目が覚めたら能力者になってた件   作:千草流

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今回は勘違いっぽくない
勘違いにありがちなご都合主義の偶然はある


3.オリ主にありがちな特典というやつは俺にはないらしい

 終わりよければ全てよし、なんていうが昨日は正にそんな1日だった。初めは憑依なんて訳わからん状態になって不安だったし、そっから銀行強盗に襲われるなんてハプニングもあった。だがしかし、そんな憂鬱な気持ちも全て上条君のおかけで吹っ飛んでしまった。

 

 彼のように心の底から友達を心配することが出来る少年が、果てして今の世の中どれほどいるだろうか。実に清々しい、まるでヒーローのような少年だった、彼のような少年がいる内は日本の未来は明るいだろう。

 

 加えてだ、なんとか上条君の連絡先を知っておくべきだと考えて、遠回しに聞き出そうとしてたら、上条君はまるでこちらの意図を理解したかのように向こうから連絡先を教えてくれた。上条君まじ聖人。

 

 

 と、まあなんやかんやで無事今日という日を終える事が出来たわけだが、ひとまず落ち着いたらやってみたいことがあった。というわけでまずは台所に立ちます。カップ麺なんかのインスタント食品やレトルト食品が多い、独り暮らしの高校生ならまあこんなもんかもしれないが、もう少しバランスの取れる食事にしたほうがいいんじゃないね介旅君や。

 

 それはひとまず置いておいて、目標物の確保には成功した。

 

 ロール状になっているそれをビーっと引っ張りだして適当な長さで千切り取り、グシャグシャに丸める。はい完成、アルミホイル製アルミ玉。

 

 介旅君の部屋に転がってた資料に書いてあった通りなら、介旅君は超能力者であるらしい。レベル2の『量子変速』、なんか小難しい理論が並んでいて読む気が失せる資料だったが、要はアルミを爆弾に変える能力らしい。平凡な大学生だった俺に量子がうんたらかんたらなんか分かる筈がない、精々が量子的なミクロの世界ではマクロな視点とは異なる物理法則が成り立つ((`・ω・´)キリッ)くらいのことしか知らん。

 

 因みに正確には重力子をどうのこうのするらしい。超能力だとか量子だとか異なる物理法則だとか重力子だとか考えてると俺の心の奥底に封印されたチュウ二・ビョウが解き放たれてしまうのでここらで辞めておく。

 

 もっと純粋に好奇心で超能力を使ってみたい、というわけで介旅君の超能力の基点となるアルミを、どこの家庭にも大抵あるであろうアルミホイルから作成してみた次第である。

 

 準備は万端、早速やってみようではないか。技を借りるぜ介旅君!

 

 「……」

 

 とはいったものの超能力の使い方なんぞ全く分からん、ひとまず爆発しろ~と念じながらアルミ玉に熱い視線を送ってみる。

 

 「…………」

 

 暫くたっても全く変化は見られない、やはり超能力というくらいだから肉体ではなく魂的な何かにエネルギーを依存しているのだろうか、だとしたら介旅君の意識か魂か、そういうものが無いこの体では発動しないということか。

 

 「…全てを呑み込む渦よ、永遠の闇よ、世界に終わりを! 『量子変速(グラビトロン)』ッ!」

 

 おっと、あまりにもじれったくなって内なる封印が解けかかったか。危ない危ない封印封印っと。ちなみに詠唱のイメージは重力子ということでブラックホールである。

 

 「しかし、まさか封印を解いても発動しないとは、やっぱり本人じゃないとダメなのかぁ……」

 

 ええい、まったく持ってがっかりだ。

 

 「こんちくしょー!」

 

 ちょっとだけイラついた勢いで思わず手に持っていたアルミ玉を開いていたベランダから投げ捨ててしまった。

 

 「あっ」

 

 と思った時には既に手遅れ、アルミ玉は夜の闇に消えていった。流石にどこに飛んでいったか探すのは困難だろうな、幸いにも学園都市はハイテクシティだ自動掃除ロボットがあちこち巡回してるからすぐに片づけてくれるだろう。誰かの頭に当たっても軽いアルミ玉だ、怪我なんかしようもない。

 

 「うん、まあしょうがない。 皆はポイ捨てなんてしちゃ駄目だぞ!お兄さんと約束だ!」

 

 自分を誤魔化すように誰もいない部屋で虚空に向かい語り掛けてみる。誰かに見られたらただの頭おかしいやつだな。まあ、考えてもしょうがない、明日からは介旅君の学校も夏休みで、介旅君も休みらしいからこの憑依の原因を探る時間は十分ある。というわけ今日の所は風呂に入って寝る。グッナイ!

 

 

 

 

 

 

――end

 

start――

 

 

 

 

 

 人気もなく、街頭もないような静かで真っ暗な路地裏に、足音が侵入してきた。短い間隔で響き渡る足音は、その主が走っていることを示していた。息を切らしながら走っているその人物は、学園都市では名門と呼ばれるとある女子中学校の制服を身に纏っていた。制服と外見を見れば彼女が確かに中学生程の年齢の少女であることが分かるだろう。時間と場所を考えると、彼女はただの不良中学生なのではと大抵の人が想像するだろう。ただそれは彼女が頭に着けている物とその手に抱える道具に目を向けなければの話だ。

 

 彼女が頭に着けている物はお洒落な帽子などではない、それは近年流行りのVRゴーグルと呼ばれる物のような形状のゴツゴツした金属の機体に不透明の板が全面に取り付けられたゴーグルである、それも軍用の物であった。そして彼女が手に持つのは制服に会わせた無難なデザインの学校指定のバッグではない、人を殺した数が世界で一番多いなどといわれるほどに量産され、耐久性の高い銃、AK47であった。彼女が時折背後に向けて放つその光と音が、それ決して玩具などではないことを証明していた。

 

 服装さえ違えばどこかの戦場にでも立っていそうな彼女は、背後から迫ってくるナニかから距離を取ろうと闇雲に走り回っていた。

 

 「どこまで鬼ごっこ続ければ気が済むンですかァ!」

 

 彼女の背後からゆっくりと彼女を追いかけるナニカは、まるでこれが本当にただの遊びのように余裕を持って嗤いながら彼女を追っていた。彼女が時折放つ銃弾をそのナニカは物ともせずに弾幕の中を歩く。彼女にははっきりと認識できていなかったが、銃弾はナニカの表面に触れる寸前に弾かれるように角度を変えあらぬ方向に飛び去っていた。

 

 「こンだけにたよォなことやってるといい加減めんどォになってくるもンだな。そろそろお開きといこうぜェ!」

 

 ナニカが意識を変えようとした、その言葉を聞いて彼女は危険を予知した。生命としての本能がそのナニカに行動させてはならないと訴えていた。単価にして十八万、果たして本当に生命と呼べるかも定かではない彼女が、明確に死を感じた。効率的に実験を行うという思考を廃棄し、死ぬために生まれてきた筈の彼女は、生きるためにに弾を放った。

 

 頭ではなく体が、生きたいと願って咄嗟にとった行動はしかして誤りであった。ナニカは思考を切り替える、ナニカの脳内に広がっていた複雑な数式はナニカが瞬きするよりも早く、その形を変えようとした。僅かな係数のみが変わるその数式は、数値の上では僅かな違いだったが、現実には大きな影響を与える。ナニカ表面にあるチカラの膜が、数字で表される力の方向を変える。入射角に対して鈍角の範囲に反射角を変動させていたそれは形を変え、平角に返すようになる。

 

 放たれた銃弾は、時間が戻るように進行方向とは逆向きに真っすぐ進む。当然戻ってきた銃弾は、銃弾が往復した時間を考えるとわずかにずれるが、ほぼ確実に彼女の持つ銃に帰って来る。力の大きさは、空気などの抵抗による減衰のみでほぼ変わらず、その向きだけが反って来る。その銃弾はまず彼女の持つ銃に喰らいつき、続けて放たれた幾つもの弾丸が、続くように彼女の体を貪り尽くす。

 

 そしてその場には無残に引き裂かれた彼女と、ナニカのみが残る、その筈であった。

 

 ナニカが計算式を完成させる寸前、まさに刹那と呼べる僅かな時間に、ナニカに妨害が入らなければ確かにそうなる筈だった。

 

 ナニカの感知しえない上空から小さな弾が落ちてきていた。ある人物が投げたその玉は偶然にも風に煽られ、ビルの壁面にぶつかり、丁度ナニカの耳元に落下してきた。そして丁度、そのタイミングでその玉が破裂した。投げた人物が想定していたタイミングからは大きくずれていたそれは、まるで図ったかのようにナニカの耳元でその現象を起こした。

 

 「ッ!!」

 

 ナニカは咄嗟に耳を抑えた。その小さな爆発に大した威力は無かった、例えあったとしてもナニカには通用しない物であった。ただその癇癪玉のような物の爆発から唯一、ナニカの守りを抜けたモノがあった。

 

 音である。ナニカは自身の害となる力からは守られていた、ただし音は違った。普段から音を遮ってしまえば耳が聞こえないのと同じである。それ故、ナニカは音を自身に害を為すものと設定していなかった。ナニカが音を警戒していなかったわけではない、ただスタングレネードのような物で聴覚を刺激する要素があれば瞬時にそれを害と設定することが可能であった為、普段は設定していなかったのだ。

 

 それが油断となった。

 

 ナニカの全く予想だにしないその音は、ナニカの脳に揺さぶりを掛け、僅かに数式に狂いを生じさせた。それにより、真っすぐ逆方向に返る筈だった銃弾は僅かに軌道を変えた。彼女の中心部を捉え、致命傷を与える筈だったそれは致命傷になりえない部分に数発撃ちこまれたのみであった。

 

 その隙を彼女は見逃さず、全力で駆けだす。肉体の反射的な行動ではなく頭脳での思考で感じるモノをもって。死なない為に、生きる為に、死ぬための存在が生きたいという矛盾した感情を持って。

 

 「チッ……」

 

 ナニカは揺さぶられた脳を正常に戻すために、数秒を費やした後、謎の爆弾が降って来た上空を一瞥し、舌打ちをすると再び彼女を追いかけ始めた。

 

 次にナニカが彼女に追いついた時、今度こそ彼女は自らの放った銃弾にその命を落としてしまうだろう。ほんの少しだけ彼女の命が延びたことに意味があったかどうかはまだ分からない。

 

 ただ彼女がほんの少しだけ生き延びたことにより、本来は反射的な肉体的行動として流れる筈の無かった、彼女が持った『生きたい』という感情がとあるネットワークを通じて、一万近い個体に拡散されたことだけは確かだった。




アクセラレータ口調がめんどい
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