異世界で悪魔退治するのは間違っているだろうか   作:しゅーぞー

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2日ぶりです。
少し筆が乗ってしまい、二話一気に書き上げることができたので、一昨日のと合わせて連続で投稿させていただきます。
久々のバトルシーンですね。なかなか書いてて楽しかったです笑
では、本編をどうぞ。


Mission13 少女を救出せよ

『ギュピィィィィィ!!』

 

 不快な鳴き声とともにゴブリンが消滅する。

 そしてそこに残った魔石をかがんで回収し、腰に下げたポーチの中へ収納する。

 ここ最近その繰り返しだ。

 ネロにもほとほと飽きがきていた。

 聞くところによると更に下層に行けば強いモンスターがわんさかいるそうなのだが、ヘスティアに強く止められていることもあって行きづらかった。

 

『いいかい、ネロくんの実力は認めるけどまだまだこの世界では新米なんだからあんまりダンジョンの下の方に行っちゃダメだよ!いろいろトラブルも起こるしね!』

 

 ネロは今まで散々悪魔どもを屠ってきた自分の力を信頼していた。

 それは慢心などではなく、経験と実績に裏打ちされたものである。

 実際のところネロならダンジョン奥深くへ潜っていこうと無傷で帰ってこれるだろう。

 正直何度か深層へ潜ろうとしたことはあったのだがその度にネロに忠告をしていたヘスティアの心底こちらを心配している目を思い出して不思議とネロの足は止まるのだ。

 しかしながら人には誰にでも我慢の限界があるもので。

 そして不幸なことにネロは人よりも少し(、、)それが短かったこともあって。

 

「.......まぁ、少しだけならバレねぇだろ」

 

 そう言いながら下層へと向かって行ってしまったのは致し方ないことだろう。

 ネロとて別段戦闘狂というわけではないのだ。

 しかし常日頃から任務で悪魔と戦い続けていた男にとってはこの程度の雑魚では準備運動にすらならなかった。

 つまるところ戦闘欲求(フラストレーション)が溜まってしまっていたのだった。

 思い起こせばオッタルを倒したあの日からほとんど毎日ゴブリンコボルトゴブリンコボルト......。

 思い出して鬱屈としながらズンズンと群がるゴブリンやコボルトを軽く掃除しながらダンジョンを下っていくのだった。

 

 

 

 

 

 途中で奇妙な巨大蟻を戦ったり(つぶしたり)、鋭い爪を持つ幽霊のようなモンスターを戦ったり(つぶしたり)しながらいくつか階層をまたいでいくと、突然ひらけた場所に出た。

 ドーム状の広大なダンジョンで、ネロが立っている入り口から反対側までが見通せないほどであった。

 あたりには木々がちらほらと生えており、軽く霧がかかっていて天井部から差し込む光源と相まって、神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 目を凝らすと近くの方で冒険者の一団が3mほどはありそうなモンスター五体に囲まれながらも戦っているのが見えた。

 距離にして20mくらいだろうか。

 周りを包囲しているモンスターの見た目は非常に醜悪なもので、茶色い肌に豚頭。

 ズルズル剥けた古い体皮が腰の周りを覆っており、まるでボロ衣のスカートを履いているようだった。

 霧のせいで見にくいが違和感を感じてネロはそれをじっと見ているうちにあることに気づいた。

 彼らは戦っているのではない、襲われていた(、、、、、、)

 襲われているのは四人組のパーティーだった。

 四人のうち三人は武装していて臨戦態勢といった面持ちだったのだが、なんともう一人は小さな子供のようで、武装など何もしていなかった。

 背中にはその小さな背丈に見合わぬ大きなリュックを一つ背負っただけだ。

 そういえば、とネロはギルドの受付嬢に聞いた話を思い出す。

 ここ、オラリオでダンジョンに潜るのはいわゆる"冒険者"のみではなく、モンスターからドロップする魔石やアイテム、戦闘において必要なポーションなどを保管しておく役割を持つ"サポーター"と呼ばれる役職が存在することを。

 おそらく彼女もそうなのだろう。

 

(さて、放っておくわけにもいかないし、助けるか。)

 

 などと考えてゆったりと歩き出したネロの目の前で突然信じられない光景が展開された。

 四人のうちのロングソードを装備したガタイのよい冒険者がサポーターの服を引っ掴んで自分たちの周りを包囲しているモンスターのうちの一匹に投げつけたのだ。

 子供一人とはいえ、それなりの質量があり、なおかつ大きなリュックも装備しているのだ。

 しばし怯むモンスター。

 チャンス、とばかりに包囲が緩んだその隙間から逃げ去っていく冒険者たちがこちらへ向かってくる。

 

「おい、誰だか知らんがアンタも逃げたほうがいいぜ。あぁ、あいつ?ほっとけよ、サポーターごとき」

 

 その言葉に反応して他の二人がケケケケ、と厭らしく笑う。

 そして通りすがりにネロの肩をポン、と叩いて走り去っていく。

 一度もあの子の方を振り返ることすらなく。

 あの子は...捨てられたのか?

 いとも簡単に仲間のことを切り捨てた彼らへの驚きと同時にネロは自分の中に静かに怒りの炎がふつふつと燃えたってくるのを感じた。

 考えるよりも先にまず体が動いていた。

 先ほどまで立っていたところにわずかなクレーターができるほどの脚力で走り出したと同時にレッドクイーンを抜刀しながら敵に肉薄していく。

 先ほどサポーターの子供をぶつけられて怯んでいた一体だ。

 そのサポーターはぶつけられた衝撃で気絶したのか、未だに地面に倒れ伏していた。

 レッドクイーンのアクセルを全開にふかしながら全力で斬りかかる。

 まずはあの子供を助けることが最優先だ。

 

「.......ラァッ!」

 

 一瞬の出来事だった。

 斬、と辺りに炎と共に鈍い音が響き渡った。

 火の粉が地面に散らばっていき、それと同時にモンスターの下半身から上半身がズレ落ちていった(、、、、、、、、)

 重々しい音とともに地面に落ちたソレに目もくれず、倒れている子供を素早く拾い上げて、肩に担ぎ上げる。

 突然のことでモンスターたちの顔にも呆然とした色がうかがえた。

 残るは四体。

 少し間を置いたせいかモンスター達も正気を取り戻し始めたのか、それぞれ手近に生えていた木を引き抜いた。

 おそらく武器の代わりだろう。

 ネロはニヤリと笑ってすでに臨戦態勢となったモンスター達に言い放つ。

 その肩に子供を担いだまま。

 

「ハッ、テメェらにはいいハンデだろ?」

 

 その一言が開戦の狼煙だった。

 四体が同時にこちらへ走り寄ってくる。

 その中でも速い個体がネロに接近してきた。

 巨木を振りかぶり、振り下ろす。

 しかし次にそのモンスターが見た光景は

 

「蝿が止まるぜ」

 

 自らが振り下ろした巨木の上に立つ青年の姿だった。

 身の危険を感じて巨木を振り上げる。

 ネロはその勢いに乗って宙返りをしつつ元の位置に着地する。

 他の三体も追いついてきたようで、ネロの体を四本の巨木が襲う。

 しかしそのことごとくをネロは必要最小限の動きや、時にはパフォーマンスをするかのように軽やかに躱していった。

 おそらくはそのモンスターは知能が低いのだろう、繰り出される攻撃は全てが直線的で愚鈍だった。

 

「そろそろ飽きてきたな...終わりにするか」

 

 そうネロがひとりごちると同時にその体を四本の大木が襲いかかる。

 それを見据えるネロの目は、紅かった(、、、、)

 四体のモンスター達が最後に見た光景は、振り下ろしたはずの大木が木っ端微塵に粉砕されている様子だった。

 ネロは振り下ろされた四本の大木を下からすくい上げるかのように斬りあげたのだ。

 並大抵の力ではない。

 そしてその勢いを利用してちょうどモンスター達の目線と同じくらいの高さまで飛び上がると。

 武器がなくなった、と思わせる間も無くレッドクイーンを無慈悲に一閃。

 剣尖が赤く煌めいたかと思うと同時にそれらの首は地面へと落ちた。

 

It was an anticlimax.(大したことねぇな)

 

 哀れ、頭部をなくした四体の屍体は地面に倒れ伏した。

 地面をドクドクと血で赤く染めながら。

 

 

 

 

 

 それからネロはまだ気絶している子供を地面に下ろした。

 先ほどは遠巻きから見るのみだったので良く観察できなかったのだが、背格好からネロはなんとなく少年だと思っていた。

 しかしその子が深々と被っているフードを上げて見ると、それは少女だったのだ。

 頭に獣耳付きの。

 顔は少しスス汚れてしまっているが、綺麗な顔立ちをしていた。

 とりあえずここにいつまでもいてはいつまた戦闘になるかわからない。

 ひとまずはダンジョンの入り口まで戻ろう、とネロが少女を再び抱き上げようとすると

 

「うーん.......」

 

 少女が目を覚ました。

 目をパチクリさせながらネロを見る少女。

 その視線は先ほど倒したモンスターとネロの間を彷徨っていた。

 

「こ、これ...冒険者様がやったんですか?」

 

 意識が朦朧としているのか、ネロの見た目が怖いのか、おずおずといった様子でそう聞いてくる少女。

 

「あぁ、俺がやった」

「そう...なんですか。助けていただいてありがとうございます」

 

 モンスターに投げつけられた記憶はあるのか、お礼を述べる少女。

 それも大変に申し訳なさそうに。

 何かに怯えているようだ、とネロは感じた。

 

「さっきまでの奴ら、お前の仲間か?」

 

少女が俯いたままで、ゆっくりと頷く。

 

「......はい」

「ならなんであんなこと...?」

 

 ネロは仲間と共に戦った経験はほとんどないためわからないが、普通仲間と言ったら一蓮托生で命を預けあって闘うものではないのか。

 かばいこそすれど見捨てることなどあり得ないはずだ。

 

「それは.......リリがサポーターだからです。なんの役にも立たないただの...サポーターだからです」

 

 そこまでいうと先ほどまで暗い顔をしていた少女が一転、不気味なまでの笑顔をその顔に貼り付けながら

 

「今日はリリの命を助けていただいて、ありがとうございました!このご恩は絶対に忘れません!」

 

 そう言って引き返していくリリ、と名乗ったその少女。

 彼女の笑顔にどこか歪なものを感じつつもネロは何も出来ないでいた。

 きっと先ほどの奴らのところへ戻っていくのだろう。

 自分のことをなんの感情も持たずに切り捨てて言ったやつらの元に。

 自分とは無関係なはずなのに、どこか惨憺たる気持ちで、ネロはその日のダンジョン探索を終えることになった。

 

『いいかい、ネロくんの実力は認めるけどまだまだこの世界では新米なんだからあんまりダンジョン下の方に行っちゃダメだよ!いろいろトラブルも起こるしね!』

 

 という、ヘスティアの言葉を思い出しながら。

 きっと、彼女(リリ)にとってはあれが日常なのだろう。

 

「やっぱり、来ねえほうがよかったかもな」

 

 その小さな呟きはダンジョンの中で小さく反響して消えていくのみだった。

 ネロが今日出会ったリリルカ・アーデという少女を真の意味で救うのは、まだ先のお話ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
それっぽい引きにしてみました笑
ネロくんがちゃんと本気を出して戦える相手は果たしてダンジョンの中に存在するのでしょうか...?
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