スランプ怖い
俺はロリコンじゃない。
例え独り暮らしの外身高校生、中身大学生の部屋に女子中学生がいたとしても俺はロリコンじゃない。そう、それだけでロリコン認定されてしまうなら世の中の中学生を教えている家庭教師は皆ロリコンだということになってしまう。
だから重ねて言うが俺はロリコンじゃない。
決して誤解無きようにしてもらいたい、俺が幼気な女子中学生を騙して部屋に連れ込んだとか、家出少女を匿っているだとか、無理矢理拉致しただとかそんなことは一切ない。
だから何度も言うが俺はロリコンじゃない。
ここまでしっかりと念押しした上で現状を説明したい。いいか?最後にもう一回だけ言っておくが俺はロリコンでもないし犯罪に走った変態でもない。
まずはここが俺の、もとい介旅君の自室であることは明らか。次にその部屋に俺イン介旅君ボディーがいるのも不可解な現象ではあるがひとまず良しとしよう。そして最後に、小さなテーブルを挟んだ俺とは反対側に行儀よく正座し、俺の出した麦茶を飲んでる少女が一人。当然、彼女は全くの見ず知らずだ。
よし、異常しか見当たらない。
え、まじで誰だよこいつ、というかこいつが部屋にいるのがばれてみろ。介旅君を見る周囲の視線が一気に氷点下まで下降するぞ。
「この熱い夏日に生ぬるい麦茶かよ、とミサカは遠まわしに冷たい麦茶を出せと要求します」
冷たい飲み物よりも常温の飲み物の方が好きな俺が、自分用に用意してた麦茶をわざわざだしてやったのになんて言いぐさだろうか。というか随分と変わった喋り方だな。
「とはいえ飲み物を頂いた事実には感謝します、とミサカは素直にお礼を述べます」
ふむ、ちょっとばかし変わってるけど、素直にお礼を言えるのは良いことだ。ただそれを差し引いてもかなりぶっ飛んでる状況だけどな。
「ところでここはどこでしょうか、とミサカは問いかけます」
ここがどこであるが、説明しようと思えば住所でもなんでも言えばいいのだろうが、ここが俺からしたら創作物の中の世界であることを考えるとそれは途端に難しくなる。果たしてここは本当に創作物の世界なのか、よく二次創作なんかで言われるように、創作物の世界によく似た平行世界なのかもしれない。この場所の住所は分かるが、もっと大きな視点で言えば、どこの世界のどこどこという座標というように語る必要が出てくるかもしれない。
まあ、それっぽいこと考えてみたけど、実際に目の前のこの電波ゴーグル少女(仮)が欲しいの現在地の住所的な物なんだろうな。
「どこかとは非常に難しい質問だな、君と私の主観が異なればそこにある風景もまた異なる物になる。そうなってしまうとここという場所もまた見え方によって異なってくるのではないだろうか?」
誰だこいつ、と自分でも困惑するような台詞が口から飛び出た。
「それっぽい哲学的な命題を提示してくるこの感じはオサレと呼ばれるものである、とミサカは脳の片隅にあった謎の知識を披露します。それとその口調はとてもあなたには似合ってるとは思えません、とミサカは明らかな嫌悪感を丸出しにします。話の論点をすり替えて誤魔化そうとしているのでは、とミサカは考えます」
バレテーラ
だって仕方ないだろ? 昨日別人の身体に憑依したばかりの俺がその人の住所言えるわけないじゃん。住所自体は部屋に転がってた身体検査っぽい資料に記載されていたのは見たけど、そんなすぐに覚えられるか! 流石に自分の家の住所知らない変なやつとか思われたくないから誤魔化すしかないじゃん。といわけでカッコつけて適当に誤魔化そうとしたけど敢え無く看破されてしまった俺でした、まる!
こうなってしまっては最終手段に手を染める必要があるな。
「それで結局のところここはどこでしょうか、とミサカは質問を繰り返します」
再びその質問を投げかけてくる彼女をまあ待てと制止し、俺は最終兵器を取り出した。片手でそれの表面を何度かタッチし目的の動作を開始させる。正しく動作したことを確認しそれを耳元に持っていく、そして数秒後、それは世界を短縮させた。俺の声が距離という概念を超越しヒーローの元へ届く。
「助けてくれ上条君、なんだかよく分からないんだが俺も何が起こってるのか分からない。目が覚めたらベランダに電波ゴーグル少女が干されていた」
『え?お前もか? 俺も朝起きたらベランダでシスターが干されてたんだけど?』
「なん……だと……!?」
介旅君のソウルフレンド(心の友とも言う)でありヒーローと呼べる程の広い心をもった上条君に連絡を取った。彼ならばきっと有益な助言をもたらしてくれるだろうという淡い期待の上の行動だったが、上条君の返答は俺の予想の斜め上をいった。
シスター、それは神聖なる存在。
シスター、それは限られた存在。
「つまり、どういうことだってばよ?」
『なんか口調がおかしくないか? とにかく、朝起きてベランダに出たら干した覚えのない布団が干されててよくみたらシスターだったんだよ』
まさかそんな、上条君だけは介旅君の味方であると思っていたのに……
まさか上条君が選ばれた存在だったとは。
妹、それは一握りの限られた存在のみが得る事の出来る至宝。実に困ったことにその至宝を持つ者達はそれにどれ程の価値があるか全く理解していないのである。彼らは一部の例外を除いて、その存在を疎む。
ふざけるな! 俺は声を大にして言いたい、持てる者が持たざる者を嘲笑うかのようなその言葉に対して怒りすら湧いてくる。さあ持たざる者達よ! 想像するのだ! 自らの元に妹がいるリアルを! 君たちだけの、自分だけの現実を!
お兄ちゃん、兄貴、にいにい、にいちゃん、お兄様、君たちはどれを選択する? 因みに俺はお兄様一択だ! 朝、なかなか布団から出る事が出来ない俺の部屋の扉がそっとノックされる。それに応えることなく、俺は再び夢の世界へと旅立とうする。そうしているとゆっくりと気遣うように静かに扉が開かれる。 「お兄様、朝です」 その言葉が部屋の入口で聞こえる。非常に腹立たしいことに空想の中の俺はその声さえも無視する。そうするとどうなる?静かな足音が俺のベットに近寄ってくる。俺はまたもそれを無視する。そして体が揺らされる振動で俺は半分ほど目を覚ますわけだが、まだ脳が完全に覚醒することはない。今度は耳元で天使のような囁き声が聞こえてくる。 「お兄様、起きて下さい、朝ですよ」 それで俺の脳は覚醒する。これで後は目を開け体を起こせばいいだけのはずだが、空想の中の俺はいまだ目を閉じたまま布団から出ようとしない。 「お兄様?」 その声が再び耳元で囁かれる。だが俺は動かない。やがて数十秒程してそっと布団が開かれる 窓から差し込む太陽の光に体を起こしてしまいたい衝動に駆られる。だがまだだ、俺は耐える。 「お兄様、お兄様」 何度か掛かるその呼び声を無視して俺は狸寝入りを続ける。やがて諦めたのか、布団がそっと降ろされる。しかしここで奇妙なことに気が付く。暖かい布団の内側が更に暖かくなったかのように感じる。それになんだか圧迫されていた空間に広がりが出来ているようにも感じる。 その段階になって薄っすら目を開け布団の中を確認するとだな、そこにいるわけだ。
妹が!
柔らかく微笑んで目を閉じた妹が! 俺の布団の中で俺と一緒に寝ているんだ! 時折天使の囁きが聞こえる。「ふふ、お兄様、暖かい。」 超絶な破壊力を誇るその囁きを聞いて、俺はまさに天にも昇るような心地を覚える。全ての生命に感謝を、妹という存在を産み出してくれた両親に感謝を、妹に感謝を!
だがしかし! 至極残念な事に俺には妹なんてものはいない! この世界はなんて残酷なんだ、欲する者の元には決して訪れず、欲しない者の元にのみ妹は存在する。なんて理不尽!
『おーい、もしもーし。聞こえてるか?』
おっと、電話口から上条君の声が聞こえる。 取り合えず落ち着くんだ俺、まずは彼の状況を詳しく知ろうじゃないか。 持てる者への罪状はそれからでも遅くはない。 いったいどういった経緯で上条君(妹)は上条君の部屋にベランダから侵入することになったのか。 初めに思いついたのは夜這い、という言葉だ。 だが待って欲しい、妹は神聖な存在である、それが夜這いなどという下品な行為に勤しむことがあろうか、否、ありえない。 そうであるならばきっと上条君(妹)はきっと何かのサプライズを予定していたのではないだろうか。 兄を喜ばすためにダイナミックにもベランダから侵入しようとする活動的な妹、俺の好みからは外れるが十分にありだと言わざるを得ない。
「もしもし、それで詳しい状況を教えてもらおうじゃあないか?」
とにかく向こうの情報を知る、それが今の俺の使命だ!
え? 介旅君のロールプレイ? 知らない子ですね。
今はとにかく
―――end
start―――
彼女は考える、ここはどこか?
答えは出ない。
彼女は考える、自分は誰か?
答えは出ない。
彼女の知識の中には、この場所が学園都市と呼ばれる街であることはインストールされている。それでもここがどこであるか、それを彼女は分からない。知ったかぶり、という言葉があるように知識だけではその事実を知ったことにはならないのだ。知識ともう一つ必要な物である経験が彼女には不足していた。
自分は誰なのかと彼女は自身に問いかける。これもまた知識にはある。自分を認識する個体名が彼女の知識の中に確かに存在する。彼女は自分が誰であるか分からない、故に個体名、もとい個体番号が何を意味するものなのか分からない。ミサカという単語と一万に届きそうな謎の数値の組み合わせ。ミサカという単語は、成程、人名のような響きであると彼女は納得出来る。だが後ろの数値は何を意味する物なのか彼女は理解出来ない。彼女の知識は、それを人の名前にはふさわしくない物だと判断した。そこから彼女は二種類の推測を建てた。
一つに、暗号のような物、もしくは偽名やそれに類する何か。
二つに、自分はそのような番号で呼ばれるべき、人ではない何か。
彼女はその二つの推測のどちらが正しいのか、知識を総動員して結論を求めた。前者が正解であるならば大きな問題は無い、少し特別な仕事をしている何かだと結論付けることができる。だが仮に後者が正解であったならば、それは自己というものを揺るがす物になる。生憎と彼女の知識の中にそれが倫理的な問題であることを指摘する者は存在していない。また、それを指摘出来たかもしれないしれない人物と面識があったという経験は彼女の脳には欠けていた。元から知識がある中で経験が欠如していたことに彼女は疑問を感じない。それが普通なのだと彼女の知識が判断を下していた。
彼女は後者のもたらす残酷な未来を予想出来ないままに思考を進める。
―――
そんな呟きが彼女の耳に届いた。彼女の経験が新しくスタートしたその一番初めに、彼女が出会った青年の声だった。その声を聞いて彼女は思考を一度止める。
『
それに……、と彼女は目の前の青年、先ほどから見ていて何やら愉快な性格をしていそうなその青年を見て、それから自分の姿を見て、自分は人である、と結論付けた。
目の前の青年が人であることは彼女の知識が裏付けていた。ならば性別や年齢こそ違えど、同じような存在である自分は人である。そのように理論を展開していた。
もし彼女の素性を知る人物がその判断を聞けば、きっと一部の例外を除いてその考えを嘲笑う。だがそれでも、彼女が自分を人だと認識したのならきっとそれでいいのだろう。彼女は人なのだ、誰が何と言ったとしても彼女が自分自身を人だと認識したのだ。
そこで彼女は人間として今の状況をどう処理すればいいかを知識から検索する。一般常識と呼ばれる知識から考えるならば、
一先ずは、目の前で電話から口を話、ぶつぶつと妹がどうだお兄様がどうだと呟いている少年、対外的には介旅初矢と呼ばれる彼に助けを請うために彼の電話が終わるのを待った。
彼女は知らない、自分が実験動物として生み出された存在であることを。
彼女は知らない、自分が殺されるためだけに生み出された存在であることを。
彼女は知らない、生きるという生物的欲求に駆られ実験を放棄したことを。
彼女は知らない、逃亡中に介旅の住む建物の屋上に飛び移ろうして失敗したことを。
彼女は知らない、その時に頭を打ったのが原因か、精神摩耗によるものか、経験を司る記憶を忘却したことを。
それでも彼女は、ミサカ9951号は今を生きようとする。
久方ぶりの更新、言い訳はしない。ただ書けなかった。
感想の返信とか出来ていなかったけどちゃんと見てます。
あと本文で妹について熱く語ってるけど作者はシスコンではありません。リアル妹が存在しますけどシスコンとかではありません。というかこんな気持ち悪い妄想の妹はリアルには決して存在していません。というかシスターと聞いてまず最初に妹を想像するような気持ち悪い存在も存在しません。一般的な認識ではシスター=修道女であることが常識であると信じています。或いはシスター=姉妹ならばありえるかもしれません。