゃんに勝てば、僕たちのコミュニティは東側最強になるんだね?」
「無論、そうなるのう」
「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」
四人は闘争心剥き出しで白夜叉を見る。白夜叉はそれに気づいたように高らかと笑いをあげた。
「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にゲームを挑むと?」
「え? ちょ、ちょっと御四人様?」
慌てる黒ウサギを右手で制する白夜叉。
「よいよ、黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」
「ノリがいいわね。そういうの好きよ」
「ふふ、そうか。―――しかし、ゲームの前に一つ確認しておく事がある」
「なんだ?」
「おんしらが望むのは"挑戦"か――ーもしくは"決闘"か?」
刹那、四人の視界に爆発的な変化が起きた。
四人が投げ出されたのは水平に太陽が廻る世界だった。
唖然と立ち竦む三人と、期待に満ちた顔の一人に今一度、白夜叉は問いかける。
「今一度名乗り直し、問おうかの。私は"白き夜の魔王"――ー太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への"挑戦"か? それとも対等な"決闘"か?」
「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」
「ふむ? それは決闘ではなく、試練を受けるという事かの?」
「ああ、今回は黙って試されてやるよ、魔王様」
苦笑と共に吐き捨てるような物言いをした十六夜を、白夜叉は笑い飛ばした。
飛鳥と耀も苦虫を噛み潰したような表情で同様な返事をした。
そして白夜叉は凛に顔を向けた。
「おんしだけは、あまり驚いておらんかったの。どうするかの?」
「正直遊んでみたいけどー、今回はみんなに合わせるよ」
その答えに満足そうに声を上げる白夜叉。
一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは、ホッと胸をなでおろす。
「も、もう! お互いにもう少し相手を選んでください!」
その時、彼方にある山脈から甲高い叫び声が聞こえた。その叫び声に逸早く反応したのは、春日部耀だった。
「何、今の鳴き声。初めて聞いた」
「ふむ………あやつか。おんしら三人を試すには打って付けかもしれんの」
湖畔を挟んだ向こう岸にある山脈に、チョイチョイと白夜叉が手招きをする。
すると巨大な獣が滑空して、四人の元に現れた。
「グリフォン………嘘、本物!?」
「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。"力""知恵""勇気"の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」
白夜叉が手招きする。グリフォンは彼女の元に降り立ち、深く頭を下げて礼をした。
「さて、肝心の試練だがの。おんしら三人とこのグリフォンで"力""知恵""勇気"の何れかを比べ合い、背に跨って湖畔を舞う事が出来ればクリア、という事にしようか」
白夜叉が双女神の紋が入ったカードを取り出した。すると、虚空から"
『ギフトゲーム名 “鷲獅子の手綱”
・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
神上 凛
・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。
・クリア方法 "力""知恵""勇気"の何れかでグリフォンに認められる。
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
"サウザンドアイズ"印』
「私がやる」
そう耀が言って、ゲームが開始された。
湖畔をグリフォンから振り落とされなければ耀の勝ち。
振り落とされれば耀の負け。これに命を賭けている。
そして春日部耀はこのゲームに勝利した。
その勝利が決定した瞬間、耀は手綱から手が離れ慣性のまま打ちあがる。
しかし、その場にいた全員が絶句をした。
春日部耀が湖畔の上で風を纏って浮いているのだ。
その耀に近寄ったのは、あきれたように笑う十六夜だった。
「やっぱりな、お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」
「……違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」
「ただの推測」
十六夜の視線をフイッと避ける。
白夜叉が耀に質問し、見せた木彫りが"生命の目録"と称して過言ないものだと判明した。
だが、その流れで目的だったギフトの鑑定を白夜叉ができないことも判明した。
困ったように頭を掻く白夜叉は、突如妙案が浮かんだとばかりニヤリと笑った。
そしてパンパンと柏手を打つ。すると四人の前に光り輝くカードが現われる。
カードにはそれぞれの名前と、体に宿るギフトネームを表すネームが記されていた。
コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム"
ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム"威光"
パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム"
ピュアゴールドのカードに神上凛・ギフトネーム"