京へと戻り二条御所へ、ではなく町中を散策を行うことにした。
本来であればすぐにでも戻って報告をしなければならないのだが、小早川様の言葉もあってか今からヨシテル様と会うということにどうしてか躊躇いがある。なので散策をしながら少しだけ落ち着こうとしている。
ただなんとなくの散策でもしていればこの奇妙な躊躇いもなくなるだろう。ただ問題があるとすれば俺が何の目的もない散策という物をしたことがない。ということだ。
いや、したことがないからこそ気が紛れるのかもしれない。とりあえずはふらりと歩いて回ってみよう。別に疚しいことがあるわけではないので特に変化は使用しない。ヨシテル様からは急を要するような件でなければ戻ってきた際に町を回っても良いと言われている。
ただ、今まで一度としてそうしたことはなかったのだが……一応許可は出ているのだから気にしないことにしてよう。
そうして散策をしているがやはり色々な人に話しかけられる。分かりきっていたことなので普通に対応しながら「たまにはこうして散策をするのも悪くありませんから」なんて言っておく。
皆が皆珍しい物を見るような目をしているがそれは仕方が無いことか。それにしても、そういう話を店先などでしようものなら話をした後に必ずあれを持って行け、これを持って行け、と色々と貰ってしまった。俺個人に、というよりもヨシテル様や義昭様へのお土産としてだ。
その厚意を踏みにじるようなことは出来ないので有り難く頂戴しておく。これは二条御所に戻った際にヨシテル様に渡すなりしよう。まぁ、ヨシテル様だけではなく義昭様やミツヒデ様にも渡すのだが。
そんなこんなで歩けば歩くだけ色んな物をもらってしまい、ヨシテル様たちは本当に民に愛されているな。と実感しつつも流石にこれは多すぎやしないか、と思ってしまう。いや、どう考えても多い。どれだけ愛されているんだあの方たちは。
内心でその事実に慄いていると背後から声を掛けられた。
「あれ……結城様、ですよね?」
「その声はコタロウ様ですか?」
振り返ればそこにはいつか見た着物を着たコタロウ様が立っていた。
「珍しいですね、お一人で町中を歩いているなんて」
「まぁ……ちょっとした気分転換にでも、と思いまして。急を要するような件でなければ多少は町を回ってから報告をしても良い、と言われていますからね」
「そうなんですか……あ、それでしたら一緒に回りませんか?」
「構いませんが……今のコタロウ様の隣を歩くのに、この格好というのは申し訳ない気持ちになりますね……」
可憐な格好をしているコタロウ様の隣を、いつも通りの黒装束で歩くというのは本当に申し訳ない。まぁ、見方によっては良家のお嬢様を守る忍のように見えなくもない、はず。いや、それよりもいっそのこと着替えてしまおうか。
誰にも感知出来ないとはいえ、流石に町中で着替えるというのはやりたくないので何処か人の居ない場所にでも飛んでから着替えれば良い。それに町のあちらこちらに部下からの報告を受けたり出来るようにと、念のために空き家を用意してある。そちらに向かおう。
「コタロウ様、少々お待ちいただけますか?」
「え、はい、構いませんけど……」
その言葉を聞いてすぐさま空き家へと飛んで宗易様から頂いた装束へと着替えてから再度飛ぶ。
時間にして一分にも満たないことだが、それでも待たせたことに変わりはない。
「お待たせいたしました。これならば、まぁ……隣を歩くとしても問題はないでしょうね」
「……結城様が白い……」
「町の子供たちと同じ反応するのやめてもらえません?」
「えーっと、あーっと……よ、ヨシテル様とお揃いみたいですね!」
「町の大人たちと同じ反応するのやめてもらえません?」
「えぇ!?だ、だったら、えっと……ふ、普段は黒を基調とした服ばかりですけど、白も似合いますね!」
「ありがとうございます。まぁ、ヨシテル様とお揃いというのも事実なのですが……そこは気にしないでください。これはあくまでも頂き物ですので」
「あ、そうなんですか?それってもしかしてヨシテル様からの贈り物でしょうか?」
「いえ、宗易様……千リキュウ様より頂いた物です。どうにもヨシテル様とお揃いで着て欲しい、とのことでしたので……恐れ多いと一度断ったのですが、ヨシテル様もこれを良しとしていますからね……」
忍がこのような格好で良いのか、と思うのだがヨシテル様の言葉である以上は逆らえない。特に逆らう気もないのだが。ただ、宗易様に言われた当初はヨシテル様がこれを着るように、と言うとは思っていなかった。
目立つような格好は慎むように、とか言われると思っていたのに……まぁ、ヨシテル様も義昭様も気に入っているようなのでそれならば別に良いか、とも思っている。
「なるほど……さっきも言いましたけど、結城様は白も似合いますから良いと思いますよ。
普段が普段ですから、対極の色ですけど……もしかしたら黒よりも似合ってるかもしれませんね」
「黒は見慣れている、という程度ですからね……しかし、そうですか。白の方が似合っているかもしれないのなら、そういう格好をしてみるのも良いかもしれませんね。当然、任務外でのことですが」
「あ、なら今から呉服屋にでも行ってみませんか?善は急げ、思い立ったが吉日と言いますからね!」
「そうですねー……特に予定もありませんし、それで良いかもしれません。では……普通の呉服屋ではらしくありませんから、少し変わった道具屋があるのでそこに行きましょうか」
「少し変わった、ですか?というか道屋なのに服を売っているんでしょうか?」
「はい、色々と扱っていますよ。どのような道具屋なのか、それは行ってからのお楽しみということで」
疑問符を浮かべるコタロウ様を連れて件の道具屋へと進路を取る。
行ってからのお楽しみ、なんて言ってはいるが着物などで言えば今川様が好むようなコスプレ衣装から南蛮の服、当然のように置かれた着物などを幅広く取り扱っており、普通の日用品であったり呪具や忍具などが置いてあり、必要とあれば店主が道具を作成する変わった道具屋である。
どうでも良い情報として、俺や竜胆、鈴蘭に睡蓮と言った里の忍は全員常連だったりする。必要な道具はこの道具屋で大抵揃うのだから当然と言えば当然である。
話を戻して道具屋であるが、品揃えが変わっているだけではなく店主も変わっている。置かれている品は正規に取り揃えている物だけではなく、何処からか拾ってきた使い道の分からない品なども置いている。そして最も変わっているのは、そうした商品の多くが店主のコレクションであったり、売っている品を気に入ったからと非売品にしてしまうことが多いのだ。
本人曰くほとんど趣味でやっている店とのことで、商売をする気があるのかないのか良くわからない。それでも、その品揃えから足繁く通う常連が多いようで売り上げはそれなりにあるらしい。
まぁ、それでも本人はそうして得る金銭を喜ぶよりも手放した後でやはり手元に置いておくべきだったか、と後悔したりしているのであまり金銭に関しては頓着していないようにも思える。
それに一応珍しい物を買い取りもしてくれるが使えるか使えないか、綺麗か綺麗でないか、というような判断基準ではなく気に入るか気に入らないかで買い取りの値段が変動するのもそうして金銭に頓着していないように思える原因だ。
そんな道具屋へと続く道をコタロウ様と並んで歩いているが、お互いに無言で歩くのもどうかと思い軽く話題を振ってみることにした。
「そういえばコタロウ様はどうして京に?」
「実は結城様に以前頂いたカステラとチョコレートのお礼を、と思いまして……二条御所を訪ねた時には不在でしたから数日滞在して会えれば良いな、と思っていたんです。
ヨシテル様からも許可は頂けましたからね。それでとりあえず今日は町を散策しようかな、と思っていたら丁度結城様を見かけたんです。お礼は、その……二条御所に置いてあるので今は渡せませんが……」
「そういうことでしたか……お礼なんて、気にしなくて良かったんですよ?」
「いえ!頂いてばかりなんてダメですよ!ちゃんとお返しをしないと!」
コタロウ様は何やら気合に満ち溢れているようで、何が何でもお返しをする。という気迫を感じる。気合の一撃にもこれくらいの気合が込められていれば……たぶん小早川様くらいならまともに当たった場合は倒せるのではないだろうか。他の方であれば当たっても倒せないと思うが。
「それに、今までもお世話になりっぱなしですから、ボクに出来る精一杯のお返しをしないといけませんよね!」
「お世話になりっぱなし、と言われても……そこまでしてないような気がしますが……」
「結城様にとってはそうかもしれませんけど、ボクにとってはずっとお世話になってるんです。
具体的に言えば、初めて顔合わせをして一緒に仕事をした時からですよ?」
「本当に最初も最初じゃないですか。それって俺がヨシテル様に雇われた翌日ですよ」
「はい!その日からお世話になってます!
初仕事ではボクが敵兵の攻撃を受けそうになったのを守ってくれたの、覚えてますか?」
「……目の前に斬られそうになっている方がいたのでとりあえず敵兵の首を刎ねたのは覚えていますが……」
「それ、ボクですよ。結城様はあまり気にせずに敵兵を倒しただけ。と思っているかもしれませんが、ボクは確かに結城様に助けられたんです。
それ以外でも一緒に仕事をすると油断した時とか、失敗した時とか、その度に結城様に助けられたり手を貸してもらったりしてました。
…………その顔は本当に覚えてないんですね……いえ、結城様にとっては一々気にするほどのことでもなかったのかもしれませんが、助けられた方はしっかり覚えてるものなんです」
本当に覚えてなくて、果たしてそうだっただろうかと思い出そうとしていたらコタロウ様に少しだけ悲しそうな顔をされた。いや、本当に申し訳ないと思っているのだが、思い出せないのだ。
確かに誰かが斬られそうだったから敵兵の首を刎ねたし、危なっかしい誰かを助けたり手助けをしたりはした。それがコタロウ様だと言われてもすぐにはピンと来ない。
ただ、それだけ覚えているということは本当にコタロウ様なのだろう。
「だから、結城様が覚えていなくてもちゃんとお礼がしたかったんです。
その、用意した物はそんなに立派な物ではありませんけど……えっと、それ以外でもボクに出来ることがあれば何でもしますよ!」
「ん?今何でもするって言いましたよね?」
「え?あ、はい。ボクに出来ることでしたら、任せてください!」
「ならばいずれ義昭様の手合わせの相手をお願いします。今はまだ素振りなどをしていますが……いずれはそうして実戦形式で、となりますので。
ヨシテル様や俺が相手をすることもあるでしょうが、人や武器が変わるだけでも良い経験になるはずです」
「そういうことでしたか……わかりました。ボクに務まるかわかりませんが、精一杯義昭様の手合わせの相手をさせていただきます!」
「ええ、その時が来たらお願いします」
特に俺が受け取りたいお礼というのはないので、義昭様との手合わせをお願いしておく。いずれは必要になるし、ヨシテル様や俺では確実に手加減をすることになる。なので、こうしたことをお願いできるある程度の実力者であるコタロウ様を頼るのだ。
こういう言い方はどうかとも思うが、義昭様には今のコタロウ様より強くなってもらいたい。最低限自分の身を守れるくらいにならなければ、将軍となる身としては不甲斐ないだろう。まぁ、ヨシテル様を越えることを目標をしているのだからコタロウ様を相手にして挫けるようなことはないと思うが……それはそれ、剣術やこっそりと忍術を教えている身なので少し厳しくやっていかなければならない。
「あ、でもそれだけだとボクとしては足りないと思うんですけど……それって義昭様のために、ですよね?
ボクとしては結城様の為に何かしたいなぁ、って……」
「俺としてはもう充分かと思いますが……むしろ義昭様の手合わせの相手を頼んでいますし、俺がお礼をすべきかと。下手に義昭様に怪我を負わせるようなことがあれば、それはそれは大変なことになりますし」
「うっ……そう言われると、実は大変なことを請け負ったような気が……」
「事実大変なことですからね。大丈夫ですよ、ある程度の怪我は俺が治せますし、睡蓮なら俺以上に医療忍術に長けていますから余程のことがない限りは何とかなりますから。
それに義昭様も幼いとはいえ男の子です。剣術の手合わせとなれば怪我をするくらいは覚悟してくれますよ」
「そうだとしても、主君の弟君に怪我をさせる。なんて考えたくもありませんよ……」
その気持ちは良くわかる。だが必要なことなので誰かがやらなければならない。今回こうして頼んだのには戦国乙女であり日々鍛錬を続けているコタロウ様であれば多少の手加減も出来るだろうという期待も込めている。
まぁ、ヨシテル様や俺が外から見ているのであれば、いざとなれば止めることも出来るのでそこまで大変ということもないだろう。俺なら酷く離れた場所からでも間に入って止めることが出来るので少し脅しすぎな気もするのだが。
「で、でも!ボクだって手加減とか、怪我させないようにとか、頑張れば出来るはずですから任せてください!
それで、結城様の為に何か、って話ですけど……」
「だからそれはもう充分だと……」
充分だ、と言ってもコタロウ様は納得してくれない。現に不満そうな顔をしているので、これ以上言ったとしても意味がないのかもしれない。で、あれば何か適当にお願いするかしなければならないのかもしれないが特に思いつかないのが現状である。
「むぅ……」
「そう拗ねないでくださいよ。まぁ……どうしても、と言うのであれば……少し聞きたいことがありますから、それに答えてくれませんか?」
「あ、はい。えっと、何に答えれば……?」
「とある方に俺はもう少し自分の気持ちに素直になるように、とか言われてしまいまして……」
「自分の気持ちに素直になる……あぁ、なるほど。
そうですね、結城様はもう少し素直に……いえ、自分の気持ちを理解するべきだと思います」
「コタロウ様までそんなことを言いますか」
なんだ、そんなことか。とでも言うようにコタロウ様は軽く言ったが……なんだろう、そんなに俺は自分に素直じゃないとか思われていたのだろうか。
しかもそれが小早川様とコタロウ様と言うのがどこか納得出来ないような気がする。
「うーん……これはボクが言って良いことかわかりませんが……」
「構いません。何かわかっているのであれば聞かせてください。
……その方に言われてから、少しばかり考えてもよくわかりませんでしたし……まぁ、少し時間を取って落ち着いてから考えを巡らせようかとも思っていましたが……」
「…………結城様の場合は、そうすると可笑しな方向に思考が行くというか、余計に深みに嵌りそうですね。
わかりました、ではずばり言わせていただきます」
そう言ってからコタロウ様は足を止めて俺へと向き直り、真っ直ぐに俺を見つめた。それに習うように俺も足を止めてコタロウ様を見る。
「結城様は、ヨシテル様のことが好きなんですよ」
「え、はい。非常に好ましい方だと思いますよ。そうでなければ今頃別の方が一時の主になっているでしょうから」
「そういうことではなくて、結城様はヨシテル様のことが好きなんです」
「えっと……?」
何が言いたいのだろうか。確かにそうだと肯定しているのに、違うと言われてしまった。
「主として好ましいとか、そういうことじゃないんです。結城様はヨシテル様に恋をしている、ということです」
「…………は?」
「こういうのは本人が自覚するのが一番なんですけどね……でも結城様は自分で考えるだけだと絶対に理解出来ないでしょうし、仕方ありません。
もしかしたら、先ほど結城様の言っていた方は結城様がそういう方だと理解していなかったのかもしれませんね。理解しているのであれば、こうして指摘しているはずですし」
「えっと、コタロウ様?」
そう言ってからコタロウ様はまた前を見て歩き始めた。コタロウ様の言葉に動揺しながらも、その後に続く。
「結城様は何と言えば良いのか……そうですね、色々な事柄の外に自分を置いているような気がします。
ヨシテル様と話をしていても、義昭様の稽古の相手をしていても、ミツヒデ様とあれこれと相談をしていても、ボクとこうして町を散策していても、それらを自分に関係のあることだとしている結城様と、それらは自分とは関係のないものだとして淡々と見ているだけの結城様がいるような気がします」
「…………続けてください」
「ある意味で結城様の二面性と言いましょうか。多くの事柄に関わりながらその中心に近い位置に居続ける結城様と、額縁の中の絵を眺めるようにそれを見る結城様。人として人に関わる結城様と、忍として多くを客観的に見続ける結城様。
そうした二つがあるからこそ、結城様は誰かに恋をしても忍としての結城様がそれを否定して拒絶する。そんな感じですよ、きっと」
「自分ではよくわかりませんが……コタロウ様にはわかると?」
「わかりますよ。というか足利軍の人間であればわかる人も多いと思います。とりあえずヨシテル様やミツヒデ様の場合は剃れどころではなかったのでわからないかもしれませんが……結城様直属の忍三人は当然として義昭様もわかっているでしょうね」
「……確かに、義昭様であれば納得出来ますね……」
最近の義昭様は底が知れないようになってきているので、人の心情であったりその本人が知らないような内面についても察していたとしてもおかしくはない。それの対象が俺と言うのは少しばかり思うところもあるのだが。
それにしても、俺自身が気づいていない二面性か。それに俺がヨシテル様に恋をしている、と。
「こういう場合はボクがどうこう言ったところで結城様はきっと納得しないでしょうから、事実として伝えるだけに留めておきます。ただ……こういう場合はきっと、結城様の中にあるヨシテル様との思い出とか、そういうのを振り返ってみるといいかもしれませんね。
その思い出の中にあるはずですよ、ヨシテル様に恋をするきっかけになった思い出が」
「…………わかりました。いずれ、そのようにさせていただきます」
「いずれ、ではなく早いうちにお願いしますよ。自分の本当の気持ちと向き合うのって、大切なことですからね」
「早いうちに、ですか……努力はしてみます。
……しかし、コタロウ様も変わりましたね……」
「ふふ……ボクだって、日々成長してますからね!自分でも似合わないとは思いますが、こういうことだって言えるくらいにはちゃんと成長してるんです!」
「そうですね……本当に、俺が思っていたよりもずっとずっと成長していて、変わりましたね。
……今の俺の気持ちを言葉で表すなら……色々と見ていて不安が残る妹が立派に成長した姿を見た兄の気持ち、とかその辺りでしょうか」
本当にそんな感じだ。必要ないと思いながらもコタロウ様に護衛を付けたりしていたのは、何処か頼りないと思っていたからであり、今の姿を見る限りではそんなものは必要なかったと思える。
人が成長し、変わっていくのはわかっていたが……あのコタロウ様が此処まで変わり、凛とした姿を見せてくれるとは思ってもいなかった。だが、それもそうか。コタロウ様も立派な戦国乙女なのだから、それを思えば当然と言えば当然なのかもしれない。
「……あ、あの……結城様って、ボクのことを妹みたいに思ってたんですか……?」
「烏滸がましい話ではありますが……そんな風に思うことが何度かありましたね……」
事実として、ぱたぱたと嬉しそうに走り寄って来る姿を見て仔犬のようだと思ったこともあるが、里や町で見かける兄の姿を追う妹のようにも見えてしまったことがある。
いや、戦国乙女であるコタロウ様を相手に何を考えているのか、とも思うのだが……それを言ってしまえば義昭様には兄のように接しているし、その姉であり俺の主であるヨシテル様には恋をしている。とのことなので色々と恐れ多いような気さえしてくる。
「な、なるほど……で、でしたら!義昭様みたいにボクも結城様のことを兄さんって呼んでも良いですか!?
結城様はボクのことを妹みたいに思ってたってことは、それくらい問題ないですよね!ね!?」
「え、あの……なんでそんなに食いついてるんですか……?」
「そんなことよりも、良いですよね!?」
「え、えぇ……コタロウ様がそれで良いのであれば、構いませんが……」
「やった!それじゃ、今度から兄さんって呼びますね!あ、兄さんもボクのことは様なんてつけないでコタロウって呼んでくださいよ?」
順応が早すぎやしませんかね。いや、なんだかこの時を待っていた!とばかりに食いついてきたのでコタロウ様としては順応が早いというよりも心の準備は出来ていたとかそんなところなのかもしれない。
「はぁ……わかりました、コタロウ。でもどうして?」
「えへへ……実は義昭様が兄さんのことを兄上って呼んでるのを見て、羨ましかったんですよ。
ボクは一人っ子ですから兄が居たらきっとこんな感じなのかな、なんて思ってたので……でも、やっぱり思った通り良いですね、こういうのって」
「そうだったんですか……それにしても最近どうにも弟や妹が増えますが、流石にこれ以上は増えませんよね……?」
「んー……もしかしたら、妹なら増えるかもしれませんよ?兄さんは何て言うか、本当にお兄さんって感じがしますから」
「別に他人を弟や妹にして喜ぶ趣味とか持ってないんですけど……」
「そうだとしても、兄さんが良いって言ったんですよ?ボクはやめませんからね!」
言ってから嬉しそうに、楽しそうに笑うコタロウ様を見て、これ以上増えるのはどうかと思うがコタロウ様がこうして笑ってくれるのであればこれくらいは良いかもしれない、と思ってしまった。
それにしても義昭様が弟で、コタロウ様が妹か。本当に恐れ多いぞこれは。
「ほら!兄さんの言っていた道具屋に行きましょう!
案内してくれないと、ボクには道がわかりませんよ?」
「あぁ、はいはい。わかりましたから落ち着いてくださいよ」
「だって兄妹で買い物なんて、憧れてたんですから仕方ないじゃないですか!」
「……コタロウは純粋で良い子ですね。どうかそのままで居て下さいよ」
いや、本当に。変に捻くれたりせずに純粋なまま育って欲しいと思ってしまう。前からそう思っていたが兄と呼ばれるだけでよりそう思う辺り、本当に妹のように思っていたのだな、なんて再確認させられてしまった。
それにしても……俺がヨシテル様に恋をしている。だからそれをちゃんと理解する、本当の気持ちに向き合うためにヨシテル様との思い出を振り返れ、か。簡単そうに言ってくれたが難しいような気がする。まぁ……それでも可愛い妹に言われたのだから、ちゃんとそうしなければならない。それに本当に俺がヨシテル様に恋をしているのかどうか、俺自身信じられないので本当なのか確認したい。
ただ……コタロウ様と話をしているうちにいつの間にか気持ちは大分軽くなっていた。だからそのお礼としてコタロウ様には買い物をしっかりと楽しんでもらえるように気をつけなければならない。気をつけるまでもなく、きっと純粋なコタロウ様なら楽しんでくれると思うのだが。
コタロウ様妹にしたい。したくない?
個人的にボクっ娘ならお兄ちゃんとかよりも兄さん呼びの方がしっくりきます。
というわけでコタロウ様に兄さんと呼ばれるオリ主の話。
ちょっと真面目に雰囲気の話にしたりするのは、一応話の着地点とか考えているからでもう少しこんな感じのは続くかも。
いつも通りに適当にゆるっとふわっとした話の方が楽なんですけどね……