ACT.01
夢見た世界に、夢見た自分に。そして……そこにいて欲しい人達の為に。
私は、何が出来るんだろう。何をしてあげたいんだろう。
そして、私は……彼等に何を望んでいるんだろう?
* * *
鬱蒼と茂る森の中、多種多様な生物たちの息遣いが聞こえてくるその場所で。
その息遣いに耳を澄ませながら、私は大きく息を吐く。こうして自然豊かな場所というのは、やはり空気の味が違って感じるというもの。
私は今、冥界の森の中にいる。冥界のシトリー領、その森林区の一つ。私がここを訪ねたのは、イリナの錬金術の為の素材を集める為だ。
例えば定番の薬草であったり、森に住まう魔獣から採取できる素材であったりと、探し求めているのは様々。必要なものに関しては、イリナに協力する過程で学習した知識が身についているので判別が出来ている。
とはいえ、やはり錬金術師を目指して勉強しているイリナには劣るのだけど。イリナは私よりも効率が良さそうだしね。なんとも自分の非才さが恨めしいばかりだ。
「リーア、探してるのはこれで合ってるかしら?」
「ソーナ」
そんな私の下に駆け寄ってきたのはソーナだ。そう、ここはシトリー領で、ここを訪れる際に挨拶をしにいった所、ソーナも興味があったという事で同行して貰ったのだ。
魔獣などが出る為、決して安全とは言い難いけれど。ソーナも将来に向けて力を磨いているとの事で、親の許可も貰って素材採取に同行したのだった。
シトリーは水の系統、ソーナもまた水を操る悪魔だ。それは攻撃にも使えるけれど、水というのは応用の利くもので、少しばかり羨ましい。特に、こうして素材採取で土に汚れた手などを、ソーナが空中に生み出してくれた水の玉で洗いながら思う。
「ソーナは器用ね。応用も利いて、少し羨ましいわ」
「そんな……リーアに比べれば、私なんて」
そう言って少し苦笑してみせるソーナに私は肩を竦めてしまう。
多分、やろうと思えばやれない事はない。私の力はそういうものだ。だけど、それは技術ではない。願望を形にしたような、そのイメージがしっかりしてなければ不出来なものに落ちる。
こうしてソーナを見て、改めて思う。技術とは、それもまた力なのだ。私は自分がどれだけ大雑把に力を使っているのか痛感させられる。やっぱりまだまだ私自身、出来る事は多いのだと。
「ソーナのおかげで充分、量が集まったわ。ありがとう」
「私も勉強になったから。……人間界で付き合いの錬金術師の為に持っていくのよね」
「まぁ、契約悪魔の真似事みたいなものよ」
「……リーアは凄いわね。まだまだ学生の私と全然違うわ」
「んー、私はほら、その事情も色々あっての事だから……特に、レーディングゲームに関しては独学に近いし、そこはソーナがちょっと羨ましいわ」
そう、ソーナは今は上級悪魔が通う学校でちゃんと勉強を受けている。もしも、私が普通の出自だったらそこで共に学生生活を送っていたのだろう、と。
どうしても私はやる事が多いから、そういった純粋な授業というのは受けてはいない。だから正直に言えば将来に不安があるといえばある。なんとかレポートを出す過程で最低限の勉強はしているが、要領の悪い事を自覚する私だ。ソーナに劣る事は確実だろう、と。
そう考えれば、やはり私は急ぎすぎてたのかもしれない。すぐには変えられないと思いながらも、変える事に、変わる事に必死になっていたんだろう。だから余裕を無くして、一度糸が切れてしまった。
もう、あんな事がないようにしないと。そう思いながら、拳を軽く握りしめる。
「ちゃんと勉強も出来たら良いのだけどね。あぁ、私もソーナぐらい頭が良かったら良いのに」
私の賞賛の言葉にソーナは困ったように笑うのみだ。
確かに傍目から見れば凄い事をしているのかもしれないけれど、それでも私はソーナが羨ましい。何も知らずにいられれば、とは思わないけれども。でも、全部に一段落がついたらゆっくり勉強の時間も取りたいとも思う。
まぁ、日々に学ぶ事もあるので、何でも一つ一つ、しっかりと取り組んでいかないと、と思うばかりだ。それに、そろそろ体も良くなってきたし、人間界にも戻っても良いかな。お父様達に相談してみないと。
そう。今、こうしてゆっくり過ごす日々もまた大事なのだと。私は振り返りながら強く思う。こんな平和を、いつまでも守り続けられるように。皆と一緒に過ごせるように。それが、私の夢なのだと実感しながら。
* * *
ソーナと並んで森の入り口へと差し掛かると、ふと、私はちょうど森へと入ろうとする影に気付いた。
そこで、私は思わず目を見張る事になる。それは、森の入り口に差し掛かっていた相手も同じようで、少し驚いた顔を浮かべた後、笑みを浮かべて声をかけてくる。そう、それは私が“彼”の名前を呼ぶのとまったく同じタイミングで。
「サイラオーグ?」
「リーアか?」
やっぱり! そこにはサイラオーグが立っていた。サイラオーグとは幼少期にあった以来で、本当に久しぶりの再会だ。体は大きくなり、まだ子供ながらしっかりとした体格となっている事に思わず感嘆の息が零れる。
この従兄弟の事は心配はしていたけれど、互いの立場の為に積極的に会える訳でもなくて。こうして偶然再会出来たのがなんだか嬉しい。
「サイラオーグじゃない。リーアと知り合いだったのね」
「あぁ、ソーナか。お前こそ、リーアと知り合いだったのか」
「あれ、2人とも顔見知り?」
「えぇ。学校で顔を合わせる事もあるし、彼とは個人的な付き合いもあって」
「へぇ~」
そっか。サイラオーグ、ちゃんと学校に通ってるのね。なんだか安心したわ。
「噂は聞いてるぞ、リーア。……随分と置いていかれてしまった気にはなるが、お前の報せを聞く度に嬉しく思っていたよ」
「噂って……まぁ、うん。胸を張っていられる程には、かな?」
「ははは! そんな謙遜するな! まさか、無力だと思っていたお前が有望の若手悪魔を倒す等の功績を挙げるなんて夢にも思わなかったさ」
「……そういうサイラオーグは? 学校で上手くやれてるの?」
「む? 俺か? ……まぁ、ぼちぼち、と言った所か?」
「貴方も貴方で有名でしょうに。魔力がないって言われているのに、体だけでどうにかしちゃう変わり者だって」
ソーナが呆れるように言う。それは、将来に至る彼の軌跡を辿っているように思えて嬉しく思う。私が焦がれた“獅子王”への道を彼は歩いてくれている。それに安心してしまう自分がいて。
そこで、ふと、私は思いだしてしまった。そうだ、サイラオーグが強くなってきているのが“原作”の通りだとしたら。そして、ここ、シトリー領の森に来ていて、かつ個人的な付き合いがあるって事は。
「……サイラオーグ、ミスラ様はお元気かしら?」
そう問いかけると、場が沈黙する。サイラオーグは笑みを消してしまい、ソーナは少し目を伏せた。
……あぁ、個人的な付き合いっていうのは、やっぱりそういう。
「……母上は、あまりお体が芳しくなくてな」
「そう、なの?」
「あぁ。……お前も経験しているだろう。例の眠り病の兆候が出ていてな。それで、シトリー領で療養をさせて貰っているのだ。ソーナとはそれで付き合いが出来てな」
「……そう、なの」
やっぱり、と私は思わず唇を硬く結ぶ。本来の歴史を辿れば、ミスラ様は眠り病で目覚めなくなってしまう。そして、そんな彼女の身柄を守る為にシトリー領の病院で入院するという未来は知っていたけれど、もうその兆候が出ていたのか、と。
「この森に来たのも、少しでも母が良くなるように薬草の類を採取する為でな。後は、修行も兼ねてだ」
「修行?」
「あぁ。母の医療費などを払う為に、ここの魔獣退治なども引き受けさせて貰っていてな」
「サイラオーグが頼み込むものだから、お父様がそのようにサイラオーグに仕事として依頼しているのよ」
「へぇ……」
「怪我ばっかりしてくるから、私もミスラ様も心配してるのだけれど……」
「男の体の傷は勲章だ、と言わせて貰おうか」
にっ、と笑うサイラオーグに対して、肩を竦めるソーナ。これが二人の関係なのだろう、と思う。本来の歴史であれば、ここに“リアス”が加わっていたのだろうな、なんて想像してみる。
それはならなかった世界だ。今、彼はこうして本来の歴史とは少し外れた未来を進んでいる。
……そんな彼に、やはり思う事はある。そして眠り病に床に伏せる未来が待ち受けるミスラ様にも。
「サイラオーグ、採取を手伝っても良いかしら?」
「む?」
「久しぶりに会ったのだし、互いに近況報告もいいじゃない? それに、私もミスラ様には何かしてあげたいの。だから……」
「気を使うな、とは言いたいが……そうだな。では、頼むとしよう」
「それなら私も付き合うわよ」
「良いのか? ソーナ」
「何があっても貴方達がいるなら大丈夫でしょ。私達が手に負えないような魔獣はここには棲息していないですし」
「お前がいてくれると助かるな。では、行こうか。リーア、ソーナ」
「えぇ」
そう言って、私達は再び森へと戻る為、歩を進めていくのであった。
そこから採取自体は平和に終わった。サイラオーグとソーナから学校ではどんな様子なのか聞いたり、サイラオーグがどんな修行をしているのかなど。ミスラ様の容態や、こっちで起きた事など、話題は尽きる事はない。
私も私で、人間界で起きた事や、一誠やイリナの事を話してみたりする。
その中でもサイラオーグが振ってきた話題というのが、人間界での武術だ。魔力がないサイラオーグにとって体こそが武器。そして人間の武術というものに興味があるのだと言う。
ソーナもソーナで、人間界の学校が気になるようで、色々な質問をされた。冥界では上級悪魔ぐらいしか学校にはいっていないのが現状だしね。誰もが、とは言えないけれど、身分に関係なく、誰もが学舎に通える、というのはやはりこちらとは違うので興味があるそうだ。
「いっその事、2人もこっちに来ればいいんじゃない?」
何気なしに振ってみた話題。それに、サイラオーグとソーナは顔を見合わせる。
「……それもありかしらね?」
「うーむ。興味はあるが、俺があまりバアル領から離れるのはな……」
「あ、そうか。サイラオーグは難しいわよね……」
サイラオーグはバアルにとっては恥とも言える扱いだ。それが今の生活を許されているのは、偏にミスラ様がサイラオーグを守り、育てる為に領地の中でも田舎で慎ましく過ごしていたからこそ。
その生活は本家によって監視されていた筈だ、と過去の記憶を引っ張り出す。そういう意味では、まだサイラオーグは自由の身とは言い難いのだろう。バアル本家が二人を見過ごす筈がないのだから。
「今は療養と言うことでシトリー領にいるが、な」
「……そっか。変なこと言ったわね」
「いや。だが、お前が語る人間界の学校というのは興味があるのも事実だ。誰もが学ぶ事が出来るというのは、少し羨ましくも思う」
「……サイラオーグ」
ソーナが言うには、サイラオーグの学校での風当たりはやはり冷たいものだと言う。
最近では、その実力も上がってきている為に表立って文句を言う者は少ないが、それでも罵る相手は後を絶えない、と。
それに対しては、何も動じてはいない、と言うような態度のサイラオーグに感心するのと同時に、やはりなんとなく歯痒い思いを感じてしまう。
「何かしてやりたい、とは思うけれど……」
正直言って、それは私の立場では難しい。私が二人に過剰に手を貸せば、バアル本家から何を言われるかわかったものではない。ただでさえ、私は駒王の地の運営を引き継ぐ際に色々と問題を起こしたのだから尚更の事だ。
だから、歯痒い。せめてサイラオーグの手伝いをするぐらいしか、今の私には出来なさそうだ。
(……結局、原作でミスラ様が起きたのは、一誠がなんとかしたのよね……それなら、私でも何とか出来そうかしら?)
もしも出来たとして、それを実行に移すことは出来ないのだとしても。
私は、その方法を模索する事は止められなかった。だって、サイラオーグはどんなに離れていても、どんなに過ごす時間が短くても、同じ夢を誓い合った相手だから。
* * *
サイラオーグの採取を手伝い、そのまま私はミスラ様の見舞いに来る為に病院へと訪れていた。サイラオーグと、気になるから、と付いてきたソーナと三人でだ。
病室へと入ると、ベッドの上で座って外の景色を見ていたと思われるミスラ様が見えた。私達の入室に気付いて、ゆっくりと振り向いて。そして、私と視線が合うと驚いたような顔を浮かべる。
「あら……リーアちゃん、かしら?」
「はい。ご無沙汰しております、ミスラ様」
「まぁ、まぁ……こんなに大きくなって。噂は聞いていますよ、頑張っているらしいじゃない」
昔、そうしてくれたように柔和な笑みを浮かべてミスラ様は私の来訪を歓迎してくれた。
しかし、昔に比べればやはりどこかやつれたような様子を見受けられる。それがどうにも悲しくて、しかし顔に出さないように笑みを浮かべて側に寄る。
側に寄れば、頬を撫でるように手が伸びる。その手の感触に目を細めながら、私は久しぶりの再会に浸る。
「母上、起きていてもよろしいのですか?」
「えぇ、サイラオーグ。今日は調子がいいのよ。貴方も、余りソーナちゃんやシトリー卿にご迷惑をおかけしてはいけませんよ?」
「勿論、存じております」
「ミスラ様、こちらは私達からの見舞いの品です」
「ソーナちゃん、いつもありがとうね。私の息子共々、本当にお世話になってしまっているわね……」
「お気になさらないでください」
そんな出だしから始まった見舞いは、穏やかに時間が過ぎていくものだった。
最近はどんな調子なのか、と。元気にやっているのか、人間界で苦労はしていないかと。今まで出会えなかった時間を埋めるようにミスラ様に語り聞かせる。
暫く、笑みを浮かべて聞いてくれていたミスラ様だったけれど、少し船を漕ぐようにして体を揺れ始めたのに気付いて、サイラオーグがそっとその体を支える。
「母上、そろそろお休みに……」
「えぇ、そうするわね……サイラオーグ、無理をしてはダメよ? 食事はちゃんと取って……」
「安心してください。ですから……」
しきりにサイラオーグを心配するミスラ様は、サイラオーグに窘められるようにしてゆっくりと横になる。
それから寝息を立てるのはあっと言う間だった。そんな眠りについたミスラ様をサイラオーグが目を細めて、その頬を撫でて労っているのが見える。
「……一度眠ると、数日は目を覚まさないわ」
「もう、そこまで症状が……?」
「……そのまま起きれなくなるのも、時間の問題だとは」
ソーナが小声で教えてくれた情報に、やはり胸が痛む。
居ても立っても居られずに、私はミスラ様に近づく。眠りにおちた為、既に力を無くしている手を握り、顔を覗き込む。
「……ミスラ様」
「リーア、すまないな。久しぶりの再会で、喜んでくれてはいたのだが……」
「うん、わかってる。サイラオーグ。……だから、ちょっと失礼するわね」
「? どうした?」
「……リーア?」
原作で一誠は、眠りについた意識に語りかけるという方法を取っていた。いや、方法はともかくとしても、要領としてはそういう事の筈だ。
ならば、それならば、だ。私なら、別のアプローチをする事でその結果をたぐり寄せられるんじゃないか、と閃いたのだ。
何せ、私の力はグレートレッドに由来する力だ。つまり、“夢に干渉する事”に一日の長がある。
ミスラ様の手を握って、額を合わせるようにして目を閉じる。そのまま意識を集中させるように深呼吸をする。そう、ミスラ様の夢の中に入り込む為に。
そして、私の意識は現実から夢の領域へと沈んでいった。
* * *
……とぷん、と。まるで水の中に飛び込むような感覚に陥る。目を開けば、そこはまるで光届かぬ海のようにも思える。
その奧、底に沈んでいるような状態のミスラ様を見つける。その瞳は穏やかに閉ざされていて、安らかに眠っているようにも思える。
だが、ここは夢の領域。私の認識によってその異常は明らかだった。
まるで、靄のようにミスラ様にこびりつく“闇”。それがミスラ様を少しずつ、侵蝕するように覆っているのだ。
これが何なのか、今の私にはわからない。知識がない。経験がない。だが、直感として感じる。これこそが、ミスラ様を蝕むものだと。それが可視化されたものだと。
(……祓う事は出来るかしら?)
そのままミスラ様へと泳ぐように近づき、その靄のようなに触れてみる。しかし、ミスラ様にまとわりつくようにそれが離れるような気配はない。
それに触れた所で影響は無さそうではあるけれど、乱暴にしたらミスラ様にどんな影響が出るかわからない。
(……うーん、だとしたら)
ミスラ様の手を握り、息をするように。水の中のようだが、息は問題なく行える。
吸った息を、体を通して、ミスラ様の手から送り込むように。そう、私の無色の力に思いを乗せる。元気になって、というささやかな、それだけの思い。
一度、二度、三度。息を深く吸い、吐き出して。私の力を送り込み続けてみる。少しずつ、少しずつ、その体に溶かし込むように。
(……ん?)
そうしていると、黒い靄が揺らめいた。まるで薄れるように、その闇が薄くなっていく。
「……リーアちゃん?」
ふと、声がして驚いたように顔を上げる。すると、うっすらと目を開いたミスラ様がいる。
どこか夢心地で、意識がはっきりはしていないようだけれど。先程まで眠っていたミスラ様が起きた事に驚いてしまう。
けれど、ミスラ様に気を取られた間に力を送り込むのを止めてしまった。すると、また黒い靄がまとわりつくようにミスラ様を覆いだしてしまう。
すると、夢見心地だったミスラ様は、また眠りにつくように目を閉じてしまった。……この黒い靄が、やはり原因が可視化されたイメージなのだろう、と当たりをつけて。
(……今、干渉しすぎるのは良くない、か)
そうして、溶け合わせていた意識を引き上げるようにして私は現実へと戻ってくる。
ミスラ様と合わせていた額を離す。すると、怪訝そうな顔をしているサイラオーグとソーナと視線が合う。
「……あー、その」
「……突然どうした? 何か、理由があるのだろうが……」
どう言ったものか、と言葉を濁す私に、何かの意図はあるのだろうが、困惑している様子のサイラオーグ。
……さて、どうしたものかな。
「……サイラオーグ、ここに“目”と“耳”は?」
「……何?」
「出来れば、あまり大きな声で話したくない内容なのよ」
小声で意図を伝えると、サイラオーグは顔を引き締める。恐らく、自分がバアル家からの監視の事を暗に言っているのだと理解してくれたんだと思う。
「……リーア。それなら良ければウチに来てくれないかしら? サイラオーグも。たまには食事なんて如何かしら? お父様からの依頼の件もありますし」
「ソーナ、悪いわね。ありがとう。私が表立っていくとアレだから、時間をズラして訪問させて貰って良いかしら?」
「では、俺も一度別れてからシトリー家に向かった方が良いだろうな。……明日、夜でどうだ?」
「では、それで」
そして、私達は顔を見合わせた後に頷き合って、今日はこのまま解散という事で別れるのであった。
……その帰り道、私は小さな決意を胸に秘めながら。