暗殺一家の最強長女   作:もちもチーズ

7 / 8
とりあえず今のトーカの集大成です。
かなり卑怯な気もしたけどこれぐらいやりそうなので書きました。
後いつもより少し長いです。
UA10000超えありがとうございます!


第7幕

「その山吹色の気。波紋と言いましたか」

 

 トーカが第2ラウンドと仕切り直してから5分と少し。何者にも邪魔されずサシでの攻防が行われいた。トーカは傷ひとつないのに対し、ツボネは息が乱れ満身創痍に近しい状態になっていた。

 

「そう。念とはまた違う生命エネルギー。念が体内で精製されるなら波紋は言わばその逆。独特な呼吸によって外から空気を取り込み、体内に波紋を作り上げる」

 

 波紋。トーカがこの呼吸法に気付いたのはまさに偶然の産物であった。体力作りに走っている最中、どうすれば息が切れないか、よりスタミナが持つようになるか、呼吸のリズムの練習をしているときに偶然得た力!

 

 念を使わずに念能力者に相対することが出来、また念ではないため凝による流の露見もない。

 

「ですが、それでは先程屋敷から逃げられたあの技の説明はつきません。何をしたのですか?」

 

 それが気になっていたのかと、トーカは小さく笑った。

 

「原理は簡単よ。恐らくツボネなら数回やれば身に付けれるわ。これは"二重の極み"と呼んでいるわ」

 

 トーカは辺りを見回し、手頃な石を拾うと1度ツボネに見せつける。そして上に放り投げたあと、落ちてきた石に拳を合わせた。

 

 すると石はバン!と言う音と共に粉微塵に消し飛んだ。

 

「一撃目により抵抗を完全に奪い、二撃目に仕留める。正しく二撃決殺」

 

 ツボネが感嘆の声を漏らそうとした時、戦人の勘か、はたまた第六感が囁いたのか、ツボネの口からその先は出なかった。何故なら・・・

 

「そしてこれが───」

 

 トーカは腰を低く落とし、拳を地面にペタリと着けた。トーカの雰囲気がみるみるうちに変わっていく様にツボネは波紋、二重の極みに続いて度肝を抜かれた。そして同時に戦慄する。この人は一体いくつ引き出しを持っているのかと!

 

 ドルルン!とまるでエンジン音のような音を響かせ、トーカの皮膚が赤く染まり、蒸気を発し始める。凝で確認すると、身体の内側のみが念に覆われているようにツボネには見えた。

 

 ドルン!ドルルン!とエンジンを吹かし、ギアを引き上げるような、そんな音をさせながら皮膚が赤く染まりきり、発する蒸気が最大限までくる。そしてトーカは構えを解除し、ツボネに向き合った。

 

「悪いけれどあんまり長く扱える技ではありませんわ。一瞬よツボネ」

 

「はい。お嬢様の全力、受け止めさせていただきます」

 

 そうしてツボネが構えた。もはやツボネに迎撃の意思はなく、ただどんな技が飛び出るのか一目見たい。その一心でツボネは目を光らせた。

 

 ヨーイドン。そんな掛け声はなく、ツボネは気付けば自分が吹き飛び木に衝突していることに気付き、意識が遅れてやってきた。腹を蹴られたのであろう。ジンジンとした痛みがツボネを襲い、ツボネはいつも通りの肌をしたトーカを見たところで意識を失った。

 

 ツボネが意識を失った数瞬後、トーカは倒れるように膝をついた。

 

「ゼェ!ゼェ!」

 

 波紋の呼吸を維持したまま、何時間、何十時間も走れるように鍛練を積んだトーカが波紋の呼吸すら止め、ただただ空気をむさぼるように肺に取り込む。

 

 それだけにこの技の消耗は激しく、影響が大きい。習得してから日が浅いこともあるが、それを差し引いても消耗が激しすぎる。だがトーカがこの技をツボネに見せたのは、赤ん坊の頃から自分を育ててくれたツボネに対して自分がどれだけ成長したかを見せるためだったのかもしれない。それはトーカなりのツボネへの感謝と別れの技だった。

 

「おや、随分と苦しそうじゃなトーカよ」

 

「つっ!?」

 

 弾かれるようにその場を飛び退くトーカ。だがぞくりとビリビリとした念を身体全体で感じとる。

 

「円ね」

 

 急いで呼吸を整え、波紋を練るトーカ。やがて声の本人、ゼノが姿を現す。

 

「ざっと400メートル程はあるぞ」

 

 この数値が具体的にどれほど凄いのかというと、念の達人8人分をこの人一人で賄えているというレベル。ちなみに念に関しても天才と呼ばれているトーカですら円は50メートルが限界である。

 

「これで私の動きは全て丸わかりというわけ?」

 

 とは言えゼノも常にこの400メートル程の円を維持できるわけではない。今のはただトーカに逃げても無駄なことを示したのだ。ゼノが円を解き、攻撃用にオーラを練り上げる。

 

 トーカもいつのまにか再び赤い皮膚をした状態へと変化しており、お互いがお互いの隙を探り合いながら対峙する。

 

 先に動いたのはトーカだった。

 文字通り目にも止まらぬ速さでゼノへと突き進む。振るわれる右拳は速度が上乗せされ、生身の人間が味わえば恐らく冥土への片道切符になるだろう。

 

 ゼノはトーカの一撃を気配を読むことで完全に見切り、後の先でカウンターを返す。それを超人的な速度で避けたトーカはゼノの周りを高速移動し、ゼノの視界から消えた。

 

「無茶苦茶な速さじゃのう」

 

 ゼノは厄介そうに嘆息し、小規模の円を展開する。円により位置を割り出されたトーカが次なる攻撃に打って出る前に、トーカの頭部をゼノの鋭い蹴りが襲う。

 

「危なっ!」

 

 ゼノがトーカの動きを先読みした結果だったが、トーカには考えも及ばなかったこと。唐突な一撃にバランスを崩したトーカは、腹に深い回し蹴りを叩き込まれる。

 

 メキメキィ!と何本か骨が折れたようなギリギリきしんだだけような音が聞こえ、トーカは木に叩きつけられる。

 

「比べるのもツボネに失礼ですけどやはり格が違いますわね」

 

 バッと起き上がり、仕切り直す様に対峙する二人。

 仕掛けたのは再びトーカ。いくら戦闘経験の差で気配を読まれるとしても、ゼノはやはりトーカの速度には着いてこれていない。だがトーカが視界から消えると自らの気配を読む動作に加え、円で確実にトーカの位置を捉えてくる。故にトーカが取った策は・・・。

 

「あやつ、逃げおったか」

 

 状況を不利と見てその場を仕切り直すのも兵法である。

 ゼノは自身の最大範囲で円を展開する。動いているのはトーカのみ。だがそのトーカは逃げるどころか再びゼノへと向かってきていた。

 

「何を企んでおる?」

 

 円で感知されていることはトーカ自身も知るところであり、これがある限り、不意打ちの類いは纏めて通用しない。

 

 ゼノが思考しているとガサリ!とトーカが向かってきていた草影から何かが飛び出してきた。ゼノは円を解除して気配を読もうとし、驚愕した。

 

「つ、ツボネ!?」

 

 投げ込まれたのは気絶したツボネ。ゼノは思考を止めずに、ツボネをキャッチしながら円を展開すると自分の後ろにトーカの反応を感じた。

 

「ふん、甘い!甘いぞトーカ!」

 

 振り返りながら迎撃姿勢を取ろうとしたゼノの全く、全くもって無防備な胸に、気絶しているはずのツボネの手が添えられた。

 

「っ!?」

 

 ゼノは戦いの中で初めて硬直した。そしてそれが命取りだった。ドクン!とゼノに流し込まれる攻撃用の波紋。ツボネを波紋で操ったトーカの作戦勝ちである。

 

 更にゼノの硬直時間を稼いだトーカは、これまでにないほどの勝ち誇った笑みを浮かべた。

 

「何年生きてるかは知らないけど騙し合いで私に勝とうだなんて10年早いですわー!」

 

 念を込めた一撃。波紋すらも練り込んで威力が増幅された一撃は二重の極みにより完全無欠、情け容赦なく、ゼノの後頭部を直撃し、一瞬でゼノの意識を刈り取るだけでなく老後の後遺症を心配するレベルの威力を叩き出した。その描写としては小柄な爺が錐揉み回転しながら吹き飛んでいったと伝えればその凄さがわかるだろう。

 

 それに巻き込まれていったツボネは最早哀れという他ないだろう。

 

「ふぅ。やれやれ、ですわ」

 

 決め台詞のように呟いた後、トーカは次なる獲物を待った。なお暫くの間、ゼノの記憶に重度の障害が残ったのは言うまでもない。

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