問題児たちが異世界から来るそうですよ? 〜全ての神々〜 作:八風
屋敷に着いた頃には既に夜中になっていた。
黒ウサギは四人からの要望によって、お風呂の準備をしている。
そのため四人はそれぞれに宛がわれた部屋を一通り物色し、来客用の貴賓室で集まっていた。
『お嬢……ワシも風呂に入らなアカンか?』
「駄目だよ。ちゃんと三毛猫もお風呂に入らないと」
「……ふぅん? 聞いてはいたけど、オマエは本当に猫の言葉が分かるんだな」
「うん」
傍目にはニャーニャーとしか聞こえない猫の声に耀が反応する。
その様子は傍目から見ると不気味に見えた。
飛鳥は聞きにくそうに質問する。
「出過ぎたこと聞くけど……春日部さんに友達ができなかったのはもしかして」
「友達は沢山いたよ。ただ人間じゃなかっただけ」
それ以上の詮索を拒否する声音に、飛鳥は口を塞ぐ。
そこに凛が、
「僕は耀ちゃんが羨ましいよー。どの人生でも僕のことを皆、畏怖したり、崇めたり対等に話してくれる存在なんていなかったからねー。でも、箱庭に来れてよかったよ。此処の人は、どんなに力があっても僕を人として見てくれるからね」
と満面の笑みを浮かべて言った。
それを見た二人はクスっと笑って述べた。
「あら、凛君。私は人として見てるわけではないわよ」
「…私も」
それを聞いて、えっ、と酷くショックを受けた顔をする凛。
それを見て飛鳥と耀はイタズラな笑みを浮かべる。
その後ろで十六夜も肩を震わせて笑いを我慢している。
「私達はコミュニティの仲間であり友達ではなくて?」
「そうだよ」
「ハハ、とても神の力を持ったヤツには見えねな」
その言葉を聞いて凛は拗ねた。
廊下から黒ウサギの声がしたのはそれからすぐの事だった。
「ゆ、湯殿の用意ができました! 女性様方からどうぞ!」
「ありがと。先に入らせてもらうわよ十六夜君、凛君」
「えっ、一緒に入らないの?」
「「……友達やめようかな」」
すぐさま凛は女性陣に土下座して、言った。
「ごめんよー。どうぞ、ごゆるりとお入りください。まだ、やることあるし。ね、十六夜くん」
それを聞いて十六夜はニヤリと笑った。
*
十六夜と凛は子供達が眠る別館の前にいた。
凛が別館の前に座って十六夜に言う、
「面白くなさそうだから譲るよ。万が一もないだろうけど、別館の守りは僕が見とくよー」
それを聞いて、だるそうな顔をして十六夜は石を拾って、木陰に向かって投石した。その軽いフォームから考えられない威力で人影を空中高く蹴散らせ、別館の窓ガラスを振動させる。
それに驚いたジンが慌てて出てきて十六夜に問う。
「ど、どうしたんですか?」
「侵入者っぽいぞ。例の"フォレス・ガロ"の連中じゃねえか?」
しかし、その侵入者に敵意のようなものはなかった。
それどころか十六夜にガルドを倒してくれと頼むぐらいだった。
その言葉を一蹴する。侵入者やジンは呆気にとられていたが、その人質を攫ってきたのが誰なのかを考えたら、それは当たり前の意見だった。
さらに人質がもうこの世にいないことも十六夜は告げた。
そして最後に十六夜は言った。
「このジン坊ちゃんが魔王を倒すためのコミュニティを作ると言っている」
その言葉に一同が驚愕した。
しかし、凛は十六夜の意図を明確に理解して乗った
「そうだよー。リーダーがどんな魔王の脅威からも守ってくれる。魔王で困ったなら、このジン=ラッセルを頼ればいいんだよー」
十六夜と凛は顔を見合わせてニヤリと笑った。
冗談でしょう!? と言おうとしたジンの口を十六夜が塞ぐ。
十六夜、凛は言う。
「人質の仇はこのジン=ラッセル率いるメンバーが取る!」
「その後も心配しなくていいんだよ。僕たちのジン=ラッセルが"魔王"を倒すために立ち上がったんだからねー」
それに侵入者一同は希望を見る。
二人は声を揃えて言い放った。
「「さあ、コミュニティに帰って、言いふらせ!」」
「わ、わかった! 明日は頑張ってくれジン坊ちゃん!」
あっという間に侵入者一同は走り去り、ジンは茫然自失になって膝を折った。
なかなか進みません…。どうしたものか。
十六夜と凛は何か気が合うものがあるという感じです。境遇でしょうかねー。
そして、凛は友達を手に入れます。まあ、これでちゃんと人になるかはさておき。