やはり一色いろはは先輩と同じ大学に通いたい。 作:さくたろう
たまにこの子視点で話進むかも……?
八幡視点は書くつもりないです(´・ω・`)
「おっはよー!」
「おはよ、あんたにしては珍しく元気じゃない」
いつもならあたしが後ろからこの子の肩をぽんと叩き挨拶するところだけど、今日は珍しく逆パターン。
というか、普段朝あまり強くないいろはが登校中にこれだけ元気っていうのは……何かあるね。
「いろは、休日に何かいいことあった?」
「え……? なななな、何が? 何もないよ何も! ホント全然!」
あたしの問いに歩いていた足を止め、あたふたとするいろは。何この子、ペットにしたい。
最初の間はなんなんですかねぇ? それにその焦りっぷり。十中八九なにか隠してるに違いないわけで。
だとしたら何を隠してるのかなぁいろはちゃん? むむ……。あっ――。
「比企谷先生」
と、その名前を出したとたん、いろはの動きがピタッと止まる。
ははぁん、なるほど……比企谷先生と何かあったってわけね……。
まったく……受験生で志望校危ないっていうのに呑気だなぁ。
でも、まぁ元気なくて落ち込んでたりするよりはマシか。
「せ、先輩がどうしたの?」
何故か必死に隠そうとしてるいろはちゃん。
仕草やらなにやらで明るい理由がバレバレなんだけど、これはこれでからかい甲斐があるというかなんというか。
端的に言って、めちゃくちゃ面白いわけでありまして!
学校じゃ人前であまり素を出さないいろはが、こうも動揺してるのを見るのはこの子には悪いけど、ふふっ。
少しばかりからかってみよう。なんて考えて、
「そう言えば、昨日の夜、比企谷先生に会ったんだけどねー?」
「うそっ!? ど、どこで?」
おお、食いつく食いつく。この子、比企谷先生を餌にすれば簡単に操れてしまうのでは? いろは狙いの男どもには知られちゃいけない事実ね……。
「ららぽでね。一人でいたから声かけてみたんだけど」
「……あ、そう」
あれあれ? なんで急にこの子テンション低くなったの?
あたし何か変なこと言った?
「碧」
「はい、なんでしょう」
「なんでそんな嘘ついたのかな?」
「嘘って? 本当に会ったけど……?」
なぜバレたの? この子、まさか人の心が読める……!? いや、人の心読める子があそこまで動揺するわけあるか!
「いい、碧。先輩が、休日に、買い物、まして、ららぽなんかに一人で行くはずがないんだよ? あの人がどれだけめんどくさがりで、人混みが嫌いだか知ってる? わたしなんて、前に一回デートしただけで――」
「ストップ! はい、タイム! まって、ちょっと待ってね」
「……何?」
なるほど、比企谷先生ってそういう人だったのね。というか好きな相手にこの子いろいろと言い過ぎでしょう……っていうのは今は置いといて、えーっと、今この子はなんて言った? 前に一回デート? 何? 実はそんなに進んでたの? どういうことなのかな? いろはちゃん。
「今、あんた前に一回デートしたって言ったわよね?」
「……言ってない」
「言った」
「言ってない」
ほう、そうきますか。オーケー、ならば戦争ね。
「じゃあ比企谷先生に聞いてみてもいいよね?」
「それは絶対にダメ」
「じゃあどういう経緯でデートしたか教えてもらおうじゃない。そしてそれを今まで黙っていた理由も」
今や学校中のアイドル的存在のいろは。だけどいろはに恋愛方面でそういう噂はまったくといっていいほどなくて。
まぁその理由は今ならわかるんだけど。比企谷先生のことが好きすぎて、他の男子に全く興味がなかったからってね。あんたは少女漫画に出てくる乙女か。
「そ、それは、なんていうか。いろいろあってといいますか……、無理矢理付き合ってもらったというか……そんな感じなんだけど」
「無理矢理……?」
「うん……。だって普通に誘っても先輩絶対デートなんてしてくれないし。いろいろと理由つけてしてもらったの」
比企谷先生ってそんなにハードル高いのね……。うちの高校に通ってる男子なんかいろはに誘われたらホイホイついていきそうなのに……。
「もう、この話はおしまい!」
「えーなんでしょー。もっといろいろ聞きたかったのに」
「ダメ、言わないから。碧絶対言いふらすし」
あんたの中であたしどんだけ口軽いのよ。親友を信じられないっていうの?
いや、確かに、言っちゃうかもしれないけどね……?
「仕方ない、今日のところはこれくらいで引き下がってあげよう」
「なにそのモブキャラっぽい台詞は……」
「そういうこと言うと、週末何があったかまで聞いちゃうよ?」
「ごめんなさい、なんでもないです」
どんだけ聞かれたくないのよあんた。
まぁいつか聞かせてもらうけどね?
「それじゃ、行こっか。大分話し込んじゃったし」
「だね、大体碧のせいだけどね?」
「あーはいはい、あたしのせいでいいですよっと」
いろはと顔を見合わせて、くすくすと笑い合う。
最近受験の悩みでいろいろと元気がなかったみたいだけど、比企谷先生と再会してからは明るいいろはに戻ってくれて何よりだ。
これは比企谷先生に感謝しなくちゃね。
「あ、そうそう」
「ん、なあに?」
歩き出して数分がたち、いろはが何か思い出したのか口を開く。
「わたし、今日から塾に通うから。よろしくね、碧」
「そっか、じゃあ書類とか全部終わったんだね」
「うん、今日受付済ませたら完了。今日から必死に頑張るから」
「憧れの比企谷先生のために?」
「う・る・さ・い!」
からかうと、頬を桃色に染めながら必死になるいろはが可愛くて。
ああ、この子の恋が成就するといいなぁと。
あたしもできるだけこの子の力になってあげよう、そんな気持ちになった。
昨日の前書きに対して、ご意見してくださった方ありがとうございます。
みなさんの意見を考慮しつつ、少し考えてみたいと思います!