――様といっしょ   作:御供のキツネ

11 / 60
オリ主の忍術はとてもファンタジー。


ソウリンさまといっしょ

 大友ソウリン。キリシタン大名。信心深く清楚でお淑やかな性格。という評価の乙女武将であるが武器を持つと性格が変わる、なんともクセの強い人物である。戦国乙女でクセの弱い人間はそういなかったと思うが。

 そんな大友様の領地へと踏み入れた俺を迎えたのは南蛮からやってきた多くの船と、活気に溢れる町だった。以前から他の町に比べても充分に活気のある場所ではあったが、今はそれ以上だ。

 転移の術を連続で使用することとなったが、朝に京を出て太陽が真上に来る頃には到着することが出来た。これなら戻るのは夜になるか、明日の朝になりそうだ。

 二条御所を出立する際に見送りに来たヨシテル様と義昭様、そしてミツヒデ様。本来はそんな主要人物が見送りに来るということはないのだが……ヨシテル様とミツヒデ様は明らかにチョコレート目当てでの見送りだ。顔に書いてあった、ように見えた。

 大友様への書状としょくらあとの為の金子を受け取り、ヨシテル様が口を開いたが……楽しみにしていますからね!と言うことだった。その時の表情はポンコツ感マシマシだった。ミツヒデ様は同じくポンコツ化していたのでその様子に気づいてはいないようで、そんな二人を見て義昭様は苦笑を漏らしていた。

 こういった場合は子供の義昭様がチョコレートを楽しみにし、大人であるヨシテル様とミツヒデ様が微笑ましく見守る。というのが普通ではないだろうか。ポンコツ主従とはなんとも言えない気分になったものだ。

 そんなことを思い出しながら町を歩く。別段急いで帰る必要もない。むしろ急いで帰ってチョコレート作りというのは癪だ。少しくらい待たせても良いだろう。一応、数日を予定している任務であるから問題はない。

 まぁ、義昭様を待たせることになる。というのは心苦しいので明日には戻るつもりではいる。

 

 そして、暫く歩いていると教会の前で数人の子供たちが集まって遊んでいるのを見つけた。それを横目に、平和なものだと思いながら通りすぎて町の散策を続ける。

 そうしていて気づいたがあちらこちらから子供の楽しそうな声が聞こえてくる。以前の町の様子を思い出すと、活気はあれど子供の声はあまり聞こえていなかったはずだ。乱世の終わり、ということもあるが……大友様の統治によるもの、と考えるべきだろうか。

 大友様はあの見た目のせいもあってか子供たちから良く懐かれるようで、子供目線で物事を見ることも出来るようだった。つまるところ、今この時代は支えている多くの大人たちだけではなく次代の人間である子供たちにとっても馴染み易く生き易い政治が出来るということだ。

 なんて、適当なことを考えながら辿り着いたのはこの町で一番有名な、カステラを売っている店だ。義昭様へのお土産に買わなければならない。義昭様の笑顔と琥珀号の可愛さで今日も頑張れます。

 ついでにヨシテル様の休憩時のお茶請けとしても買って戻ろう。京の和菓子も良いが、たまにはいつもと違うものを食べてみるのも良い気分転換になってくれるはずだ。

 一人で頑張り続けなくても良くなっているとは言え、ヨシテル様は色々考え込んでしまう人だ。こういう息抜きに使えそうなものはあればあるだけ助かる。それに、それを渡したときのヨシテル様の顔は見ていてとても癒される。なんというか、動物に餌付けをしているような気分になるのだ。

 それと、いつも鍛錬を真面目に頑張っているコタロウ様にも買って戻ろうか。いつも報われない方であるし、労いと慰めの意味を込めて。

 そう思い、多めに買って店を出ようとしたところで入ってきた誰かとぶつかりそうになった。危ないと思いスルリと避けるとその誰かは驚いたように此方を見て来た。完全にぶつかると思ったのにそれがなく、平然と避けてみせたせいだろうか。そういえば自分の今の姿は変化の術によって一般人のそれと変わらないものになっているのだった。

 

「え、え?今確かに当たったと……あれ?」

 

 良く見るとそれは大友様だった。戦装束や修道服と言うものは見たことがあったが普段着と言うか、そういうものは初めて見た。失礼なことを思うが、身形の良い子供。という風に見えてしまう。

 

「大友様。酷く困惑しているところ申し訳ありませんが、その様子で入り口に立たれると店側にとっても迷惑かと思いますよ」

 

 言って外に出ると大友様が後ろからついて来ていた。様子を見るとその目はどこか胡乱なものを見る目になっていた。

 見た目は一般人で、動きが一般人のそれとは違う。そういう手合は大抵忍であることが多い。本当に警戒心の強い忍であれば避けることもなく完全に一般人として振舞うのだが、別に敵対している相手でもないので普通に動いてしまったのが悪かったようだ。

 そして今の大友様からすれば、所属不明の忍が領内にいる。そしてそれが自分の前にいる。そうともなれば当然か。

 変化の術を解除する為に人目を避けて少し細い路地に入り進むと背中に何かを突きつけられている気配がした。路地裏で弩・佛狼機砲を使うことはないだろうからきっとランスだ。

 

「……何処の忍なのか、聞かせてもらうぞ」

 

 完全に敵対者に対する態度だ。まぁ、別に構わないのだが。

 

「ええ、わかりました。術を解きますので少々お待ちを」

 

 言ってから一拍置いて術を解除すると、大友様は驚いたように目を見開いた。

 

「ゆ、結城!?いや、でも確かにさっきは別人だったはず!」

 

 可笑しなことを言う大友様だ。忍にとっては変化の術など基本中の基本。忍であれば誰でも出来るはず。それとも大友様の忍はこういう術は使わないのだろうか。

 

「変化の術によって見た目を変えていただけです。大友様はこういったものを見るのは初めてでしたか?」

 

「変化の術……?え、そういうのって本当にあったんですか!?」

 

 ランスから手を離したのか喋り方が戻っている。乙女武将のやる武器を取り出す。仕舞う。というのはどうやっているのだろうか。俺の素敵忍術と同じ原理なのだろうか。

 というか、本当にあった。というのはどういうことだ。忍なら誰でもやっていることだと思っていたのだが。

 

「大友様の忍は変化の術を使わないのですか……となるとわざわざ変装しているということでしょうか。大変そうですね……」

 

 変装しようとすると小道具や衣装、場合によっては被り物も必要だ。それを準備して変装するなんて手間がかかりそうで俺はやりたくない。変化の術があればそれで充分だ。

 

「待って!もう一回、もう一回見せてください!」

 

 キラキラした目で俺を見ながらそう言ってくる大友様。何か大友様の琴線に触れたのだろうか。

 

「構いませんが……ではお互いに分かる人に化けましょう」

 

 言って大友様の知っている人物に変化する。まぁ、ユウサイ様の姿になっただけなのだが。次に松永様の姿に変わり、ヨシテル様の姿になる。そして術を解除する。

 

「すごいです!忍者って本当にそんなことが出来るんですね!」

 

「すごくはないですよ。忍にとっては基本中の基本。これくらい出来なければ忍にはなれないと師にも言われましたから」

 

 師である里長に言われて頑張ったが……出来るようになれば本当に便利で、これなくして諜報活動は出来ない。他にも基本となる忍術を叩き込まれているがどれもあるといざというときに助かる。厳しい師ではあったが感謝している。

 

「他には何が出来るんですか?私、気になります!」

 

「転移の術とかですね。わざわざ見せるほどのものでもありませんが」

 

「それはいつもやってる消えたり突然現れるあれですか?」

 

「そうです。あれも忍の基本と言われていますね。というか、師に言われました」

 

 師に何度も言われてきた。これが基本だよ、あれが基本だよ、それとこれも覚えようね。と。

 他の忍はどうなのか、と聞いたときにはみんな出来るから頑張らないといけないよ。とのことだった。

 だが最近思うのだが、師の言うことは嘘だったのではないか。転移の術を使う忍は少なく、変化の術を使う忍もあまりいないらしい。もしかしたら、師の言う忍というのは多くの方が知っている忍者とは別物なのではないだろうか。

 今度里に戻って確認してみようか。なんとなく誤魔化される気がするけれども。

 

「忍って、すごいですね……それならこう……手品みたいなのって出来ます?」

 

「手品ですか?忍術なら出来るんですけど……」

 

 言ってから火遁を応用して火で出来た蝶々を掌の上に作り出す。そしてそれを飛ばして水の蝶々、雷の蝶々を飛ばすと、三頭の蝶々がクルクルと大友様を中心に回っている。

 あくまでも見た目を気にして作った蝶々なので殺傷能力は全くない。また今度、そういう忍術でも作ってみようか。見た目の良さと殺傷能力、造形美と機能美を兼ね揃えた忍術。師に妙な名前をつけられそうな気がするのは何故だろう。

 

「綺麗……忍術ってこういうことも出来るんですね……」

 

「でも、これがどうかしたんですか?はっきり言いますけど見た目しか有用な点はありませんよ」

 

「そうですね……私と契約して、忍術で子供たちを喜ばせてあげてください!」

 

「……は?」

 

 どうしたのだろうか、大友様の後ろに白い意味のわからない獣らしき存在が見えた気がした。というか、こんな言い方をされると何故か契約したくないと思ってしまう。契約すると厄介なことが起こる気がするが……いや、それよりも書状を渡さなければならない。しょくらあとを受け取らなければならない。そちらを優先しよう。

 

「あ、いえ、それよりも書状を渡したいのですが……それに受け取る物もありますし、とりあえず本来の任務を優先してもよろしいですか?」

 

「あぁ、わかりました。そっちが終わったらさっき私の言ったことを考えておいてくださいね」

 

 まぁ、忍術を見世物にするのは別に構わないのだが、あの言い方が嫌だ。もう少し別の言い方をしてもらいたいものだ。

 そういえば、大友様はあの店に用事があるのではないのか。なにやら嬉しそうに楽しみだとか言っているが……

 

「…………あぁ!か、カステラ買わなきゃ!!」

 

 言って走り去る大友様。カステラを買いに来たのか。と思うよりも何故あれほど急いでいるのかわからない。そういえば先ほど当たりそうになったのも急いでいたからなのかもしれない。

 気になって後を追うと慌てたようにカステラを買い込んでいる姿を見ることが出来た。俺が買ったのよりも量が多い。あの小さな体でどうやって持って帰るつもりなのだろうか。案の定いざ持ち帰ろうとした段階で固まってしまった。

 

「大友様。どうかしましたか」

 

 どうかしたのは知っているがあえてこう聞いておこう。微妙に愉悦だがヨシテル様の方が個人的には好きだ。カステラやチョコレートを食べ終わった辺りで食べ過ぎると太りますよ。とでも言ってみようか。

 

「えっと……か、買い過ぎちゃったから手伝って欲しいなぁ、なんて……ダメ、でしょうか……?」

 

 胸の前で手を組んで、上目遣いで見てくる大友様。可愛い。のだが……あざとすぎませんか、大友様。

 

「別に構いませんけど、なんでこんなに買ったんですか。自分で全部食べようなんて考えてるなら立花様に怒られますよ」

 

 立花様なら確実に怒る。いや、怒ると言うか呆れると言う方が合っているのかもしれない。そして軽く説教をしてしまう。そんな方だ。

 ……むしろ立花様に言ってみようか。きっとそれも楽しくなるだろうし。

 

「実はですね、お茶請けのカステラをついつい全部食べちゃって……それでこっそり補充しておこうかなぁ、と……」

 

「それにしてはちょっと買い込みすぎでは?一人で持てないような量ですけど」

 

「あの、その……また食べたくなると思うので、ちょっとしたへそくりとして……」

 

 なるほど。ヨシテル様と同じか。

 ヨシテル様も自分で羊羹や饅頭を買って隠し持っているのを知っている。それを夜中に食べようかどうか悩んだり、悩んだ結果食べてしまうのも知っている。もしかすると何処の主君も同じようなものなのだろうか。

 何でも乙女というのは甘味が無ければ生きてはいけない繊細な生き物なのだ。と酔ったヨシテル様が言っていたしあながち間違いではないかもしれない。ただし、室生様を除く。あの方はどちらかというと肉を食わなければならない人のはず。

 

「なるほど。理解しました。では手伝いますので城に戻りましょう。書状はその際に」

 

「ありがとうございます!さぁ、早く戻ってドウセツに気づかれる前に補充しますよ!」

 

 言って意気揚々と歩く大友様だが……立花様は確実に気づいている気がする。むしろ大友様の行動を予測しているだろうから、こっそり食べたのも、補充しようと町に出たのもお見通しだろう。

 そして戻って補充し終わった頃に現れて、何をなさっているのですか、ソウリン様。とか言いそうだ。それを見て微妙に愉悦するだろうな、と内心わくわくしながら大友様の後を付いて歩く。

 

 これから書状を渡して、しょくらあとを受け取る。そして先ほどの契約して忍術云々の話をするとなるともしかすると戻るのは明日の昼過ぎになるかもしれない。それでも良いか。と思いながらこれからに思いを馳せる。

 当初の予定よりも時間が掛かるかもしれないがそれはそれで良しだ。平和な世になったのだから、少しくらいは日々を楽しんで行かなければ。

 

 それと、実はさっきから後ろに立花様がついて来ているが大友様は気づいていないらしい。一瞬確認した際に目が合ったが互いに小さく会釈をしてそのことは黙っておく。

 楽しそうに歩いている大友様がこれからどうなるか、想像するだけで楽しい。

 きっと大友様はこの後で説教をされるが、慰めの意味も込めて忍術を披露するくらいなら別に良いかも知れない。それで子供たちが喜ぶのならそれで良い。

 そう思って歩く背を押すように聞こえる喧騒や笑い声が平和の象徴のようで、少し嬉しかった。




あざとくソウリン様にお願いとかされたい。
そしてあざといなぁ、とか思いながらもわかりました。とか言いたい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。