暗殺一家ゾルディック家。ククルーマウンテンと呼ばれる山の中に聳え立つ大きな邸。ありとあらゆる暗殺のエキスパートが集うその邸に新たな生命が誕生する!
「この娘はきっと優秀な殺し屋に育ってくれるわね」
「あぁ。間違いないだろう。なにせ産まれた時から既に"念"に目覚めているなんてな」
両親はベッドですやすやと寝息を立てる赤子から迸る念の力強さに笑顔を浮かべた。
トーカ=ゾルディック。5歳の春。時は昼食時。
「お父さん、話があるんだけどいいかしら」
驚くほどすらすらと綺麗に言葉を話す5歳児。いつも通り少量の毒を混ぜられながらも絶品な料理を口に運びながらトーカは父であるシルバに話しかける。
「どうしたトーカ」
父、母、使用人、祖父。皆がいる中でトーカはスープを飲む手を止めて席を立った。
「私、今から家出をするわ」
トーカが放った言葉は全員の度肝を抜き、数瞬の空白が生まれた。その隙にトーカはドアを蹴破り逃走を図った。
「はぁ・・・。まったくあいつはいつになったら落ち着くんじゃシルバよ」
「・・・・俺に聞くな親父」
「お前の子じゃよ」
「キエェェェェェェ!!」
さて、視点をトーカへと移そう。
ドアを蹴破り、邸からの逃走を図ったトーカは現在玄関にまで来ていた。
だがそこにはまるで用意されていたかのような戦闘用使用人の姿が5人。それを引き連れるのは若かりしツボネである。
「あらツボネ。たったそれだけで私を止めるつもりかしら?」
「トーカお嬢様。流石に今回ばかりは容認しかねます。さぁお戻りを───!?」
トーカは気づけば既にツボネの懐に肉薄していた。突き出される貫手はツボネの喉を正確に狙っていた。
ガッ!とツボネはその貫手を手で防ぎ、鋭くトーカを睨み付けた。
「トーカお嬢様。このツボネを相手にまさかとは思いますが念を使わないおつもりですか?」
「だとしたら?」
ツボネは力を込めトーカの腕を振り回す。トーカの身体は宙へと浮き、視界はまるでジェットコースターに乗っているかのように高速で動く。
「ふん!・・・・・少々お灸を据えねばいけないようですね」
「あら?おしりペンペンでもするのかしら?」
投げ飛ばされたトーカはくるりと宙で身を翻し、スタッと足から軽やかに着地する。
と同時にトーカは凝を行うとツボネの溢れんばかりのオーラが確認できた。
「いいわ。来なさいツボネ。探求を止めたあなたに未知を見せてあげるわ」
その時ツボネはオーラによって強化された聴覚で確かに捉えた。コォォォォという独特な呼吸音。そしてそれがトーカから聞こえるのを!
それから数分後、玄関の扉は開け放たれており玄関には6人の人間が倒れていた。
「まさかツボネよ。お主が負けるとはな」
事態を確認しに来た祖父はツボネが倒れていることに心底驚いた顔をしていた。
「ゼノ様。世の中というのは未知で溢れているのでございますね」
「何の話じゃ?」
「このツボネ。所詮は井の中の蛙、でございました」
ゼノが頭に?を浮かべるが、ツボネはフッフッフと静かに笑うだけだった。