【未完】問題児たちが世界の引き金を握っているそうですよ?   作:銀炭

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戦闘描写だよー、でも長く書けない不思議じゃない。



12話 春日部耀

「ふッ!!」

 

スコーピオン一閃。弱点の目を切り裂かれたモールモッドは砂塵を上げながら地に伏した。

直後、周囲にいたトリオン兵も次々と力なく倒れていく。一撃で目をやられ、なにもできずに機能停止。

 

「・・・これで全部かな」

 

担当区域のトリオン兵を殲滅した少女──────春日部耀は、小さく息を吐いた。

一区域を掃討するとなるとそれなりの数になるのだが、直ぐ近くに理不尽そのものがいるため区域程度なら問題なくなってしまった。人間卒業も近いかもしれない。

 

『春日部さん、聞こえるかしら?』

 

そこに突如通信、相手は耀の親友の一人、久遠飛鳥。

十六夜から大規模侵攻のことを聴かされていた彼女はコネを使って学校を休み、他のオペレーターよりも早くオペレートを始めていた。

 

「うん、大丈夫。彩鳥はどこ?」

 

『本部の屋上にいるわ、スナイパーに混じって狙撃中よ』

 

「わかった、本部にいるなら安心かな」

 

最近逆廻隊に入隊したばかりの少女の安否も確認、次の区域に向かう。

 

「───ッ!?」

 

その時、目の前に小さなゲートが開いた。

出てきたのはトリオン兵ではなく、黒いコートに身を包んだ老人。しかし、老人とは思えないほどの威圧感を漂わせている。

移動を止め、直ぐ様臨戦態勢に入る。スコーピオンを構え、その老人を鋭く見据える。

 

「・・・・・・ふむ、隙がない。下手に動けば此方が足を掬われそうだ」

 

口を開いた老人は、元から細い目を更に細めて耀を観察する。本の少しの殺気を込め、ジロリと観る。

 

「ですがこのままでは埒が明かない。こちらも任務で此処に来たのです」

 

 

 

膨れ上がった老人の殺気を感じとり、耀は飛び退いた。

刹那、彗星の如き疾さで耀のいた場所をブレードが通過する。

ブレードは周囲の瓦礫とトリオン兵の残骸を真っ二つに両断し、消滅した。

不意討ちを回避された老人はパチパチと拍手を贈る。

 

「素晴らしい反応速度と直感だ、初撃をこうもあっさり避けられるとは思いませんでした」

 

心底からの賞賛のようだ。口角を小さく吊り上げを、薄く開かれた瞳には歓喜が見える。

 

「貴女のように若くして戦える者がいるとは、長生きはしてみるものですね」

 

まるで孫の成長を喜ぶ祖父のような物言い。

だがしかし、十六夜の様に獰猛に、どこか気品のある笑みを浮かべている。

耀は警戒を強めた、あの笑みを浮かべる者の大半は異常なほどの戦闘能力を持つ。

 

「おっと、自己紹介がまだでした。私の名はヴィザ、国宝の使い手であり──────」

 

 

 

──────貴女を始末する者です。

 

 

 

アフトクラトル最強の剣士、ヴィザが耀の前に姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アステ・・・ッ!」

 

様子見のアステロイドを放とうとした瞬間、ブレードが耀の掌に浮かぶトリオンキューブを両断する。

間を置かず一閃、二閃。スコーピオンで軌道を逸らしながら耀は回避する。

 

「ふむ、これも防ぎますか」

 

愉しそうに、殺気を溢れさせ、ブレードを走らせる。

次から次へと繰り出される攻撃。それを殺気を感じ取り防いでいく。

 

「はッ!!」

 

「おっと」

 

一瞬の隙を突いてスコーピオンを振るう。しかし、その一撃はブレードに刃を砕かれ失敗に終わる。

 

「バイパー」

 

トリオンキューブを10×10分割し、バイパーをヴィザの周りを取り囲むように放つ。

《鳥籠》と呼ばれる技術で、相手の退路を塞ぎながら削る戦法だ。

 

「甘いですぞ」

 

それでもヴィザは冷静に対処し、軌道上にバイパー重なった時を狙ってブレードを放つ。幾つかを纏めて無力化。

 

「・・・強い」

 

目の前にいる老剣士に、耀は気圧されていた。

理由は単純、踏み越えてきた場数の違いだ。

アフトクラトルの国宝を持つ者として、アフトクラトル最強の剣士として、若者の成長を見守る老人として。最後はあまり関係ないだろうが、ヴィザには乗り越えてきた戦場があった。

しかし耀にはそんな血生臭い経験など一切ない、あるのは理不尽な模擬線とトリオン兵殲滅くらい。

技能では決して劣ってなどいない。ならば差を広げているものは何か。

 

「っ!」

 

やはり経験だった。

スコーピオンがメインの耀には、ヴィザの彗星のようなブレードを受けることなど出来ない。受けたが最後、真っ二つにされてベッド行きだろう。

更にヴィザには間合いがある。耀も射手のトリガーを幾つかセットしてあるのだが、目の前の老剣士を相手に頭を使う射手のトリガーは危険度が高い。

 

「(あのブレードの射程がまだ掴めない、それに速すぎる)」

 

円形の軌道を走るように飛来するブレード、強度も高く、スコーピオンをぶつけてもあっさり砕かれてしまった。

 

「ッ!!」

 

ブレードが耀の鼻先を掠めた。

思考を中断し、グラスホッパーで距離を取る。

 

「ホッホッホ、一瞬の油断が命取りですぞ。戦場に身を置くのであればよく理解しているのでは?」

 

「言われなくてもわかってる」

 

背中に嫌な汗が流れる。出せる手のほとんどを使ってもヴィザには余裕がある、対して耀はヴィザとの戦闘で集中力と精神を急速に摩耗していた。

普段戦っているトリオン兵とは違う、雲泥の差というレベルだ。理不尽と模擬線をしていたとしてもここまで消耗することはない。

 

「(逃げてばかりじゃ勝てない、それにここには私しかいない)」

 

スコーピオンを握る手に力が入る。

そして、跳ぶ。

グラスホッパーを出現させ、ヴィザへ直進。

ヴィザが軌道を引き、ブレードを走らせたのを確認した直後。

 

「グラスホッパー」

 

耀は追加のグラスホッパーで上に飛び上がる。

さらに飛び上がった先でグラスホッパー。これを何度も繰り返し、ヴィザに狙いを絞らせない。

《ピンボール》という、機動力を重視するアタッカーが使う戦術だ。グラスホッパーを使うことで小刻みに動き、撹乱する。

 

「はっ!!」

 

「ぬぅ!?」

 

ヴィザの全方位からスコーピオンでヒット&アウェイを繰り返す。軌道を引かせず、一方的に攻撃を仕掛けていく。

形勢は逆転、耀が優位に立った。

 

「(これだけ動いていれば───)」

 

「勝てる、と思っているようで」

 

「───っあ!?」

 

優位立った、はずだった。

耀が飛び込んだ場所に、ヴィザの設置したブレードが壁のように並んでいた。

激突し、勢いが殺される。

急いで体勢を立て直し、グラスホッパーで緊急離脱。

 

「高速で動くのは戦場での基本の一つ。以前似たような動きをする者と打ち合ったこともありました、貴女と同等の速さで」

 

コツコツと、ヴィザは殺気を強めながら近づいてくる。

 

「しかし、貴女の動きはその者よりも読みやすい」

 

周囲にブレードを走らせ、邪魔なものを全て切り捨てる。

 

「貴女では私を倒すには到らない」

 

 

 

「貴女は、ここで退場です」

 

 

 

彗星が、駆けた。

 

 

 

 

 

 




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