【未完】問題児たちが世界の引き金を握っているそうですよ? 作:銀炭
冗談はさて置き、投稿まで数ヶ月も空いて本当にすいませんでした。
言い訳をすると、新しい環境慣れるまで時間が掛かったのと、スランプ気味だったってのがあります。
とまあ前置きはここまでにして、待っていてくれた方がいらっしゃるかどうかはわかりませんが、難産の今回、どうぞ!
※次に繋げるために今回は短めです。
あと、幾らか他作品ネタが含まれています
高速で駆ける彗星は、下から伸びた光の刃に押されて大きく軌道を逸れた。
驚きに目を見開く老人に、耀はアステロイドをばら蒔くようにして発射。時間を稼ぎ、その場を離脱。
(・・・なんとか決まった。モールクロー)
ヴィザの一撃を押し退けたのは、咄嗟に地中へ伸ばしたスコーピオン。
《モールクロー》と呼ばれるそれは、長さを自由自在に変えられるスコーピオンならではの攻撃方法。地中へと伸ばしたスコーピオンで下から対象を攻撃する。
避けられないと本能的に悟った耀は、これまた本能的に一点集中のモールクローを《オルガノン》のブレードに勢い良く突き出すことで軌道を逸らしたのだ。
刀身の強度が他よりも低いスコーピオンでは真正面から受けることは出来ない。というかオルガノンが相手ではレイガストのシールドでも受けられるかどうか分からない。
なら強引に押し退ければいいんじゃね?
以前十六夜と模擬戦をしたときに彼から言われた言葉である。
受けることは出来なくても、逸らすことならスコーピオンでも出来る。それを妖怪餅食い馬鹿で試していた耀は条件反射で繰り出した。
歴戦の猛者であるヴィザでも、この奇策は予想外だったようで、少しとはいえ隙が出来た。その隙を突いてもアステロイドは当たらなかったのは、経験と鍛練の賜物だろう。
一先ず距離を取った耀。しかし一時の危機を脱しただけで、ほとんど首の皮一枚で繋がってるような状態。トリオンも精神もゴリゴリ削られている。後で十六夜から補給しようと密かに決意。闘志が復活。何とも単純な娘である。
一方、ヴィザは割りと困っていた。絶対の一撃を防がれた上、何故か再び闘志を燃やす目の前の少女。
今までもかなり手強い方だったのだが、これでもっと面倒になった。
「あの場面で切れる札があるとは思ってもみませんでした。悉く私の予想を超えてきますね、貴女は」
「お爺さんも。せめて一発くらいは当たって欲しかった」
「ホッホッホ。そう当たってしまっては《オルガノン》が泣いてしまう。あの程度避けられなければ」
愉快に笑っているヴィザを前にして耀は懸命に策を練る。
ピンボールは破られ、モールクローも恐らく通じない。一度見た技に掛かるほど優しい相手ではないのだ。
しかしそれでも諦めるという選択肢は耀にはない。
「・・・お爺さんは確かに強い。ボーダーでもまともに戦える人なんて、片手の指で足りるくらいしかいない」
確かに相手は強い。黒トリガーも、その使い手も。
それがどうした?
十六夜の攻撃はもっと速かった。十六夜の一撃はもっと重かった。十六夜の射程はもっと長かった。
攻撃、防御、射程。どれを取ってもヴィザでは十六夜に届かない。
耀の目指すのは、彼と同じ領域。彼と肩を並べ、戦場に立ち、唯一無二のパートナーとして、共に戦う。人でありながら人を超える、その世界。
「けど、格上だからって負けるわけにはいかない」
ピンボールが通用しない。アタッカー相手ならよくある話だ。ならば遠距離から嬲り殺すか。それも通用しない。アタッカーならよくある話だ(二回目)。
全身に出来た切り傷。そこからは、少しずつだがトリオンが漏れ出している。防いでも防いでも増えるその傷の影響で、さらなる耐久戦に持ち込んだとしても、底をつくのは確定的に明らか。
ならば速攻で決着をつけるしかない。
しかし耀の切れるカードには短期決着を望めるものがない。いや、厳密に言えば一つだけあるのだが、耀はそれを切れるレベルではないと思っていた。
(何度も、何度も何度も練習してきた。でも、一度もまともに成功したことはない)
十六夜と二人秘密の特訓を繰り返し、いざという時のために育てていた。しかし耀の努力は虚しく、起動することはなかった。この状況で失敗すれば、自分だけではなく他の隊員や基地にも被害が出る危険性がある。
(・・・でも、この状況をなんとかするには、それしかない)
(──────私が、ここでお爺さんを倒す)
それは、春日部耀の人生で最大の決断だった。
リスクは承知の上で、自分が切れる最後のカードを切る。それこそが、最良の未来になると信じて。
一方、ヴィザも耀の変化を悟り、そしてその目を見て驚いていた。
───あれは、覚悟している目だ。すでに決断をすませて、それに賭けている目だった。
(あの目は、命を賭けている目ではない。死を覚悟している目でもない。───全てを覚悟し、目の前の障害を乗り越える目だ)
トリオン体を解除し顔を上げた耀を認識すると同時にそう思い、すぐに行動に移す。オルガノンを展開し、耀を全方向から包み込むように軌道を描いた。
そして、全力の一撃を放った。
胸元のペンダントを握り締め、高速で接近する彗星の如き刃を見据える。
目の前の壁を乗り越えるため、仲間の未来を守るため。
そして、弱い自分を打ち砕くため。
「
起動の言葉を発し、その応えを待つ。しかし、これもまた起動しなかった。
それでも、春日部耀は諦めない。
「──────目覚めて、生命の目録。
ここには、父さんと、十六夜と───
私がいるッ‼︎」
その瞬間、辺り一帯に暴風が吹き荒れた。