イリナが振った剣を紙一重で躱して、私は距離を取る。その紅の刀身は穏やかだけど、穏やか故に刀身に秘めた力の圧力は鳥肌が立ちそうだった。
反撃に転じて拳を振るうも、これも綺麗に避けられてお返しと言わんばかりに剣を振るわれる。掠った前髪の数本がはらりと宙を舞う。
「あっぶない……!」
はっきり言う。すっごく相手にし辛い! 今までで戦ってきた相手の中で一番じゃないか、と思う程に厄介だ。今までの戦いで、記憶が色濃いのはまずはオーフィス。次いでドライグやサイラオーグだ。今思えば、全員力押しのパワータイプだった。
サイラオーグと鍛錬を重ねて、少しぐらい自分も戦えるようになったという自信を完全にへし折られた。イリナの動きに翻弄されるままに私は攻めあぐねていた。そういえばイリナは元々、テクニックタイプだって“原作”では言われてた記憶が過る。
相手をしてみてよくわかる。回避が上手い、攻撃をするタイミングを見極めるのが上手い。更にダメ出しと言わんばかりに、私自身でも把握していなかったクセすら見極められている。
それが最悪と言って良いまでに相性が悪い。戦って嫌な思いをさせられる、という意味では一番だ。オーフィスは別格なので除外する。
溜まらずに一度距離を取ろうと跳躍する。これは素の強化だけじゃダメだ。龍化しようと意識を集中させようとする。
「“鞭”、
イリナが小さく呟くと、剣の刀身が伸びて撓る。ゾッ、として更にその場から飛び退くと、伸びた刀身が鞭のように襲いかかってきた。地を抉った刀身はイリナの振るう軌道に合わせて予測が困難な剣閃を描いて私に襲いかかる。
舌打ち一つ、私は素早く龍化を完了させる。角が伸び、龍の鱗が頬を覆う。意識が切り替わり、クリアになっていく。最低限の龍化は完了、牙を剥くようにしてイリナを睨む。
私の龍化が完了したのを見て、イリナもまた目を細めた。そのまま鞭のように撓る刀身を振るって、私から距離を取るように後ろに下がっていく。私は向けられた剣の刀身を腕を龍化させて掴み取ろうとする。
「“雷”、
「あがぁっ!?」
なんとか掴んで動きを止めようとして、大失敗だった。刀身から雷が迸って私の体の芯まで痺れるような一撃を見舞われる。こ、これ反則でしょ!?
「狡、い、わよ!」
雷の余波が残りながらも、無理矢理引っ張るように剣で手が切れないように強化して引っ張ろうとする。が、イリナはこれをあっさりと手放す。イリナが手放した瞬間、その存在が嘘だったかのように剣が消える。
それを見て私は確信する。イリナは私と同じ“無色の力”を扱えている。その瞳に輝くプリズムは、人づてに聞いた私の瞳と同じだと感じた。そうでなくても私が感じるこの感覚を見間違う事はない。
「“竜”、“剣”、“氷”、
手放して消えた剣の代わりにイリナは新たな剣を取り出す。今度は蒼銀の刀身の剣。それを地面に突き立てる。突き立てた場所から、氷柱が幾つも伸びてきて、私に向かってくる。雷の次は氷! 本当、何でもありね!
伸びてくる氷柱を避ける為に跳躍すると、イリナは地に突き刺していた剣を抜いて、振り抜く。瞬間、振り抜いた刀身の軌道から氷柱が空中に形成されていく。思わず呻くような声を漏らした瞬間、案の定それが私に向かって飛んで来た。
それを打ち砕いて、イリナとの距離を飛翔しながら詰めようとする。このままイリナのペースに持ち込まれては溜まらない、拳を握りしめてイリナへと向けて放つ。
それをイリナは剣を中心として氷を固め、まるで壁のようにして私の前に形成する。握りしめた拳を振り抜いて氷の壁に叩き付けると、氷の壁が砕ける。――その先にイリナがいない。
「げっ」
「はっ!!」
上空。悪魔の羽を広げたイリナが踵落としを決めてくる。咄嗟に掲げた腕で防ぐも、腕が痺れる。それに眉を顰めながら体勢を崩そうと力を込めるも、その前に離脱されてしまう。
「……狡い、狡いわよ! イリナ! 何でもありじゃない!」
「それ、リーアに言われたくないんだけど」
いや、そうなんだけど、でもなんか狡い! 私の力は願えば叶う、夢想を現実にしてしまうものだ。私が適した形態が半龍化、力を高める方向性に高めてきたのであれば、イリナは願ったものを形にして、変幻自在に何でも生み出せてしまう。
これは多分、私とイリナの差だ。方向性の違いと言っても良い。私は自分が強くある為に、自分を高める為に“無色の力”を加工しているのに対して、イリナは自分の想像したものを形にするという加工を施しているのだと結論をつけた。
つまり、万物の創造が可能なんじゃないかと思う。私が同じ力を使ってるんだから、それぐらいは想像出来る。問題はそれがどこまで作用するのかは、まだわからないけど。
「……ふふっ」
私がイリナの力に考察してると、イリナが笑った。浮かべた微笑は穏やかなもので、力を抜いた笑みだった。
「やめよっか」
「え?」
「うん。充分だよ、狡い、って言わせた時点で……なんか満足しちゃった。それにわかってると思うけど、私達が戦っても不毛だよ?」
「……そうかもね」
互いに“何でもあり”な力を扱っている。イリナが不毛というのも頷ける。これがあくまで模擬戦だから良いけれど、本気でイリナと戦うとなると私は無尽蔵に力を引き上げるしか無くなるし、イリナはそれに対してあの手、この手と変えてくるだろう。
それが可能だ。何でも出来てしまう、というのは凄い事だ。凄い事だと思うんだけど、それを私はどこかひっかかりを覚えてしまう。その飲み下しきれない思いを持て余していると、イリナが苦笑したように浮かべた。
「リーア、ちょっと話そうか。グレイフィアさんも一緒に」
* * *
「イリナさんに修行を施したのは私よ」
「でしょうね」
場所を変えて、私の部屋。そこでお義姉様が告げた言葉に頷く。多分、私が見えない所でずっと手ほどきをしていたんだろうな、というのはなんとなく察していた。
イリナも同じようにお茶を飲んで一息を吐いていた。その表情は柔らかで、少しだけ昔のイリナが戻ってきたように感じる。さっきの模擬戦で何か思う所があったのかもしれない、と思いつつ。
「お義姉様。イリナにお願いされてたからだと思うんだけど、イリナが“無色の力”を使えるの黙ってたわね?」
「えぇ。気付いた当時はイリナさんも大分参ってましたし、貴方も新しい生活が始まって四苦八苦していた時期でしたからね。イリナさんが意欲を見せてから、本人に伝えてどうするか委ねてましたわ」
「……大丈夫なの? 私とどこまで同じなの?」
私が気になるのは、私と同じ“無色の力”を扱えているのはわかったけど、それがどこまでの範囲で適用されるのかがわからないという点だ。
ただでさえ、イリナの駒は“
一誠に使ったのも同じなのだけど、私はあの時、咄嗟に自分の特性を利用して“
そして二度とやるな、とこっぴどく怒られたけど。一誠の“
アジュカ様曰く、わけがわからないものがわけがわからなくなりすぎてて、ブラックボックスである部分がアジュカ様ですら手が出せない。中身が未知数な数式の嵐になっているそうで、面白いものを見せてくれて礼は言うが、それはそれとして別、という事でお叱りを頂いた訳である。
参考までにどういう数式なのか、と聞いてみた所、「1+1=2」というシンプルな数式があるとして、ここに「1+α+1+β=2(?)」というような「何が起こるかわからない」記号が付け加えられていて、それが無数にあるのだと言う。
それを見せられたアジュカ様は一瞬フリーズして、二度見した挙げ句、解析しようとしてわけがわからなさすぎて発狂しかけて、大爆笑の末、笑い死にしかけたんだぞ、と笑いながら怒っていた。我ながらとんでもない事をしてしまっていると反省している。
一誠の“
「多分だけど、リーアと一緒だよ。何でもやろうと思えば、何でもやれる。今回はあまりそっちには使ってなかったけれど体を強化も出来るし、作ろうと思ったものはある程度作る事は出来る。だけど構造が難しいものとかは、情報量が多いものを作ろうとすると脳が焼き切れそうになるから、出来ないかなぁ」
「脳が焼き切れる?」
「私はリーアみたいに直接、グレートレッドさんと繋がってる訳じゃないから。多分、私の中の駒を経由して力を引き出してるみたいなんだって。アジュカ様がそう言ってたわ。だからリアスみたいに“器”って訳じゃないの」
「あー」
そうか。私はグレートレッドから直接力を注がれて、この血肉、存在そのもが変質している。私はそこに自分の意志を乗せたり、他の力を秘めた媒体に注ぎ込む事で強化が成立している。
でも、イリナはそうじゃない。あくまで肉体は悪魔なのは間違いないらしい。あくまで駒から引き出しているだけだから、力は引き出せても私よりも制限があるって事なのかな?
「逆に単純なものを突き詰めるのは簡単だよ。要素が少ない方が強固に出来る。2個ぐらいが一番安定して力を注ぐ事が出来るかな。4つとなると強度が脆くなったり、重ねた属性が弱くなっちゃう。私の頭の処理が追いつかなくなるから」
「絞った方が強い、って事なのね」
「だからいっぱい勉強したんだよ。剣の構成素材とか、作る行程とか、雷の発生の仕方とか、その原理を学んで、在る程度無視する」
「え? 無視?」
「精巧な偽物は、あまり精巧すぎると本当に幻になっちゃうから。だから矛盾を一つぐらい抱えたものをいれてないと強く力を注げないかな。今回だったらある筈のない“剣”とか。そこに属性を乗せていって“嘘”を作り上げて形にするのが私の力」
世界の法則を騙す力、か。一時的な改竄とも言えるけれど、イリナの意志ひとつ、イリナの限界を超えるようなものは作成する事が出来ないって事かぁ。
「あと、リーアみたいに血肉をアイテムに与えても別に何も起きないから、安心していいよ」
「……それは、良かった」
もしもイリナが私みたいな存在になっていたのだとしたら。それが一番不安だった。一番の心配が杞憂に終わったけれども、それでもイリナの力を知れば狙われるだろう能力である事は間違いない。
「どこまで自由に作れるの?」
「大きくダメなものから言うと、生物は無理。命あるものは作れない。あと、自立して動くものは厳しいっていうか、面倒くさい。例えばゴーレムとか。作れない事もないけど、作った上で私が意識を繋げてないといけないから、多分作っても私が動けなくなっちゃうと思う。もし作るとしても普通に作った方がいいし、リーアと違って血肉で強化したり出来ないから、ゴーレムを作ってそれに埋め込んだりする事でなら使えるかもしれない。でも、私が意識してないと消えちゃうから結局意味がないかな」
「ふんふん。だから武器にしたの?」
「元々、イリナさんは錬金術を学んでいました。貴方達の力は己の内の想像を具現化するという形で使っています。元々、リーアは武器が欲しいって言ってたでしょう? 私が提案した所、それならイメージがつきやすい、と、その系統で指導していたのよ」
「体力作りはしてたけど、勉強ばっかしてたのはそういう事。あと、魔法についても勉強し始めたよ。マグレガーさんに弟子入りしたりして」
「はー……色々私が知らない所でやってたのねぇ。じゃあ、簡単に言っちゃうと“無から有を編み出せる錬金術”みたいな感じで良いのかしら」
「完全に無からって訳じゃないけど。形がない力を加工して、って事ならそうだね。無形から有を生み出して、それを使う。でも消すのは私の意識次第だし、もし私が洗脳とかされたら脳を焼き切るように呪いを脳に刻み込んでるから大丈夫だよ」
「ちょっと!?」
思わず机を叩いてイリナを睨む。そんな危険な事をしているなんて聞かされて黙ってられない。でも、とうのイリナはけろっとした様子でお茶を飲んでいる。お義姉様も動じた様子はない。
私が怒りに震えていると、イリナが悪戯が成功したように笑みを浮かべて言う。
「大丈夫だよ。脳を焼き切ってもバックアップは作って保管してあるから」
「へ……? バックアップ……?」
「無から有を作ると私が意識してないと消えちゃうんだけど、既存品に力を込めてちゃんと封印を施しておけば保存は出来なくはないの。だから私の記憶を定期的にバックアップを取って保管してるの。その場合は肉体が仮死状態になるようにしてるから、体さえ残ってればなんとかなるよ。理論上では、だけど。試したくはないけどね」
「…………」
「あ、保管場所はリーアにも内緒だよ。誰かに知られちゃうと何かあった時に怖いから。私以外に効力があるものじゃないけど、念の為ね。もしそうなったら、私に反応してちゃんと手がかりがわかるようにしてあるから」
「…………」
……な、なんだろう。この凄い敗北感。イリナが凄すぎて、もう何も言えない……。
「ただ、こういうのを作るのにはリーアの血肉が必要だからリーアが死んだらそういうバックアップも作れなくなる。一蓮托生って奴かな」
「……そう」
イリナは、ずっと私の知らない所で頑張ってたんだ。そう思うと、なんだか安堵してしまった。思わず涙が出てくる。私が静かに泣き始めたのを見て、イリナが驚いたように目を瞬かせる。
「ちょ、ちょっとリーア? どうしたの?」
「私、イリナがずっと落ち込んでて……それが心配で、私が知らない所で、こんなに頑張ってくれてたって知って……凄い嬉しくて……」
イリナが以前の姿から変わり果てたのを、凄く心配していた。トウジさん達に顔向けできないと、何よりイリナのこれからを思うと胸が痛くて仕方が無かった。だから、思わず安堵の涙が零れてしまう。
「…………ごめん。蟠りはあったんだ」
「……うん」
「勝手に悪魔にされて、パパとママには会えないし。人間としては死んだって事にされてるしさ。確かに、信仰心は無くなったって言ってたけどさ。お祈りは習慣化してたから、つい祈りを捧げちゃって凄く頭が痛くなっていつも通りに行かないし。幾ら知ってるからって、これからここで生活するんだよっていきなり言われて、正直……リーアが憎くて殺してやろうかな、って何度も思った事あるよ」
殺してやりたいと思った、という言葉が思った以上に私に突き刺さった。憎まれているかもしれない、と思った事はあったけれど、改めて言葉にされると……凄く、痛い。
思わず安堵とは別の意味で涙が出そうになった所で、イリナが席を立って私の傍に歩み寄ってきて、私を抱き締めてくれた。
「わかってるよ。リーアが、私の事を凄く大事にしてくれてたのはわかってる。だから何も言わなかった。飲み込めるようになるまで凄い時間がかかって、力を磨く度に本気で後ろから刺してやろうかとも思った事も本当。でも、今言ったのは、許しを請いたい訳でも、リーアを泣かせたりさせたい訳じゃないの」
「……イリナ」
「ようやく貴方と向き合えるようになった。だからリーア、言わせてね?」
抱き締める力が強くなる。手が背中をさするように、子供をあやすように。
「あの日、私の命を助けてくれてありがとう。嫌な思いもしたし、憎かったのも本当。でも、それでも貴方は私の親友で、お姉ちゃんで、大事なヒト。これからもずっと変わらないって今日、確信出来た。だから……本当にありがとう。これからも、私と一緒に生きてくれるよね?」
イリナの言葉に私は涙腺が決壊したように涙が零れて、声にならない声を零しながらイリナに縋り付いた。私にとってこの子は確かに親友で、妹のような子で、凄く大事で。失いたくなくて我が儘に成る程、ここにいて欲しくて。
憎まれても良い。全然気にしないなんて強がりは言えないけど。それでも、それを越えて大事だよ、と言ってくれたのが何よりも嬉しかった。救われた気持ちになった。嬉しくて、嬉しくて、私は喉が枯れそうになるまでイリナに縋り付いて泣いた。
あぁ、本当に。本当に生きてて良かった。あの時、何も諦めずにここまで来れて、本当に良かった。そんな思いに満たされながら、私はただ泣き続けた。
* * *
「実はさ、ヴェネラナおば様ににね。養子にならないかって言われた事もあるの」
「え?」
夜。私は自分のベッドでイリナと並んで横になっていた。こうしてイリナと一緒に寝る事は初めてじゃない。というより、ほぼ最近は一緒に寝ていた。
それに今日はイリナから離れたくなかった。仕方ないなぁ、なんて顔をされたけれどイリナがあんなに私を嬉しくさせるから悪い。私がべったりくっつくのにどこか困ったようにしながらも、今日は1日一緒にいてくれて嬉しかった。
そうして夜、こうして並びながら寝ているとイリナがぽつりと零した言葉に、私は思わず驚いた。
「結果的でも、リーアが私から家族を奪ったからって。勿論眷属になったのだから家族も同然だけど、私が望むならお母さんになってくれるって、そう言ってくれたの」
「……お母様、そんな事を言ってたの」
「うん。でも、断っちゃった」
何でもないように言うイリナは、遠くを見つめるような、それでいて穏やかな表情を浮かべていた。
「私のパパとママは、やっぱり唯一だから」
「……イリナ」
「うん。でもリーアが和平を実現させてさ、顔を合わせられるようになっても戻れないとは思ってるんだ。一緒にはもう暮らせない。寿命も違うし、お互いの立場だってあるし」
明るく言うイリナに陰りはない。ただ、その事実を穏やかに自分の中で整理しきっているように見える。
「それでも私を産んでくれたのはパパとママで、それだけは絶対なの。将来、好きな人とか出来て、結婚したりしても……式には呼ぶ事だって難しいかもしれなくてもね」
「そんなの私がどうにかしてあげるわよ、絶対に」
「そういう話じゃないって。私の気持ちの話なの。……私、パパの道に背を向けて歩いていくから。ケジメとか、覚悟の話なの」
「でも親は親よ。どんなに子供が思ったって大事にしてくれるわ。トウジさん達だって絶対にそうよ」
「うん。それは……そうだったらいいな。だから、意地張ってるだけなのかもね。これも蟠りだね」
「……イリナは強いわね」
「うん。リーアがいてくれるからね」
そっと手を握られる。その返答にちょっと驚く。私に視線を向けて、柔らかく微笑むイリナに思わずどきっ、とさせられてしまう。いつの間にこんな顔が出来るようになっていたんだろう、と。
「リーアは凄く弱いね。強いように見えて、凄い空回りしたりして。ずっと見てきて気付いた。だから強くなろうって今日、思えたの」
「……イリナ」
「これから一緒に歩いていくの。だから支えられるように強くなるよ。リーアは私が弱かった時、ずっと支えてくれた。……うぅん、もっと単純だね」
手を絡めるように握って、イリナは穏やかな微笑を浮かべて。
「大好きだから。だから、これからもよろしくね。私の“王様”」
「……うん。これから凄いいっぱい苦労をかけると思うけど、よろしくね。私の“女王”」
互いにそう言い合って、おかしくなって笑い合ってしまった。手を繫ぎ合わせたまま、額を合わせるようにして向かい合って。
「今度、朱乃がね。駒王町に来るんだって。だから黒歌が来ないか、って」
「そうなの? じゃあ、久しぶりに帰郷する事になるね。リーア、今度は駒王町の学校に通うんでしょ?」
「うん。それに一誠達も、会いたがってるわ」
「ちゃんとやれてるのかなー、イッセーくん。白音ちゃんがいるから大丈夫だと思うけど」
「一誠はしっかりしてるわよ、白音もね。黒歌もなんだかんだで面倒を見てくれてるし」
「ははは、そっか。そうだよね。皆、私と同じ眷属の仲間だもんね」
「会いたいわね」
「そうだね、会いたいよ。今なら、素直に帰れると思うんだ」
「楽しみね」
「楽しみだね」
そんな言葉を重ね合いながら、私達は穏やかに眠りに誘われていった。繋いだ手を離さないまま、身を寄せ合って。
この日は、良い夢が見れるような気がして。そんな予感を感じるままに、睡魔に身を任せて目を閉じた。