――様といっしょ   作:御供のキツネ

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オリ主は器用。


ノブナガ/ヒデヨシさまといっしょ

 食休みを挟むということで織田様とその後も各地の戦国乙女の話や南蛮からの貢物の話。料理の話などをしている間に豊臣様は退屈だったらしく何処かへと行ってしまった。城外に出たということはない、と織田様が言うので気にせず話を続けること一刻。痺れを切らせた豊臣様が来るだろうと思っていたのだが姿を現さない。

 それについて織田様に聞いてみると満腹になって寝ているのかもしれない。ということだった。食後についうとうとして眠ってしまう。というのを豊臣様はよくやるらしい。

 あれだけ一心不乱に食べてお腹一杯という状態になっていれば仕方ないのかもしれない。しかし、だからと言って放っておいて茶屋に行けなかった。となれば豊臣様も残念がるというか落ち込むかもしれないので起こしに行かなければならない。

 

「サルが寝るなら自室じゃろうな。結城、ついて参れ」

 

 そう言う織田様について歩き豊臣様の自室へと向かう。道中で擦れ違う侍女の中にはやはり忍が紛れているようで会釈をしながらも油断のない目を向けてくる。織田軍の忍とはあまり面識がないので仕方ないのかもしれないが、そういうのは相手に悟られた時点であまり意味がない。

 気配の消し方、足音の消し方というのは足利軍の忍より上手であるかもしれないが、そういった所は甘いようだ。違和感のないように自然に人々に紛れ込めるように鍛えてあるので当然と言えば当然かもしれない。それでもやはり学ぶべき点はあるので各地を回りながらそういった点を見つけていくのも良いかもしれない。

 そうして考えながらばれない程度に観察するとどうにも視線に別の感情が込められているように感じた。なんだろうか、と思いながらも現時点でははっきりわかりそうにないので観察するのを止めて大人しく織田様について歩く。

 少ししてから織田様が立ち止まった。どうやら豊臣様の自室に着いたらしい。部屋の中には確かに人の気配があり、これは豊臣様の気配だな、とわかった。

 

「サル、入るぞ」

 

 一声かけてから織田様が襖を開けて中に入り、数秒ほど待ってから部屋の中へと続く。

 そうして部屋の中を見ると、部屋の中央に敷かれた布団の中で幸せそうに眠っている豊臣様の姿があった。

 

「……見事に寝ておるようじゃな」

 

「そうですね……起こすのが憚れるくらいに幸せそうに寝てますね」

 

「さて、どうしたものかのう……」

 

 どうしたものか、と考えていると豊臣様が何か言っているのが聞こえてきた。どうにも寝言を言っているらしい。なんと言っているのか耳をすませてみる。

 

「んん~……もう食べられにゃいよ~……えへへ……」

 

「夢の中でも何か食べてますね。豊臣様は最近食べてばかりだったりしませんか?」

 

「そうじゃな……朝に大量に食い、昼前に茶屋で団子を食い、昼には先ほどのように食い、八つ時にはまた団子か饅頭かを食い、夜になればまた大量に食う。と言ったところじゃな。

 鍛錬も忘れずにしておるが……こうして考えると随分と食っておるのう」

 

 それだというのにまだ夢の中で食べているというに驚くべきなのか、呆れるべきなのか。よく食べてよく眠る。これが子供の育つのに必要だとは言うが豊臣様はこれで良いのだろうか。

 豊臣様は残念そうにするだろうが、この後に茶屋に行く必要などないのではないか、と思ってしまったがきっと俺は悪くないはずだ。

 

「こやつは起こさずに寝かせておいても良い気がしてきたんじゃが。

 毎日あれほど食っておれば別に構わんじゃろう」

 

「それ、豊臣様が落ち込みますよ。いえ、俺も思いましたけど」

 

「サルが落ち込むとしても仕方なかろう。

 食ってばかりおるようじゃし、今回は見送っても良いと思うぞ」

 

「おまんじゅぅ~……こんぺーとー……」

 

 そんな話をしている最中も豊臣様は夢の中で色々食べているようだった。食べられない、とはなんだったのだろうか。

 

「織田様、豊臣様の寝言がなんだか面白いのでもう少し観察してみませんか」

 

「そうじゃな、ワシも少し気になって来たわい」

 

 微妙な気持ちになりながら織田様と、とりあえず豊臣様を観察することにした。

 なんとなくではあるが、お互いに豊臣様がどんな夢を見ているのか、どんな寝言を言うのか少し気になったからだ。

 

「わぁいうすしおヒデヨシうすしお大好き……」

 

「うすしおってなんでしょうか」

 

「味付けのことじゃろうな。何の味付けかは知らんが」

 

「というか、豊臣様って自分のことを名前で呼ぶことありましたっけ」

 

「名乗り程度であればするじゃろうが……普段では有り得んな」

 

 なんなのだろうかこの寝言は。幸せそうなのがより意味がわからないという感覚を強くしている。豊臣様は眠っている時はいつもこうなのだろうか。

 織田様を見ると同じように微妙な顔をしていて、俺と同様に意味がわからないのだろう。その間にも豊臣様は色々言っているがそのどれもが意味がわからないことばかりだった。

 

「豊臣様、なかなかに意味不明な夢見てますね」

 

「そうじゃな……まさかサルがこうも意味のわからん夢を見ておったとは驚きじゃな。

 いや、いつも意味のわからん夢ばかり見ておるのかはわからんがな」

 

 そんなことを話しながらふと思いついたことがあった。

 これは先ほど食べ続けていたからこんな寝言を言っているとしたら、別の何かで状況が変われば夢が変わるかもしれない。という確信も何も無い思いつきだ。

 思い立ったが吉日。ということで早速状況を変えてみよう。

 素敵忍術で布、綿、針、糸を取り出して準備をし、ぬいぐるみを一つ作ってみる。

 

「……なんじゃそのデフォルメされたワシのようなぬいぐるみは」

 

「これですか?抱きつきぬいぐるみ織田様一号です」

 

 言ってから織田様によく見えるようにしたぬいぐるみは腕に抱きつくような形にぬいぐるみの腕を曲げており、赤い髪、気の強そうな瞳、その他にも織田様の特徴を捉えたぬいぐるみになっている。

 我ながらよく出来ていて、自信を持って他人に勧められる作品になっていた。

 

「……それで、それをどうするつもりじゃ」

 

「これを豊臣様の枕元に置いてみます」

 

 胡乱げに見てくる織田様にそう返してぬいぐるみを豊臣様の枕元に置くと、豊臣様の表情が変わり頬が緩んだ。

 

「えへへ~……おやかたさまだぁ……」

 

「これは偶然、ということじゃろうか」

 

「どうでしょうか。試してみますね」

 

 言って、再度材料を取り出してぬいぐるみを一つ作る。

 裁縫というかぬいぐるみなどを作るのはこれでも得意なのでささっと作ることが出来る。ただこれもチョコレート作りと同様に何をしているのかわからないと言われてしまう。

 ただ早いだけで、普通に作っているだけなのに。

 

「それでは、二つ目を……」

 

 先に置いたぬいぐるみの反対側に置くと、豊臣様の表情が困惑したようなものに変わった。

 

「うー……?おやかたさまがふたり……?」

 

「偶然ではないようじゃな」

 

「みたいですね。増やします?」

 

「ふむ、やってみよ」

 

 言われた通りにぬいぐるみを作って豊臣様の周りに置いていく。三つ目、四つ目と作っていると段々と気分が乗ってきたのか作るペースが上がり、作っては置き、作っては置きを繰り返す。

 同じ物ばかりでは面白くないと思って、キリッとした表情の織田様、少し目元の柔らかい豊臣様を見ているときの織田様、何か思いついたときの悪い顔をした織田様などなど色々作ってみた。

 それが豊臣様を囲むように置かれており、困惑したような表情が苦しそうな表情へと変わっていった。そしてそれを見ていた織田様もなんとも言えない微妙な表情へと変わっていた。

 

「おやかたさまぁ……おやかたさまが、いっぱい……うぅ……」

 

「結城、どうするんじゃこれは。

 サルはなにやら苦しんでおるし、ワシを模したぬいぐるみが大量に出来るしで意味がわからんぞ」

 

「そうですね……もう少し増やしてみましょうか。気分が乗ってきたので」

 

 言っている間にもどんどん増やしていくがそれを見て織田様は呆れたような、諦めたようなため息をついていた。自分で増やしてみろ。とは言ったが、俺がここまで作るとは想像していなかったからだろうか。そして俺がノリノリで増やしてしまったからだろうか。

 何にしろ、そうして大量の織田様のぬいぐるみに囲まれた豊臣様は魘されながらも寝言を続けていた。

 

「おやかたさまがぁ……たくさん……」

 

「増やしただけでは単調でつまらんな」

 

「では、こうしましょうか」

 

 今度は大きめのぬいぐるみを作る。今まで作ったのは腕に抱きつく形になっていたが、あえて今回は胴体にも抱きつけるように、そしてしっかりと抱きつく形になるようにしてある。

 さらに言えば、首や腕などの関節には針金を使うことで多少ならば形を変えることも出来るように作ってみた。

 これを豊臣様の枕元に置くと同時に、少しだけ関節を曲げて腕組みをした織田様が豊臣様を見下ろしているようにしておく。豊臣様が目を覚ませばこのぬいぐるみと目が合うはずだ。

 

「また奇妙な物を……いや、しかし結城。お主随分と器用じゃな」

 

「忍たるもの器用でなければならない。師匠にそう言われてきましたからね。

 まぁ、師匠は裁縫とかではなく罠の仕掛け方や覚える術に関しての器用さを言っていたんですけど」

 

「ほう……とはいえ結城のことじゃ。そちらに関しても問題ないのであろう?」

 

「当然です。師匠の弟子として情けない姿は晒せません。今となってはヨシテル様の忍として、というのもありますが」

 

 師匠の弟子であること。ヨシテル様の忍であること。これは俺にとっての誇りなのだ。であればこそ、情けない姿は晒せない。だからこそ修行に励んだものだ。現在進行形でもあるのだが。

 それでも、まだまだ足りない。もっと強くならなければ。もっと巧く立ち回れるようにならなければ。と以前に思っているとカシン様に色々言われてしまった。

 ならば我が力をくれてやろう。という明らかに頷いてはいけない系統の話であったので丁重にお断りした。その後に舌打ちされたのを思い出したので今度仕返しをしよう。今までのあれやこれやを含めて。

 

「何やら考えておるようじゃが、サルが起きそうじゃぞ」

 

「そのようですね。さて、どんな反応をしてくれるのか……」

 

 楽しみに思いながら豊臣様が起きるのを待つ。魘されながら目を覚ました豊臣様は焦点の定まらない目で枕元の織田様ぬいぐるみと目が合った。

 

「おやかたさまだ…………ってお館様ぁ!?」

 

 飛び起きた豊臣様は大きなぬいぐるみを見て大声を上げ、更に自分の周囲に置いてある大量のぬいぐるみを見て再度大きな声を上げる。

 

「あっちにも!こっちにもお館様!!えっと、えっと……とにかく一杯のお館様が居ます、お館様!!」

 

 周囲を見回し、何故かそれを大きなぬいぐるみに向かって言った豊臣様。

 そしてそれに対して意外と容赦なく頭を叩く織田様。

 

「たわけ!ワシはこっちじゃ!!」

 

「痛ぁっ!?お、お館様!?え、だってこっちにもお館様が……ってぬいぐるみだこれー!」

 

「そんなものは確認せんでもわかるじゃろうが!どうにもサルには説教が必要なようじゃなぁ!!」

 

 思った反応と違うが随分と面白いことになってしまった。というか織田様は結構本気で怒っているのが伺える。流石にあのデフォルメされたぬいぐるみと本物の姿の見分けがつかなかった。というのは本人的に許せないことのようだ。

 布団の上で正座をさせられた豊臣様は怯えたような落ち込んだような様子で大人しく説教をされている。ただ、周囲にある織田様のぬいぐるみのせいで不思議な光景に見えてしまうのは仕方ないのだろうか。

 

「前々から説教せねばならんと思っておったこともあるからのう、今日は茶屋に行けると思うでないわ」

 

「えぇー!だって、だってユッキーが連れて行ってくれるって!」

 

「そんなものは明日じゃ!今日はこのまま説教にワシが決めたのじゃ!諦めよ!」

 

 完全に駄々を捏ねる子供とその母親。という構図になっているのは気のせいではないはずだ。というか織田様は俺が明日も尾張にいること前提で話を進めていた。

 今回の任務は時間もあるので問題ないのだが、そういうことは出来れば確認を取ってから言って欲しかった。

 というか、それを織田様には伝えていないのだから普通は確認を取るべきなのだ。これはもしかすると織田様に対して説教をする必要があるのではないか。いや、でも相手は織田様だ。するべきではないはず。

 これがヨシテル様であれば遠慮なく説教が出来たというのに……!

 

「それじゃ、明日です!絶対ですよ!!

 結城もそれで良いよね?」

 

「構いませんが、織田様はそういうの確認取ってからにしてくださいね。これがヨシテル様なら八刻ほどの説教です。織田様なのでしませんが」

 

「……お主、本当にヨシテルに対しては容赦ないのう……それにワシでもサルに説教は四刻程度じゃがな……」

 

「やったー!って、四刻もですか!?も、もう少し短く……!具体的には二刻くらいに……」

 

 ヨシテル様への説教の時間について驚かれてたが豊臣様にとっては織田様の説教が四刻よど続くというのが衝撃的だったようで何とかして時間を短くしてもらおうと必死に懇願している。こういう姿は見ていて非常に面白いものだ。それはカシン様のせい、カシン様のせい。

 

「とりあえず、説教中はどうしてたら良いんでしょうか。勝手に動き回るわけにもいきませんし」

 

「そうじゃな……団子でも買って来い、と言えば行くか?」

 

「わかりました。数はどうしましょう」

 

「……サルが食うじゃろうから多めに、じゃな」

 

 やはり豊臣様のためだったか。いや、豊臣様に聞かれないように小声で言っている時点で察しがついていたのだが。

 豊臣様に気づかれる前に買いに行くとしよう。早めに戻っても説教は終わっていないことが予想できるので、町並みを見て回ってからでも問題ないだろう。




ほのぼのする二人を見たい。
あと、漫才染みたこととかしてるのが見たい。
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