目を開いても何の光景も写らない。自分の姿は確認出来るが周囲は何も見えない。
一体どうしてこうなっているのか、と考えてみるが多分夢でも見ているのだろうという結論に至った。あの程度の傷と出血量では死ぬとは思えない。ならば意識を失っている間に見ている夢。ということである。
だが随分と妙な夢だ。夢を見ていると認識出来ているうえに意識がはっきりとしている。一体どうしてだろうか。
そう思いながらふと遠く見ると暗闇の中で薄らとだが光が見えた気がした。このまま立っているわけにもいかず、仕方なしにそちらへと歩いてみると先ほどまでは薄らとしか見えていなかった光が急に大きくなった。
その光へと向かおうとしてから数歩歩いただけだったのだが……まぁ、夢の中であれば何が起こってもおかしくはないのかもしれない。そう考えて歩くといつの間にか目の前に光の正体であろう、黒い燐光が溢れている大きな結晶が現れた。
ただ、その中には何故かカシン様が閉じ込められており、俺に気づいた途端に憎悪に塗れた表情へと変わった。そして何事か叫んでいるが良く聞こえない。どうしてだろうか、と考えていると先ほどまでは見えなかったがその結晶は鎖で雁字搦めにされており、その鎖には幾つもの札が貼り付けられている。そして周囲を囲むように柱が五つ立っていて丁度五芒星の形に配置されている。
その全てに見覚えがあり、これは奥方様の扱う封印術と同じだった。というかカシン様が封印されている状況で意味のわからない夢となるとなんとなく察してしまう。
この封印されているカシン様はきっと、呪いの起源であるカシン様の憎悪そのものなのだろう。周りの封印術はそのまま俺の中で封印されていることを表していると考えれば良い。となればただの夢ではなく、俺の精神の奥底とかそんな感じなのだと思う。
そうなった理由は普段眠ってから夢を見るよりも、大量の血を失って気絶してしまったせいで少しばかり死に寄ったから自分の精神の奥深くにやってきた。とでも考えれば良いのだろうか。
ただ、これを見たからといって何か出来るというわけではない。封印術自体は奥方様によって簡単に解けるような柔な術にはなっていないし、俺がこれを更に強化する。というのも不可能だ。俺にそこまでの力はない。
しかしこのまま放置しても良いのだろうか。結晶から溢れている黒い燐光を見ていると嫌な予感がしてしまう。一体どうすれば良いのか、考えているとふと左手に何かが当たる感覚があった。確認してみるとそれはヨシテル様から頂いた大典太光世だった。夢の中にさえ持ち込んでいると考えるのか、夢のだからこそ突如現れたと考えるのか。ちゃんと自分の持ち物を見ていなかったので判断が出来ない。
だが自分の意識とは関係なく、大典太光世を鞘から抜き構える。そしてそうすることが正しいのだと、そうするべきなのだという予感の元に結晶から漏れ出てくる燐光を切り裂くように振るえばその瞬間から燐光は漏れ出すことがなくなった。
ただそれを見ていた憎悪の表情がより凄惨なものへと変貌する。こんな貌はあの日カシン様と戦った時でさえ見ることはなかったが、直視するに耐えない恐ろしいその表情はあのカシン様の憎悪そのものであると思えば納得してしまえる。
まぁ、それでも燐光が漏れることがなくなり、安堵の感情を覚える。そしてそれと同時に意識が浮き上がるような、奇妙な感覚がするがどうやら目覚めが近いらしい。自分の精神の奥底にとんでもないものが封印されていることを再認識出来たことを考えると今回の体験は悪いことではなかった、のかもしれないが……それ以上にあれを見てしまっては不安を覚えてしまう。自分は随分と恐ろしい物を封印したものだと。
ただそれでも、今回は運良く嫌な予感がした燐光を止められたので良しとしても良いのかもしれない。
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目覚めて最初に目にしたのは何もない天井だった。体を起こして周囲を確認するとどうやら俺に与えられた部屋に運ばれていたようだった。
枕元には大典太光世と無残な姿となった宗易様から頂いた装束が置かれていた。大典太光世を抜いてみればヨシテル様の雲切を受けたというのに折れるどころか刃こぼれ一つしていない。強い霊験を宿しているからかはわからないが、驚くほどに頑丈なようだ。まぁ、ヨシテル様から頂いたその日に折れるようなことにならなくて本当に良かった。
ただ、同じように頂いてそう日数が経っていない装束を使い物にならないようにしてしまったことに罪悪感を覚える。しかしそれ以上に、これがなければ俺は死んでいた可能性が非常に高いので感謝の念を抱く。今度宗易様と顔を合わせることがあれば御礼を言わせて貰おう。
とりあえず目が覚めたからにはさっさと起き上がろう。きっと血が足りないだろうから増血剤を飲んでおかなければ。それと食事に気をつけておけば早い段階でいつも通りに動けるようになるはずだ。
そして現在着ているというか、着させられているというか、随分とゆったりとした浴衣なのだがさっさと着替えてしまおう。普段からきつめのインナーを着ているせいかこういった余裕のある浴衣は苦手だ。
そう思って宗易様に頂いた装束の替えを取り出して着替える。普段の格好でも良いかと思ったのだが、今からすぐに任務に就くわけではないし、これに助けられたと思うと念のために着ておきたくなる。これを機に普段の服装も同じように防刃仕様に変えてしまおうか。それとこれのコートに編みこまれている鋼線も里の物を使ってより強固にしてしまうのも悪くないかもしれない。
しかし、最近こうしてしまおうか、ああしてしまおうか、こうしても良いかもしれない、ああしたら良いかもしれない。と思うことが多い。優先順位を決めて実行しないとどれにも手を付けられなくなりそうだ。とりあえずは任務をこなしながら出来ることをやっていこう。
そうして着替え終わってから無残な姿になった装束を見る。ぼろぼろになっているわけではないので多分修繕出来るはずだ。里に戻ってから新しい鋼線を使って修繕と言うか改修をしておくつもりなので納めておく。どうやら俺が意識を失っている間に誰かが洗ってくれたようで血や泥がついてないのは非常に助かる。血は時間が経って固まると簡単には落ちなくなるからそこを心配しなくて良いのは個人的には嬉しい。
そんなことを考えながらふと大典太光世を見ると、先ほどの夢を思い出す。自分が思っている以上に危険な物を抱え込んでしまったものだと思うと同時に、ヨシテル様から頂いたこの大典太光世がとても心強く思えた。夢の中とは言えあれを斬ってしまえる程の力を宿している。
……まぁ、本当に夢でしかないことであり、あれが俺の精神の中。という仮定が間違っている可能性はあるので実際のところはなんとも言えないが。
とりあえずそんなことは置いておくとして。それくらい眠っていたのかわからないのですぐに確認して場合によっては任務に戻らなければ。出来ることなら遠乗りだとか色々やりたいことはあるのだがそれは仕方のないことだ。ということで早速行動に移そうとしたところでスパーンッと良い音を立てて襖が開いた。
「お前は一体何をしているんだ結城!!五日も眠り続けていたのだからまだ大人しくしておけ!!」
「五日……あ、それならすぐに甲斐に向かいますね」
「大人しくしておけと言っているのがわからないのか!!」
たかが五日眠っていたくらいならすぐに動けるはずだ。血が足りないかもしれないがある程度は誤魔化せると思う。というわけですぐにでも出立の準備をしなければならない。
「大体お前が五日も眠っている間にヨシテル様や義昭様がどれだけ心配したかわかっているのか!それだというのに起き上がって早々に任務だと!?お前は一体何を考えているんだ!そこに座れ、説教をしてやる!!」
「そんなことをするよりも早く出立した方が……あ、当然先にヨシテル様と義昭様に無事であると報告はしますが」
「良いからそこに座れ!!」
そう言って俺の肩を抑えるミツヒデ様だが普段からは想像が出来ないほどに力が強い。抵抗しようとしても徐々に押し込まれるというか、無理やり座らされてしまった。
「正座だ」
「正座とか言いながら力ずくで座らせるとかやめてもらえませんか肩が痛いんですけどって辞めてください力を込めないでください本当に痛いんですけどこれ!」
「大人しく正座をしろ」
「します!しますからとりあえず手を放してくださいミツヒデ様!」
これ以上やられるのは御免だと思って正座をするとミツヒデ様は手を放してくれた。そして腕組みをしてうむ。とでも言うように一つ頷いてから口を開いた。
「まずお前はもう少し自らを大事にしろ。お前自身が思っているよりも、お前はヨシテル様や義昭様にとって大切な存在となっているのだからな。今回は特にヨシテル様は自分のせいで結城が倒れたと自責の念に駆られてしまい酷く落ち込んでいたし、義昭様は時間さえあればお前が目覚めないかと見舞いに来ていた。
それを聞いても結城は今すぐに任務のために出立すると?」
「あ、いや……それはなんというか……え、こういう場合ってどうするのが良いんでしょうか。
里では五日眠っていても起き上がれば軽く体調を診てからすぐに動いてましたし、竜胆たちも平然としてませんでしたか?」
「お前の出身である里は一体どうなっているんだ……
いや、確かに竜胆や鈴蘭は頭領であればいずれ目を覚ますから問題ないと言っていたし、睡蓮にいたっては結城が何時目覚めてどういう行動に出ようとするか言い当てて見せたが……」
「人にもよりますけど俺は里の中でも相当きつい修行をしていましたから。
それで、ですね……こう、そこまで心配されたりすることが幼少期以来なかったので一体どうしたら良いのかわからなくて……えっと、ヨシテル様と義昭様には一体どうすれば良いのか……」
毒への耐性を付ける為に毒を飲んで寝込んだり、修行のし過ぎで倒れて数日目が覚めなかったり、師匠の忍術をまともに喰らって意識どころか死に掛けたりしたときもそこまで心配されなかった。いや、心配はされていたがヨシテル様や義昭様ほど心配はしていなかったはずだ。まぁ、里には優秀どころか天才とも言える薬師がいたから、ということもあるのだろうけれど。
そのせいか、ミツヒデ様が言うほどに心配されてしまうとどうしたら良いのかまったくわからない。徳川様には多少心配をかけてしまっても良いという話もしたが、ここまで心配をかけるつもりなどはなかったのに。
「はぁ……普段は常識人の癖にどうしてこう特殊な育ち方だったり、妙な考え方で生きていたりするんだお前は……もはや呆れて言葉も出ないな、これは……」
「あー……それは申し訳ありません……」
「まったく……申し訳ないと思うのであればもう少し大人しくしていろ。
結城が目を覚ましたことを聞けばヨシテル様と義昭様は多少は安心するはずだ。それとすぐに任務に就こうなどとは思うな。まずはあのお二人を安心させることが最優先だ、良いな?」
「……はい、わかりました」
どうしようか、割と本気で凹んでしまいそうである。というか凹んでいる。
まさかそんなに心配されると思っていなかったし心配させる気もなかったし気を失ってしまったが目の前で治療はして見せたし比較的冷静そうだったミツヒデ様に後のことはお願いしてあったし……というかそうだ、お願いしたはずなのだ。
「あの、ミツヒデ様?俺が気を失う際に後のことはお願いします。と言ったはずなんですけど、そこのところはどうなったんですか」
「あぁ、竜胆を呼んで部屋に連れて行かせて鈴蘭を呼んでヨシテル様と義昭様の護衛について話し合いをし、睡蓮を呼んで念の為に結城が眠っている間に治療を進ませておいたぞ」
「それはとてもありがたいんですけど、そうじゃなくてですね……」
「そうだ、その装束についてだが睡蓮が見事に血を落としていたな。それと頭領であれば里の鋼線を使って改修でもするだろうからとそれの用意もしておくと言っていたな」
「あ、本当ですか。ではまた後ほど睡蓮のところへ受け取りに……って違いますってば。俺が言いたいのはそっちじゃなくて」
「ん、後は竜胆がこれを機に頭領は暫く休むべきとも言っていたな。どうやら結城は自分の状態がどういうことになっているのか気づいているらしいが、多少休んだくらいで悪化はしないだろうからな。ついでに鈴蘭からは暫く任務のことは忘れて忍としてではなく頭領個人、結城という人間として過ごすのも悪くないと伝えて欲しいと言われていたか。
うむ、そうだな。ヨシテル様には私から掛け合っておくから結城は暫く休め。どういう意図であの任務を命じられたかわかっているのだから、急ぐ必要がないこともわかっているだろう?」
「くっ……こういう時は流石に竜胆たちも兄弟子姉弟子として振る舞ってきますね……!!」
実力で言えば俺の方が上であることは理解していて、分隊長として任務をこなして来たためにちゃんと命令に従ってはくれる。それでもこうして何かあると兄弟子姉弟子として俺に接するのだ。俺は師匠が里長になる前に取った最後の弟子であるから仕方ないのだが、こういうのは恥ずかしいのでやめて欲しい。
それに里に戻れば他の兄弟子姉弟子から色々と声をかけられるがその全てが弟に対するようなもので思い出すだけでも恥ずかしい。何時までも子供ではないというのに。
「なるほどな……あの困った弟を見るような目をそういうことだったのか……」
「確かに、確かに里ではだいぶ無茶な修行もしてきましたがそういう目で見られるの嫌なんですよ!
というか何で俺の兄弟子と姉弟子は揃いも揃って俺の事を弟扱いするんですか!普通は後輩扱いとか、そんな感じじゃないんですか!」
「私に言われても困るんだが……いや、それにしても結城が弟扱いか……」
「どうしてそこで優しい顔つきになってるんですか」
「ふふ……すまないが、そうした扱いをされている結城が微笑ましくてな。
結城はヨシテル様に非常に信頼されていて正直嫉妬の念を禁じえないし、何故か義昭様に兄のように慕われている。そのことについて思うことも多々あるがその分今の結城の状態や扱われ方を見るとどうしてもな」
「俺が言えたことじゃありませんけど随分と良い性格してますね」
「結城が相手だからな」
そう言ってから楽しげに笑うミツヒデ様を見ると少し前よりも俺に対する態度が柔らかくなったような気がする。もう少しツンツンしていたというか、距離があったというか、それなのに一体どうしてだろうか。
怪訝そうな顔をしていたせいか、そんな俺の疑問に気づいたのかミツヒデ様が咳払いをしてから少し顔を逸らし、教えてくれた。
「ま、まぁ……なんだ。当初は警戒していたせいで態度がきつかったのは自覚がある。それに最近でさえその、ヨシテル様から信頼されていることで嫉妬していたことと、義昭様にあれほど頼られていて慕われているのがどうしても納得できなかったからな。そうした理由で結城に対する態度がずっときついままだった。
ただ、以前からそれは直そうとはしていたのだぞ?これでも、私は結城のことを大切な仲間だと思っているからな……」
段々と声が小さくなっていったが、ミツヒデ様の言いたいことはわかった。まぁ、確かに特定の主を持たない傭兵のような忍を最初から信用することなんて出来ないだろう。だから警戒をしていて態度がきつかった。
そして個人的な感情で今まで態度を改めることが出来なかったがこれからはきつい態度を取ることもなくなって来るのではないだろうか。まぁ、すぐには無理だと思うので暫くはあまり変わらないかもしれないが。
それにしても、大切な仲間だと認識してくれていることが素直に嬉しい。
「俺もミツヒデ様のことは大切な仲間だと思っていますよ」
なのでちゃんと言葉にして伝えておこう。
「そ、そうか……いや、あれだな、こう……少し、照れくさいな、こういうのは……」
視線を逸らして、頬を人差し指で小さく掻きながら言ったミツヒデ様の頬は少しばかり赤くなっていて、言葉どおりに照れくさくて仕方ないのだろう。
「そうですね……あ、大切な仲間ですし、ヨシテル様や義昭様に対する行動についても大目に見てくれるとありがたいのですが……」
「それは無理な話だ。ヨシテル様とお揃いだとか、義昭様に兄のように慕われているとか、あまつさえ義昭様に兄上と呼ばれていることとか、話をしなければならないことは幾らかあるからな」
「なんでそれ知ってるんですか」
「お前が気を失った時に義昭様が兄上と叫んでいたからだ。義昭様に理由は聞いたが、それでもやはり本人と話をしなければならないだろうと思ってな」
「ならそれで納得してください。義昭様がそう望まれた。なら俺はそれに応えるだけです」
「……まぁ、それで良いだろう。別の意味があるようならば少々手荒な話し合いになったかもしれないが……いや、しかしどこぞの馬の骨にヨシテル様を任せるよりは……」
手荒な話し合いってなんだ。というか動けはするが万全の状態ではない俺相手に何をする気だったのだろう。それと後半はなんと言ったのか何故か良く聞こえなかった。まだ体調が万全ではないからだろうか。
一切感情を伺うことの出来ない目をしているミツヒデ様に内心慄きながら、そういえばと話を戻す。
「そ、そんなことよりも話を戻します。後のことを頼みます、というのはヨシテル様と義昭様への説明というか、俺は平気だということを伝えて欲しかったのですが……
あれだけ冷静で、竜胆たちの様子を見たミツヒデ様であればそれくらい察してますよね?」
「あぁ、そのことか。ちゃんと説明したぞ。
結城は気を失っているだけでいずれ目を覚ますことも、心配せずとも結城であればすぐに元気な姿を見せてくれるとも。まぁ、それなのに五日も経ってしまったせいでその言葉も意味を成さなくなったが」
「…………え、ってことは完全に俺のせいだったりします?」
「まぁ、そうなるな」
完全に自業自得であった。いや、俺の予定としては精々二三日で目を覚ますと思っていたのだが、きっとあの夢のせいで目覚めが遅れたに違いない。おのれカシン様、なんという嫌がらせをしてくれるのだろうか。
そんな八つ当たりを内心でしながらとりあえず二人に謝って数日大人しくしておくことを明言するべきなのだろうか。話を聞く限りでは落ち込んでいるヨシテル様を励まさなければならないし、いつも見舞いに来ていたという義昭様が安心するまでは安静にしておく必要があるのかもしれない。
それから、竜胆と鈴蘭と睡蓮は許さない。ミツヒデ様にはすぐに目を覚ますくらいのことで他のことは言わなくても良かったのにわざわざ伝えたのだ。絶対に許さない。
「まったく……私も多少であればヨシテル様と義昭様に口利きをしてやるから、大人しく心配をかけたことを謝って暫く安静にしていろ、良いな?」
「う、く……なんでミツヒデ様まで竜胆たちみたいな目になっているのか甚だ疑問ですし釈然としませんが、わかりました。そうします……」
ミツヒデ様が意図的にそうしている訳ではないだろうが、竜胆たちや里の兄弟子姉弟子と同じような優しい目になっている。非常に居た堪れなくなる。
「さて、では私はヨシテル様と義昭様を呼んでくるから大人しく待っているんだぞ?」
「そういう子供というか、まるで弟に言い聞かせるみたいなの本当にやめてもらえませんか?」
「ふん……皆に心配をかけた罰だ」
不機嫌そうな言葉だったが、その実楽しそうに笑っていたのでなんとも言えないが……心配をかけたというのは本当のことなので何も言い返せなかった。
ただ、ミツヒデ様の態度が随分と柔らかいものに変わっていたのでそのことを思えば差し引き零として今回の扱いに関しては諦めても良いのかもしれない。良くないけれど、良いと思うしかない。
それにしてもこの後にヨシテル様と義昭様が来ると考えると少し憂鬱になる。普段であればそんなことはないのだが今回は盛大に心配をかけてしまった以上それについての対処が大変なことになりそうだ。
だから少しして遠くから聞こえてきた慌しい足音にため息をついてしまったのは、きっと仕方のないことなのだろう。
ミツヒデ様との和解回。尚、険悪になったりしてことはほぼない模様。
ミツヒデ様は地味に不器用なところがあるので一度きつい態度を取った相手との距離を縮めるのが苦手そう。そしてそのまま態度を変えられないまま時間が経っていく。
けど何かきっかけがあればその問題も解消出来る。とかいう妄想の産物。
ところで花でミツヒデ様いないってどういうことでしょうね。
ヨシテル様と組むのならミツヒデ様が適任だと思うんですよ、あの人はヨシテル様LOVE勢ですし。