目が覚めたら能力者になってた件   作:千草流

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今回はアルコールの入った脳味噌で勢いに任せて書いたから後から修正するかも



7、あまりにも鈍感な主人公を見てると脳の障害を疑いたくなる

 こんばんは皆さん、今俺は学園都市のとあるボロアパートに来ています。ボロという表現を用いるのは些か失礼であるかもしれないので、古びたとでも言い換えておきましょうか。それは兎も角、このアパート、少しSF入ってるような学園都市の中にあっても、なんというか趣を感じる佇まいをしていますね。周囲が高層ビルやお洒落なアパートに囲まれている中であってもその存在感を失わない、強烈な個性というものを放っている気がします。年季の入ったその様子は一目で惚れてしまいそうな魅力を持っています。

 

 さて、それでは本日このアパートを訪問した理由を説明したいところですが、俺にも何故だかよくわかっていません。

 

「どうしてこうなった?」

 

 謎のお宅訪問的なナレーションにも疲れた所で、現状を考える。

 

 俺氏アンド上条君、恐ろしき放火魔(仮)を撃退する→謎の少女が血まみれで命がマッハ→救急車カモン!と思ったところで上条君が謎の少女(服がほぼ白一色だったので以下ホワイト少女)を抱えてダッシュ→なんか十万三千冊とか魔術とかよくわからない会話が上条君とホワイト少女の間でなされる(なお俺氏全く理解出来ず)→古びたアパートに到着→謎の幼女のお宅訪問→ホワイト少女の怪我を直すためには謎の幼女の力が必要らしい→とりあえず邪魔だから追い出される←今ここ

 

 とりあえず理解できたのは、ようじょのちからってすげー!ってことだけである。

 

「なあ、いまさらなんだがなんか雰囲気がいつもと違うけどお前ってビリビリ、じゃなかった、えっと御坂だったよな?」

 

「あなたのいうビリビリがなんであるかは分かりませんが、ミサカの個体名には確かにミサカという単語が含まれています、とミサカは初対面のウニ頭に律儀に返答します」

 

 それにさらによくわからないけど、どうやら上条君はミサカの事を知っているようだ。これでミサカの身分も判明しそうだ。それにようじょのちからでホワイト少女も治るようだし、めでたしめでたしといったところか。と思っていたがどうもそう簡単な話ではないらしい。

 

「初対面って……まさか記憶喪失ってのは本当だったのか? 超能力者(レベル5)のくせして無能力者(レベル0)の俺にいつもちょっかい出してきてたじゃないか?」

 

「どうやらミサカとあなたの間では認識の違いがあるようです、とミサカは推測します。確かにあなたの言う通りミサカはミサカですが、ミサカが超能力者(レベル5)であるという知識はミサカの脳にインストールされていません、とミサカは説明します。あなたの言う御坂とミサカは恐らく別人である、とミサカは断定します」

 

「えっと、ミサカミサカってわけが分からなくなりそうだけど、つまりお前はいつものビリビリ中学生とはよく似た赤の他人だってことか?」

 

「そこまではミサカにも分かりかねます、とミサカは自らの知識不足を吐露します。経験が欠けているミサカには、あなたの言う御坂と血縁関係などがあったかどうかは分かりませんので、とミサカは自らが記憶喪失であることを理由として説明します」

 

「そうは言ってもよく似ている、というかほんとに御坂そっくりだからなあ。もしかしたら双子の姉妹とかそんなのかもしれないな。取り合えず御坂に今度会った時に確認しといてみるよ」

 

 ふむ成程、つまりミサカはミサカだけど御坂じゃなくて、御坂はビリビリな中学生でミサカはその姉妹かもしれないと、そういうことか。ミサカ御坂ってこれ文字にしないと何言ってるか分からなくなるな。

 

「たぶん上条君の言ってるので正解だと思う。ミサカも記憶喪失だけど誰かの妹だった気がするとか言ってるから」

 

「そうか、ならほんと今度聞いとくよ」

 

「頼むよ上条君」

 

「そうは言っても俺、御坂の連絡先とか知らないからな。まあ事あるごとにしょっちゅう俺に突っかかってくるからすぐに会えるとは思う」

 

「まあ慌てることもないんじゃないかな、ミサカもそんなに困ってる風には見えないし」

 

「その通りです、とミサカはお兄様の意見に賛同します。正しいかどうかは兎も角、ミサカはすでに身元が判明したようなものであるので慌てることはない、とミサカは考えます。それよりも今は、禁書目録(インデックス)と呼ばれたあの少女のことを気にするべきなのではないでしょうか、とミサカはこういった時乗りかかった船という表現を用いるのだと考えます」

 

 インデックス?目次?と一瞬だけ思い浮かべるが、よく考えてみればあのホワイト少女の事だろう。変わった名前だけど外国じゃあ案外メジャーだったりするのかもしれない。そもそも綴りからしてindexとは限らないだろうしな。

 

 兎にも角にも、話の流れ的にミサカのことは一先ず置いておいて、ホワイト少女改めインデックスの事だ。さっきまではなあなあで上条君に着いてきたけど、よくよく考えれば上条君とインデックスの事情とかさっぱり分かっていなかった。まあ聖人たる上条君が間違いなんて起こすとは到底思えないから、着いてきたこと自体にはなんら疑問を挟まない。

 

「そうだな……ここまで来ちまったんだ、取り合えず話すだけ話すよ。ただそれを聞いてどうしたいかは自分で考えてくれ。これは俺の我儘なんだ、だからお前らを巻き込もうとは思わない」

 

 そう前置きして上条君は語り始めた。なんでもインデックスの脳には十万三千冊の魔導書が記憶されており、それを狙う魔術師から逃亡している最中に上条君と出会ったそうだ。魔術?え、まじで?とは思ったが上条君の言う事だ、間違いないのだろう。というか超能力なんてオカルトが普通にあり得る世界だから魔術があっても不思議ではない。話を戻す。一度はインデックスの手を取れずに別れてしまった上条君だったが、自分のせいでインデックスがケガを負ったことを理解し、もう一度、今度はその手を取ることにしたらしい。

 

「俺は決めたんだ、あいつを、インデックスを地獄の底だろうがなんろうが引きずりあげてやるって……」

 

 上条君マジヒーロー、かっこよすぎだろ。

 

 そこまで言われたなら俺も黙っているわけにはいかない、きっと上条君の親友である介旅君も同じ気持ちであると信じて、俺は口を開いた。

 

「そんな事情を聴いて黙っていられるほど俺は薄情じゃあないぞ。是非協力させてくれ上条君!」

 

 当たり前のようにそう言い切る俺。さっき会った放火魔(仮)が上条君の話によるとインデックスを狙う魔術師らしい、それを考えるとあの炎とまた対峙する可能性がある。それは確かに怖い。だけど俺には上条君が付いている。それなら誰にも負ける気がしない。

 

 と、そう思った時、ふと俺の服の裾が誰かに引かれた。誰だ?と思ったがこの場にいるのは俺と上条君ともう一人しかいない、ミサカだ。

 

「なぜですか、とミサカは理解できない感情を抑え込めずにいます」

 

 ミサカの表情は相変わらず無表情だが、どこか辛そうに見えた。なぜといわれてもなんのことだかさっぱり分からん。何が何故なんだ?

 

「あ…、とミサカは思わず伸ばした手を引っ込めます。ミサカの事は気にしないで下さい、とミサカは釈明します」

 

 何がしたかったのか分からず首を傾げていると上条君が助け舟を出してくれた。

 

「怖いなら無理についてこなくてもいい。さっきも言ったけどこれは俺の我儘だ。だから無理しなくてもいい」

 

 成程、流石上条君、心の機微にも敏いようだ。ラノベにありがちな鈍感系ではない。パーフェクトだ。

 

 そりゃあ確かに、さっき放火魔(仮)と対峙して怯えていたミサカにはまたあの恐怖を味わうのは酷なことだろう。記憶が戻るまでの期間限定だが、仮にもお兄様なんて呼ばれてるんだ。兄として妹を危険に晒すわけにはいかない。

 

「そうだな、じゃあミサカは病院……はこの時間じゃもう急患しか受け入れてないかな。それなら取り合えず、俺の部屋にでも泊まっていくといい、俺は適当にその辺りのファミレスかなんかで夜を越すから」

 

 そういって俺の部屋、正しくは介旅君の部屋の鍵をミサカに渡そうとする。

 

「……」

 

「どったの?」

 

 鍵を差し出してもミサカは受け取ろうとしない、まさか俺が部屋に連れ込んでミサカを襲うとかそんなことでも考えているのだろうか? 何をバカな事を、まず俺は中学生くらいの女の子を襲ってしまうようなロリコンではないし、第一、仮にも妹ポジションであるミサカを襲うなどと、天地神明に誓ってありえない。兄とは妹を守る物だ。妹を襲うような兄がいるとすれば、それはもはや兄ではない、ただの畜生だ。血縁関係だけが兄を兄として足ら占めるのではない。例え義理であろうが、例え妹に嫌われようが、鋼鉄の意志を持ってして妹を守るのが兄の役目だ。

 

 まあ、実際に妹がいるわけじゃあないから全国の兄がどんな心境で妹と接しているかは分からないが、とにかく俺は兄とはかくあるべしと思っている。

 

「いえ、ミサカも協力します、とミサカは理解出来ない不安を抑えて強がります」

 

 どうやらあまり俺は信用されていないようだ、まあ当然か。お兄様なんて呼んでるのも冗談半分だろうし、今日会ったばかりの他人を信用しようとすることがそもそも間違っているんだ。

 

 

 

 

―――end

 

start―――

 

 

 

 

 勘、と呼ばれるものがある。時にそれは非科学的な理論によって説明されるが、それは正しくない。

 

 勘とは即ち、経験からもたらされる予測であり、立派な脳の機能の一つだと言える。例えば、土砂降りの雨で視界の悪いある日、交通事故にあった者がいるとしよう。その人物は事故ではなんとか一命を取り留めたが、それから先、雨を見ると嫌な予感がして仕方がない。これは一種の防衛本能だろうが、雨の日は外出することに危険を感じているのだろう。雨の日に事故にあった経験が、脳に警鐘を鳴らしているのだ。これが勘だ。

 

 またネガティブな表現だけでなくポジティブな表現を考えると、所謂職人と呼ばれるような人物の勘が例に取れるだろう。何千何万回と同じ作業を繰り返した果てに、彼らは正解となる形を知る。時に失敗し、時に成功した時の、気温や湿度、果ては僅かな音の波長の違いを肌で理解し、それを持って成功を手繰り寄せる。これも経験の積み重ねによる勘だろう。

 

 経験が無ければ勘はないと言えるだろう。

 

 だが今、ミサカは自らの勘で、言い知れぬ不安に襲われていた。経験が脳から欠如している筈のミサカが、経験を必要とする勘を冴えわたらせていた。それが何であるかミサカには理解出来ない。一般的な感性を持ってすれば、それは誰かが死ぬ恐怖であると分かるだろう。だが、命の価値という物に対する価値が歪んでいるミサカにはそれが分からない。

 

 ミサカネットワーク、そう呼ばれる通信網とも言える物が存在する。これは超能力による特定の電気的波長を持つ者たちが互いの脳波をリンクすることにより形成されるネットワークである。ミサカもそのネットワークの一端を担う者であったが、無意識的に電気的波長を遮断しているミサカは今はそのネットワークからは外れている。

 

 そのネットワークの特徴としては、ある意味でほぼ同一の個体である人物のみで構成されていることが挙げられる。この特徴のために、ネットワークの構成者であり接続者でもあるミサカは他の個体からの情報を、まるで自分が経験したかのように、知識として蓄積することが出来た。だがこれによりある弊害がミサカの中で発生した。

 

 ある個体の接触した事象に対して、それがまるで自らの経験であるかのように錯覚することで、その事象が経験であるか知識であるかが曖昧となった。その結果が今のミサカの心の現状である。経験が欠けた彼女の脳には、その事象が中途半端な知識としてだけしか存在していないのだ。それが恐ろしき何かであると、知識は訴えかけてくるが、確かな経験のない彼女には、それが本当に恐ろしい物だと証明できない。前例の無い事象にたいして勘が働いているのだ。それはどうにも、気持ちの悪い状況だろう。

 

 分かっているのに分からない。それがミサカの心情だ。

 

 死、それが彼女が分かるが分からない物の正体だ。彼女はネットワークから切断される少し前に、そこからその情報を収集した。彼女はもし自分が死に直面したとしても、それを恐れることはあってもそれから逃げるは出来ない。もし経験としての情報が残っていたなら、彼女は一目散に死から遠ざかろうした。だが今の彼女にはそれが出来ない。経験が欠けているからだ。それが確かに恐ろしいものだと理解できるまでは逃げることが出来ない。

 

「そんな事情を聴いて黙っていられるほど俺は薄情じゃあないぞ。是非協力させてくれ上条君!」

 

 

 そんな感情をどうしていいか分からないミサカの前で、介旅ははっきりと、再び死に立ち向かうと宣言した。

 

「なぜですか、とミサカは理解できない感情を抑え込めずにいます」

 

 ミサカはその背中が自分から遠ざかっていくように感じられて、思わず手を伸ばす。ミサカの知識が正しいのなら、普通は人は死から遠ざかろうするものである。それを目の前の人物は否定してみせた。ミサカはその事にさらに疑問を膨らます。なぜ彼は死を恐れないのか、そして何故自分は彼に縋りつくように手を伸ばしたのか、どちらも彼女には理解できない。

 

 それのどちらもが人の意志であるということを、彼女は理解できない。誰かを死なせたくない、自分よりも他人を心配するような生物としては有り得ない思考回路が、彼女には理解出来なかった。

 

「あ…、とミサカは思わず伸ばした手を引っ込めます。ミサカの事は気にしないで下さい、とミサカは釈明します」

 

 自分でも理由の分からない衝動的な行動であったことに気が付いて、ミサカは手を放す。

 

 介旅が死に立ち向かおうする事をミサカは止めることは出来ない。それの危険性を論理的に説明出来る自信がミサカにはなかった。

 

 だから、ミサカは隣に立つ。

 

 介旅が向かう先の恐ろしさを知っているミサカは、介旅がその恐ろしきモノに飲まれてほしくないと、自分の意志を持ってして協力を申し出る。

 

 介旅に死んでほしくない。その感情が、命の価値観が歪んでいるミサカが命を確かに尊い物であると認識したことによる物だと、彼女は未だ理解出来ない。




え?ステイルさんじゅうよんさいはどうなったのかって?スプリンクラー師匠にはイノケンさんも勝てなかったよ(原作通りともいう)


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