深紅のスイートピー   作:駄文書きの道化

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ACT.08

 ――夢を見ていた。赤い、灼熱の焔の中に佇む龍の夢を。

 

『……ふん。あの量であれば声を届けるので精一杯か。稀釈もされていたしな』

 

 声がする。重厚な、威厳のある声だ。

 

『まぁ、良い。おい、聞こえるか小僧。兵藤 一誠』

「……だれだ?」

 

 問われ、一誠は疑問を投げかけた。これは夢だとわかる、現実じゃない。その夢の中で明確に自分に問いかけてくる“何か”。

 

『運が良かったな。夢幻の娘がいなければ俺が覚醒する前に死んでいたぞ』

「……死」

 

 そうだ、と一誠は思い出す。意識が途切れる前、自分はバケモノに襲われて、殴られて。痛みを思い出す。あぁ、確かに死んでしまいそうな痛みだった。

 それと同じぐらいに鮮やかに思い出せるのは紅の色。憧れの背中、あんな風になりたいと思った優しい人の姿。

 

『強くなれよ、相棒。今度はこうして一時的なものじゃなくて、会話が交わせると良いな』

「まて……おまえは……?」

『――ドライグ。偉大なる二天龍、その片割れたる“赤き龍(ウェルヌシュ・ドラゴン)”だ』

 

 ――“赤き龍(ウェルヌシュ・ドラゴン)”ドライグ。

 何故か、その名を覚えておかないといけない気がして必死に刻みつける。

 意識が遠くなっていく。夢が終わるのだろう。微睡みに身を任せる一誠は、しかしてその声を聞いた。

 

『あ、そうだ! 頼むから、おっぱいなどに惹かれてくれるなよ、相棒――!!』

「お、っぱ、い……?」

 

 なんで……おっぱい? そんな疑問を最後に一誠の夢は終わりを告げるのであった。

 

 

 * * *

 

 

 私は病院の廊下の椅子に座って手を握りしめていた。八重垣さんが連絡してくれて、一誠を運んでくれた事で病院にはすぐさま辿り着く事が出来た。

 一誠もイリナも診察を受けている所だ。その待ち時間は私にとって苦痛でしかなかった。握った手を額に当てて、歯を強く噛む。

 

「……リアス。君は最善を尽くした。そんなに思い込まない方が良い」

 

 隣に座っていた八重垣さんに声をかけられる。その声は私を労るような声で、けれど素直には受け入れられなかった。

 あともう少し早く2人を見つけていれば、なんて。わかってる。それはIFの話だ。実際には起こりえなかった可能性。一誠とイリナは襲われて、一誠は負傷してしまった。それが現実だ。

 それでも、どうしても私自身を責める声が消えてくれない。もう少し何か出来たんじゃないか、って。こうなる前に出来る事はあったんじゃないかと。ぐるぐる思考は巡る。それがどうしようもない事だってわかっていても。

 

「……血の気が引いたんです」

 

 ようやく拳を解けた手は震えていた。一誠が倒れていて、イリナが潰されそうになっていた光景を目にした瞬間、血の気が引いた。そこからはもう無我夢中だった。あのはぐれ悪魔を殺さなければ、とそれしか思えなかった。

 もし飛び出していなかったら、あと一歩遅かったら、あの2人の笑顔は永遠に失われてしまったかもしれない、と。そう思ったら体の震えが止まらない。

 これだけ世界は“原作”と異なっているのに、私はどこかで“一誠やイリナが死ぬ筈がない”なんて思ってたんじゃないかと思う。そんな都合の良い話なんてある筈がないのに。

 

「本当に……怖くて……!」

「……大丈夫だ、一誠くんも、イリナちゃんも大丈夫だ。君はよくやったよ、リアス」

 

 八重垣さんが私の手を握ってくれる。暖かくて、優しくて、思わず涙が零れそうになる。過ぎ去った恐怖と、2人が生きてくれている安堵がどうしようもなく自分の胸を締め付ける。

 そうしていると、奧からイリナを伴ったトウジさんの姿が見えた。私は思わず立ち上がってトウジさん達に駆け寄る。

 

「イリナ! トウジさん、イリナに異常は……?」

「いや、外傷も特にない。本当に良かったよ」

 

 本当に安堵した様子で告げるトウジさんに、私も安堵の息を吐く。後は一誠だけだけど、命の危険は免れているとは予め聞かされているから検査結果待ちだ。

 本当に、本当によかった。心の底からようやく力が抜けそうで、その場にへたり込んでしまいそうになる。けれどしっかり足に力を込めてイリナと向き合う。

 

「イリナ、本当に良かった。怖い思いをしたでしょ……?」

 

 イリナの顔を覗き込もうとして、しかし目を逸らされる。俯くようにするイリナに思わず私は不安を覚える。

 

「……イリナ?」

 

 名を呼んでみても目を合わせてくれない。なんだかイリナの様子がおかしい事に気付いて、私は胸騒ぎを覚える。

 そんな中、イリナが俯いたまま声を発した。いつものような明るい声ではなく、とても沈み込んだ暗い声で。

 

「……リーアは」

「……何?」

「……なんで、言ってくれなかったの」

「え? な、何を……?」

「十字架」

 

 俯いていたイリナが顔を上げた。その表情はとても傷ついた表情で、今にも泣きそうな顔をしていて胸が締め付けられる。

 しかし、十字架? 十字架が一体、どうしたのか。私は訳もわからずイリナを戸惑うように見るしか出来ない。

 

「私、見たんだよ」

「見た?」

「十字架触った悪魔の手が、溶けちゃったの」

「……ぁっ」

 

 それが何を意味するのか悟って、私は顔を青くした。さぁっ、と血の気が引いていく。それは私がイリナにずっと隠し通していた事実で、彼女にだけはまだ知られる訳にはいかなかった事だ。それが、知られてしまった事に私は動揺してしまった。

 

「リーアも、悪魔なんだよね? 悪魔が十字架に触れたらあぁなるって、なんで教えてくれなかったの?」

 

 それはどこか私を非難するようで。どう反応すれば良いのか私はわからず、言葉を無くしてしまっていた。

 

「リーアも痛い思いしてたんじゃないの?」

「そ、それは……」

「なんで、言ってくれなかったの……?」

 

 くしゃりと、イリナの顔が歪んだ。ぽろぽろと涙が落ちていくのを私は呆然と見る事しか出来なかった。ただ、それでも慰めようとしたのか、私の手がイリナに伸びる。

 その手を、イリナは払った。払われた手が痛くて、それ以上に何が起きたのか理解が出来なくて私は呆然とする事しか出来ない。

 

「イリナ!?」

「パパも! なんで! なんで教えてくれなかったの!? 私、ずっとリーアに酷い事してた! ずっと、ずっと……!」

「ち、違うの! イリナ、聞いて!」

「じゃあリーアは今、十字架を持ってるの!?」

「……そ、れは……」

 

 イリナから受け取った十字架は、今も大切に仕舞って保管してある。しかし直接触れる事も、箱から出す事も躊躇っていたのは事実だ。身につけるなんて事は出来る筈も無かった。

 言い淀む私を、イリナは強い眼差しで睨み付ける。その眼差しに私は一歩、後ろに下がってしまう。

 

「持ってないんでしょ? お守りって渡したのに! ……あの悪魔みたいに、火傷しちゃうんでしょ?」

「そ、そこまで酷くは……」

「じゃあ、やっぱり痛かったんだ」

「イリナ、待って、落ち着いて……」

「やめて! 触らないで!!」

 

 自分の体を抱くようにしてイリナは一歩下がる。そのまま背を向けて駆け出して行ってしまう。それに私は追いかける事も出来ず、無様に手を伸ばし続けてしまう。

 同じように呆気取られていたトウジさんが、すぐさまイリナを追いかける姿を見送って、私はその場に座り込む。足に力が入らない。ただ、ただ呆然とする事しか出来なかった。

 

「……リアス、大丈夫か?」

「……八重垣さん、私……」

「落ち着け」

「イリナを……泣かせちゃった……私が……! 傷つけて……!!」

 

 こんなつもりじゃなかったのに。ただイリナの思いを穢したくなくて、いつか話そうと後回しにしてて。

 それが最悪の形でバレてしまった。悪魔は十字架には触れられない。触れればその身が焼け爛れてしまう。それは上級悪魔であり、グレートレッドの力を内包する私でも逃れ得ぬもの。即座に焼け爛れてしまう訳ではないけど、痛みを感じるのは事実で。

 イリナの思いを私は知っている。あの子はただ善意で、私の為を思って十字架をプレゼントしてくれた事も知ってる。それを踏みにじりたくなかったから隠してきたのに。

 

「間違い、だったのかな……」

「リアス……」

「ごめん、ごめんね、イリナ……!」

 

 体に力を込める事も出来なくて、ただ私は自分の体を抱きしめてその場に蹲る事しか出来なかった。背を撫でる八重垣さんの手が優しくて、涙が零れて行くのが止められなかった。

 

 

 * * *

 

 

「……ぅ、ん?」

 

 一誠が目を開くと、そこは見慣れぬ天井だった。白い部屋に清潔な雰囲気の部屋。窓へと視線を向ければ、そこには夜の空が広がっている。

 月明かりだけが静かに照らす中、一誠はどうして自分が寝ていたのか思い出そうとして、白を基調とした室内で紅の色彩を目にした。

 月明かりに照らされた紅の髪、どこか物憂げな表情を浮かべているリアスがそこにいた。目をぱちくり、と一誠が瞬きをするとリアスが一誠が起きた事に気付いたように笑みを浮かべた。

 

「一誠……良かった。目覚めたのね?」

「リーア……? 俺……」

 

 どこか泣きそうな顔で安堵の笑みを浮かべているリアスに一誠は疑問を投げかけようとして、意識を失う前の事を思い出す。

 バケモノからイリナと一緒に逃げていた事。そのバケモノに殺されそうになった事。そして、そこに現れたリアスと、リアスの頭に生えていた龍のような……。

 

「……角、ない」

「あぁ、うん。そこまでは覚えてるのね」

 

 リアスは苦笑して、一誠の頬を撫でる。リアスの手の感触が擽ったくて一誠はむずがるように首を振る。それでも懲りずにリアスは一誠の頬を撫でる。

 

「……本当に、良かった」

「リーア……?」

 

 一誠の胸元に額をつけるように、その鼓動を確かめるように体を預けるリアスに一誠は思わず彼女の名を呼ぶ。それも少しの間の事で、リアスは顔を上げて一誠から手を離して向き直る。

 

「色々と話さなきゃいけない事があるわね」

「……うん」

「一誠、あのね? 私はね……――悪魔なの」

 

 そんな話題の切り出しを皮切りに、リアスは一誠に話を始めた。自分が悪魔である事、この世界には悪魔の他にも天使や堕天使、竜や妖怪といったお話の中の存在が実在している事。

 一誠は静かに聞いていた。それを疑う訳でもなく、かといってそのまま信じる訳でもなく。リアスが話し終えるのを待つように。

 

「ずっと黙ってて、ごめんなさい」

 

 話し終えたリアスは静かに頭を下げた。暫し、リアスを見つめていた一誠だったが、不意に視線を天井へと移して呟くように言う。

 

「……そっか。リーア、人間じゃなかったんだ」

 

 驚きがないと言えば、嘘になる。それでも一誠は取り乱すような事はなかった。一度死にかけたからか、まだ実感がないのかもしれない。リアスとしてはまだまだ話しておきたい事はあるけど、今聞かせるような事でもないのかと逡巡する。

 そうして黙り込んでしまったリアスに代わって、今度は一誠が口を開いた。

 

「リーアは、どうして人間の世界で暮らしてるんだ?」

「え? ……そうね。お仕事で来てるの」

「お仕事?」

 

 首を傾げる一誠。リアスだって自分と同じように子供なのに仕事をしている、というのは驚きだった。

 

「今日、一誠が襲われたでしょ? あれは悪い悪魔。悪い悪魔を懲らしめるのが私のお仕事なの。人間に迷惑をかけないようにね」

「じゃあ、リーアは良い悪魔?」

「……そうだと良いわね」

 

 本当に、とリアスは呟く。良い悪魔なんて皮肉でしかなくても、少なくとも自分はそうあれれば良いと。

 

「……一誠には謝らなければいけないわね」

「謝る?」

「今日、悪魔に襲われてしまった事、それから……ずっと貴方に秘密にしてきた事。色んな事」

「悪魔だって言わなかった事?」

「うん。それと……貴方の事、ずっと監視してたの」

「……監視?」

 

 そこで一誠の表情が初めて不安げに歪む。リアスは意を決したように真剣な表情を浮かべる。

 

「えぇ、一誠。貴方の中にはね、ドラゴンがいるの」

「……俺の中に?」

「うん。とても、とても立派な、偉大なドラゴンさん。だけど悪魔にとって凄い悪さをしたドラゴンなの。だから一誠がドラゴンと一緒に暴れ出さないように監視してたのよ」

「……ドライグ」

「え?」

 

 一誠の呟きにリアスが目を見開かせる。まさか一誠の口からその名が出てくるとは思っていなかったからだろう。

 

「一誠、どうしてその名前を……?」

「……わからない。覚えておけ、って言われたような気がして……」

「……やっぱり、私の血の影響かしら」

 

 ぽつりと、リアスは呟きを零す。その声が小さかった為か、一誠はリアスの呟きを聞き取れず首を傾げる。気を取り直してリアスは一誠へと向き直る。

 

「そう、ドライグ。偉大なる二天龍、その片割れである“赤き龍”ドライグ。それが貴方の中に宿っているドラゴンよ」

「そうなんだ……二天龍って格好良い」

 

 一誠の言葉に、リアスは思わず少し噴き出してしまった。格好良い、か。確かにそうかもしれない。半ば悪魔の間でも忌み名として広まっている名前だけど、何も知らなければそんな感想になるか、と。

 

「えぇ、とても強いドラゴンさんなの。だけどね、ドラゴンは凄く強いから、悪さをしたりしないように監視してたのよ。ごめんなさいね、一誠」

「俺、悪さなんてしないよ!」

「えぇ、ドライグとも夢の中でお話させて貰って、そんな事はしないって約束して貰ってるわ。だから安心してね?」

「……そっか。そうなんだ」

 

 いつの間に、とは思わなくはない。そんな思いからか一誠はリアスの顔を見つめる。その瞬間、月光を遮っていた雲が風に流されたのか、月光が強くなる。

 月の光に照らされるリアスの顔を見つめて、一誠はリアスの目の下に涙の痕が残っている事を見つけてしまった。

 

「リーア……泣いたの?」

「……少し、ね」

「……リーアも、泣くんだな」

 

 ずっと笑顔を浮かべていて、喧嘩の仲裁をして、優しく振る舞っているリアス。それが一誠の知る限りのリアスだ。怒る事もあって、怖いけど。母のように、姉のように優しい顔を浮かべる憧れの人。

 そんなリアスが泣くように思えなかった。それでも彼女は泣いたと言う。それが一誠には驚きで、同時に心配にもなった。

 

「イリナと、ね」

「……イリナ。そうだ、イリナは!」

「イリナは無事よ。怪我もない。……ただ、とても傷つけてしまった。私が、イリナを泣かせてしまった」

「リーアが……?」

 

 信じられない、と一誠は声を漏らす。あんなに仲が良くて、イリナを可愛がっていたリアスが、リアスを慕っていたイリナが喧嘩をするようには思えなかった。

 するとリアスが苦笑をしながら、少し後ろめたそうに一誠へと教えるように伝えた。

 

「悪魔はね、聖なるものがダメなの」

「……聖なるものって言うと」

「十字架とか。触れるとね……凄い痛いんだ。お祈りを捧げても、凄い頭痛がしたりね」

「え? でも、リーアは……」

 

 イリナと一緒に祈りを捧げたり、十字架を貰ってたりしたじゃないか、と。

 口にしかけて、気付く。あぁ、そうか。黙っていたんだ、と。一誠は気付いて眉を寄せた。

 

「……なんで、イリナに言ってやらなかったんだよ」

 

 一誠の問いかけに、リアスは目を閉じて言葉を纏めるように間を置いて、ゆっくりと口を開く。

 

「イリナの思いを殺したくなかったの。あの子は私が悪魔だって知ってたけど、私が神様に許して貰えるようにって……イリナは頑張ってたんだ」

「だからって……それでリーアが傷ついたら意味ないだろ」

 

 一誠の指摘にリアスは苦笑を浮かべる。返す言葉もない、と言うように首を左右に振る。

 

「本当にね。……馬鹿だったのよ、私が。何も言わない事が優しさだと思ってたの。私が我慢してれば良いって」

「そんなの違う。だって……リーアが我慢して、リーアが痛い思いをするなんて、そんなの俺もイリナも嫌だ」

 

 一誠は手に力を込めて体を起こそうとする。瞬間、体に痛みが走って顔を歪める。起き上がろうとした一誠を諫めるようにリアスは一誠の頭に手を置いてベッドへと押し戻す。

 

「無理しないの」

「それは! リーアだって同じだろ……痛かったら、言えば良いのに。黙ってるなんて、悔しいよ。喜んでくれれば良いってイリナ、ずっと思ってただろうし。俺だって、イリナみたいに何も言われないままリーアを傷つけたら、凄い嫌だ」

「……ごめん」

「俺じゃなくて、イリナに謝ってやれよ……イリナ、多分、凄い後悔してるから」

「うん……」

「無理、すんなよ……」

「……ごめん」

 

 リアスはもう一度謝って、そのまま顔を俯かせた。すぐに顔を上げるも、その目には涙が堪っていた。

 手を伸ばして一誠の頬を撫でながら、リアスは唇を震わせた。唇を噛むようにして誤魔化しながら、涙に一筋の涙を流す。

 

「一誠が、生きてて良かった」

「……リーア」

「貴方が倒れていたのを見て、血の気が引いたわ。こうして、お話出来なくなったらって怖かった……」

「……ごめん」

「良いの。良いのよ、誰も悪くない……悪くないわ。ただ、生きていてくれた。それで良いの。それで良いの……」

 

 慈しむように一誠の頬を撫でて、リアスはそのまま頬を寄せるように一誠の頭を抱きしめる。一誠から感じる呼吸を、生きている実感を感じながら。

 密着した頬からリアスの涙が一誠の頬にも伝う。心配してくれていたんだ、という実感と、もし死んでいたら、という恐怖が今更ながらに襲ってきて一誠は震えた。

 

「……俺も、怖かった」

「……えぇ。よく、頑張ったわ」

「俺、生きてる」

「えぇ、生きてるわ」

 

 麻痺していた恐怖を解きほぐすように一誠の頭を撫でるリアス。リアスに抱きしめられながら一誠は声を押し殺すように泣いた。胸に堪り、淀んでいた感情を吐き出すように。

 月光が照らす中、子供達は身を寄せ合いながら慰め合った。それは、まるでお互いの心の傷を癒すように。

 

 

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