【未完】問題児たちが世界の引き金を握っているそうですよ? 作:銀炭
「行くぞ、菊地原、歌川」
「「了解」」
想定外の乱入により始まった遠征部隊vs玉狛防衛組の戦闘。迅と太刀川、嵐山隊と三輪隊+αは既に交戦中。
十六夜を足止めすることになった風間隊は全員がカメレオンを起動させ姿を隠す。
『俺がスコーピオンで背後から攻撃する。菊地原は同時に正面から、歌川は隠れて隙をつけ』
『それでも効くかわかんないんだからあの人キツイんだよね』
『今気にしてる場合じゃないだろ。足止めでいいんですよね?』
『ああ、太刀川が迅を落とせばそこから援護に回る』
内部通信で作戦を練りながら移動する。十六夜は未だに動かない。二宮スタイル(ポケイン)で欠伸してるぞあいつ。
「・・・緊張感無さすぎ、舐めてんの?」
イラッとしながら小声で文句を言う菊地原。
「舐めてなんかねぇよ」
「!?」
直後、十六夜の拳が目の前まで迫る。カメレオンを解除し、グラスホッパーで後ろに飛び退いた。
「お前程じゃなくても聞こえるんだぜ?」
「・・・チッ、相変わらず面倒だね。でも」
十六夜の背後にスコーピオンを構えた風間が現れる。
「周りに気をつけたほうがいいよ」
全力で、振るう。
相手の首を撥ね飛ばす鋭利な刃が、十六夜の首を狙う。
「オラァッ!!」
しかし、その刃が当たる前に十六夜が風間のスコーピオンを持つ手を回し蹴りで吹き飛ばす。普通の隊員だったら、蹴り程度ではほんのちょっと隙が出来る程度の威力しかないのだが、
「ッ!!」
十六夜の蹴りは違う。風間の手を砕き、消し飛ばした。その上、風間も横に吹き飛ばされる。
トリオン体になれば生身の身体能力が数倍まで膨れ上がるのだが、この効果は制約がない。十六夜のように、ベースとなる生身の時点で星を砕ける力を持っていれば打撃の威力はただの一撃ではなくなる。星を砕く力が数倍になっているのだ、手加減に手加減を重ねてもまだ足りない。
「遅いな、俺には止まってみえるぜ」
余裕綽々といった風に言う十六夜に、風間は冷や汗を流す。存在自体がチートなあの問題児を相手にするのは遠征部隊でも厳しい。策を弄しても善戦がやっと、考えもなしに突っ込めば近づいた瞬間にベッド送りである。
「・・・・・・打撃はやめるか。万が一地面に叩きつけたらそれこそ大問題だな」
次の一手は巨大なトリオンキューブ。それを100×100分割する。
「合計10000発のアステロイドだ。避けられるか?
「え、俺!?」
ドドドドドッ、とカメレオンで隠れていた歌川に飛来するアステロイド。その夥しい量に真っ青になりながら、歌川はペイルアウト。
『いやー、相変わらず容赦ないね十六夜』
『全くだ、こっちからもあのトリオンキューブが見えたぞ』
『こっちは正当防衛を主張出来るんだ、遠慮なくやってやればいいと思うけどな』
内部通信で会話する十六夜、嵐山、迅。アステロイドが豪雨のように歌川へ降り注ぐ光景は例え敵であっても同情したくなる。でもメテオラの雨じゃない分優しいのかもしれない。
『前太刀川とやったときはメテオラの雨で殺った。あいつだったらアステロイドくらい防げそうだったからなぁ』
前言撤回、メテオラは相手による。
「さあて、どうするんだ?歌川は落ちて、あんたは片腕がない。唯一無傷の菊地原も、俺をやるにはまだまだ──────」
唐突に喋るのをやめて腕を振る。何かをつかみ取ったらしく、拳が握られていた。
「──────物騒だなおい、人が喋ってる時は邪魔しないって習わなかったのか?当真」
開いた手には何も残っていなかったが、十六夜は間違いなく、当真の撃った弾丸をつかみ取っていた。トリオンで作られているから何も残っていないだけのこと。
「お返しだ、今ので居場所はわかった」
手頃な瓦礫を一つ手に取り2,3回ほど上に投げ、
「よっと!」
軽く投げた。ただそれだけで、
「チッ、結局何もできずに終わりかよ・・・」
狙撃して場所が割れ、お返しに食らったのは弾丸ではなくなんの変哲もない瓦礫。スナイパーの尊厳が崩れそうだ。
─────────────
『嵐山さん、十六夜君の狙撃で当真さんが落ちました』
「相変わらず彼のやることは滅茶苦茶だな」
苦笑いしながら言う嵐山に、フンっと鼻を鳴らす木虎。
「確かに、一人落したのは凄いですけど。それと引き換えに民家を一つ壊すなんて」
「まあまあ、逆廻先輩だって被害が出ないように戦ってるんだから」
『にしても狙撃手に瓦礫で反撃って・・・・・・当真さん、今頃ベッドの上で灰になってる気が』
「あ、当真さんってえ!?灰になってる!?」
「・・・・・・狙撃手が・・・瓦礫で・・・」
当真勇、重傷。
「・・・・・・つまんねぇな」
ポツリと、十六夜が呟いた。その眼に映るのはボロボロの風間。菊地原は既に本部に強制送還され、唯一残った風間も傷が増えるだけ。トリオンが流出し続けた結果、カメレオンを使うことも出来ない。
敗北は確定していた。
「あんた、
「・・・なに?」
そんな中発されたのは侮辱の言葉。いつも無表情の風間でも、眉がピクリと動く。
「だってそうだろ?ランク戦でやってる時のあんたはもっと強かった。カメレオンを使いこなして、俺の後ろから一撃入れるくらいは普通に出来たはずだ」
十六夜の目は語っている。
期待はずれだ、と──────
「もう少し楽しませてくれると思ってたんだけどなぁ。・・・やめだ」
内部通信をつなげ、迅と嵐山の回線を呼び出す。
『迅、嵐山、俺帰るわ』
『え?』
『おいこらちょっと待て十六夜。あそこまで好き放題やっといて今帰るってどういうつもりだこら』
『お前こそ目的忘れて戦ってるじゃねぇか。あとほら、俺用事あるから。資料とかやらねぇと』
『今日は全部終わったって言ってただろ!?』
『うるせえ。嵐山、後頼むわ』
ブツッ、と通信を切る。トリオン体を解除してさっさと帰路に着く。
「ああそうだ、風間さん。今度本気のランク戦やるぞ、命令で戦ってるあんたは面白くない」
思い出したかのように首だけ振り返り、勝ってに予定を作る。
「・・・・・・」
唖然としている風間にヒラヒラと手を振りながら、問題児は金糸雀の家に帰って行った。
「・・・・・・太刀川」
「ん?どったの風間さん」
「少しランク戦に付き合え、あの馬鹿を負かさなければならん」
遠征部隊撤退後、どこか燃えている風間と若干青くなっている太刀川の姿があったそうな。
感想待ってます!