――様といっしょ   作:御供のキツネ

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オリ主は、序盤から中盤までは万能型でスタメン入りするけれど終盤には専門職によってスタメンを外されるタイプ。ただし特定の相手に対してほぼ無敵になるタイプ。


ドウセツさまといっしょ

 大友様と共に城へと入り、先導されるがままについて歩く。擦れ違う侍女や兵士が怪訝そうな顔をするが仕方ないだろう。見たことも無い人間が大きな風呂敷を持って主君の後ろを歩いているのだ。何者なのだろうか、と思うのと同時に何があったのか、とも思うだろう。

 ただ、大友様がとても上機嫌に歩いているので悪いことがある。とは思われていないらしく、怪訝そうな顔で此方を見た後は首を傾げながらも声をかけては来ない。大友様はそれらを気にした様子は無いが、後ろで立花様が呆れたような顔をしていた。

 そんな状態で暫し歩いておそらくお茶請けの菓子などを入れておく棚の前に着いた。そして大友様が意気揚々と振り返る。

 

「ここです!ドウセツに気づかれる前にささっと補充しちゃいましょう!」

 

 もう気づかれてます。そうとは知らない大友様は俺の降ろした風呂敷からカステラを取り出して棚の中へと納めて行く。どんどん納めて行く。まだまだ納めて行く。これは一体どれだけのカステラを納めているのだろうか。というか、これだけの量を食べたとでも言うのか。

 困惑しながら見守っていると約三分の一を納めてから風呂敷を持ち、此方へと向き直った。

 

「次は私の自室に持って行きます。結城は……そうですね、執務室の方で待っていてください。大丈夫です、すぐに行きますからね」

 

 行ってからウィンクをして足早に歩いていく大友様。それを見送ると後ろから立花様が姿を現した。一応、隠れていたらしい。

 

「ようこそおいでくださいました、結城様」

 

「ヨシテル様の命により、参上致しました。立花様」

 

 お互いに向き直り言葉を交わして一拍置いて同時にため息をつく。

 

「……大友様のあれは、大丈夫なのでしょうか?」

 

「ソウリン様のあれは以前から変わりませんので……」

 

 あれ、とは上機嫌な状態での注意力散漫になることだ。主君があれでは臣下が変わりに警戒する必要もあるだろうし、大変だろう。ヨシテル様も最近は大友様のように注意力散漫になることがあるので気持ちはとても良く分かる。

 ただ、ある意味では自分たちのことを信用しているからこそ、そういった姿を見せている。とも取れるので一様に悪いとは言えない。まぁ、もう少しくらいは周りを気にして欲しい、というのが本音ではあるのだが。

 

「そうですか……ところで、後ほど大友様には説教を?」

 

「当然です。本日は昼食をあまり摂っていなかったのでもしやとは思いましたが……どうやら先にカステラを食べてしまったようですので」

 

「食事の前に茶菓子ですか……なんというか、子供ですね……」

 

「ええ、全く持ってその通りで御座います」

 

 食事の前に茶菓子を食べる。というのは流石にヨシテル様でもしない。当然、義昭様もしない。

 だというのに大友様は……まさか、あの身長の理由はそうやって茶菓子ばかり食べていたからなのではないだろうか……いや、そんなことを立花様が許すとは思えないが。

 

「もしや、あれも以前からですか?」

 

「ええ……注意してから暫くは大丈夫なのですが、ほとぼりが冷めた頃にまた、ということを以前から繰り返しています」

 

「いや、なんですかそれ。本当に子供じゃないですか。大友様あれでお酒飲みますしもう立派な大人ですよね」

 

「言わないでください……それが私の目下の悩みですので……」

 

 やはり立花様は苦労しているらしい。俺は最近ヨシテル様が……という状態だが、立花様は以前からのようでその苦労が偲ばれる。

 だがそれでも、なんだかんだで世話をしてしまうのは立花様の性格が理由なのか、もはや家族同然の二人だからなのか。きっと後者だ。それともう一つ、理由があるのだろう。

 

「苦労は確かにしていますが、それでもソウリン様のことを支えていくのは私の役目。そう考えています。

 これはきっと、結城様もそうなのではありませんか?」

 

 まぁ、確かにそうだ。以前よりも苦労することは多いがヨシテル様を支えると決めたのだ。

 それはきっと立花様と同じ気持ちだろう。

 

「ええ、その通りです。

 前から思っていましたが……どうにも似た者同士だったようですね、俺たちは」

 

 これはずっと思っていた。互いに主君をぞんざいに扱うようで、きっと他の誰よりも大切に思っている。そしてそれを表に出さない。

 立花様はカラクリ人形であるが故に悟られ難く、俺は忍であるが故に悟らせない。それでも互いにそれを理解したのは、そういった自分と共通する項目が多いからだろうか。

 そう言って立花様を見れば普段はあまり変わらない表情に変化があり、微かに笑んでいた。

 

「そのようですね。カラクリ人形である私と同じ、というのは結城様にとってはあまり愉快ではないかもしれませんが……どうしてでしょうか、何故か嬉しいと感じてしまいます」

 

「いえ、大丈夫ですよ。それに俺も存外嬉しいと思います。可笑しな話、ですが」

 

 同族意識と言うか、なんと言うか。同じ考えの、似た状況にいる二人。もしかすると、良き友となれるかもしれない。

 

「そうですか……それは良かった……」

 

 なんとなく、穏やかで悪くない雰囲気になっている。だが、まぁ、大事なことを忘れてはいけない。

 

「ところで……そろそろ大友様が執務室に向かっているのでは?」

 

 そう、本来の任務だ。忍が任務を遂行できず帰るなどあってはならない。それがただのおつかいのような任務だとしても、だ。

 それにしょくらあとを受け取って帰らなければ。俺の作るチョコレートを楽しみにしている義昭様たちがいるのだから。……忍のすることではないと思うのだが。

 最近は何故かおさんどんのようなこともしている。どうしてだろうか。

 

「それもそうですね。では向かいましょうか。

 ……その後で少々お説教もしなければなりませんから」

 

 スッと一瞬剣呑な目になったのはきっと気のせいではないと思う。流石に何度も繰り返していることから今回の説教は長くなる、もしくはきつめになりそうだ。

 俺の目の前で説教をするとはあまり考えられないので、帰った後にするのだろう。その間に説教したいことがあれこれと見つかって長くなりそうだ。

 

 前を歩き始めた立花様について歩く中で、ふと思い付いた、とでもいうように立花様から声をかけられた。

 

「そういえば結城様。その姿は一体?城内に入る前に変えているのは見ましたが……」

 

「これは尾張で見かけたことのある男性の姿です。どうにも任務中に本来の姿を取るのは抵抗がありまして……」

 

 とはいえ、書状を渡す際は元の姿に戻る。流石に町人に化けた状態で書状の遣り取りをするのは非常識すぎるからだ。面識の全く無い相手であれば、存在しない忍の姿に化けることはあるのだが。

 それでも道中は別の誰かになっておくに越したことは無い。乱世では油断すれば狩られる。そういうものだったからだ。今となっては必要のないことなのかもしれない。それでも一々化けてしまうのは習慣なのだろう。

 しかし、そうだ。既に城内であるなら化けておく必要もない。解いてしまっても良いだろう。そう考えて歩きながら術を解く。

 

「……結城様はその姿の方が落ち着きますね。見慣れているせいもあるのでしょうが」

 

「俺もこの姿の方が落ち着きますよ。二条御所では変化は使いませんからね」

 

「使う方がどうかと思います。ヨシテル様相手に姿を偽る必要はないでしょう?」

 

 確かに必要はない。とはいえ任務帰りについつい術を解き忘れて驚かせてしまう。というのはやってしまったことがある。そういえば何者だ、と問われて術を解いた際の反応がソウリン様と同じだったような気がする。

 俺と立花様が似た者同士であるように、主君であるヨシテル様とソウリン様も似た者同士なのだろうか。

 

「しかし……結城様は不思議な方ですね。大友軍の忍はそういったことは出来ないのですが……」

 

「……最近、自分と他の忍の違いについて少し思うことがあります。どうにも師に騙されて普通の忍とは違う系統の術ばかり覚えているようでして……」

 

「確かに結城様の忍術は見たことのないものばかりですね。

 そういえば、カシン居士を相手にした際には呪術を使ったとか」

 

「あぁ……カシン様の足止めというか、時間稼ぎというか、その程度ですけどね」

 

 師曰く、忍たるもの呪術にも明るくなければならない。とのことだった。

 発端は伊賀忍が呪術を用いていたことに起因する。伊賀には亡命者が多く、物部氏を祖先とする者や服部氏などの奇術や呪術得意とした一族が含まれていたと言う。その結果として伊賀忍は呪術や奇術を用いる。

 それに抵抗、対抗することが出来るようにと里では、というか師からは色々と叩き込まれた。

 そうして呪術を扱うことも出来るようになっていた為にカシン様に対抗し、ヨシテル様たちが駆けつけるまでの時間稼ぎをしたに過ぎない。

 もし後少しでもヨシテル様たちが来るのが遅ければきっと俺は無様に死んでいたに違いない。それなりに呪術を使うことが出来る俺と強大な力を持った呪術師であるカシン様では自力が違いすぎるのだ。

 

「……結城様は本当に忍なのでしょうか。別の何か、と言われた方が納得してしまいそうなのですが」

 

「最近自分でもそんな気がして来ました。ですが忍です。これでも忍なんです」

 

「結城様、必死ですね」

 

 そこで呆れたような顔をしないで欲しい。俺だって最近自分って何なのか、と考えることが増えてきているのだ。

 本来は火遁などは逃げるための物。なのに何故俺が使うのは戦うための物なのだろうか。とか。

 転移の術はあくまで肉体活性化しての移動であり、障害物を無視して進むことは出来ないのに何故俺には出来るのか。むしろ師がやっていたので普通かと思っていた。

 そして今回話しに上がった呪術。これ自体は師もあまり得意ではないようだったが、俺にはそれなりに適正があったらしくカシン様相手に時間稼ぎ出来る程度には扱えるようになっていた。とはいえ、カシン様が本気ではなかったからそう出来ただけだったが。

 

「そんなことはどうでも良いんです。重要なことではありません」

 

 とりあえず話を変えよう。というか考えるのはよそう。

 

「早く執務室に行かなければ大友様を待たせてしまうことになりますよ」

 

「それもそうですね。あまり待たせるべきではありませんし少し急ぎましょう」

 

 話題の変更に立花様は乗ってくれた。大変ありがたい。こうした相手を気遣って話を合わせてくれるのは本当に助かる。クセの強い戦国乙女の中では貴重な常識人枠だというのが再度確認できた。

 他にも常識人枠としては伊達様や上杉様だろうか。まぁ、常識人=苦労人とも考えられるのだが。

 

 先ほどよりも少しだけ歩調を速める立花様に続いて少し歩くと、大友様の執務室へと辿り着いた。中に気配が一人。これは大友様の気配だ。

 なんとなくではあるが、少しそわそわしているような気配。のように感じる。俺がまだ居なかったこと、立花様が未だに姿を見せないこと。それが気になっているのだろう。

 

「大友様。結城、参上致しました」

 

 一声かけて中に入ると案の定、そわそわして座っている大友様がいた。

 俺が来たことで何か安心したような顔になったが、その後ろに立花様が居るのを見てその表情が引き攣って固まった。というか少し怯えている。

 

「ソウリン様。結城様をご案内致しました」

 

 目を向ければ立花様の表情に感情は伺えず、何を考えているのか分からない。それが大友様を怯えさせているようにも見えた。

 

「ソウリン様、如何なさいましたか」

 

「え、いえ、なんでもありませんよ?」

 

 硬い表情で返す大友様。何か感づいているのだろう。

 

「ところでソウリン様、棚にあったカステラですがちゃんと買ってきたようですね」

 

「あっ……」

 

「後ほど説教です。覚悟して置いてください」

 

 言われて絶望したような表情になった大友様の様子に内心愉悦である。嫌いだとかではなくただ単純に誰かのああいった様子は心に来るものがあるのだ。一番はヨシテル様であるけれど。

 

「い、いや、そんなことよりも結城!書状をください、話をちゃんとしましょう!」

 

「あぁ、はい。此方が書状になります。ご確認ください」

 

 受け取って内容を確認しながら時折立花様を見る大友様だが、話は逸らしたとしても立花様は絶対に忘れないはず。まぁ、俺個人は返事の書状としょくらあとさえもらえればそれで良いので構わないが。

 

「なるほど、わかりました。今朝南蛮から届いたしょくらあとをお渡ししますね。返事を書くので少々お待ちください」

 

 キリッと仕事用の顔になる大友様だが、それを見てため息をついている立花様にも気づいて欲しい。

 少ししか変わらないが、あれはいつもそうしていてくれると助かるのに。とでも言いたそうな表情になっている。

 

 とりあえずは書状をもらった後はしょくらあとだ。

 それさえ受け取ることが出来れば一応の任務完了になる。まぁ、その後で先ほど言われた子供たちを喜ばせて欲しい。というのがあるが……まぁ、やっても良いだろう。

 俺の使う、普通とは違う忍術にも存外使い道がある。というのはなんとなくではあるが悪い気はしないからだ。

 それに、子供たちの笑顔というのは、平和を実感することが出来る物であり、そのために何かをするというのたまにはやっても良いとも思えるからだ。

 ……少し、楽しみかもしれないな。ついでに、大友様を見つめる立花様と、少し挙動のおかしい大友様を見るのは現在進行形で楽しいので、今回の任務はお使い程度ではあったが悪くない。

 

 狙ったわけではないだろうが、ヨシテル様に、少し感謝しなければならないかもしれないな。




ドウセツの微妙な表情の変化とか読み取って会話とかしたい。

最後駆け足ですまんな。
ドウセツのキャラ、イマイチ良く掴めてないんだ……
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