深紅のスイートピー   作:駄文書きの道化

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ACT.06

 ――これは、過去の出来事。

 

「力が欲しい、だぁ?」

 

 頭を下げる朱乃にアザゼルは明らかに不機嫌そうな声で答えた。駒王町がオーフィスの襲撃に遭い、その時に朱乃は何もする事が出来なかった。何が起きたのか知ったのは、全てが終わった後。

 一誠とイリナが死んだ。リアスも死にかけた。自分は何も出来なかった。それがただ、ただ悔しかった。悔しさのあまり、自分の無力さを怨んで、憎んでしまいそうになる程に。

 頭を下げたまま、微動だにしない朱乃に対して居心地が悪そうにアザゼルは頭を掻く。朱乃の気持ちはわからないでもないが、いきなり力が欲しい、とだけ言われて頭を下げられては困るというものだ。

 

「なぁ、朱乃よ。お前の悔しさとかはわからんでもない。だが、力っていうのは与えられたらすぐに強くなる訳でもないし、力があるって事は強いって事じゃねぇ」

「……わかってます。でも、力が欲しいんです」

「わかってるのか? その力を求めた先に、本当にお前の守りたいものがあるのか? 確かに今回は運が良かっただけだ。リアスが悪魔に転生させる駒を持っていたから。そう言われればそうだが、運が良いってのも決して馬鹿に出来たもんじゃないんだぜ?」

「でも、次はないんですよね?」

「……焦るな、って言っても聞きそうにねぇなぁ。一度決めたら譲らないのはバラキエル譲りか」

「何も出来なかった。私だってわかってます。力があったからって、何か出来た訳じゃない事も。私がすぐにリーアみたいに強くなれる訳じゃないのも、わかってます」

 

 それでも、と朱乃は言葉を重ねる。この悔しさは自分を蝕む毒みたいで。吐き出したくても吐き出せないまま、自分を侵していく。

 悔しい、悔しい、何も出来ない自分が。大切な友人達の危機に何も出来なかった自分が。今回は運が良かっただけ。次はない、ないなら、じゃあ今度こそは、と何度も心が叫んでいる。

 

「後悔したくないんです。何も出来なくて、何もしないままなのはもう嫌なんです」

 

 それから最初は断られて。何度も何度も会うなり頭を下げて、根負けしたアザゼルが朱乃を神器の研究に関わらせるようになった。それが、朱乃にとっての切っ掛けの記憶。

 

 

 * * *

 

 

「雷光よッ!!」

 

 朱乃の手から離れた光を伴った雷が敵対者達に向かっていき、轟音を響かせる。散会するように散っていく敵対者達へ、まず真っ先に飛び出していったのが一誠とイザイヤだった。

 イザイヤはその手に神器『魔剣創造(ソード・バース)』によって生み出した魔剣を手にし、応じるように前に出てきたテロリストと斬り結ぶ。

 一誠も懐に飛び込んで牽制の一閃を入れてから、その速度で相手を翻弄していく。2人が攪乱するように立ち回る中、白音の手に炎が生まれ、それが動きを崩したテロリスト達へと襲いかかっていく。

 

「あっぶねぇ! 白音、俺ごと焼くつもりか!」

「一誠なら避けれます。あと、私は攻撃は苦手なので」

「嘘つけ! 「黒歌さんに比べて」が頭につくだろ!?」

「君達、緊張感ないね!?」

 

 目の前を掠っていった炎に一誠が抗議の声を上げるが、白音は意に介した様子もなく次々と投げつけるように炎を放っていく。

 それを避けながら敵と斬り結ぶ一誠達の様子を見て、思わずイザイヤがツッコミを入れてしまう。しかし、それでも一誠達は的確にコンビネーションを重ねてテロリスト達を追い詰めていく。

 

「……これが、実戦」

 

 それを見つめていたイリナはごくりと息を呑んだ。修行は受けていたとはいえ、これがイリナにとっての初めての実戦なのだ。

 目を奪われるのは、やはり一誠だ。文句を言いながらも、目に追うのがやっとの速度で駆け抜けていく。これが今の一誠なのだと感じたイリナはそっと胸を撫でる。

 負けたくない、負けられない。置いていかれたくはない、と。その思いがイリナの足に力を込め、背を押していく。

 

「“偽典法則(フェイク・クリエイション)”! “竜”、“剣”、“夢想(セット)”! “無よ、偽りとなれ(コンバイン)”!」

 

 手に法則を書き換え、実在しない剣を握り締めて自分も切り込んでいく。戦線に加わってきたイリナを見て、一誠は少し驚いたような顔を浮かべ、しかしすぐに笑みを浮かべる。

 

「いくぞ、イリナ!」

「うん、イッセー!」

 

 一緒に戦うのは初めてだ。それでも、2人は息を揃えて切り込んでいく。

 離れていた時間はあれども同じ夢を、同じ志を抱いた2人。離れていた時間と、これが初の共同戦線だと言うのを感じさせない息の合ったコンビネーションを見せていく。それは、白音が驚いてしまう程だった。

 

「僕の『魔剣創造』と似た能力かい? 神器じゃないみたいだけど!」

「そうかも、ね! 貴方とは後でゆっくり話したいわね、イザイヤ!」

「それは僕もだ!」

 

 イザイヤは自分と同じように剣を作り出すイリナを見て興味を抱いたのか、互いにそんな言葉を交わし合う。イリナが加わった事で、テロリスト達は1人、また1人と倒されていく。

 決して彼等だって弱い訳ではない。だが、それを凌駕する実力を一誠達が見せているという事実があるだけだ。だがそれを認める事が出来ない者もいる。テロリストの1人、リーダー格の男が奥歯を砕かんばかりに噛みしめる。

 

「調子に乗るなよ、ガキ共が……!!」

 

 ぞわり、と。前線で戦っていた3人は直感に身を任せてその場から飛び退く。入れ替わるように白音が3人の前へと出て結界を展開する。

 瞬間、リーダー格のテロリストの力が膨れあがり、白音の展開した結界を軋ませる。軋んだ結界に顔を歪める白音を一誠が抱きかかえるようにして距離を取る。瞬間、甲高い音と共に結界が砕けて散っていく。

 

「なんだアイツ、急に力が跳ね上がったぞ!?」

『オーフィスの『蛇』だな。仕込んでいた力を励起したのだろう、だが頼りすぎれば暴走するぞ、あれは』

「蛇……!」

 

 ドライグから齎された情報に一誠は眉を寄せる。オーフィスは一誠にとって複雑な相手だ。敵だとはわかっている。それでもあの日、彼女を手を引いた記憶を何故かどうしても忘れられない。

 振り払うように首を振って、迫ってきた光弾を白音を抱えたまま回避する。リーダー格だけではなく、他のテロリスト達も『蛇』の力を解放してきたのか周囲の圧力が高まっていく。

 

「やべぇ! ドライグ! アレやるぞ!!」

『30秒だ。それ以上は保たんぞ』

「わかってるよ! 白音! イリナ! イザイヤ! 時間を稼いでくれ!」

「わかったから下ろしてください。あと、太股を撫で回した件は後で追求します」

「緊急避難だから仕方ないだろぉ!」

「感想は?」

「程よく肉付きがあってすべすべです! ……はっ!? 誘導尋問とは卑怯だぞ!!」

「むっつりスケベナイト」

 

 ひでぇ! と抗議する一誠の腕から離れて、白音はその両手に炎を浮かび上がらせて敵へと向けていく。しかし、今度は翻弄するに至らない。掻き消すように腕を振るわれれば炎が散っていくのを見て白音は舌打ちする。

 距離を取ろうとする一誠と、その間に立つ白音。そこに迫るテロリストをイリナが遮るように立つ。幾度か斬り結ぶが、剣の刃が綻び、罅が入った瞬間に幻のように消え去ってしまう。

 

「まず……っ!」

「どいてください」

 

 剣を失ってイリナが後退るように飛ぶ。イリナを追撃しようとしたテロリストだったが、今度は逆に白音が割って入る。その拳を握りしめ、その手には光の膜のように障壁が展開されている。

 

「障壁拳!」

 

 白音の拳に展開された障壁が相手の一撃を弾き飛ばして、そのまま逆の手で放った一撃でテロリストを殴り飛ばす。体勢が崩れた瞬間にイリナが蹴りを叩き込んで、テロリストが吹き飛び、木に叩き付けられる。

 

「白音、やるわね」

「一誠と練習しました。結構使い勝手は良いんですよ、これ。威力はそこまでないですけど、攻撃を弾くのに使えるんで」

「なるほど、護身用」

 

 なるほど、と頷くイリナ。確かに白音の言うとおり、威力はそこまでもないのだろう。木に叩き付けられたテロリストがすぐに起き上がろうとしているのが見えた。

 そこに剣の雨が降り注ぐ。そう、文字通りの剣の雨だ。それはイザイヤが生み出した魔剣の群れ。それによってテロリストは距離を取る事を余儀なくされた。

 それを見たイリナは、イザイヤが生み出した魔剣を一本掴み取る。勢いよく引き抜いたそれは自分の手に馴染まない。故に、自らの力を注いで『改変』する。

 

「“掌握”、“変成”、……よし。借りるわよ!」

「僕の魔剣を造り替えたのか!?」

 

 イザイヤがイリナの為した現象に驚きながらもテロリスト達に向かっていく。イリナは改変した魔剣を握りなおす。その感触は、自分の作り出した剣と似ているようで違う。

 戦闘中でありながらも、その違いに関心を寄せつつ距離を取った一誠の元へ向かわせない為にイリナは剣を振るう。イリナに負けじと、イザイヤも積極的に前に出て行く。

 それを見ていた朱乃も翼を羽ばたかせ、狙いをつけて雷光を放つ。しかし、初手とは違って雷光は掻き消されるように霧散させられる。

 

「無駄だ! その雷光の力は確かに強力だが、『蛇』を励起した我等には届かん!!」

「成る程。確かに力が強化されているわね」

 

 冷静に観察して、自分の雷光が届かない事を悟る朱乃。まったく通らない訳ではないけれども、出力が足りていない。自分は父の雷光にはまだ劣っている事を朱乃は自覚している。

 そう、それは年月と経験によって蓄積されたもの。到底届かないのは当然の理屈だ。朱乃はそれを誰よりも理解している。しかし、だからこそ朱乃は『力』を求めたのだから。年月も経験も超越する為の『力』を。

 

「仕方ありませんね。――『炎帝の霊羽(ヴァーミリオン・フレア)』、起動!」

 

 朱乃が懐へと手を入れ、取り出したのは朱色の宝玉。口付けるように唇をつけた後、宝玉を掲げて叫ぶ。瞬間、宝玉は光を放ち、朱乃の背に堕天使の翼とは異なる朱色の光翼が広がる。

 それは朱乃が自ら率先して作り上げた人工神器、『炎帝の霊羽(ヴァーミリオン・フレア)』である。その羽根から漏れ出る光は熱と炎を伴い、朱乃の手に発生した雷と混ざり合っていく。

 

「それは……人工神器か!?」

「霊獣である『朱雀』の羽根を媒介に、私専用に調整した人口神器よ。これならどうかしらね……! イザイヤ、イリナ! 離れなさい! “炎雷”よ!! 轟き、焼き払え!!」

 

 朱色の雷が朱乃の手から離れ、直撃する。それは直撃の瞬間に破裂するように弾け、炎と雷を混ぜ込んだ小規模の爆発を巻き起こす。それは先程まで朱乃が放っていた雷光の威力を桁違いに上げている。

 朱乃はその威力を確かめつつ、顔を顰める。掌を見れば、火傷が痕のように残っている。これは『炎帝の霊羽(ヴァーミリオン・フレア)』の力を使った事によるバックファイアだ。

 

「……まだ、調整が必要ね」

 

 じくじくと痛む掌を隠すように握りしめ、次の一撃を放とうと力を込めた瞬間、その声は響き渡った。

 

「――悪い、待たせた」

『Welsh Dragon Over Booster!!』

 

 距離を取っていた一誠が剣と籠手を掲げながら呟き。『赤龍帝の籠手』からは竜のオーラと力が溢れ出ていた。朱乃の炎雷を受けつつも、体勢を立て直そうとしていたテロリスト達が戦慄の声を上げる。

 

「ま、まさか……!」

「“至って”いるというのか、赤龍帝……!!」

「見せてやる。これが俺の『禁手(バランス・ブレイカー)』だ!!」

 

 一誠の叫びと同時に、一誠が光に包まれて全身が赤い鎧に包まれていた。これこそ『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の禁手(バランス・ブレイカー)、『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』である。

 鎧を纏った一誠の姿に、テロリスト達が後退る。二天龍と呼ばれたドライグの圧力の一端、それを感じさせるには十分過ぎる程の存在感を放っているのだから。

 

「今の俺じゃ、鎧を出せていられるのは30秒しかねぇ。――10秒で終わらせてやる」

『Boost!』

 

 剣を構えて、一誠は姿勢を低く――次の瞬間、嵐が巻き起こった。

 まずは1人、その速さを知覚する事なく袈裟斬りにされて倒れ伏す。それによって一誠の速度が知覚するのがやっとだという事実に狼狽え、周囲を警戒するように密集し、互いをカバーしようとし始める。

 

「あ、それは悪手だぞ」

『Boost!』

 

 ――固まってくれるなら、好都合だ。

 二度目の力の倍増を受けて、一誠はその力を剣に集めていく。赤いオーラを纏った剣は震え出し、まるで低く唸るような音が響き渡る。言い換えるならば竜の嘶きだ。それは次第に甲高い音を立ていき、一誠は鎧の背部にあるブースターを解放した。

 互いにカバーをしようとしていたテロリスト達に真っ向から向かっていく一誠、向かってくる方向がわかっているならばと集中攻撃を一誠に向けるも、攻撃が着弾する瞬間に一誠が加速し、全てを置き去りにしていった。

 そして、一閃、一閃、一閃。次々と繰り出された剣の軌道がテロリスト達を呆気なく切り裂いていく。最後まで立っていたリーダー格の男が、切り裂かれた傷口を押さえ、血を吐きながら呻く。

 

「……馬鹿な、『蛇』すら使ったというのに……想定外さえ、無ければ……おのれ、赤龍帝め……おのれ、おのれぇ……!!」

 

 呪詛を吐くようにして、そのまま崩れ落ちる。それを見届けてから一誠は息を吐き、鎧が解除される。きっかり10秒、確かな成果に一誠は剣を強く握り直す。

 そして、ぽきん、と言う音共に剣が折れた。それを見て一誠は、恐れおののくような表情へと変わり、思わず叫んだ。

 

「だぁーーーーーーっ!? 折れたぁぁああああっ!?」

「あちゃー」

 

 一誠の叫びにイリナが額を押さえる。一誠が使っていた剣はイリナが錬金術で作り上げた剣だったのだが、見てわかる通り一誠の力に耐えきれなくなったようである。

 『禁手(バランス・ブレイカー)』の力を目の当たりにした今ならわかる。あれでは耐えられないだろうと。

 一誠は、長年大事に使ってきた剣が折れた事実にその場に膝をついてしまった。傷心のイリナが回復の兆しを見せて、誕生日プレゼントとして贈ってくれたものだった。

 自分が扱いやすいように調整を重ねてくれた無銘の剣、それでも一誠には宝物だった。それが折れてしまった事は、かなりのショックだった。しかも作ってくれた本人が目の前にいるのにだ。

 

「ご、ごめん、イリナ……」

「いや、仕方ないよ。むしろ今まで持ち堪えてくれたと思うよ。うーん、1から作り直しかなぁ」

 

 申し訳なさそうに告げる一誠にイリナは軽く肩を叩いて励ますように言う。元々、まだ自分の力も上手く扱えなかった頃に作った一振りだ。むしろ、ここまで一誠を支えてきてくれた事を誇っても良いかな、と思う程にはイリナは満足だった。

 そんな2人の一方で、イザイヤは戦闘の終わりを悟るなり朱乃に詰め寄る勢いで近づいていった。朱乃は近づいて来るイザイヤに隠すように手を後ろに回す。

 

「朱乃姉さん! 大丈夫ですか!」

「イザイヤ、私は大丈夫よ。怪我はないかしら?」

「怪我をしているのは姉さんです! また人工神器を使って! 調整不足だってあれ程言われたのに、ほら、バックファイアで火傷してるじゃないですか! あぁもう、早くアーシアに見せないと……!」

「か、過保護じゃないかしら。ちょっとジクジクするだけだから……」

「テロリストなら私達が捕縛しておくので、連れていっていいですよ。イザイヤさん。リーア様に報告もして欲しいですし」

「わかった! ありがとう!」

「え、ちょ、ちょっとイザイヤ!?」

 

 ひょい、と朱乃をお姫様抱っこするなりイザイヤは走り去って行ってしまった。白音はその姿を見送りつつ、溜息を吐いた。

 自分が手当をしても良かったけれども、朱乃には少し自分を省みる必要があるだろう。その説教も含めるならイザイヤ達に任せた方が良いと判断した白音の気遣いだった。

 そして剣が折れた事でしょげる一誠を励ましながら、イリナはロープをどこからともなく取り出してテロリスト達を縛り上げ、この戦いは終わりを告げるのであった。

 

 

 * * *

 

 

「……終わったみたいだね」

「……そう」

 

 ツマミを口にしていた黒歌が呟くように言う。この地に張り巡らされた結界のおかげで白音と黒歌は手に取るようにこの土地の状態を把握する事が出来る。無事に終わったみたいで、私は小さく息を吐いた。

 

「どうやら朱乃がイザイヤに運ばれてきてるみたいにゃんだけど、なんかあったかにゃ?」

「朱乃姉さんが!? ま、まさか怪我したんじゃ……!」

「アーシア、治癒の準備をしておきましょう」

「そ、そうですね」

 

 トスカに言われて、神器の用意をしているアーシアを見た後、視線を逸らすように私は目を閉じる。そのまま背を預けるように背もたれに身を預けていると、黒歌の手が伸びてきた。

 黒歌の手が私の頭を無造作に撫でる。視線を向けて見れば、穏やかな笑みを浮かべている黒歌の表情が見えた。

 

「よく我慢したね。ご主人」

「……朱乃、大丈夫かしらね」

「まぁ、大事にはなっていないとは思うよ。だから安心しな。皆、大丈夫だよ」

 

 ぐしゃぐしゃに髪を掻き混ぜられて、思わず顔を伏せる。その俯いた視線の先、自分の握られた拳を見る。力を込めすぎて、握っていた事にすら気付いていなかった。

 それをようやく解いて、溜息を吐く。自分で何もしない、というのは慣れない。信じるという事は難しい。ゆっくりと開いた瞳で天井を見上げる。

 

「……黒歌、ありがと」

「ん。別にいいにゃん。食べる?」

「……頂くわ」

 

 差し出されたつまみに手を伸ばして、それを口に放り入れる。塩っ気が多い味が、今はたまらなく美味に感じる事が出来た。

 

 

 * * *

 

 

 夢を見るように、祈るように、願うように。私は、今を生きている。

 どうか、私の大事なものが壊れてしまわないようにと、その手に収めるように。

 

 

 

 

  

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