――様といっしょ   作:御供のキツネ

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オリ主は周囲から義昭様LOVE勢筆頭と認識されている。


義昭様といっしょ そのに

 執務室を後にして急いで義昭様の下へと移動する。

 本来であれば俺かミツヒデ様が必ず護衛についているのだが、今回はヨシテル様の命によって二人とも二条御所を離れていた。部下が護衛についているとはいえ、足利軍の、引いては幕府の重要人物を護衛するには聊か不安がある。

 それに今回はカシン様が二条御所にいるという理由でヨシテル様と義昭様は別々に食事を取っているが本来は二人とも一緒に、もしくはミツヒデ様を含めて三人で食事を取っている。理由としては以前まではヨシテル様が思い詰め、義昭様と接することも少なかったために義昭様に淋しい思いをさせていた。その埋め合わせというか、空白の時間を埋めるためというか、そういったことで一緒に食事を、という話になっているのだ。

 そうなっているのに義昭様に一人で食事を取らせるというのはいただけない。ミツヒデ様が知ったら過保護が暴走すること間違いなしだ。

 そして何よりも、義昭様は表情には出さないが一人で居ると寂しそうにするのだ。気づいているのは現在俺だけのようで、口止めをされているのだが。理由を聞けばあまり心配をさせたくはないとのことだった。それを聞いて俺は誰にも言わないと決めた。義昭様が決めたことを俺の勝手な行動で台無しにするわけにはいかない。

 そうして義昭様の思いを尊重するようにしている俺のことを、義昭様は信頼してくれている。その信頼を裏切るなんて俺には出来ない。

 

 急いで義昭様の下へと移動すると、膳が二つ向かい合うように置いてあり、その一つの前に義昭様が座っていた。

 侍女の気配がそう遠いところにはないのであまり待たせることにはならなかったようだ。それでも待たせてしまったことに変わりは無い。

 

「義昭様、遅くなってしまい申し訳ありません」

 

「いえ、大丈夫です。それにそんなに急がなくても良かったんですよ?カシンが来ているなら結城もそっちに付いていた方が良さそうですし……」

 

 確かにそれはそうだ。カシン様を野放しにするのは心配事が多すぎる。それでもヨシテル様が居て、カシン様も大人しくしてくれるとのことなので多分大丈夫なはず。

 

「それならご安心ください。カシン様の目的はチョコレートですので、それ目当てで大人しくしてくれています」

 

「姉上やミツヒデと同じですか……なんだか、今まで持っていた恐ろしい相手という印象が大きく崩れてしまいそうです……」

 

「あー……それは俺も同じ思いです。それでも、良い変化ではあると思いますよ。前の世界絶対滅ぼすガールよりは」

 

 滅ぼしてくれるわ!とか言いながらあの武器なのか乗り物なのか良く分からない物から色々飛ばしていたカシン様。それに比べれば圧倒的に今の方が良い。例え自由な人になってしまってふらふらしていたとしても、だ。

 そのせいで紫苑や鬼灯のみならず、色んな方の胃に負担をかけるようになってしまったので、そこは何とかして欲しいのだが。

 

「確かにそうではあるんですが……」

 

「義昭様、もう諦めましょう。平和になった為に緊張の糸などが切れてああなったんです。もしかしたらあれが素の状態かもしれないですからね」

 

「結城……そんなに遠い目をしなくても……」

 

 遠い目をするのも仕方ないことなのだ。ヨシテル様やミツヒデ様、カシン様だけではなく他の戦国乙女の方々も幾人か以前までと印象が少し変わってしまったのだから。

 環境と言うか、状況が変わればそういった変化があってもおかしくは無いのかもしれないが。

 

「大丈夫です、義昭様。もう諦めてますから」

 

「諦めてるんですか……」

 

 義昭様、その不憫な者を見るような目をやめてください。心に来ます。

 

「それよりも、そろそろ食事としましょう。冷めてしまうとどうしても味が落ちてしまいますからね」

 

「それもそうですね。食事は美味しく食べましょう、でしたね」

 

 くすくすと笑いながら言う義昭様。俺の言った言葉だが、それを思い出しながらつい笑ってしまった、と言った風だった。

 それを言ったのは義昭様が一人で食事をしていた時に、あまり美味しそうに食べていなかった為に言った言葉だ。味付けに思うところがあるなら伝えたほうが良い、一人で食事が嫌なら誰かと一緒に。と続けたのを覚えている。

 その時に義昭様がぽつりと零したのが一人の食事は寂しい。誰かと一緒に食べたい。と言うものだった。幼い義昭様には一人きりで食事を続けるというのはどうしても辛いものがあったのだろう。それでも、将軍家の人間として耐えなければならないと無理をして笑っている姿に心が痛んだものだ。

 それでつい、忍である俺は一緒に食事をすることは出来ませんが、食事の際には傍に居ます。ただ一人で食事をし続けるよりは、誰かが居ればまた違うはずです。と言ったのだ。

 

「忍らしくはありませんでしたが、結城の心遣いは嬉しかったですよ。

 それに本当に傍に居てくれて、あまり行儀は良くなくても食事中に少し話をしたり、凄く楽しかったですね……

 今となっては姉上やミツヒデと一緒に食事をしたり、どうしても二人が無理なら結城が一緒に食事をしてくれる。あの頃とは大違いです」

 

 懐かしそうに、嬉しそうに言う義昭様には微笑が浮かんでいた。あの時のような無理をして笑っているのではなく心から笑っている姿に胸の中に暖かな何かが灯るのを感じる。

 やはり義昭様には笑っていてほしい。この方の笑顔こそが、足利軍に所属する人間の原動力だ、と言うミツヒデ様の言葉には納得してしまう。

 

「ええ、確かに大違いですね。今の方が遥かに良いでしょう。

 ですが……今は食事としましょう。しっかり食べないと今日一日、乗り切れませんよ」

 

「はい、わかりました。では結城も一緒に食べましょう。

 結城はこれからチョコレート作りもありますし、任務もありますからね」

 

 言ってからお互いに少し笑って食事を取り始める。以前まではあれこれと俺が話しかけていたが、今となってはお互いに無言で食事を続けるようになった。話すことが無い、ということではないのだが、義昭様とは互いに無言であってもそれは気まずい沈黙ではなく、どこか心地良い沈黙となっているのだ。

 そうして食事を続け、食べ終わるのはほぼ同時だった。本来は俺の方が早く食べ終わるのだが、そうして食べ終わり義昭様を待っていると義昭様は急いで食べようとしていたのだ。

 流石にそれはよろしくない。良く噛んで味わって食べてこその食事である。それに主君の弟君を急かす忍というのはあってはならない。

 そんなことがあってから義昭様と食事をする際には速度を落として、義昭様と同時に食べ終わるように調整している。最初の頃はその調整がイマイチわからなくて苦労したものだ。

 

「御馳走様でした。なんだかいつもすいません」

 

「御馳走様でした。いえ、義昭様はお気になさらずに」

 

 こうして普段通りの会話をしながら思うのは、最近のヨシテル様と会話するよりも落ち着きがあると言うか、実は義昭様の方が主君然としている気がする。

 これが成長と言うものだろうか。最近になって一気にその成長をしているというのが驚きである。

 

「さて、食事も済みましたし食後のお茶としましょうか。護衛の任務もありますから今日の予定も聞いておきたいので」

 

「それもそうですね。とは言っても予定の幾つかは取り止めになってますよ。

 カシンが二条御所に居る、ということで護衛を付けて下がっていなさい。と姉上が」

 

「なるほど。当然と言えば当然のことかもしれませんね」

 

 カシン様が来ているというだけで色々と予定が変わってしまっている。あの人はこうして迷惑をかけているとか、迷惑をかけるかもしれない、とか考えてくれないのだろうか。いや、むしろそれを考えて動いているのかもしれない。カシン様は迷惑をかけて楽しむ人だった。

 

「結城はどうするのですか?」

 

「この後は一度ヨシテル様とカシン様の様子を見てからチョコレートを作るために厨房へ。

 出来ればカシン様の監視ということでミツヒデ様が居れば良いのですが……」

 

「ミツヒデはすぐに戻る。とのことでしたが、どうでしょうか」

 

 カシン様の玩具になりそうではあるが、ミツヒデ様がいればヨシテル様と二人で押さえ込むことも出来るはずだ。あの二人は足利軍の最高戦力であるし、以前よりも力の劣るカシン様であれば問題ない。

 ただし、ミツヒデ様が普段通りに冷静さを持って対処できれば、ではあるが。

 

「今回はあまり期待出来ないかもしれませんね……相手があのカシン様だと」

 

「ミツヒデは冷静な時は頼りになりますが、一度調子を崩すとどうしても不安になってしまいますよね……」

 

 そうなのだ。ミツヒデ様は頼りになる。頼りになるのだがどうしても不安になる時があるのだ。

 松永の乱、カシン様との決戦、天下取り。その全てにおいて自慢の頭脳を遺憾なく発揮し、足利軍を勝利へと導いてきた。ヨシテル様の信頼する参謀役ということだ。

 だが、予想外のことが起こると一瞬硬直してしまい、そこからどうするか思考する。そうして思考している間に更なる問題が起こって混乱する。そうなるとぐるぐると思考の海に溺れていくのだ。

 

「心配ではありますが、ミツヒデ様なら大丈夫でしょう。ヨシテル様の前ですし」

 

「あぁ、確かにミツヒデはそうですね。姉上と私の前ではとてもしっかりとした姿であろうとしていますね」

 

「はい。ですので暫くは大丈夫かな、と。チョコレート作りも忍術を併用するとそう時間もかかりませんし、終わり次第向かえば……昼前にはなんとか」

 

「昼前……それなら問題ありませんね。では結城、なるべく早く作り終えてカシンを見ていてください。

 場合によってはミツヒデを下がらせて姉上に助力を。良いですね?」

 

 凛とした居住まいで真っ直ぐと此方を見ながら言う義昭様。以前の不安そうに、何処かおどおどしたような姿からは想像も出来なかった姿だ。

 

「わかりました。義昭様も、護衛に部下を付けますが念のため警戒を怠らないようにお願いします」

 

「勿論です。それではよろしくお願いしますよ、結城」

 

「お任せください、義昭様」

 

 そうして言葉を交わして、食後のお茶も終わっていたので立ち上がろうとするとその前に再度声をかけられた。

 

「あ、結城。忘れるところでした」

 

「はい、どうかしましたか?」

 

 話は終わったはずだが、何かあっただろうか。

 

「ん、お願いします」

 

 言って立ち上がり、俺の傍まで来て膝を折り座る。

 そわそわしているような、期待しているような態度にどうしたのだろうか、と首を傾げそうになってはたと気づく。そういえば前にお願いされてたことがあった。

 今回で人の頭を撫でるのは三回目になるのか。それも所属する軍の重要人物を相手に、だ。こんなもの緊張するに決まっている。

 それでも、その緊張を悟られないように気を落ち着けながら義昭様の頭を撫でる。そうしながらところどころ跳ねている髪をそっと整え、慣れないことながらちゃんと出来ていることに内心で我ながら上手に出来た。と納得する。

 

 そろそろ良いかな、と思いながら撫でる手を止めるとどうやらまだ満足していないらしく、俺の手に少しだけ頭を押し付けてきた。

 義昭様が満足するまでもう少しだけ、と撫でるのを再開するとちらりと見えた義昭様の表情は嬉しそうに綻んでいた。というか、手に頭をぐりぐりと押し付けてくる姿は子犬が撫でて欲しくてそうしているように見えてついつい笑みが零れてしまった。

 そして随分と子供らしくて、可愛らしいものだな、と思ったのは仕方ないだろう。

 

「んー……結城に撫でてもらうと気分がふわふわしてきて気持ち良いです……

 姉上には悪いですが、今は私が独り占めですね」

 

 言ってから悪戯っ子のような笑みを浮かべる義昭様。それなりに傍に居たがこういう表情もするのか、と少し驚いたのと同時に、多分ミツヒデ様は知らないだろうな。と思った。また知られると面倒なことが増えてしまった。

 いや、義昭様のあの笑顔が見れたならそれくらいは安いものなのかもしれないが。

 

「今は、と言いますか……あれ以来ヨシテル様を撫でることはありませんよ」

 

「あれ、そうなんですか?」

 

 そうそう主君の頭を撫でるようなことは無い。というか普通はない。こうしているのだって本当は有り得ないようなことなのだ。

 

「そうですよ。義昭様は勘違いしているかもしれませんが、忍が主君の頭を撫でる、というのは本来ありえませんからね?」

 

「なるほど……でも私と姉上はその辺りのことは気にしませんから今度撫でてあげてください。きっと姉上も喜びますよ」

 

 喜ぶのだろうか。ヨシテル様と義昭様、お二人とも撫で心地が良いのでまた撫でたいな、とは思っていたのだが。……義昭様から言われたということもあるので、今度二人きりの時にでも撫でてみようか。

 

「……そろそろ満足したので良いですよ。これで一日頑張れます」

 

 言われて撫でるのをやめると、顔を上げて笑顔を見せてくれる。なるほど、これは確かにヨシテル様と義昭様LOVE勢のミツヒデ様なら忠誠心が暴走していただろう。

 

「この程度で頑張れると言うのでしたらいつでも。

 では一度ヨシテル様の下に戻りますので、また後ほど」

 

「はい、チョコレートを楽しみにしてますね。

 それとその言葉、忘れないでくださいよ」

 

 そう言葉を交わして部屋を後にする。途中で部下に義昭様の護衛を任せてまた急いで移動する。

 どうかヨシテル様とカシン様が大人しくいてくれますように。と願ってしまったのはきっと仕方の無いことなのだろう。




義昭様可愛いよ義昭様。
義昭様と一緒に食事したい。
頭なでなでしたい。
そして跳ねてる髪をそっと整えてあげたい。

形にするって大変ですね。
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