――様といっしょ   作:御供のキツネ

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オリ主は聞き上手。


モトチカさまといっしょ

 無事四国に到着した俺達だったが、毛利様は一人でふらりと何処かへと消えてしまった。

 まぁ、四国に到着したらそうするだろうな。と予想はしてたので俺は特に驚かなかった。長宗我部様も毛利様がそうすることをわかっていたようで、まったく仕方ないな、というように笑っていた。

 それから長宗我部様は船員たちに積み荷を降ろすように指示を出してから、すぐに船から下りるのではなくその様子を見届けてから船を下りると言っていた。

 やはり自身の船ということもあり、そうしたことに関してちゃんと責任者らしい振る舞いをするのか。いや、短い時間とはいえ航海の最中に酒を飲んで酔い潰れる。という行動をしている時点で責任者らしい振る舞いをしたとはとてもではないが思えない。

 ただ、それにわざわざ触れて長宗我部様の機嫌を損ねるようなことをする理由はないので、言わないようにする。長宗我部様であれば機嫌を損ねるというよりも、拗ねる方がありそうなのだが。

 

「さーて、私は暫く船に乗ってないといけないから、結城は先に視察だっけ?して来たらどうかしら?」

 

「それもそうですね……では、ざっと見て回ってから岡豊城へと向かい事とします」

 

「ええ、わかったわ。あ、もし私がまだ戻ってなくても、気にせずに城に上がってくれて大丈夫だからね。

 今から城に戻る兵士がいるから伝言を頼めば、結城が城に来るまでには事情は伝わるだろうし……あ、でも、私がいないからって爺やに話を聞くとかダメだからね」

 

「その理由を聞かせていただいても良いですか」

 

「爺やだって忙しいんだから、休める時には休ませてあげないとね」

 

「なるほど。であれば、休憩時に雑談程度であれば話を聞いても問題ありませんね」

 

「え、いや!それはほら!爺やも一人で休みたいだろうし、そう顔を合わせたことがあるわけでもない結城と一緒だと気が休まらないかもしれないじゃない?だから、そういうことはしなくて良いのよ」

 

 爺やなる人物のことを思って言っているように見えて、その実俺があれこれ聞いて自分にとって不利益を被るような情報が出るというか、話になるのを嫌がっているように見える。

 見える、というよりもそれで正しいのだろう。大分慌てた様子であれやこれやと俺を説得、或いは言いくるめようとしているので間違いないはずだ。

 そしてそんな長宗我部様の様子は周囲にいる船員たちにも見えているのだが、それを微笑ましいものを見るような目で見ていたりするので長宗我部様は愛されているな、と思った。臣下や民に愛されているというのは統治者として良いことだ。

 まぁ、長宗我部様で遊ぶのならば了承しておいてから視察をざっと終わらせて、長宗我部様よりも先に城へと向かい爺やなる人物と話をする。というのが良いのだろうが……今回はなしにしよう。

 流石にこうまで必死になっている姿を見ると、そういうことをするのは悪い気がしてくる。

 

「ええ、わかりました。それでは申し訳ありませんが先に視察をさせていただきます」

 

「ほっ……良かった……それじゃ、城で会いましょう?」

 

「わかりました。ですが、俺からは何も言いませんが……」

 

「あー……確かに結城が何も言わなくても爺やから、ってのはありそうね……

 わかったわ。明日のお昼頃に城下町の茶屋で会いましょう。迎えに行くわ」

 

「茶屋だけだとわからないんですけど……」

 

「んー、城下町の中央付近にある茶屋が有名かしらね。そこならわかるかしら?」

 

「城下町の中央ですか。わかりました。ではそこで」

 

「ええ、そこで会いましょうね」

 

 少し考える素振りをしてから茶屋で待ち合わせをしよう。と言われたのだが城下町の茶屋と言われても困ってしまう。

 そのことを伝えると長宗我部様は少し考える素振りをしてから城下町の中央付近にある茶屋を指定した。長宗我部様が言うにはその茶屋は有名らしいので、確かにそれならわかりやすい、はず。

 そうして待ち合わせ場所を決めてから俺は長宗我部様に一言断りを入れてから船から飛び降りた。振り返れば長宗我部様が手を振っていたので、それに応えるように小さく手を振ってから視察をするために港から町へと移動している人ごみに紛れて歩き始める。

 とりあえずはこの町を視察しよう。多分ではあるが、少し大きめの港があることから長宗我部様が良く訪れる町である可能性が高い。それに、積み荷を降ろすように指示を出してる際に、この港のことをわかっていなければああも簡単そうに指示は出せないだろう。

 それならば町人から長宗我部様の話だったり、統治に関する話を聞くことが出来ると思う。その辺りの話を聞いてから別の村や町に向かっても遅くはないはずだ。そう考えてから俺は行動することにした。

 最初の港町や視察するために訪れた町や村で長宗我部様について色々と話を聞くことが出来た。

 普段から領内を統治するためにあちらこちらに奔走し、またそれ以上に船に乗って漁に出ている時間の方が多いらしい。鯨を探して船を出した際には中々戻ってこなかった。と言う話も聞いたので割と自由に好き勝手やっているような印象を受けた。

 だからと言って統治に問題がある。ということではないので、ヨシテル様に報告した場合は多少呆れながらも笑って流してくれるはずだ。

 それに人々には笑顔が溢れていたので長宗我部様に対して不満などもなく、今の統治に満足しているようだった。であるならば、統治に関しては問題なしとしてヨシテル様に報告することにしよう。

 あとは長宗我部様と話をするのが俺の任務というか、俺自身のための行動というか。とりあえずは約束してある待ち合わせ場所に向かおう。

 

 長宗我部様に指定された茶屋は城下町の中央付近、有名な茶屋なのですぐにわかると言っていたが……さて、何処にあるのだろうか。こういう場合はまず何処にあるのか、近くにいる人にでも聞けばすぐにわかるだろう。

 そう思って数人に声を掛けて場所を聞くと少し困ったことになった。有名な茶屋というのが実は二件あったのだ。

 片方が団子などの甘味が美味いと有名で、片方が酒を提供しているのだが酒蔵と契約しているらしく美味い酒が出るのだという。どちらも同じくらいに有名で、どちらに行けば良いのかわからない。とりあえず、個人的に茶屋と言えば茶と団子だと思っているので甘味が美味いと有名な茶屋に向かおう。

 

 そうして茶屋に到着して暫く待つことにしたのだが、長宗我部様が現れる気配はない。

 もしかするともう片方の茶屋だったのだろうか、とも思うのだが今から移動して入れ違いになるようなことがあると面倒なので動くに動けない。いや、影分身でも走らせれば入れ違いは起こらないのだが。

 それでもそんなことをすると流石に目立ってしまう。安芸では目立つことが必要だったので大々的に忍術を使っていたが四国でも同じことをする気にはならない。

 幾ら発動が早くたって影分身をした瞬間は同じ姿で、それを変化させれば目立ってしまう。となれば忍術に頼るわけにはいかない。というわけで俺は今回大人しく団子でも食べながら待つことにしよう。

 待つこと数刻。あまり長い時間茶屋に居座り続けるのも悪いと思ったのだが、茶屋の従業員や客を相手に軽く話をしていたのだが、どちらかと言えば俺から話を振るのではなく話を聞いて相槌を打っていた。するとどうにも聞き上手だとなんとか言われて、代わる代わる人が入れ替わり、俺はその話を聞くことになった。

 そして、その話に対して軽い助言をしたのだが……その結果、何故かそうした助言を求める人が集まってきた。それに一々応対しているせいで増えているのはわかるが、それでもついつい話を聞いてしまうのは生来の性なのか、それとも変わったからなのか。

 

 そうして話をしているとそう大きくはない人ごみを割って長宗我部様が現れた。

 それから俺を見つけて声を掛けようとしていたが、その前に俺の周りに集まっている人の数に驚いたようでぽかんと口を開けていた。

 

「あぁ、すいません。待ち合わせの相手が来たようなので俺はこれで失礼しますよ」

 

 そう言うと残念そうにしながらも待ち合わせ相手が長宗我部様だということがわかったからか大人しく引いてくれた。ただ、目立つつもりはなかったのに目立っている現状と、長宗我部様がいるということで更に人が集まりそうだったので長宗我部様に声を掛けて移動することにした。

 

「長宗我部様、此処から離れましょう。流石に人が多すぎますし、城に向かった方が良いでしょう」

 

「え、ええ、そうね。それにしても結城、どうしてこんなに人が集まってるのよ?」

 

「それは歩きながら話します」

 

 そうして歩くこと暫く。城下町中央からは離れて、現在は城への道を歩いているが先ほどまでついてくる人もいたが今はいないので普通に話をしても大丈夫だろう。

 特に聞かれて困る話があるわけではないが……まぁ、気分の問題なのだが。

 

「さて、そろそろ良いでしょう」

 

「あ、もう良いの?それじゃ聞かせて欲しいんだけど、さっきのあれは何をしてたのよ」

 

「長宗我部様を待つ間に暇だったのであれやこれやと話を聞いていたんですよ。それでついついほんの少し助言をしたらそれを聞いていた人がなら次は自分が、その人が終わればまた別の人が。という繰り返しで気がつけばあんな状態になっていました。 

 もし長宗我部様が来るのがもっと時間が掛かっているようであれば、あれ以上に人が集まってきていたかもしれませんね」

 

「何やってるのよ……」

 

 俺の話を聞いてから長宗我部様は呆れたようにそう言ったが、事実なのだから俺にはこう言う以外になかった。

 

「まぁ、良いわ。それよりも何で結城はあの茶屋にいたのよ?私は有名な方って言ったでしょ?」

 

「はい、言いましたね。だからこそあの茶屋にいたわけですが」

 

「え?あそこって特に有名でもないと思うんだけど……」

 

「有名らしいですよ。団子とかの甘味が美味いって」

 

「へぇ……そうなんだ。でも私としては酒の方が有名な茶屋のつもりで言ってたのよね……

 今回はそのことを言わなかったのが原因だから結城を責めるようなことは出来ないけど」

 

「そうですね。俺も何故どちらか指定してくれなかったのか。とも思いましたが……どうにも長宗我部様は甘味が美味いと有名な茶屋だと知らなかったようなので、俺も責められませんね。責める気なんて毛頭ありませんでしたけど」

 

「あはは……有名な茶屋について話を聞いたときって、爺やに禁酒するように言われたときだったのよね。

 だから甘味が美味しいかどうかとかじゃなくて、美味しいお酒が飲める場所は何処かにない?って聞いたのが原因だと思うんだけど……そっか、あそこは甘味が美味しいのね」

 

 ばつが悪そうにそう言った長宗我部様だったが、甘味が美味しいということを聞いて少し考えるような素振りを見せた。大方時間があるときにでも行こうかどうしようか、と考えているのだろう。

 長宗我部様は武田様のように大雑把で男らしい面も確かにあるのだが、武田様よりは女性的というか、女の子らしい一面をちゃんと持ち合わせているというか。とにかく、酒ばかりということではなく甘味についてもちゃんと興味を持ち合わせている方だ。

 だからこそ甘味が美味いと聞いて考えているのだろう。

 

「んー……今から戻ってお団子とか買うのも良いかなぁ、なんて思ったんだけど……流石にまだ人が沢山いそうよね……」

 

「間違いなくいるでしょうね。もう暫くしてからなら人も散っているとは思いますよ」

 

「そうなのよね……城に戻ってから兵士の一人にでもお願いしてみようかしら」

 

「戦国乙女の方というのは、自身の臣下や兵士をそういった雑用に使うのが当たり前のことなんですか?」

 

「私たちが、っていうよりも城主なんてそんなものよ。必要な執務で手が放せないとか、自分が行くと町民の皆が集まってきて買い物どころじゃないとか、執務を投げていたせいで城から出させてもらえない、とかね」

 

「そういうものですか……」

 

 でも、言われてみればそんなものかもしれない。執務で手が放せないから代わりに誰かに頼む、というのはヨシテル様もやっていることだ。まぁ、必要なものは大体揃えているので京の町で手に入るものであれば使いに出るということはしなくて済む。

 以前あったように、しょくらあとなどの京では手に入らない品物を手に入れるためには忍を使うようなこともあるが……そういうのは稀だ。

 それと町民が集まってきて買い物どころじゃないというのも納得出来たのだが、その割には俺の知っている方々は平気で町に出ているような気がする。これは俺の知らない方に当てはまるようなことなのだろうか。

 そして長宗我部様の場合はきっと最後のが割合としては大きいのではないだろうか。と思ってしまった。

 漁に出ることが多いために執務などをおざなりにしていそうな、そんな気がしてならないのだ。

 

「そういうものよ。というわけで城に戻ったら誰かにお願いするとして……四国を視察した感想でも聞こうかしら?」

 

「俺が見る限り特に問題はないようでしたね。人々から話を聞いてもそうでしたし、少し探ってみても怪しい動きは何処にもありませんでした。

 まぁ、そうして話を聞く限りでは長宗我部様が漁に出ることがあって、中々戻って来ない。なんて話も聞きましたが……執務をちゃんとしているのであれば俺は何も言いませんし、ヨシテル様への報告でも問題なしと言えるでしょう。

 ということで聞きますけど、執務はちゃんとやってますか?」

 

「も、勿論!漁に出る前にやらないといけないのは全部終わらせて、それから漁を終えて戻ってからも手をつけてるわよ!

 そりゃ、確かに漁によっては戻ってくるまでに時間が掛かって少し遅れることはあるけど……そ、それでもちゃんとやってるんだから!」

 

「それなら良いんですけどね」

 

「あ、信じてないわね!それなら爺やに聞いてみなさいよ!執務に関してはずっと言われてるからちゃんとやるようにしてるのよ!」

 

「はいはい。それは城で爺やという方に会えば聞きますよ」

 

「もうっ!そうやって適当に聞き流すのって良くないわよ!」

 

 適当に聞き流しているのではなく、単純にそれならば後で聞くとしよう。と思っているだけなのだが……多分それを説明しても長宗我部様は納得してくれないだろう。

 それに怒ったような、というよりも拗ねたような様子を見る限り俺が何を言っても意味は無いと思う。

 

「適当に聞き流してるわけじゃないんですけどね。それで、長宗我部様は今日、もしくは昨日に終わらせなければならなかった執務は問題ありませんか?

 俺としては長宗我部様から話を聞きたいとは思っていますが、執務が終わっていない状態では邪魔になってしまいますから、そこは確認しておきたいんですけど」

 

「あぁ、それなら大丈夫よ。昨日のはちゃんと昨日の内に終わらせて、今日中にやらないといけないのも昨日に終わらせておいたからね。緊急の案件でもあれば話は変わってくるんだけど……うん、きっとそんな緊急の案件なんて来ないから大丈夫ね」

 

「そうですか。それなら幾らか話を聞かせてもらっても問題ないようで安心しました。

 で、任務とは関係ないんですけど昨日船の中で散々酒を飲みましたけど、ばれました?」

 

「ふふん、簡単にばれるような私じゃないわ!うちの兵士も黙ってくれてるし、私も当然言わない。後はモトナリと結城が黙っていてくれればばれることはないわ。

 というわけで、結城は勿論黙っててくれるわよね?」

 

 自慢げに言っていたのだが、途中で俺がばらす可能性を考えたのか不安そうにしながら俺に釘を刺してきた。

 俺は特に言う気はなかったのでそれに肯定しておくとして、そこまでばれた際に怒られるのが怖いなら飲まなければ良いのに。そして禁酒が終わってからは飲み方に気をつければ問題ないような気がする。

 

「言いませんよ。言う必要はありませんし、そのせいで本来したい話が出来なかったら困りますからね。

 でも長宗我部様。禁酒が終わってからまた調子に乗って飲んでると怒られますよ」

 

「いや、それはほら、長らく飲んでなかったのに飲めるようになったら自制心が効かなくて……」

 

「なら今回は大丈夫そうですね。船で飲みましたし」

 

「あー……うん、多分大丈夫なんじゃないかしら……

 って、そんなことよりも!結城が私に聞きたい話って何なのよ?」

 

 地味に自分にとってあまり良くない話になっていることを悟ってか長宗我部様が話題を変えてきた。

 それならそれで構わないのでその話題に乗ることにしたのだが……これは今の禁酒が終わってから次の禁酒までそう期間は開きそうにない。というか下手をすると数日で禁酒するようにいわれそうだな。

 

「そのことですか。対したことではありませんが……斉藤様が四国に来た。という話を聞いていたりはしませんか?」

 

「斉藤って……ムラサメよね?そうねぇ……私は聞いてないけど、もしかしたら探せば目撃情報が出てくるかもしれない、ってくらいじゃないかしら?

 でもどうしてそんなことを聞くのよ?」

 

「いえ、最近全国各地で目撃されているようなので、四国にも来ていそうだなと思いまして」

 

「全国各地で、ねぇ……なーんだか厄介事の気配がするわ」

 

「ええ、なのでこうして聞いているんですよ」

 

「そうね……なら城に戻ったらその辺りのことも調べさせてみるわね。

 ただ、最近は平和すぎて退屈だったから、ちょっとくらい刺激が欲しいって思ってたし丁度良いと言えば丁度良かったかもしれないわ!」

 

「はぁ……割と本気で厄介事なんですけどね……長宗我部様がそういう反応をするならそれで良いですけど、民に被害が出ないように。ということは気にしてくださいよ」

 

「わかってるわよ。結城はその厄介事に関して何か知ってるみたいだし……城に戻ったらその辺りきっちり聞かせてもらうわよ?」

 

「ええ、勿論そのつもりです」

 

 退屈だった、と言っている長宗我部様だがちょっとした厄介事程度ではなく本気で面倒なことが起こりそうだということまでは理解していないらしい。理解しているのならこうも暢気にしてはいられないはず。

 そのことについては城に着いてからちゃんと話をして理解してもらおう。今回の斉藤様と毛利輝元様のやろうとしてることはちょっとした刺激程度では収まらないことなのだから。




モトチカ様とは仲の良い友達って感じでからかったり弄ったりしたい。
そんな距離感が多分一番心地よい相手なんじゃないでしょうかね。

次は九州か。
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