深紅のスイートピー   作:駄文書きの道化

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展開に悩みに悩んでスランプになったり、別の趣味に没頭していたりでかなり遅れました。またぼちぼち更新していきます。


ACT.08

「リーア、ご飯だよー」

 

 イリナの呼びかけに自らの尻尾を弄っていたリアスは振り返る。リアスの視界に映ったのはカートを押してきたイリナ達、そしてカートに乗せられた食事だ。

 何度か匂いを嗅ぐように警戒する仕草を見せながらもリアスはゆっくりと近づいてくる。その様子を見てイリナは安堵するように息を吐く。

 

「はい、あーん」

 

 スプーンなどで食べやすいように作ってもらった食事を掬い取り、リアスへと食べさせようとする。リアスは目を細め、眉を寄せて見ていたが、ゆっくりとイリナに食べさせられるままに食事を続ける。

 

「……猛獣の餌付けだよな、これ」

「こら」

 

 その光景を見ていた一誠がぽつりと零し、朱乃が一誠の頭にチョップを入れる。

 リアスの世話を始めてからというもの、リアスはイリナ達に多少の警戒の様子を見せているが、こうして身の回りの世話には成功している。

 グレイフィアを始めとしたグレモリー家の面々はそんな光景を複雑そうな顔で見つめていたのは一誠達にとっても印象深い光景だった。とはいえ、漸くリアスの面倒をまともに見れそうな状況は歓迎していたようだが。

 

「イリナちゃん、次、次は私にやらせて」

「ん。はい、どーぞ」

「はい、リーア。あーん」

 

 うずうずしていた様子の朱乃がイリナに声をかけ、餌付けを代わる。既に警戒を薄くしていたリアスはされるがままに与えられた食事を頬張っていく。その様を見ていた朱乃は緩みきった表情を浮かべている。

 そんな朱乃の様子にイリナは苦笑を浮かべつつ、リアスを眺めている一誠の方へと歩み寄っていく。

 

「……新鮮だよなぁ」

「新鮮?」

 

 ふと、ぽつりと呟いた一誠へとイリナは視線を向ける。そこには神妙な顔つきをした一誠がいる。その視線はリアスへと向けられたままで。

 

「ほら、リーアって1人で何でも出来る印象があるし」

「……あぁ。面倒見良かったしねぇ」

「うん。だから、あんな風になってるのを見ると、なんだろう。凄く不思議な気持ちになるんだ。うまく言えないけど」

 

 一誠が見つめる先では、何かが爆発したのかリアスに抱きついて頬ずりをし始めた朱乃と、そんな朱乃に困ったような表情を浮かべてるリアスがいる。

 あんなリアスの姿なんて見たことはなかったと一誠は振り返る。彼にとってリアスとは憧れの対象だった。強くて、優しくて、美しくて、気高い存在。見上げる事や、追いかける事しか出来ないと、どこかでそう思っていた存在。

 それがあんな風になってしまった事に対して、一誠は気持ちを持て余していた。落胆とも言えない、しかしもやもやした感情が胸で蟠っている。

 

「……なんとかしてやりたいなぁ」

「……そうだね」

 

 そして一誠の抱く気持ちと同じ気持ちを抱えているのはイリナも同じだ。それは朱乃だってきっと同じ。

 だからこそ、今のリアスを見るのは忍びない。それは確かな思いだ。

 別に今のリアスが嫌じゃない。けど、自分たちが知るリアスはやはり気高く振る舞っていたリアスなのだから。戻って欲しい、とどうしても思う。

 

「とはいっても、俺達にはこうしてリーアの世話ぐらいしか出来ないしなぁ」

「そう、だね」

 

 あぁ、本当に。

 天井を見上げるようにして呟く一誠に頷きつつ、イリナは視線を落とした。

 果たして自分たちは、リアスに何をしてやれるのだろうかと。

 今までリアスが自分たちに与えてくれたものを、こうして失ってみて初めて気付く。

 情けない、とイリナは思う。こんなにも自分はちっぽけだと思い知らされる。これが始めてではないけど、今までよりも尚強く。

 ふと視線を上げる。そこには食事を食べ終えさせて、そのままリアスにじゃれついている朱乃の姿がある。それをどこか困ったような顔で好きにさせているリアス。

 かつての面影が見える光景に、ふと表情を崩す。落ち込んでばかりもいられない、と自分に言い聞かせるように。

 

「こら、朱乃ちゃん。リーアを困らせたらダメだよ?」

 

 今は、少しでもいいから自分に出来ることを。イリナに出来る事は、今はそれぐらいしかなかった。

 

 

 * * *

 

 

 見たこともない豪奢なお風呂の湯に身を沈めながらイリナは吐息した。

 リアスの世話を任されたと言っても、出来る事は限られているし、リアスも常に動き回ってる訳でもない。幾らリアスが好きだと言っても四六時中いられる訳でもなく、こうして風呂で身を清めたりする必要もある。

 いや、朱乃ちゃんは別かもしれない、とイリナはぼんやりと思う。きっと朱乃ちゃんなら飽きもせずに面倒を見られるだろう、と。

 一誠は思うところがあるのか、グレイフィアの下を訪ねていたりする。冥界でも強者の1人と言われている事が気になったのだろうか。そう考えれば男の子だな、と微笑ましくもなる。

 じゃあ、自分は? とイリナは自分を省みる。確かに、リアスの事は好きだ。何か力になってやりたいとも思うし、何より彼女には負い目がある。それを許してくれたからこそ、リアスの力になってあげたいと思う。

 

「……自分なりに頑張ってきたつもりだけど」

 

 あまりにも遠い。あの背中が。

 自分が攫われた事件の際に見た圧倒的なまでのリアスの力。それに恐怖を感じなかったと言えば嘘だった。

 けれど何よりも心に残っているのは、リアスが泣いているように、苦しんでいるように見えた事だった。

 

「……何も、してやれないのかな」

 

 拭う事は出来ないんだろうか。リアスが怯えているとして、自分に一体何が出来るんだろうとイリナは考える。

 考えて、考えて、しかし答えは出ない。溜息を吐きながら湯を顔に叩き付けるようにして湯船から出る。

 しっかりと身支度を調えてイリナは廊下を歩いていく。目に入るものが豪奢で、落ち着かない。だからこそ身分の違いをまざまざと見せ付けられる。

 それがどこかもどかしくて、歩を進めるスピードを上げる。どうにかして覚えたリアスの部屋までの道のりを進み、扉を開ける。

 

「あ、イリナちゃん」

 

 部屋の中では飽きもせずにリアスを構い倒してる朱乃の姿があった。心なしかリアスがぐったりしているように見えて、イリナは苦笑を浮かべた。

 

「お風呂、空いたよ。といっても広すぎて1人じゃ落ち着かなかったけど……」

「じゃあ私も入って来るね。リーアも行く?」

 

 小首を傾げて問いかける朱乃に対して、リアスはぶんぶん、と首を左右に振って、拒否を示すかのように喉を鳴らした。

 何度か残念そうにリアスを誘おうとした朱乃だが、イリナに促された事もあってすぐに部屋を後にしていった。

 一誠の姿が見えないのは、恐らくまだグレイフィアさんの所にいるのだろう、とイリナはあたりをつけておく。そしてリアスへと視線を向ければ、船を漕いでる姿を見た。

 

「リーア、眠いの?」

「……ぅ」

 

 声をかけると、ハッとして唇を噛むリアス。それはまるで眠りたくない、というような眠気に抗う仕草だ。

 そういえば、とイリナは思い出す。リアスはこの状態になってから眠りが浅いという。眠る時は必ずどこかに隠れているか、見つけたとしても近づけばすぐに起きて警戒するという。

 それは、まるで眠っている自分に近づけさせたくないかのような。

 

「ほら、唇噛んだらダメだよ」

「……ぅー」

「大丈夫だから。ほら」

 

 リアスを抱きしめて、イリナは背を撫でるように優しく動かす。身を強張らせて、よじって逃げだそうとしたリアスをイリナは逃がさない、と言うように抱え込む。

 これがグレイフィアであれば、暴れてでも逃げ出したと言うリアス。だが、相手がイリナだからか、その抵抗は弱く、やがて諦めたようにイリナに身を預ける。

 うとうととしながらもどうにか起きようとしている足掻きが見られるが、ずっと朱乃に構い倒されていた疲労もあったのだろう。ゆっくりとリアスの瞼が落ちていく。

 

(このまま眠られたら、私も横になっちゃうけど……いっか。それでリーアが眠れるなら)

 

 リアスの紅の髪を撫でながらイリナは思い、自分も目を閉じた。

 やがてリアスの寝息が聞こえてくる。寝息が聞こえた事でイリナも安堵し、ゆっくりとその意識を眠りへと沈めていく。

 

 

 * * *

 

 

 ―――そして、夢の中にいた。

 それは確かに夢だと理解出来るのに、しかし現実の地続きのように意識がしっかりしている。そんな奇妙な感覚の夢をイリナは見ていた。

 

(なに、これ)

 

 形容しがたい感覚にイリナは困惑する。その間にも夢は進み、まるで吸い込まれるように意識が飲まれていく。

 浮いているような、けれど足がついているような。気持ち悪い、感覚が狂っていくかのようだ。けれど確かに意識がある。ぐるぐるとかき混ぜられるような感覚は、現実であれば吐いているだろうという確信。

 そんな中でイリナは見つけた。それは自分の体を抱きかかえて眠るようなリアスだ。それも角も尻尾もない見慣れた姿で。

 だが、それでも異様だった。リアスの表情は苦悶に歪みきっていて、己の身を抱きかかえている手は、自分を引っ掻いているように赤い線を体に引いている。髪はぼさぼさで、見るからに生気がない。

 何より異様だったのは、真っ赤な茨だ。四方八方、どこから伸びているのかわからない茨はリアスの体を縛り上げ、これもまたやはりリアスの体に傷をつけている。

 

「……なに、これ」

 

 今度は声が出た。恐る恐るリアスに近づき、イリナは茨へと手を伸ばす。

 触れた瞬間、イリナの脳裏に直接叩き込まれるように何かが流れ込む。

 それは情報だった。それは記憶だった。それは感情だった。それは、それは、それは、それは―――!

 気付いたら、世界がひっくり返るかのような気持ち悪さに倒れていた。現実であれば嘔吐していただろう程の気持ち悪さ。頭を引っ掻き回された後のような気怠さ。

 

「なに、これ……」

 

 言葉で言い表せない感覚だった。敢えてそれでも言葉をつけるなら“混沌”だった。

 それは嘆きであり、それは怒りであり、それは悲しみであり、それは痛みであり、その全てが混ざり合い、無秩序に奔流する。

 無秩序な情報は、ハレーションを起こすようにイリナの精神を掻き乱す。そして嫌でも理解させられてしまう。これはリアスの精神そのものだ、と。

 

「……リーア」

 

 イリナはなんとか起き上がり、リアスを見上げる。リアスの表情は未だに苦悶に歪んで、自傷を続けている。茨はその度に身を引き裂き、傷つけ、赤い痕を生み出している。これがリアスの精神、これがリアスの心の形、夢という形で可視化されたリアスの心の姿。

 

「リーア……!」

 

 わからない、わからないけどわかってしまう。そういうものだと認識出来る。

 けど、だからといって何をしたら良いかわからない。それでも諦めきれずにイリナは手を伸ばし、自傷を続けるリアスの手を掴んだ。

 再び無秩序な情報の奔流がイリナを襲う。それでもイリナはリアスの手を離さない。目まぐるしく情報が押し込まれていき、意識が朦朧となりながらも手を繋ぎ続ける。

 そこには、歓喜があった。

 そこには、安堵があった。

 そこには、後悔があった。

 そこには、憤怒があった。

 そこには、悲嘆があった。

 無秩序に押し付けられるリアスの感情、それを実際に肌で感じてイリナは歯を噛んだ。

 こんなにも後悔の色が、憤怒の色が、悲嘆の色が濃いのか、と。自傷に駆り立てるリアスの心を感じて、イリナは泣き喚きたくなった。

 喜びも感じているのに、安堵もしているのに、それを上塗りしそうな程の暗い感情を抱えている。息をするように絶望が表に出る。これがリアスの心の形なんだと理解する度に胸が締め上げられていくかのようだった。

 そして、深く繋がりは表層の感情だけでなく、深層にまで堕ちていく。想いの源泉、その果てまで。

 

 

 ――皆が笑っている世界があった。

 一誠くんがいた。朱乃ちゃんがいた。知らない誰かがいた。

 皆、楽しそうに笑っていた。その中にリーアもいる。

 もうちょっと大人になった私達が、楽しそうに笑っている。

 そして、私は無邪気に笑って、“祈り”を捧げている。

 “天使”のような白い翼を広げている姿が見える。

 あぁ、これは、これが、これなのか―――

 

 

「……馬鹿……! リーアの馬鹿! リーア、まだ、貴方……!」

 

 

 イリナは泣いた。涙が零れてどうしようもない、そんな感情に襲われた。

 垣間見えた光景がなんなのか、はっきりとまではわからない。だけど、その光景はリアスの心の奥底にずっとある風景。きっと彼女にとって大事な大事な宝物。

 イリナは額をリアスへと押し付ける。泣いて、泣いて、泣き喚いて、暴れ出したくなる程だった。

 

「貴方は、まだ……後悔してるの!?」

 

 天使のようだった。神に祈りを捧げ、無邪気に笑う“私”。

 それがリアスの中で残ってる。心の奥底で、ずっと、ずっと。

 きっと何事もなく育っていたら、私がなっていただろう“理想像”。

 そうなれたら良いと、きっと過去の自分ならそう思えた。

 

「でも、違う、違うんだよリーア……!」

 

 もう、自分はその道を辿る事は出来ない。神を信じる心も、熱心に祈る事もない、と。

 イリナはそれでも良いと思っている。それは確かに幸せの一つだったかもしれないけれども、それでも今は違う。

 

「貴方の、支えに、力になりたいのに……!」

 

 “私”が私である事で、貴方を苦しめているなんて。悪い冗談にも程がある。

 自分が諦めた夢を、無くした夢を、リアスはまだ大事に思って自分を傷つけてるだなんて誰も救われない。そんなのはあんまりだ、とイリナは叫び出したい気持ちでいっぱいだった。

 

「自分を責めないでよ! 何も悪くない! 何も悪くないのに! 守りたいのに! 自分で自分を傷つけたら、どうやって守ったら良いの!? ねぇ、リーア! 起きてよ! 答えてよ! ……もう、止めてよ……!!」

 

 爪を立てる手を握って、引きはがそうと力を込めるもまったく動く気配がない。それが悔しくて、悲しくて、辛くて、イリナはしゃくりを上げるように泣き続ける。

 だから、自分の手を掴む感覚に驚き、イリナは顔を上げた。うっすらと瞳を開いたリアスと視線が絡み、イリナは息を呑んだ。

 

「……なかないで」

「リーア……」

「わたしが、まもる、から」

「リーア」

「わたしが、まもる」

「リーア!」

「わたしが、まもらないと、せきにんを、とらないと」

「リーア……!」

「わたしが、やらないと」

「違う、違う、違う違う違う! 違うよ……! 違うんだよ、リーア!」

 

 リアスが茨で傷を作りながらもイリナの頬を撫でる。安心して、と。大丈夫だから、と。

 そんなリアスの姿を見て、イリナは何度も首を振る。違う、と。こんな事は望んでいないと。

 

「わたしが、ぜんぶ、まもる、から」

「誰も、貴方に望んでないのに! ねぇ、リーア! お願いだから……!」

 

 

 ―――私を、見てよ。

 

 

 イリナの声にならない絶叫は、突然の意識の暗転によって遮られた。

 

 

 * * *

 

 

「―――イリナ!」

「……ぁ」

「大丈夫か? 凄く魘されたぞ?」

「大丈夫?」

 

 イリナが目を開ければ、視界に一誠と朱乃の姿が映る。

 夢を見ていたような気がする。けれど、内容はぼやけて思い出せない。

 だけど、どうしようもない程の気持ちがせり上がってきた。

 ふと、隣を見ればリアスがいた。手を繋いで、すぅすぅ、と寝息を立てている。

 その姿を見て、イリナは何かが爆発した。顔をくしゃりと歪めて、声を上げた。

 

「……ぅ、ぁ、うぁああああ、ぁあああああああああああーーーー!!」

「い、イリナ!?」

「そ、そんなに夢見が悪かったの!?」

 

 火が付いたようにイリナは泣き出す。一誠も朱乃もそんなイリナの姿にぎょっとし、慌てて慰めにかかる。

 イリナがこんな風に泣いた事なんて、朱乃は見たことはない。一誠も覚えてはいない。かつて自分が死にかけた時も、イリナが泣き喚いた事を。

 イリナも決して泣かなかった訳ではない。それでも、イリナはここまで泣いた事なんてなかった。イリナがこんなに泣くと思わなかった一誠と朱乃はオロオロとしながらイリナを落ち着かせようとする。

 それも上手くいかず、イリナが泣き叫ぶ中、ゆっくりとリアスの瞳が開いた。リアスが瞳を開いた事に気付いた朱乃が声を漏らすのと同時に、リアスがイリナを後ろから抱きしめる。

 

「……だい、じょうぶ?」

 

 それは、辿々しいが。確かに意識を以て呟かれたリアスの言葉。

 一誠も朱乃も驚きに目を見開く。あの獣のように振る舞っていたリアスが言葉を発したのだから。

 逆に、一瞬泣き止んだイリナだが、今度は更に火をつけたかのように泣き出した。あまりの悲痛な泣き声に一誠と朱乃は眉を歪め、耳を塞いでしまう。

 そんなイリナをリアスは強く抱きしめる。頬を擦りつけるようにして、何度も、何度も。

 

「だい、じょうぶ……だいじょうぶ……」

「うぁ、ひっぐ、うぐぇ、うぇぇぇえ……!」

「だいじょうぶ、だから」

 

 イリナはただ泣く。自分でも、何故こんなに悲しいのかわからないのに。

 リアスはただ抱きしめる。泣かせたくない、ただ、それだけの思いを示すかのように。

 そんなイリナとリアスの手を、一誠と朱乃がそれぞれ握る。イリナが泣き疲れて眠るまで、ずっと。

 

 

 * * *

 

 

 ……いしきが、ふわふわする。まだ、もどりきれてないみたい。

 でも、イリナが、ないていたから、それで、もどってこれたの、かな。

 なんで、ないてるんだろう。わたしが、また、なにか、やってしまったのかな。

 あやまるよ、あやまるから、だから、なかないで、イリナ。ごめんね、ごめんね。

 でも、あぁ、だめ。まだ、あたまがにぶい。なにも、かんがえれない。

 あぁ、だいじょうぶ。だいじょうぶよ、一誠、朱乃。

 すぐに、もとどおりに、なるから。だから、もうちょっとだけ、まっててね。

 だれも、なかせないために、がんばるから。わたしが、がんばるから。

 あと、もうちょっとだけ……ねか、せ、て……。

 

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