才能って何だろう。
ふと、そんなことを考えてしまう。
才能ってヤツは凡人と天才を分ける壁のようなものだと考えていた時期があった。
けど、それは勘違いだってことを思い知らされた。
才能ってヤツは大き過ぎる力だってことを知った。
輪廻の枝。
そう呼ばれるモノが前世の才能を呼び起こす。
そんな説明を聞いたとき俺は一体どんな表情をしていただろうか。
呆れていた、かもしれない。少なくとも真面目に聞いていなかったような気がする。
いや、そうだ思い出した。確か笑っていたのだ。
嘲笑していたのだ。
馬鹿め、と。
「そんな戯言を言うために態々こんなところまで来たのか?そいつはご苦労。 話が終わったなら帰ってくれないか『ノイマン』ちゃん」
『……戯言かどうか、君が理解できていないとは思わないが』
それと、私は君より年上だ。ちゃん付けはよせ。
この車椅子の少女、自称ノイマンはかの「ジョン=フォン=ノイマン」の才能を持つと騙る不届きな少女である。
さらにこんなミニマムなサイズで俺よりも年が上だと嘯く。
狼少年ならぬ狼少女だ。
「前世の才能とか、もうどうでもいいんだよ。 コレが欲しいならあげるから、もう帰ってくれるかな」
布に包んだアーティスティックなナイフを少女に抛る。
『……君は、その才能が惜しくはないのか?』
「役に立たない才能なんて邪魔なだけだよ。 そんなもの要らない。 ……もう、必要ない」
『そうか……』
赤い、紅い火の色。
炎を背にして立つ人影。
横たわる人間だったものに何度も呼びかける自分。
熱さと煙で声が枯れる。
胸に手を当てても心音は感じない。
「死んでるでしょ、その人。 何時まで無駄なことしてるの?」
いやだいやだいやだいやだいやだいやだ。
死んじゃダメだ。
死ぬな死ぬな死ぬな。
「うっざいなぁ。 いい加減にしなよ」
肩を蹴られて仰け反る。
「ほら、退いた退いた」
更に腹にけりを入れられて転がされる。
「これで少しは諦めつーくーかーなっと」
火柱が上がる。
火元は自分が、抱えていた、姉が
気がつくとナイフに手が伸びていた。
あいつが、アイツが、アイツガ。
殺してやる。
目の前の屑がやったようにやれば、自分もアイツを殺せないか。
頭が熱い。
体が熱い。
喉が痛い。声を張り上げ叫んでいるのだから当然だ。
どうなってもいいからアイツを、アイツだけは殺してやる。
その衝動に身を任せ、俺は自分の首を切った。
「そうそう、それでいーんだよ」
「これでもまだ踏ん切りがつかない様だったら、どうしようかと思ったよ」
「どうしようかっていうか、まぁ、殺すんだけど」
「もーいーかい?もーいーよね?」
「じゃあ、殺ろうか」
死ね、死ね、死んでしまえ
殺す、殺す、殺してやる
死ね殺す死ね殺す死ね殺す死ね死ね死ね死ね死ね
気がついたときには周りには何もなかった。
家も、火も、人も。
ただ瓦礫だけが散らばっていた。
寝起きのようにボンヤリとする頭を振る。
あぁ、そうかこれ夢じゃないんだ。
偉人紹介
ジョン=フォン=ノイマン
人類最高峰の数学者、現代のコンピューターの生みの親。