我らこそは天が遣い八咫烏(笑)   作:ナスの森

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乱波さん活躍回


炎は氷を溶かすが常

 息すら押さえ込まれるような濃密な死の空気は、この濃霧による錯覚では決してないとサクラは実感していた。

 湿気と汗が混ざり合い、ジメジメとした水気がまとわりつく肌は、女の子であるサクラにとっては不快以外の何物でもなかった。

 幸い、再不斬以外の周囲の抜け忍たちは自分と一緒にタズナを守ってくれている(かばね)の実力を警戒してそう簡単には仕掛けられないようだった。

 追い忍の格好をしていることからサクラは(かばね)を信用できないでいたが、それでも、この状況に関しては彼女に感謝するしかない。

 少なくとも、今自分とタズナが生きていられるのはこの人のおかげなのだと、認める他なかったのだから。

 それよりも、サクラが今心配なのは――

 

(サスケ君――)

 

 この濃霧に包まれていてはサスケとあの白とかいう再不斬の部下の様子がまるで見えない。他人を心配している場合ではないということはサクラだって分かっている。

 こんな時にナルトがいてくれれば――初めて再不斬と戦ったときのように阿鼻叫喚の連携を以てすればもしくは――

 

(ッ、何を弱気になっているのよっ!)

 

 一瞬だけ浮かび上がった女々しい思考を破棄し、サクラはタズナの護衛に集中する。余分な思考を振り払うように、肌にべた付く髪を後方にバサッと伸ばす。その動作は、一種の自己防衛。無理矢理にでも恐怖を振り払うための気付けだった。

 

(・・・やはり、小娘にはまだ早かったか)

 

 必死に己の身を震わす恐怖を取り払おうとしているサクラを一瞥した(かばね)は仮面の下で目を細めた。血霧の出身である屍は、もうサクラの年の頃には人殺しなど日常茶飯事だった。追い忍の目を盗んで里を抜けてからもそれは変わらず、朧に命を拾われ奈落に入隊してからもこの桃地 乱波の在り方は変わらなかった。

 無論、それをサクラに押しつけようとは屍は思わない。だからといってここで棒立ちをさせては任務の遂行は難しい。

 

(うちはの童も、あのままではなぶり殺しぞよ。・・・・・・あの白とかいう童にその気があればの話ではあるが)

 

 秘術・魔境氷晶により作り出された四方八方の氷の鏡により閉じ込められたサスケを一瞥する。

 ――それにしても、氷遁とはな。雪一族の血継限界をこの目で見る日が来ようとは・・・・・・。

 サクラの方は戦場の空気に触れて得物を構えることすらままならず、サスケの方に至っては相手の術中に嵌まったまま防戦一方だ。

 ・・・・・・その上で、この数の抜け忍に対処しつつ、最終的には再不斬の方も何とかしなければいけない。正直、カカシであれば再不斬の方は大丈夫であろうが、万が一もある。

 

(・・・・・・仕方あるまい。(もも)ちゃんを出せぬのは不服であるが、(かしら)の言う通り、この状況に適任な奈落の忍はわしだけ。ここは一肌脱いでやろうぞ)

 

 指からチャクラ糸を伸ばし、霧に紛れてどこかへと消えていった。

 その瞬間――

 サクラの足下の地面の石が、ボコり、と突き上がり。

 

 その正体――土遁の術で地面の中に潜んでいた抜け忍が刀でサクラを下から串刺しにせんとし――

 

 サクラの体は、跳び上がってその兇刃を回避すると同時――サクラはその抜け忍に一瞥もくれてやることなく、無造作に取り出した苦無の刃を下に向けたまま体重に任せて落下――そのまま。

 

 ずぶり、とナニかを突き刺したような感触。

 

「――え?」

 

 何が起こったのか分からず、サクラは目を点に変える。

 ・・・・・・恐る恐る、下に目を下ろす。

 取り出した覚えもない、自分の手に握られていた苦無が、いつの間にか地面に現れていた抜け忍の喉元に突き刺さっていた。

 

「ほれ、ボサッとするでない」

 

 わなわなと手が震え出すその前に、屍の声によりサクラの意識は現実へ引き戻される。

 

「積み上げた(しかばね)を振り返るのならば後にせよ。己が守るべきものを第一に考えるぞよ」

「は、はい・・・・・・」

 

 抜け忍たちが迫る。

 が、サクラの体がまた動く。

 サクラのイトには関係なく、別のイトがサクラの体を突き動かす。

 (かばね)とサクラが同時に動き、術や手裏剣を迎え撃ち、時にはタズナを狙い接近してきた抜け忍を一太刀のもとに仕留める。

 サクラの苦無が、屍の直刀が、的確に敵の急所を切り裂き、仕留めていく。無駄な動きは一切無く、効率よく敵を仕留めてゆく。

 

(な、なんで・・・・・・)

 

 血に濡れていく己の手、それに対して固まる猶予はない。

 固まることを、サクラの体を動かす別のナニかが許してはくれない。

 

(体が、勝手に・・・・・・)

 

 まるで自らが操り人形にでもなったかのように、サクラは思うように体を動かすことができなかった。

 己の意思とは真反対に、サクラの体は効率よく敵を迎え撃ち、殺す。

 やめて、と叫んでも、サクラの体は止まってはくれない。人を殺した感触は、永遠にサクラの脳裏に刻みつけられることだろう。

 

『おい、なんだあのガキ・・・・・・』

『ただの下忍の小娘ではないのか?』

 

 追い忍の屍だけではなく、まだ年端もゆかない筈のサクラが仲間の命を次々と奪ってゆく惨状を見て、抜け忍たちは動揺の声をあげる。

 ――違う、私じゃ、ない。

 必死に喉を震わせ叫ぼうとするサクラであるが、しかし――

 

「なんじゃ、超つええじゃねえか、嬢ちゃん。この調子で頼む・・・・・・もう少し、もう少しなんじゃ・・・・・・!」

「っ!」

 

 タズナの言葉に、ハっと我に返る。

 ――そうだ、今は、なりふり構ってはいられないんだ。

 初めての再不斬たち率いる抜け忍部隊との戦闘で、自分は何もできなかった。戦闘はサスケやナルトに任せっきりで、自分はただ震えながら傍観することしかできなかった。

 けれど、今の自分は、タズナを守れている。

 どこのなにものが、自分の体を動かしているかなど、この際どうでもいい。

 悪魔だというのならば、それもいいだろう。後でいくらでもしっぺ返しを受けよう。

 見えない糸に体を預ける覚悟を、サクラは決め、抜け忍たちを睨み付けた。

 

 一方、サクラの体を動かしているその悪魔は、そっと仮面の下でほくそ笑む。

 

(中々操りやすい体をしている。この小娘、存外化けるやもしれぬな。他人事だが、将来が楽しみぞよ)

 

 何を隠そう、サクラの体を操っている張本人はこの(かばね)であった。指からチャクラ糸を伸ばし、サクラの体にくっ付け、操り人形のように操っているのだった。

 ――操演・人身冴功。

 元は使役する傀儡を失った砂隠れの忍びが戦場に横たわる死体を傀儡代わりに用いて戦ったことから由来される術。

 会得難易度Aランクの高等忍術であり、(かばね)はこの忍術の達人であった。(かばね)の場合は、操る対象に対してチャクラ糸を通じて幻術をかけ、相手の身体的自由を奪った上で、思うがままに操ることができる。

 (かばね)は謂わば、死体ではなく生者を傀儡として利用することに長けた忍なのだ。その気になれば傀儡にした敵同士で一度に同士討ちにさせる、という芸当も可能である。

 朧がカカシ班の救援に屍を選別した理由はこれだ。

 対象の自由を奪った上で自らの傀儡として操るこの特性は、まだ力量不足の第七班の力量を補うにはうってつけだ。しかも再不斬の霧隠れのおかげで、チャクラ糸が目視されにくい。

 それによって奈落は表向きに力を貸さず、あくまでタズナを護衛しているのは木の葉の忍という体裁を装うことができる。例え奈落の忍であるとバレたとしても、単に抜け忍の始末の任務に居合わせただけという理由で説明もできる。それができる忍として白羽の矢が立ったのが(かばね)であったというわけだ。

 

(・・・・・・さて、問題は、さっきから此方に向かっては来ず、術を仕掛けることもなく、霧の奥で出方をうかがっている下郎共)

 

 木の葉の衆の受けた依頼はこの操演の術で、再不斬の方に関してはカカシが何とかなるだろう。

 

(おそらく紛れ込んだ雲の衆であろうが、炙り出すにはわしとこの小娘だけでは無理ぞよ。もし奴らが動く瞬間があるとすれば――)

 

 ちらりと、サスケと白の方を見やる。

 

(うちは一族の童か雪一族の童か・・・・・・どちらかが倒れ、もう一方が疲弊した絶好のタイミングしかあるまいて。貴重な血継限界が二つも狙えるこのチャンスを奴らが逃す筈がない)

 

 雲の方にとってみれば、どちらも予想だにはしない血継限界持ちの忍に遭遇したことだろう。同時にその貴重な血継限界を二つも同時に手に入れることができる絶好の機会だ。

 

(理想なのは、双方が奴らの狙いに気付き、共闘することだが、あの雪一族の童もうちは一族の童も譲りそうにないな。戦況は雪一族の童に傾いておるが、うちはの童も徐々に慣れてきておる。まだまだ長引きそうじゃ)

 

 再不斬と戦っているであろうカカシのいる方の方角を見やる。

 双方の天賦は互角。勝負はどちらに傾いてもおかしくはない。状況は霧隠れの術を行使する再不斬に傾いているが、そうした相手の油断の隙をつくのもカカシが得意とするところ。あちらも長引くことだろう。

 

(カカシとの盟約もある。とっとと、炙り出してしまおうか)

 

 意を決した(かばね)は、サクラの方に伸ばしていたチャクラ糸を、氷鏡に囲まれているサスケの体の方にも伸ばした。

 サスケに関しては幻術をかける必要もない。サスケ本人が徐々に慣れて行っている、ならばその動きの補助をしてやれば十分だろう。

 

 

     ◇

 

 

 今の白にとって、良かったと思える状況が一つと、悪いといえる状況が一つあった。

 心境的には悪い方から語った方がまだ安心できるので、まずは悪い方から語らせてもらおう。

 

(あの、追い忍の人・・・・・・)

 

 鏡の外であの女の子と共に戦っている追い忍部隊の女性だ。

 白から見る限りでも、相当腕は立つ。

 はたけカカシとの戦いで疲弊した再不斬の首を狩りに来る可能性は十分にある。そうはさせない、その前に自分があの人の秘孔にこの千本を刺してやろう。

 この魔鏡氷晶のスピードからは何者も逃れることはできないのだから。

 

 そして、良いと思える状況、それは――

 

(ここに、あの子がいなくてよかった・・・・・・)

 

 思い出すのは、自分と同じくらいの金髪の少年。

 ここにいないのは、修行の疲れか、それともタズナの家族の方を護衛しているからなのか、それは分からない。

 だが、とにかく幸いだったと白は思った。

 もしここにタズナの護衛にいようものならば、白はあの少年を殺さなければならなかった。

 自分に似ていると思ったあの少年を、自分を救ってくれたという人のため、己の夢のために真っ直ぐに進み続ける少年を、白は殺したくはなかった。

 その誰かに尽くしたい、認められたい、役に立ちたい――その一心で突き進むその姿に、白はあの少年を自分と重ねていた。その尽くしたい誰かが、何処の誰なのかは白には分からないが、できる事ならば生きて、その夢を叶えて欲しかった。

 

(ここに君がいなくてよかった。君なら、きっと夢を叶えられる。君が尽くしたいと思った誰かに、きっと認めてもらえる)

 

 それは自分も同じ。

 白もまた自分の夢のため、ここで止まるわけにはいかない。

 

(そして、夢のためならば、時に他を踏みにじらなければいけない。・・・・・・ごめんなさい、僕はここで君の仲間を殺します。そのことで僕を恨んでもらっても構いません。ですから、君も、決して止まらないでください)

 

 心の中でナルトに詫びる白。

 鏡の中に居座り、白はサスケを見下ろす。

 ・・・・・・訂正しよう、白にとってもう一つ悪い状況があった。

 白は、できることならこの少年も殺したくはなかったのだ。それなのに、この少年は段々と自分の速さに慣れてきたのか、段々と自分の動きに対処できるようになってきている。

 このままでは、この少年――サスケが白にとって脅威の存在になり得ないうちに殺してしまわなければならない。しかし、それは仕方のないこと。

 世界はいつだって、残酷なのだから。

 

「狙った急所を全てギリギリで外していますね、素晴らしい動きです」

「っ!?」

 

 嫌味かよ、とサスケは内心で吐き付ける。

 状況はどう見たって、サスケの方が不利だった。大分“慣れてきた”とはいえ、その前に自分の体力がもつかどうかすら怪しい。

 ・・・・・・それでも、やるしかない。

 サスケもまた白と同様に、ここで倒れるわけにはいかないのだ。

 一族復興と、そして兄であるうちはイタチに復讐するために、ここでは終われないのだ。

 

「君はよく動く・・・・・・けれど、次で止めます」

 

 白は、終わらせる気で動いた。

 白にとって、サスケを倒せばこの橋の上での戦いは終わりではない。タズナを倒せば最終的には終わりであるが、その前にあの追い忍の女性が立ちはだかってこよう。

 

(運動能力、反射神経、状況判断能力・・・・・・君の全ては、もう限界の筈・・・・・・)

 

 見事と言うべきであろう。

 白の秘術を前にこれだけ凌ぎ、かつ白の攻撃が鏡を利用した分身ではなく、鏡の光の反射を利用した光速移動であることを見抜いた。

 しかし、術の種が割れたからといって変わらない。

 

 白はトドメを刺さんと、また光速で別の鏡に移動し、死角からサスケに向かって、飛んだ。いくら白自身の移動スピードが速くなろうと、白の投擲する千本の速さは変わらない。故に今まではギリギリでサスケも急所を外すことができた。

 だが、今度は逃れようが無い。

 白自身のその移動術をもってして接近し、致命傷となる秘孔を千本で刺してトドメを刺す――筈だった。

 

(なっ!?)

 

 しかし、サスケはそれに対して完璧に反応してみせた。

 動揺する白の隙を突き、サスケは間を入れることなく自身の体に刺さっていた千本を引き抜き、逆に白に投げ返した。

 

「くっ!?」

 

 手元の千本で全て弾き返し、白は再び鏡の中に身を潜める。

 

(バカな!? いくら慣れてきたとはいえ、まだ僕の移動スピードを見切ることはできていない筈っ!?)

 

 白の疑問は、正しかった。

 白はサスケの目を見やる。

 

 ・・・・・・何が起こったのか、分からないという感じの目だった。

 

 サスケ自身、反応が遅れたという自覚があった。

 その筈なのに、反応が間に合った。これは明らかにおかしい。

 

((・・・・・・どういうことだ/です?))

 

 同じ疑問を抱く。

 確実に殺せる、と白は思っていた。確実に殺されると、サスケは思っていた。

 

(・・・・・・ならば、もう一度!)

 

 サスケの死角たる鏡に移動し、白はまた千本で刺しかかる。

 しかし、反応される。

 如何にサスケ自身が慣れてきていようと、この成長スピードは明らかにおかしい、と白は焦る。

 このままではまずい、と白は思い始める。

 繰り返せばその内、サスケ自身が白の動きに慣れていってしまう。

 そうなる前に、仕留めたいのに、できない。

 ――仕留めきれない、一体なぜ・・・・・・?

 白の疑問が頭の中で巡る内、一端、白は鏡の中で動きを止めた。

 あの少年の変化を、見るために。

 

 ギロリ、と赤い双眸が白を睨み付ける。

 その目に、白は見覚えがあった。

 赤い瞳に、黒い勾玉がうずまく模様。

 それは、はたけカカシの左目と同じものだった。

 

(まさか、写輪眼・・・・・・!!?)

 

 思いがけない衝撃が、身体中を迸る。

 

「・・・・・・そうか、君も血継限界の血を・・・・・・」

 

 得心がいったように、白は呟く。

 ・・・・・・だが、やはりそれでもおかしいと白は思う。

 確かに、戦いの中で徐々に才能を目覚めさせているサスケには驚かされる。

 

(それでも、彼はまだ僕のスピードを見切れてはいない。なのに、何故完全に反応される?)

 

 白はサスケを観察する。

 何故反応できる? 決して写輪眼だけではない筈だ。

 

(なにかある筈、何か、なに、か・・・・・・)

 

 その時だった、サスケの背後を映している鏡に、白は妙な違和感を感じた。

 

(あれは・・・・・・)

 

 白の魔鏡氷晶は、鏡の反射を利用した光速移動術だ。この濃霧の中では光の強度は限りなく弱まってしまうが、それでも僅かでも鏡同士で光が反射するのならば白はそこへ移動できる。

 そして、その氷の鏡は白の氷遁チャクラによって練られ、生成されたものだ。

 その鏡が、僅かに()()()()()()()映していた。

 霧に紛れて、僅かに見える、青い半透明に光る糸が、サスケの後ろから何本もくっついていた。

 四肢、頭、その他――サスケの背後の箇所の所々にそれはくっ付いていたのだった。

 

(あれは・・・・・・チャクラ糸っ!? そうか、何者かがあのチャクラ糸を通じてあの少年を操っているっ! 僕の動きに完全に反応できていたのはこのため、じゃあ誰が・・・・・・っ!!)

 

 ハっとなって、白はその犯人がいると思しき方向を向く。

 そこにいたのは、サクラと共に抜け忍たちを迎え撃っている追い忍の女性。

 その追い忍の指先から、微かに、青い半透明に光る糸状のナニカが伸びているのが、目に入った。

 その糸の伸びる先は、霧のおかげで目に見えない。

 だが、同じような糸がサスケと、サクラの背後にくっ付いていたのを、白は見逃さなかった。

 

(なんて人だっ! この少年とあの女の子を的確に操って抜け忍たちや僕を対処しつつ、あの人自身もまた体を使って戦っているっ・・・・・・!!!)

 

 あのサクラという少女はともかく、サスケに関してはおそらく補助程度にしか動かしてはいないだろう。おそらくサスケの反応が間に合わない部分を、糸を動かして反応させ、そしてサスケの写輪眼が完全に白を見切るまで待つ。

 もしサスケの写輪眼が白の目を完全に追い切ることができるようになれば、チャクラ糸による補助も必要なくなり、あの追い忍の女性の負担は減り、戦況はさらにこちら側が不利になる。

 そうなれば、再不斬も――。

 

(あの人は、追い忍じゃない・・・・・・出身はともかく、霧隠れの忍びとして過ごしてきたのならば、あのような秘術は身につかない・・・・・・!!)

 

 つまり、まったく別勢力の人間ということになる。

 一体何処の人間だ、と白は疑念の目を追い忍の女性に向ける。

 仮に出身地が霧隠れだとしよう・・・・・・あのような術を身につけるためには、少なくとも術の本場である砂隠れの里で秘術を学ぶことが必須であろう。

 だが、同時にそれは寝返りを意味する。霧隠れがそれを許す筈も無い・・・・・・となれば、あの女性も同じく抜け忍。白や再不斬と同じように、本来ならば追い忍に追われる立場の人間の筈が。

 ・・・・・・それが追い忍に扮して、カカシたち木の葉と組む訳・・・・・・。

 

(霧隠れ・・・・・・抜け忍・・・・・・木の葉・・・・・・火の国・・・・・・まさ、か・・・・・・!!?)

 

 その、まさかだとしたら。

 もし彼らが、既にこの波の国の地に入り込んでいるのだとしたら・・・・・・。

 ましてやアレほどの使い手が入り込んでいるのならば・・・・・・むしろ、追い忍よりも質が悪いでは無いか。

 

「っ、早く再不斬さんに伝えないと・・・・・・!!」

 

 もう白と再不斬がこの国に留まる理由はない。

 ガトーの庇護をなくすよりも、ガトーの元に留まっていた方が自分達にとってのリスクになる。

 それを伝えようと、鏡の中から抜け出し、戦っている再不斬の方へ向かおうとする白であったが――

 

「おせーよ」

 

 嘲笑うかのような、サスケの声。

 その声と共に振り向き、白の視界には自身が抜け出た鏡が目に入った。

 

 その鏡に映っていた自分の体の背面には――サスケやサクラと同じように、数本のチャクラ糸がくっついていたのだった。

 そのチャクラ糸が伸びる先は、あの女性ではなく、サスケ。

 

(まさか・・・・・・あの人、僕が鏡の間を移動している所を・・・・・・!!)

 

 追い忍の女性――(かばね)は、鏡と鏡の間を光速移動する白が、自身からサスケに伸びているチャクラ糸が接触したとき、その瞬間に繋ぎ変えた。チャクラ糸の繋がりを、自身とサスケから、サスケと白に繋ぎ直したのだ。

 

 今の白とサスケの間には、霧で見えにくいチャクラ糸で繋がっているのだ。

 

 そして、写輪眼でソレに気付いたサスケが、背を向ける白に向けて、印を組んだ。

 どこの誰がこんな真似をしてくれたかなど、サスケには分からなかった。

 余計なお世話だと思った。

 

 しかし、ソレを利用しない手もない。

 

「火遁――」

 

 大きく息を吸い込み――残るありったけのチャクラを口の中へためこむ。

 そして、それは放たれた。

 

「――龍火の術!!」

 

 放たれた炎は、サスケと白の間に張り巡らされたチャクラ糸を伝い、それが白へと向かって流れていく。

 いくら高速で移動しようとも、チャクラ糸による繋がりが途切れない以上、その炎はどこまでも白を追い続ける。

 

「しま・・・・・・」

 

 己の不手際を悟った時には、既に遅く。

 白は、己に向かって流れ来る豪火の線を、無防備を晒した状態で受けてしまった。

 

「アアァアアアアァァっ!!」

 

 まるで己の体を侵食するように流れ来る炎。

 その熱に、白は晒される。

 その衝撃により、追い忍の仮面が剥がされた。

 




火遁は、ちゃんと当たるんやで・・・・・・?

Q:朧さんの出番は?
A:次話で

天照院奈落のどんなところが好き?

  • 錫杖を使っているところ
  • 弓を使っているところ
  • 装束が好み
  • 単純に朧が好きなだけ
  • 全部

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