慣れ親しんだ転送魔法陣での移動。光が弱くなっていくにつれて、体の感覚がしっかりと戻って来るのを確かめながら、私は息をつく。
「リーア、荷物」
「え?」
「もう。貴方は私達の“
「あぁ、それもそうね。ありがとう」
そんな大した量の荷物じゃない。なら、良いかと。私は肩に提げていた荷物をイリナへと手渡して、転送魔法陣が設置されている部屋の扉を開けた。
「待ってたよ、リーア」
「一誠」
待ち構えていたように待機していた一誠が、おどけたように一礼して見せる。似合うんだか、似合わないんだか。ついおかしくなってしまって笑いを零してしまう。前に見た時よりも背丈は伸びただろうか。男子の成長というのは早いものね。
「イッセーくん」
「イリナ」
荷物を抱え直して、イリナも一歩前へと出る。そんなイリナの顔を一誠も真っ直ぐに見つめる。暫し、無言で視線を交わし合って、どちらから言う訳でもなく笑みを浮かべ合う。
「おかえり」
「ただいま」
そのやりとりだけで良かったのだろう。一言だけ交わし合った二人は、それ以上の言葉を重ねる事なくかつての雰囲気へと戻った。
俺が持つよ、と一誠がイリナから荷物を預かって居間へと向かう。そこには白音と黒根が待ち構えていた。白音は私を見ると、心底嬉しそうな笑みを浮かべて駆け寄ってきてくれる。
「リーア様!」
「白音、元気だった?」
「はい!」
抱きついてきた白音を優しく抱擁して出迎える。そのまま綺麗に伸ばした白髪を梳くようにして撫でる。オーフィスの事件からこっちに残ってもらい、黒歌と一誠と共にこの地の問題解決を任せてきてしまった。
立派に勤めを果たしてくれたのはありがたい。でも、もうちょっと一緒にいる時間や、甘えさせてあげられる時間を作ってあげたかったと思うのは私の我が儘なんだろうか。それに、その機会はまだまだこれから先だってある筈だ、と思い直しつつ。
「おかえりにゃん。それに……もう大丈夫にゃんだね? 『
「心配かけちゃったね。うん、もう大丈夫だよ。ただいま、黒歌さん」
イリナへと視線を向けて問いかける黒歌に、淀みなくイリナも頷く。その様子を見て満足したのか、黒歌は肩を竦めてウィンクを一つ飛ばす。
私、イリナ、一誠、黒歌、白音。改めて集った面々を見て、私は一息を吐く。
「……『眷属』が全員集合したのは久しぶりね」
「あ、言われればそうだな」
私の呟きに一誠は改めて気付いた、と言うように掌の上に手を置いていた。
――『
――『
――『
――『
これが、今の私の眷属。この内、『騎士』の駒は一誠に使用してしまっている。
そして『戦車』の駒。これも、既に私の手元には残っていない。その理由は簡単だ。黒歌に使い切ってしまっているからだ。
残っているのは『僧侶』が一つと『兵士』が八つという事になる。私も随分と思い切って使用したものだと思う。駒を受け取った時は、もっと慎重に選ぼうと思っていたのにね。
一誠とイリナは知っての通り、オーフィスのあの一件から。そして塔城姉妹の二人は、あの後すぐに私に申し出てきた。その時の光景を思い返すように、私は少し意識を飛ばした。
* * *
トウジさんとの話し合いを終え、駒王町を離れる事になった私は悩んでいた。オーフィスの一件もあった以上、一度私は冥界に戻るべきだと家族と相談して決めたのだ。
このままここに留まり続けるのは良くない。そこにはイリナも理由に絡んでいたし、この混乱した地で私が留まる事によってオーフィスに襲撃される可能性がないとも言い切れず、冥界に戻るしかなかった。
それでも私はこの地の管理者。お兄様やお父様達がフォローを入れてくれるとは言っても、ここは私の領地なのだ。それをまた統治に携われずに去らなければならないのは複雑な心境だった。
そんな時だった。白音と黒歌が一緒に私の所に来たのは。荷物の片付けをしていた私はまだ片付けていなかったリビングに場所を移して、黒歌に煎れて貰ったお茶を飲みつつ二人を見た。
「それで? お話って何かしら。白音」
「リーア様。折り入ってお願いがあります。私に“
「…………急な話、と言う訳ではないけれど。何故、眷属になる事を急ぐのか聞いても?」
「リーア様のお力になりたいのです。今回の事で、私も思う事がありました。強くなりたいんです、その為に代償を支払っても良い。未来を貴方に捧げても良い。貴方の為に、私の友達の為に力が欲しいんです……!」
涙を浮かばせて、それでも必死に私に気持ちを伝えようとする白音の目を真っ直ぐに見る。今回の一件は、彼女の心に焦りを生むのはわかりきった事だった。だから力を求める為に、私に眷属にして欲しいと申し入れた気持ちもよくわかる。
本当はもうちょっと悩ませてあげたかった。色んな選択肢がある事を知って欲しかった。けれど、私にもそんな余裕はないのだと悟らされた。オーフィスとの戦いを経て、もうこの頃から再戦の日が来る事を悟っていたから。
「私の眷属になると、ろくな目に遭わないかもしれないわよ? それでもいいのね?」
「はい。覚悟は出来ています」
「……姉としてどうなの? 黒歌」
隣に座る黒歌にも視線を向けて問う。珍しく居住まいを正したままの黒歌も閉じていた目を開いて、私に真っ直ぐに視線を向けて言う。
「私は反対しないにゃ。白音がそうしたい、と言うなら。それに、私も同じお願いをしようと思ってね」
「……首輪になるわよ? 確かにいつか眷属にするとは言ったけど」
「それは私がちゃんと自分で選択肢として選べるようにってリアスの気遣いにゃん? わかってるよ、だからちゃんとお願いする。私も、貴方の眷属に加えて欲しい」
「……白音はまだわかるわ。でも、どうして貴方まで?」
「アンタ、私を庇ったでしょ」
感情の失せたような声で、黒歌は問いかけてきた。オーフィスとの戦いの時だったろうか。確かに私は黒歌が死ぬと思って、咄嗟に黒歌を引き剥がして放り投げた。事実なので、それは否定する所ではない。
「責任を感じてるなら、それは私が勝手にやった事よ」
「……責任とかじゃない。私はただ悔しかっただけ」
「……悔しい?」
「アンタを守れなかったにゃ」
黒歌が血を吐くように零した呟きに、私は少し目を瞬かせた。
「アンタは言った。家族のようなもんだって。私は……家族を守れなかった。そんな自分が不甲斐なくて、殺してやりたい程だった。相手が悪かった、それもあっただろうにゃ。けど、それでもじゃあ守れなかったら、そんなの自分を納得させるだけの言い訳だにゃ。恩義も返せず、手を差し伸べられて、選択肢まで与えようとしたお人好しのご主人を守れず、庇われたなんて……末代までの恥だにゃ」
「恥って……そこまで思わなくても」
「命を救われ、命よりも大事な妹まで護られ、居場所まで与えられた恩に報いるその前に、手が届かずに死なせかけてしまった。私の行いを許し、傍にいる事を、その術を教えてくれた。これだけの恩義を返せずして置いていかれるなんて耐えられない」
奥歯が軋む音を立てながら、黒歌は力強く噛みしめながら重々しく心境を口にした。改めて口にされると、少し驚いてしまう。黒歌が白音を大事にしている事は知ってるし、少なからず感謝の念は感じていたけれども。
まさか、ここまで真剣に私への恩義を思い詰めていたとなれば。私にだって、これ以上の問答は無粋と悟る事が出来る。そして魔法陣を空中に描いて、“悪魔の駒”を収めた宝箱を取り出す。
「わかったわ。最後に聞くけれど、是から進む道は地獄すらも生温い茨の道かもしれないわ。臆する事なく、私と共に歩み続ける覚悟はあるのね?」
「はいっ!」
「今更にゃ」
白音は勢いよく返事を返して、黒歌は肩を竦めるように、しかし不敵な笑みを浮かべて応じる。
そうと決まれば、駒を決めないと。“原作”で過った記憶と言えば、黒歌が“僧侶”で、白音が“戦車”だった。駒には相性や適正がある。であれば、それに倣った方が良いのかと思った時だった。
「リアス、頼めるなら、私は“
「黒歌?」
「一応、術者系統である自覚はあるよ? だったら、魔力の底上げが出来る“
「……わざわざ“
「アンタ、優しいしさ。……敵であっても、殺したりするの、辛いんでしょ?」
黒歌からかけられた言葉は、思わぬ方向からの内容で私は目を見開く。
否定は出来ない。私はそもそも戦いが嫌いだ。競い合うような、高め合うような闘いなら好きだけど。殺し合い、憎み合って、滅ぼし合うような戦いは嫌いだった。
「誰かがあんたのそういう優しさを守れる盾になってやらなきゃいけないにゃ。一誠は騎士。あの子だったら、確かに誰かを助ける為に、アンタがそうしてきたように手を伸ばしにいけるでしょう」
「……そうね、だから私も一誠に“騎士”の駒を託したわ」
「あの子もその内覚悟を決めるけどさ。騎士だし、誰かを斬る日が来る。でも、その血の量は出来るだけ少ない方が良いと思うんだにゃ」
息一つ、そして一度目を伏せた後、開いた瞳を見て、背筋がゾッとした。
「――汚れ仕事は私が負うにゃん。敵を殺し、潰し、脅威を退ける役割こそ私が望むもの。何者も近づけさせず、何者をも阻み、大事なものを傷つける者共に制裁を。貴方達を護る城壁であり、あらゆる敵を潰す戦車としてありたい」
猫の瞳孔が細まって、漏れ出た覇気が揺らめくかのように。それが黒歌の決意、黒歌が定めた道。その道には……私は“覇道”を見た。
あぁ、それじゃあ止められない。例え適正があるからって、この黒歌が“僧侶”の駒に収まるような器じゃない、と。だからこそ応じるように私は頷く。
「その誓い、確かに聞き届けたわ。万難を私と共に越え、迫り来る災禍は全て打ち払いなさい。我が愛しき不吉の黒猫」
「この首輪にかけて」
言葉を交わして、少し間を置いて私達は笑い合った。この時、私達は本当の意味で向き合ったのかもしれない。
いや、肩を並べるようになった、が正しいのかもしれない。黒歌が認めてくれたのだと思うと、それが嬉しくて笑みが浮かぶのが止められない。
「それなら、白音には“
「え? でも、まだ“
「白音が兵士とか保護者として私が許さないにゃん」
「私も反対ね。白音、黒歌がここまで言った覚悟を私は呑むと言った。なら、貴方には私達の背を支えて欲しいと思うの」
「仙術、ちゃんと学んだら応用は広がるし、悪魔になって魔力を得たら出来る事だって増えるにゃ。私は、白音にはそうして皆を助ける事を覚えて欲しいと思うにゃ。誰かを傷つけたり、壊したりするのは私の役目。貴方は皆の癒しと支えになりなさい、白音」
黒歌が白音の頭を撫でて、それにね、と前置きをして続ける。
「この毛並みが血に塗れるのは、私は嫌だにゃぁ」
「……お姉様。私だって血を流す覚悟も、血に塗れる覚悟も出来てます」
「わかってる。だからこれは私のエゴだにゃん。それに仙術の使い手は少ない。そのアドバンテージは活かすべきにゃ。だから白音にはやっぱり“僧侶”が良いと思うよ」
ぽんぽん、と白音の頭を撫でてから言い聞かせるように黒歌の言葉に白音は唇を結ぶ。
仙術を扱える、というだけで確かに“僧侶”にする価値はあると私も思っている。黒歌の、白音に出来れば手を汚して欲しくないという気持ちも痛いほどにわかるし。
「私もそうした方が良いと思うって言うわ。白音」
「……甘やかさないでくれますか? ちゃんと私も皆の戦いに加えてくれますか?」
「攻撃一辺倒になるのは避けたいにゃぁ。私、もうそうなったら暴れる事しか考えてにゃいし」
「雑ね……。でも、らしいのかもね。だから白音。私達の安定は貴方にかかってるとも言えるわ。頑張ってね」
「女王が未知数だし、騎士は騎士で突貫しそうだしにゃあ」
「……………よーく理解しました」
眷属として同僚になるだろう面々の顔を順番に思い浮かべていく白音。溜息を吐いて、白音は諦めたように応じたのだった。
そして悪魔の転生の契約は為る。白音は“僧侶”の駒を使い、黒根は“戦車”の駒を使って悪魔になった。
「ちょっとぉ!? 黒歌、あんた一個じゃ足りないんですけどぉ!?」
「知らないにゃん、約束は約束でしょ! ほらさっさと二つ消費しちゃいな!」
「くっ……! あ、アジュカ様に禁止された血を使えば1個で済まないかしら!?」
「リーア様、ダメですよ。もういっそ兵士でいいんじゃないですか」
「やだ!! ほら、リアス、はーやーく! はーやーく!」
「だー、もう! その分絶対働かせてやるからね! 黒歌! 覚えてなさいよ!!」
……そんな余談を残しつつ、回想は途切れる。
* * *
「働くとは何だったのかしら? えぇ? この駄猫」
「仕事はしてたにゃん? ほーら、恙なく」
「くっ……! やる事はしっかりやってるだけに腹が立つわね!」
「リーア様……! 頑張って下さい! このぐーたらな姉に制裁を! 生活習慣の改善を!」
「そんなお堅い事を言ってるから白音の胸はいつまでもプリティサイズなのにゃ。もうちょっと姉のように大らかな心を持てば、ほら、このように」
「戦争です、これは最早、戦争です! 許しません、絶対に許しませんよ! これは宗教戦争です、相手を滅ぼすまでは止まれません!! 死んでくださいお姉様ッ!! そして私も死ぬぅ!!」
「あ、あの、白音……ちょっと落ち着いて」
「リーア様も黙っててください! 裏切り者!」
「いや、こればっかりは裏切りとかそういう話じゃ……それに白音だってまだ成長期だから気にしなくても……」
ぎゃいぎゃい、わいわい。紅髪のご主人様と、黒白の猫又姉妹のじゃれ合いを目にしながらイリナは少し離れた席に座って一息を吐く。
そこに一誠がティーカップにお茶を注いで、イリナの前へと差し出す。自分の分も用意して席に着くと、イリナの方へと顔を向ける。
「……よ、久しぶり」
「ん。久しぶり」
手紙や通信でのやりとり、グレモリー家の訪問の際には顔は合わせていたけれど、それでも頻繁だったという訳でもない。一誠は駒王の地で起きる事件に奔走もしたりしていて、余裕が無かったのもある。
イリナも自分の状況を飲み込む為に時間がかかって、この前のリアスとの模擬戦で吹っ切れる事が出来て、こうして話せるようになった自覚はある。だから、この再会は本当に久しぶりと言うべきものだった。
「いつもあんな感じ?」
「今日はちょっと白音がはしゃいでるかな。リーアが来たからだろうな、やっぱり」
「ふふ、白音ちゃんはリーアと黒歌さんが大好きだもんね」
「あぁ、見てて微笑ましくなるし、姉妹って良いな、って思うよ。本当に」
楽しげにじゃれ合う3人に視線を向けながら、イリナは一誠の顔を見た。幼少の頃に比べたら背も伸びて、体もがっしりしてきた。男の子である事を意識させてきて、時の変化を感じる。
一誠がいれてくれた紅茶を口につける。本家の、本業の方と比べるものではないけれども。それでもなかなかお上手で、と感想を零す。普段から煎れてたりするのかな、とぼんやりイリナは思考を巡らせる。
「イッセーのパパやママ、元気?」
「…………あぁ、変わりないよ。俺が悪魔になったことは、言えてないけど」
「そっか」
それは良かった、とイリナは心の底から頷く。一誠の家は元々、一般家庭だ。裏の世界を知る由もない。一誠が黙っている、というのは当然の選択だったと思う。
私はどうなのだろうか、とイリナは考える。多分、心配はしてくれてはいるのだろうけども。時折、思い出してくれているのだろうけども。けれど、確かめようのない事実はただ、思考を淀ませるだけ。良くないと首を振って思考を追い出した。
「6年、か。学校は?」
「中学校。けっこー楽しいよ。友達も増えた」
「そっか」
「イリナは?」
「お嬢様のお稽古、とか? あと勉強たくさんしてたよ」
「そっか」
「うん」
「もう、大丈夫なのか?」
突然、話題を変えるように一誠が問いを投げかける。それにイリナは一誠へと視線を移さず、一度紅茶を口につけて喉を潤してから続ける。
「何回か、後ろから刺してやろうかと思った」
「……マジか」
「うん、マジ。まぁ、憎しみもあったんだけど……たまに見てられなかったんだよね」
「リーアが、か?」
「うん。背負って、背負って、背負って、そのまま潰されそうになってる。それでも息抜きは出来るようになってるから、きっとマシになったんだと思う」
「……そっか」
「それも見てきたから、ようやく踏ん切りついた。一緒の未来を歩いて行くって。そう決めたんだ。だから……もう、大丈夫だよ」
柔らかく微笑むイリナの笑みを見て、一誠は昔懐かしむように目を伏せて唇を結んだ。
6年という歳月は決して短くはない。悪魔になったばかりの頃のイリナの姿を一誠は知っている。それに比べれば、自分は恵まれている方だった。
家族に真実を言う事は出来ていないけれど、それでも家族として愛情を注がれてきた。それはイリナが得られなかったものだ。それを受け取っている自分に罪悪感や、後ろめたさを覚えなかったと言えば嘘になる。
そして、それを口にすればそれこそ怒られるという事もわかっている。あれは理不尽だったのだ。あのオーフィスという、黒い龍神による理不尽。それでも、一誠はあの日垣間見た儚げな姿を忘れられずにいる。オーフィスの事は頭の隅に追いやるように一度、首を振って。
「イリナ」
「ん?」
「今度は、護るから」
そうして一誠は静かに、自分の誓いを口にした。そう、護るのだ。自分の身も、大事な誰かの命も。その為に貰った力なのだと信じてる。いや、果たすのだ。この祈りを、この願いを。
せめて自分の手が届く範囲では、誰も傷つきませんようにと。世界があまりに広く、巨大であるか一誠は知っている。だからこそ、慢心はしない。恐れだって捨てない。この世界にはどんな強い力があっても、それを飲み込むような理不尽を知るからこそ。
「絶対に、今度は護るよ。イリナだけじゃなくて、皆も」
「……わかってるわよ、“
そう言って、机の上で握られていた一誠の手にイリナが手を重ねる。重ねられた手の感触にきょとんとした後、一誠もイリナを見て微笑む。
離れていた幼馴染みは、そうして自分達の幼少期に思いを馳せていた。リアスのやる事を助けよう、と言っていた幼い頃の自分達。それは例え離れていたって、きっと何度だって同じ気持ちになるんだと知って。
「あいだだだだだっ!? そ、それは関節抜けが出来ないにゃぁぁああ! いたい、いたい! ギブギブ!!」
「えーと、これでいいの? 白音」
「ではカウントを取ります! テン、フィス、ツェーン!」
「減ってない! それ全部10だからね!? あぁぁあああ!? リアス、おれ、折れる~……! 可愛い飼い猫に慈悲はないのかにゃ!!」
「躾けが少しばかし必要みたいだし……?」
「うにゃぁああああーーーーーっ!?」
そんなしんみりとした空気を吹き飛ばすように聞こえてくる黒歌の悲鳴。白音の指示の元、関節技の指導を受けながら黒歌に技をかけ続けているリアス。そして白音がニッコリと姉への無慈悲な虐待を続けて行く。
そんな騒がしさにどちらからともなく顔を見合わせて、おかしそうに一誠とイリナは笑い合うのだった。