異世界で悪魔退治するのは間違っているだろうか   作:しゅーぞー

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ちょっと我慢できなくて書いちゃいました!
あんまり更新を滞らせたら忘れられちゃうかなと思いまして笑
それにしても今回は自分史上初の8000文字越えしました
あまり長い文を書くのは得意ではなかったはずなのですがなぜか気付いたらこんな数になっていました
まあ何はともあれ更新することができてよかったです
しっかし、書いている途中で思ったんですけど、ここ最近会話しか書いてない気がします...
戦闘描写の方が書きやすいとまでは言いませんがどちらかと言うと考えやすいですね、はい
筆者はあまり会話描写が得意ではないです
今回は特に会話が読みづらいかと思いますので注意してご覧いただけると幸いです
それでは本編をどうぞ


Mission4 乱入者を撃退せよ 前編

 ヘスティアに手を引かれるままネロは教会から随分離れたところまできていた

 

Hey-hey(おいおい),まだ歩くのかよ?良い加減疲れてきたんだが...」

 

 そう弱音を吐くネロに対してファミリア構成員獲得の喜びからか未だ興奮冷めやらぬ様子のヘスティアは元気いっぱいな様子で

 

「もうへばっちゃったのかいネロくん?仕方がないなぁ。でももうすぐ着くからもう少し頑張ってくれないかい?」

 

 そうまるで赤子をあやす様な口調で諭されてはこれ以上不平を言うのも子供な気がして口をつぐむネロ

 今ネロ達が歩いているのはどこかのうらぶれた路地裏だ

 そこはやはり路地裏らしく、大通りとは隔絶されていて、陽の光もあまり入ってこず、まだ昼前だというのにすでに夕方かの様な暗さであった

 その様子も手伝ってか、そこはいかにもゴロツキが絡んできそうな風体を擁していていて人通りはあまりなかった

 陽光が当たらないせいかジメジメしており湿気独特の不快感がネロの体にまとわりついてくる

 かなり鬱陶しいが我慢するほかない

 ネロは黙ってヘスティアの後について行っていた

 そこから更に歩いていく事数分、ようやくネロを縦横無尽に連れ回していた少女の足が止まる

 その事にネロが気付き辺りを見回してみるとなんてことはない、先程までとそれほど変わらぬ景色が広がっていた

 

「ほら、着いたよ。ボクの友達のファミリアだ。キミをボクんちまで運んできてくれた張本人でもあるから、お礼を言っときなよ?」

「あぁ、それはわかった...が、こんなところに人なんかいるのか?そもそもここに来るまでだってほとんど...」

 

 と、言おうとしていたネロの目にそれまでとは違う変化が1つ、入ってきた

 それは控えめながらもしっかりと主張している看板であった

 その看板は少しばかり古ぼけていて、かろうじてそこに書いてある文字が読める程度だ

 "ミアハファミリア"

 ネロは違和感を覚える

 よくよく見てみれば今読む事ができたその文字は文字ではなかった

 否、ネロが知っている文字ではなかった(、、、、、、、、、、、、、、、、)

 それはネロが知るどこの国の言語とも違った形をしており、ネロの目にはまるで象形文字かの様に見えた

 そもそもネロの母語は英語なのだ

 なぜこの様な不可解な文字が読めているのかさっぱりわからなかった

 知らない、しかし読める

 そんな奇妙な気味の悪さを感じていた

 

「何ボーッとしてるのさネロくん、入らないの?置いてっちゃうぜ?」

 

 そう言いながらその場で立ち尽くしているネロの目の前で手を振るヘスティア

 それによって漸くネロの意識は思考の向こう側からこちらへと戻ってきた様で

 

「...そうだな、行くか」

 

 そう言って少し痛んだドアのノブをひねり、引いた

 ギィィ、と軋んだ音を立てながら開く

 "ミアハファミリア"の中へとネロとヘスティアは入っていった

 

 

 

 中は少しカビ臭く、お世辞にも綺麗とはいえなかった

 床には試験管などが散乱していた

 うっかりすれば踏んづけて転んでしまいそうだ

 足元に気をつけつつ店内を見渡すネロ

 ネロとともに店に入ったはずのヘスティアは友人のミアハとやらを探して店の奥まで行ってしまっており、まだ店内の暗さに目が慣れていないネロは入り口付近をウロウロとしていた

 棚がいくつか設置してあり、そこに深い青色をした試験管の様なものに入っている薬や、様々な試験管に入った試薬が置いてあった

 なんの用途に使うのか見当もつかない

 危ない薬か何かだろうか

 そう益体もないことを考えながらネロがそれを物珍しそうな目で見ていると

 

「それ...買うの?」

 

 ネロの耳朶をどこか気だるげな声が打った

 唐突に言葉を投げかけられたネロは少し驚いた様な顔をして声の出所を探す

 と、入り口の近くに設置されたカウンターの内側に女性が座っていた

 薬の方に意識を持って行かれていて全く気付いていなかった

 その女性は頬杖をついてこちらをジッと見つめており、ネロを見つめるその目はどこか眠そうに垂れ下がっており、その耳は犬のものであった

 

Dog!?(犬!?)

 

 人ならざる耳を持つその女性にネロは珍しく驚愕の声をあげる

 するとその女性はその声にうるさそうに目を細めてネロを見やると

 

「...元気だね、君。なんていうの?」

 

 一瞬何を問われているのかわからなかったが、自分の名前を聞かれているんだと理解し返答する

 

「俺か?俺はネロだ。アンタは?」

「ん〜、ナァーザ・エリスイスだよ、そんで犬人(シアンスロープ)。よろしく〜。ふあぁ...」

 

 ネロに自分の名前を告げると眠そうに大あくびを1つして机に伏せってしまったナァーザ

 彼女は商売をするつもりがあるのだろうか

 その様子を見てネロは心配になった

 そもそもなぜこんな人のこなさそうな裏路地に店を構えているのだ

 そこからしてすでにおかしい

 大通りに出ればいいのに

 答えの出ない自問自答をしていると

 

「ネロくんお待たせー!」

 

 そんな溌剌とした声が店の奥から聞こえてきた

 声の主は言わずもがなヘスティアである

 やっと店の中の暗さに慣れてきたその目で店奥を見やると、ヘスティアがこちらへ走ってくるのが見えた

 

「おい、そんな走ると...」

 

 ネロが言い終わるよりも早く

 

「ギャッ!?」

 

 案の定床に落ちていた試験管を踏んづけて転んだ

 額をしたたかにぶつけた様子のヘスティアは微かに涙を浮かべて起き上がる

 鼻も強打したらしくその形の良い鼻が少し赤くなっていた

 

「い、いたたた...な、なんなんだい、もう!」

「大丈夫か?ほら」

 

 ネロがそんなヘスティアに近付いて行き手を差し伸べると彼女は一変、破顔して

 

「ありがとう、ネロくん」

 

 そう言いながらネロの手をとって立ち上がった

 転んだ時の体についたホコリをパンパン、と手で叩いて払うと咳払いを1つして大仰な身振りで話し始めた

 

「コホン、えーっと彼がここまでネロくんを運んできてくれた恩人、ミアハだよ!」

 

 そういうのと同時にヘスティアの後ろから男が現れた

 その男の容姿もまたヘスティアのように整っていた

 肩まで伸びたその髪は不快感を一切感じさせるものではなく、むしろ1つの要素として彼の容姿の端麗さを際立たせていた

 彼は輝くような美しさではなくむしろ、さり気なく咲いている花のような美しさ

 そう形容できるほどのものであった

 

「ミアハだ。初めまして、ネロ」

 

 そう言ってその端正な顔に人当たりの良い笑顔を浮かべて自然な仕草でこちらに右手を伸ばしてくるミアハ

 そんなミアハに気圧されたのか

 

「...よろしく」

 

 一拍の間ののちに伸ばされたその手を握るネロ

 もちろんその右手(デビルブリンガー)

 ネロの顔には少しばかりの緊張が走っていた

 いつも傍若無人で余裕を崩さない彼に似合わぬ素行だ

 まあ相手が相手だけに仕方ないと言えば仕方ないのだが

 

「ん?この手...」

 

 ネロの右手を見たミアハの目が変わる

 その言葉に反応してネロが怪訝そうにミアハの表情をうかがうと

 それは子供が見たこともない生き物にあった時のような、好奇心に満ち溢れたものであった

 その視線のどこか薄ら寒いものをネロは感じた

 心の奥まで見透かされているような、そんな感覚

 それはミアハの神気に当てられたのか、はたまた緊張が見せた幻覚なのか

 それは本人ですらわからなかった

 

「ストップ、ストォーップ!自己紹介も終わったところだし、今日ミアハのところに来た目的を果たさないといけないねネロくん!」

 

 そう早口でまくしたててミアハとネロの間に割って入ったヘスティア

 その理由はもちろん、"ネロが悪魔であることを他の神々に知られないようにすること"である

 神々は不死である

 それは当然のことで周知の事実だ

 神殺しなど物語での話でしかない

 彼らには寿命という概念がない

 そんな彼らは刺激に大変飢えている

 何か面白いことがあれば飛びつき骨の髄までしゃぶり尽くす

 そんな連中なのだ、神というのは

 ミアハはそんなことないとわかってはいる、わかってはいるのだが今は面倒ごとを起こしたくない

 そうヘスティアはいち早く判断した

 ヘスティアにそう言われてネロはやっと当初の目的を思い出したようで

 

「あぁそうだった、今日はアンタに礼を言いにきたんだ」

「礼?礼を言われるようなことはなにもしてないと思うが...」

 

 キョトン、といった様子でとぼけるミアハはさっきまでとはうってかわって別人のようだった

 先程のはやはり気のせいだったのだろう

 

「いや、道で寝てた俺をヘスティアのところまで運んだのアンタだろ?なら俺にとっちゃ礼を言う理由は十分だ。ありがとな」

 

 緊張がほぐれたせいか口もよく回る

 軽やかになった口でミアハへの感謝の言葉を紡ぐ

 そう言われてミアハも思い出したのか

 手をポン、と叩き

 

「あぁ、あの時の青年か。私はたまたま居合わせただけだ。でも君をあのまま放置しておくことなんてできるはずないだろう。当然のことをしたまでだ」

 

 そう爽やかに言い放つミアハ

 その人柄のよさに感嘆しつつ、ネロはこの人物は信頼に足る()なのだろうなと十分すぎるほど分かった

 

「それじゃあ俺の気が済まない。何か困ったことがあったらなんでも言ってくれ。その都度飛んで行って馬車馬みたいに働くさ」

「それはありがたいね、でも今はあいにく馬には困っていなくてね、しばらくは厩舎で休んでいてくれ」

 

 ネロの軽口にそう返すミアハ

 軽口が通じる相手がネロは嫌いではない

 

「アンタとは気が合いそうだ」

 

 そう言って拳を突き出すネロ

 そのネロの突き出した拳に己の拳を合わせつつ

 

「奇遇だな。私もそう思っていたところだ」

 

 どうやらミアハも感じたことはネロと同じらしくそう言って今度は喜びの気持ちを満面の浮かべながら言った

 そんな2人をよそに、完全に置いて行かれたヘスティアは

 

「は、話についていけない...」

 

 ネロとミアハの男同士の会話に完全に置いてけぼりを食らっていた

 

 

 

 

 2人はミアハに別れを告げ、冒険者通り、ネロの倒れていた場所を歩いていた

 道の幅はかなり広く、朝ということもあり人もあまりおらず閑散としていた

 左右に立ち並ぶ出店の数々

 そこかしこに並ぶ看板に書いてある文字を目で追っていると"武具店"、"防具店"、"道具店"など、様々な店が所狭しとひしめき合って並んでいた

 これだけあるとどれに入ろうか逆に迷ってしまうだろう

 昼や夜は人でさぞ賑わうのだろうと容易に想像することができた

 そう考えつつあたりを散策していると

 

「ネロくんネロくん、キミ、ここに倒れてたんだよ」

 

 そうヘスティアがネロが倒れていた場所を教えてくれた

 そこを見てみると

 

「...What the fuck!?(なんだよこれ!?)

 

 ネロはそう驚くのも無理はない、そこにはクレーターができており、そのクレーターの中心にはネロとちょうど同じくらいかと思われるくぼみができており、そのそばにはこれまたレッドクイーンとブルーローズによく似た形のくぼみができていた

 これだけのクレーターを生じさせるほどの勢いでネロが地面と衝突したと考えるならネロの体は今頃木っ端微塵になっているはずなのだが、ネロの体には今の所なにも不具合は起きていない

 

「あれ?あの人朝倒れてた奴じゃニャイ?」

「あー!ほんとだニャ!シルー!朝の奴いるニャよー!」

 

 近くの店から少女の大声がネロの耳に届いた

 そちらの方に目を向けると2人の少女が立っていた

 彼女らの立っている店の看板には"豊饒の女主人"とでかでかと書かれていた

 その少女たちは2人とも幼げな印象ながらその顔はよく整っていた

 まあ神であるミアハやヘスティアとは比ぶるべくもないが

 しかしながら彼女らには共通した特徴があった

 それは"猫の耳が生えている"ことである

 さっきの犬人(シアンスロープ)のナァーザといい彼女らといい、人間ではない者をよく見る

 "異形"とまでは言わないが違和感を覚える

 

How horrible,(ったく)この世界はいったいどうなってやがんだ...」

「ネロくん、彼女達とは知り合いなのかい?なんか話題になってるみたいだけど」

「バカ言え、そんな訳ないだろ。初対面だ」

 

 そう不満げに呟くと、その"豊饒の女主人"の出入り口からまた1人出てきた

 その少女はその光沢に乏しい薄鈍色の髪を後頭部でお団子にまとめ、そこから一本の尻尾が出れていて、まるでポニーテールのようであった

 人懐っこそうなその顔に戸惑いの色を浮かべながら店の奥に出てきた少女

 

「もうっ、アーニャ、クロエ、あんまりサボってるとミア母さんに...って、あ!朝の!」

「遅いニャよー。それにしても朝の奴、じっとこっち見てるニャね?」

「そんなの見とれてるに決まってるニャ。言わせんニャ恥ずかしい」

 

 やいのやいの騒ぎながら好き勝手言っている少女ら

 全員ネロのことをよってたかって"朝の"としか呼ばない

 どれほど朝自分は目立っていたのだろうか

 

「...なぁ、アンタら、誰なんだよ?」

「そうだよ、うちのネロくんとどんな関係なんだい?」

 

 先ほどからネロを指差して騒いでいるその少女たちにとうとう話しかけるネロ

 ヘスティアがおかしなことを言っているがそれは無視しておく

 すると少女たちは会話するのをやめ、こちらを向くと、シルと呼ばれていたその少女が喋りだした

 

「気にさわっちゃったならすいません。朝のあなたの様子があまりにも衝撃的で...」

 

 チラチラとこちらの気色を伺いながらそう言った

 その目には申し訳なさがありありと浮かんでいてネロも毒気を抜かれてしまった

 

「ここ、豊饒の女主人の従業員、シル・フローヴァです。どうも初めまして、冒険者さん」

 

 そう言って一礼をしてくるシル

 ネロをなぜか冒険者と呼んでいることに疑問を覚えたがシルに倣うようにその両脇に立っている少女たちも自己紹介を始めたのでその疑問は頭の隅に追いやられた

 

「アーニャ・フローメルにゃ。よろしくニャン」

「クロエ・ロロですにゃ。以後よろしくニャン!」

 

 そう元気に自己紹介する2人

 

「ネロだ。ただのネロ。よろしく」

「ボクはヘスティア。初めましてだね、よろしく」

 

 端的に自分の名前を告げるネロとヘスティア

 お互いに自己紹介が済んだところでネロはひとまずふと気になったことを聞いてみる

 

「なぁ、さっきから俺のことを"朝の"って呼んでるけど、朝の俺ってそんなに目立ってたのか?」

「目立ってたなんてもんじゃないニャよ。ここら一帯でお前が倒れてたことを知らない奴はいないと思うニャよ」

「そう...ですね。かなり目立ってましたし」

 

 自分はかなり周囲の注目を集めていたらしい

 それもそうだろう

 道にでっかいクレーターができていると思ったらその真ん中に誰とも知らぬ男がいたのだから

 当然のことだろう

 

「朝、お店の掃除をしていたら外でドガーン!!って聞こえて、びっくりして外に出て見たらネロさんが倒れていたんですもん。ビックリしましたよ」

 

 どうやらネロの第一発見者はこのシルという少女らしい

 そんなシルの言葉に反応してクロエが

 

「シルがお前を店に運び込もうとしたのにはビックリしたニャ。みんなで止めたんニャけど、どうしてもって言ってて、大変だったんニャよ?まあ気付いたらいなくなってたんだけどニャ、お前」

「クロエ!なんでそれ言っちゃうのよ!もう...」

 

 クロエのその言に赤くなってうつむいてしまうシル

 この少女はネロを助けようとしていたらしい

 しかしその途中にヘスティアたちにとって奪い去られてしまったそうだ、ネロが

 自分の知らないところでそんなことが起こっていたことに少し驚きネロはひとまずシルに感謝を述べた

 

「いいや、恥ずかしがるなよ。助けようとしてくれてありがとう」

 

 そうシルを見て言って笑いかけるとシルはその白い肌をさらに赤くさせ

 

「どう...いたしまして」

「「ヒューヒュー!ニャ!」」

 

 ネロの感謝に返答するシルとそれを囃し立てる2人

 なぜシルが赤くなっているのかはよくわからなかったが、とにかく感謝しているのは本当だった

 自分なら道に倒れている奴なんか絶対に関わりたくない

 できるだけ面倒ごとなどに首を突っ込みたくないのだ

 

「本当に感謝してるんだ。俺にできることならなんでも言ってくれ。手伝うよ」

「え...?いやいや!私何もしてないですし、そんな恩返しされるようなことなんて...」

 

 顔も目の前で手をいやいやと振ってネロの申し出を断ろうとするシル

 

「助けようとしてくれたんだろ?その気持ちに礼がしたいんだ」

 

 ダメ押しにそう告げるとシルはその細い顎に指をやりしばし考えた後に

 

「うーん、それじゃあ、今晩ここ(豊饒の女主人)で晩御飯を食べにきていただくっていうのはどうですか?店の儲けにもなりますしネロさんも恩を返せますし一石二鳥だと思います!」

 

 名案を思いついたかのようにそう堂々と言い放ったシル

 そんなシルの様子にどこかキリエの影を思い出しながらもネロは

 

「...OK,んじゃあ今夜ここに来るよ。楽しみにしとくぜ」

「はい、待ってますね。それじゃあ、お気をつけて」

「とっとと金落としにくるニャー」

「そうニャそうニャー」

「もうっ、2人とも...」

 

 正直すぎる物言いの2人に苦笑しつつシルたちに手を振って豊饒の女主人を離れたネロとヘスティア

 次はどこへ行くのかネロがヘスティアに尋ねようとしたその時

 

「っ!?」

 

 後頭部に視線を感じてバッと身を翻して視線の出所を探すネロ

 しかしあたりを見回せど怪しい影は見えなかった

 そこには先程までと全く変わらない穏やかな朝の景色が横たわっているだけだった

 さっきと比べて通りに人が増えてきており、少しずつ昼に近づいてきていることが分かった

 

「どうしたんだいネロくん?」

 

 ネロの突然の行動に驚いたのかそう問うてくるヘスティア

 

「いや...なんでもない。視線を感じただけだ」

「...?君が大丈夫って言うなら信じるけど、何か感じたらすぐに言うんだよ?」

 

 ネロを案じるヘスティアの優しさを感じつつ今の視線に思いを馳せるネロ

 今のを言葉にして表現するならそう、ゾクリ、だ

 首筋を舐められたかのような、そんな怖気の走る感覚だった

 気のせいと終わらせてしまうにしてはあまりにも確実な感触だった

 しかし誰がやったのかは皆目検討がつかない

 したがって気のせいとするしかなかった

 視線と体を前へと戻し、しかしどうにも気になり後ろをチラチラと怪訝そうにうかがいながらネロはヘスティアと朝のオラリオを歩いていくのだった

 

 

 

 

 

「あら、気付くなんて鋭いわね」

 

 部屋の中に鈴の音のような声が響く

 広い部屋のその真ん中で1人の女神が下界を覗いていた

 その美貌はどの神よりも光り輝いたものであり、言葉の限りを尽くしたところでその魅力の端の先すらも伝えられないであろう

 あえて伝えるのであれば、"美の到達点"

 その顔のパーツは一人一人が完成されており、それがさらに黄金比とも言える配置でその顔の中に収まっていた

 パッチリと開きつつ切れ長で色香のある一度見つめられれば骨抜きになってしまいそうなその目

 スッキリと通っていて細いその鼻

 形良く桃色の細いその唇

 そしてそれらの印象に加えて大きく、更に見事な形をしたその胸

 それと対比するかのように細くしまっているその腰

 そしてこれまた見るものの目を捉えて決して離さない大きすぎず、しかし小さくもない男の理想が形となって現れたかのようなその臀部

 彼女の表情、身体全てが他人を魅了してやまない

 人類の欲する容姿の究極の形がそこにはあった

 誰しもが目を奪われてやまない彼女の興味は今鏡の中に注がれていた

 いや、正確にはその鏡の中に映し出された下界の様子であるか

 彼女のいる場所、それはオラリオでも際立って目立つ巨大で空高く伸びた塔のその最上階

 そこから彼女は下界を覗いていた

 それは神の力の行使であった

 本来なら許されないはずの地上での力の行使

 だが彼女にはそれが許されていた

 いや、黙認されていた

 その理由は彼女の美貌、説明はそれだけでも十分だろう

 

「ねぇ、オッタル」

 

 そう呼びかける彼女にその側に立つ大男が返事をする

 

「はい」

 

 返事をしたその男の体はまるで1枚の大きな岩のようなものであり、筋骨隆々という言葉がこれほど似合うものもそうそういないだろう

 その鋼の肉体は並大抵の攻撃など全く通じそうになどなく、むしろ攻撃した側が怪我しそうなほどだ

 精悍な顔つきの男だったが、本来耳が生えている場所に人間のそれはなく、変わりに猪のそれが生えていた

 彼は猪人(ボアズ)である

 女神に返事をするその声は低く重々しいものでありながらもどこか柔らかいものであり、敬愛する者(主神)に対する愛情がひしひしとにじみ出ていた

 そんな大男にその女神は

 

「あの子、気に入っちゃった。すごく眩しいんだもの。だから」

 

 そこで一度言葉を切り、芸術品と見紛うほど薄く綺麗な形の唇を舌で濡らし、もう一度その麗しい口を開いた

 

試してきて?(、、、、、、)

 

 その視線の先には銀髪が太陽の光を受け綺麗に輝いている青年の姿があった

 しかし彼女に見えている輝きはそんな表面上のものなどではない

 それは内面、つまり"魂"の輝きであった

 彼が目に入ったのは偶然、本当に偶然なのだ

 ふと下に目を向けた時にその視界に入っただけ、しかしその一瞬でさえ彼は女神の目を自らのその身に釘付けにしたのだ

 いや、或いはネロが彼女の目に止まるのは必然だったのかもしれない

 上面を見つめたまま繰り出されるどこか陶酔したように聞こえるその女神の言葉を聞き大男は

 

「はっ」

 

 とだけ、短く返事だけをして部屋から出て行った

 手に大柄な黒く無骨で、それでいてなお刃も厚く、触れるだけで斬れてしまいそうな特大の剣を携えて

 

 彼の名はオッタル、神フレイヤの寵愛を受けしLv.7、迷宮都市オラリオ最強の男であった




いかがでしたでしょうか?
誰か会話のうまい書き方を教えてください...
次回はオッタルとの戦いを存分に濃厚に書いていこうと思いますのでお楽しみに!
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