――様といっしょ   作:御供のキツネ

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オリ主は普段から忍らしい格好はしない。
忍だと感付かれないために。


ヨシモトさまといっしょ

 未だに聞こえてくる破壊音と、徳川様の悲鳴染みた声を聞きながら完全に手持ち無沙汰になってしまった俺は仕方なしに、無礼かもしれないが試しに茶を点ててみることにした。

 宗易様がしていたように、また先ほど叩き込まれたことを思い返しながら点てる。

 少々手際が悪かったが、それでも本来茶を点てることはない俺にしてはなかなかの出来だった。

 

「……ふむ、やはり宗易様には劣りますか」

 

 それでもつい今しがた飲んでいた宗易様の茶と比べてしまって軽くへこんでしまう。

 もしもっと上手く点てることが出来るようになればヨシテル様や義昭様に、と考えてしまうので、あんなことを言った後ではあるが宗易様に師事するのもありなのかもしれない。

 そんなことを思っていると慌てたように今川様が駆け込んできた。

 

「結城さん!?外でイエヤスさんとリキュウさんが戦っているのはどういうことですの!?」

 

「あれは宗易様が徳川様に対してお仕置きをしているだけです。ですので放っておいても良いと思いますよ」

 

「り、リキュウさんのお仕置き……!?そ、そうですわね!あまり私たちが手を出すわけにはいきませんものね!」

 

 宗易様のお仕置きというのがトラウマになっているのか、微妙に震え始めている。どうにもそれは大好きな徳川様を見捨てるような選択さえ選ばせてしまうほどのもののようだった。

 俺はそのお仕置きというのを見たことも、されたこともないのでなんとも言えないのだが……とりあえず、カシン様と戦うようなことになるよりはマシだろう。もう二度とカシン様とは戦いたくない。

 

「ん、んん!で、でしたら私たちはファッションの研究といきましょう!」

 

 咳払いを一つしてから今川様は外で行われている宗易様のお仕置きなどないとばかりにそう言った。

 

「ちょうど屋敷へやってきた商人の方に話をしたところ幾つか男性用の物を持っていましたので、譲っていただきました。ですので……早速着替えていただきますわ!!」

 

 着替えていただきますわ。とのことだが、これはつまるところ完全に着せ替え人形になれということだ。別に変化を多用する前に変装も覚えていたので、服装を変えるという程度であれば気にならない。

 ただそれが着慣れたものなのか、初めて見るようなものなのか、それが気になるところではある。

 

「侍女たちに隣の部屋に用意するように言っておきましたわ。ですから隣で着替えて、それが終わったら戻ってきてくださいな」

 

「わかりましたが……着方のわからない物が合った場合はどうすれば?」

 

「あ……そ、そうですわね……その時は仕方ありませんから私がお手伝いしますわ。

 本来ならばそうして殿方の着替えを手伝うということはありえませんが……流石に今回ばかりは致し方ありませんものね」

 

 確かに今川様が誰か男性の着替えを手伝う姿というのは想像が出来ない。徳川様の着替えであれば必要なくとも手伝うのだろうけれど。いや、むしろ徳川様が必要ないと言ったとしても、今川様であれば手伝うに違いない。

 まぁ、そんなことは置いておくとして。わからなければ手伝ってもらえるなら助かる。着方がわからなくて、手伝いなどなしに妙な着方などしたくはない。

 

「感謝します、今川様。それでは着替えて来ます」

 

「ええ、よろしくお願いしますわ」

 

 言葉を交わしてから隣の部屋に移動すると、いくつかの葛篭が置かれていた。これの中に服が入っていると考えれば良いのだろう。とりあえず端から順番に着てみよう。

 開けてから中を見ればそこに入っていたのは豊後で見たことがある。確か……メイド喫茶、執事喫茶とかそんな名前の場所だった気がする。立花様が大友様に言われて、そのメイドとかいう存在の服を着せられていたのを覚えている。

 とりあえず、一度でも見たことがあるなら問題なく着ることは出来るだろう。似合っているかどうかを度外視するのであれば、だが。

 そうした取り留めのないことを思いながら着替えてみれば、何故か服のサイズが俺にぴったりと合っていて、それに違和感を感じてしまう。

 

「今川様、少しよろしいでしょうか」

 

「ええ、構いませんわ。もしや早速着方がわからない物がおありで?」

 

「いえ、どうして俺にぴったり合うのか、と疑問に思いまして」

 

「それは簡単なことですわ。ファッションリーダーたる私にとって、その人にサイズの合う服を選ぶことなんて造作もありませんわ!

 このスキルは日々イエヤスさんの成長を記録するために必須でしたので、習得しましたの。あれは……そう、まだイエヤスさんが幼い日々に……」

 

「あ、そうなんですかわかりましたとりあえず着替えるので待っていてください」

 

 何か語り始めたので適当に切り上げて、着替え終わっているのだがまだ着替えていないふりをしておく。これで話が続いているなら終わるまで待つし、適当に時間を潰すのに使えば良い。

 ひとまず、他にはどんな服が入っているのか確認しておこう。一つは今来ている執事服。次に黒の帽子に黒のコート、黒のズボンに鎖の飾りなどが入っている。中に着るであろうベストは背中が大きく開いているようで、少し特徴的なような気がした。

 それから次の葛篭にはわかりやすいほどの忍装束が入っていた。ただ、腰当やマフラー、羽織が入っている。あれ、これもしかして風魔様の……いや、気のせいだと思いたい。そういえばなんで風魔様は例えるならば後輩っぽいのだろうか。坂田様の話を何度聞かされたことか。

 とりあえずそれは置いておこう。次に入っているのは……白を基調とした装束なのだが、どうにも見覚えがある意匠が施されている。これは……ヨシテル様の戦装束がモチーフということになるのか。流石にヨシテル様の物と同じように肌が出ている、ということはなくむしろ肌が見える場所はほぼない。

 普段から肌を出すことのない格好をしているので、それを考慮してくれたのか、はたまた元々そういうデザインなのか。いや、元々だとしても何故ヨシテル様の戦装束をモチーフにした服など作っているのだろうか。

 

 ひとまずそれは置いておくとして、今川様も静かになったので隣の部屋に戻ってみよう。

 

「今川様、とりあえず着てみましたが……」

 

「ばっちりですわね!着こなしも良い感じですし、似合っていますわ。

 ただ……普段の格好を見慣れていると違和感がありますわね……いえ、それは仕方のないことですので結城さんが悪い訳ではありませんけれども」

 

「それよりも今川様、これ本当に今日用意した物ですか?

 以前からこういった機会を伺っていたと考えた方が自然な物がありましたけど」

 

「あぁ、ヨシテルさんの戦装束をモチーフにしたあれですわね?とある方から結城さんに、と預かった物ですわ。

 それともっとこう……忍らしい装束として何かないか、と行商に話したところ、お得意様の忍の方の装束と同じ物を用意してもらいましたの。あ、ちゃんとその忍の方には許可を頂いているらしいのでそこは安心してよろしくてよ」

 

 風魔様はそれで良いのだろうか……いや、俺がどうこう言う話ではないのだろうけれども。

 それにしてもお得意様の忍というので風魔様が出てくるということは、話に聞いたことのある宅配サービスをしてくれる行商なのだろう。

 以前に部下が勝手にその宅配サービスを追い返したことに対して怒っていたのを思い出す。

 

「あ、そうそう。今回の衣装は全て結城さんに差し上げますので、是非持ち帰ってくださいな。

 そしてヨシテルさんとお揃い、という風に着てくれることを期待していますわ!」

 

「ただの忍に何を期待しているんですか……それに主とお揃いなど恐れ多いことですよ」

 

「大丈夫ですわ。ヨシテルさんにとって結城さんはとても大切な方ですもの。許してくれるというか、喜んでくれるはずですわ。だから、是非ヨシテルさんに見せてあげてくださいな。

 というわけでその話は置いておくとしまして……次の衣装に着替えてくださいますわね?」

 

「はぁ……一応、わかりましたとだけ言っておきます。着替えの方も、了解です」

 

 とある方、というのはもしかしたら宗易様だろうか。徳川の言っていたことを思えばそうなる。特に感謝されるようなことはしていないと思うのだが……とりあえず無理にでも納得するのと同時にヨシテル様とお揃いというのは恐れ多いような、確かにヨシテル様ならなんだかんだで喜びそうだな、と思ってしまう。

 ただ、そうした場合には確実にミツヒデ様が面倒なことになるのだろうな。ということも容易に想像出来てしまって少しだけため息が漏れそうになってしまった。

 いや、今はそんなことはどうでも良い。さっさと着替えてこの着せ替え人形状態なのをどうにかしなければ。

 

 次に手をつけたのは先ほど見た黒を基調としたコートなどが入った葛篭だ。着方はなんとなくではあるがわかる。わかるのだが……姿見が置いてあるので着替えてから確認してみるとどうしてか胡散臭さが滲み出ているような気がした。

 なんだこの服は。いや、自分で言うのもなんだが似合ってはいる。似合ってはいるのだが、普段であれば感じるはずのない胡散臭さを感じてしまうのだ。

 ……思うところがないわけではないがとりあえず着てしまった以上は今川様に見せなければ。

 

「今川様……着替えましたけど、これで良いんですか。凄く胡散臭い感じがしますけど」

 

「……シュガーソングでビターステップな感じがするかと思いましたが、これではどちらかと言えば碧の魔導書ですわね……」

 

「何を言っているのかわかりませんけど、とりあえず今川様の想像していたものとは違うことだけはわかりました」

 

「そうですわね……こう、結城さんの名前がテルミであっても違和感がないような……」

 

「本当に何を言っているんですか」

 

 本来はそのシュガーソングがどうこうというイメージだったんだろうが、胡散臭さのせいで碧の魔導書とかなんとかになってしまったらしい。それと俺の名前はテルミではない。

 そんなことよりも今川様がこれに満足したのなら次の、風魔様の忍装束に着替えたいのだが。

 

「待ってくださいな!こう……まずはコートを脱いで、それから……このパーカーを着てもらいますわ!」

 

 なんだろうかこの橙色のパーカーは。

 とりあえず着てみるが……胡散臭さはなくなったが何故だが外道に見える。

 

「あ、ダメですわねこれ。似合いすぎてダメなやつですわ。さ、脱ぎましょう」

 

 着せられたと思ったらすぐに脱げとはどういうことだ。いや、確かに外道な人間に見えてしまったのだから着ていたくはないのだが。

 しかし、さっきから思っているのだがこれは果たしてファッションの研究になっているのだろうか。

 

「今川様。これってファッションどうこうじゃないですよね。ただのコスプレですよね」

 

「……コスプレも、ファッションの一部ですわ!」

 

 一瞬、しまった。という顔をしてから言われても説得力はない。というかやはりこれはただのコスプレだったのか。

 シュガーステップがどうだの、碧の魔導書がどうだの言っていたのでなんとなくそんな気はしていたが。それに忍装束というのは風魔様の物と同じとなれば、つまるところ風魔様のコスプレというだけだ。

 それにヨシテル様の戦装束をモチーフにした装束も、ある意味ではヨシテル様のコスプレのようなものではなかろうか。いや、しかし用意してくれたのは宗易様なのでなんとも言えないのだが。

 

「今川様、コスプレはなしにしてもらえませんか」

 

「せ、折角用意しましたし、少しくらいは……!」

 

「……風魔様の装束はやめてください。流石に風魔忍頭領のコスプレは恐れ多すぎます。

 いえ、ヨシテル様の戦装束をモチーフにしたあれも恐れ多いのですが……とりあえず、ヨシテル様なら許してくれそうなので良しとしますが」

 

「むぅー……仕方ありませんわね……では、それで構いませんわ。

 あ、コスプレ以外にもちゃんと用意していますので、それもよろしくお願いしますわね」

 

 あ、ちゃんと普通の物も用意していたのか。今川様のことだからてっきり全てコスプレ衣装かと思ったのだがそうではなかったらしい。だいたいファッションショーと言いながらもやってるのはコスプレ大会な今川様が悪い。

 以前徳川様を着せ替え人形にしていた時など、今川様が着せてみたいと思っていたであろう衣装ばかりで流石に徳川様も辟易としていたのを覚えている。あのまま何も言わなければ俺も同じようになっていたと思うとげんなりしてしまうがきっと仕方ないことだろう。

 

「おや、もしかして丁度良い時に戻ってきましたか」

 

 ついでに今川様はやはりアホの子の状態だと面倒だな、と思っていると徳川様へのお仕置きが済んだのか宗易様が戻ってきた。良い汗をかいた。とでも言いたげな、どこか満足そうな表情をしており、すっきりとした様子だった。

 これはきっと徳川様が大変なことになっているのではないだろうか。

 

「あ、イエヤス様でしたら今頃外で風に当たっていると思いますよ。運動の後ですから、涼んでいるんじゃないでしょうか」

 

 それは本当に涼むために風に当たっているのだろうか。むしろ風に当たるというか、お仕置きの結果地面に転がして風に当てているのではないか、と邪推してしまった。

 流石にそんなことはない、と思いたいが……その辺りのことはどうなっているのだろうかと思って宗易様を見ると、私には何のことだかわかりません。とで言うように笑みを浮かべていた。どうにも無闇に探ると薮蛇になりそうだ。

 徳川様には申し訳ない気もするが、元はと言えば徳川様が欲張ってしまったのが悪い。俺も宗易様と同じように知らないふりをすると言うか、関わらないようにしておこう。

 

「それよりも結城様。私の用意した、ヨシテル様とお揃いになる装束を着ていただけるんですよね?」

 

「はい、そういう約束をしましたからね。宗易様、装束の用意、感謝致します」

 

「いえいえ。私が好きで用意した物ですから。

 それに結城様にはお世話になりましたのでそのお礼ですよ」

 

 俺は礼をされるようなことはしていない。と思ってはいても宗易様にとっては違うらしいので、大人しくその言葉を受け取ることにした。

 宗易様は、というよりも俺の知る戦国乙女の方々はこういったことは絶対に譲らない。礼をしたいと思ったなら必ずそうする。半ば押し付けるような形になる方もいるので、そこが困り物だと思うが。

 

 以前までの俺であればそういったことは嫌がっていただろうが、ヨシテル様の忍となってから随分と慣れてしまった。順応せざる負えなかったとはいえ、随分変わったものだと思う。

 それ以外にも変わった所があるのを自覚している身としては、そんな自分自身に呆れてしまうところもあったりする。

 それよりも今は宗易様から頂いた装束に着替えなければ。

 

 白を基調とし、ヨシテル様と同じような意匠が施されているこの装束だが、脚甲は軽く薄いが頑丈であり動きを阻害することはない。手甲は暗器を仕込めるようになっており、忍の身としては有り難い。

 コートは鋼線が仕込まれているようで刃を通し難い作りになっていて、いざとなれば義昭様に羽織ってもらうだけで多少なりと安全になるのではないだろうか。それにしてもコートというのは、もしかするとヨシテル様のマントに近いような何かを選んだ結果なのかもしれない。

 ヨシテル様のような鉢金というかカチューシャのような物はないが、何故か髪飾りが入っていた。丁度両の耳付近に付けるようになっていて、何処か機械的な印象を受ける。だがこっそりと足利家の家紋である足利二つ引きが刻まれている。なんというか、細かいところまで気を使っているようだ。

 おかしなところはないか姿見を使って見て確認するが、大丈夫そうに思える。ただ……コートの時点で忍らしさはだいぶなくなっている。髪飾りもなんだか落ち着かないし……いや、それは後だ。とりあえずお披露目としよう。

 

「着替えましたが……忍らしくないですよね、これ。いえ、普段から忍だと一目でわかるような格好は控えていますが……」

 

 部屋を移動して、披露するのと同時にそうした感想を口にする。似合ってはいると思う。だがどうにも慣れない格好なので違和感を覚えてしまう。

 

「まぁ……!似合っていますわね!それに男性が髪飾りを、なんて少し思いましたが素敵ではありませんか!

 なるほど……こういうのもありだと覚えておきますわ!」

 

「ふふふ……思った通り結城様に似合っていますね。それにその格好であればヨシテル様の隣に並び立ったとしてもとてもお似合いの二人に見えるはずですよ」

 

 何やら絶賛されているが、少し照れくさい。それとなんというか……ヨシテル様の隣に並び立つ。というのは俺の在り方からして少し違うような気がする。

 ヨシテル様がそうするように、と言うのであれば話は別なのだが。

 

「さて、では次に二条御所に戻る際にはそれで戻ってもらいましょうか」

 

「そうとなれば……駿河に居る間もその格好でお願いしますわ。慣れなければなりませんものね」

 

「そうですね。着慣れてしまえば今よりもしっかりと着こなせるでしょうし……

 あ、同じ物を幾つか用意してありますので、そこも大丈夫ですよ」

 

 どうしてだろうか。俺を置き去りにして話が進んでいる。それどころか何やら二人で盛り上がっているようで、微妙に放置されてしまった。

 ただそうして俺を放置しながらも話している内容がどんな服を着せようか。と言うものなのでまだまだ着せ替え人形にならなければならないらしい。

 困ったものだと思ってついため息を零し、そこでふと思う。この格好で戻るということは、一体どんな反応をされるのだろうか、と。

 ……似合っていないと笑われたり、主を真似た格好をするなどと、呆れられたりしないか聊か心配になってしまったが……もはやこれで戻ることが決定事項となっているようなので、諦めるしかないのかもしれない。

 しかし……ヨシテル様やミツヒデ様にそうされるのは耐えられる。だがもしそれが義昭様だったら耐えられる気がしない。とりあえずは義昭様に笑われたりしませんように、なんて祈ることにしよう。




絶対にヨシモト様のファッションショーはコスプレ大会で、普通のファッションは二の次だと思う。
でも仕方ないね、アホの子だもんね。

ヨシテル様の戦装束モチーフの、オリ主が着た装束はざっとしたイメージなので各自で脳内補完推奨。鉢金やカチューシャはしないのであえての髪飾り。
イメージが曖昧な場合はとりあえずヨシテル様モチーフの装束を着ていると思ってもらえれば良いのかな。
尚、所謂オリ主の2Pカラーくらいのつもり。
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