異世界で悪魔退治するのは間違っているだろうか 作:しゅーぞー
テストも終わり自由の身になったので今日から晴れてどんどん投稿して行こうと思います!
とりあえず今回はオッタルさんとの戦いが中心ですね
これが書きたかったぁー!
とりあえずやりたいことの1つを達成できて作者、大喜びでございます笑
それでは本編をどうぞ!
豊饒の女主人を離れてからしばらく
ネロとヘスティアは未だに冒険者通りを当てもなくさまよっていた
徐々に太陽はネロ達の頭上に達しつつあり、もう半刻もすれば昼になるであろう
涼しかった町も徐々にその温度は上昇してきており、その身に厚手のコートを羽織っているネロは暑さに少し顔をしかめて
「
そう言うとその身につけたコートをばさっと翻しつつ脱ぎ、その左手で持った
現在ネロはパーカーをきている状態であり、先ほどとは比べ物にならないほど涼しそうだ
さらに袖をまくり上げて暑さ対策万全と言わんばかりの姿となった
「そんなに暑いかい?こんな暑さでへばってたらこの先生きてけないぜ、しっかりしてくれよ」
隣を歩くヘスティアはなぜか涼しげにそう言ってのけた
何を言うか、と隣を見てなるほど、ヘスティアは元から薄布一枚しかその身にまとっていないのだ
それは涼しくて当然だ
「ズリいな。そんな格好してたらデブだって涼しがるぜ」
そう皮肉たっぷりに返してやると、ヘスティアもムキになったのかこちらを向いて
「なにをう!ボクが太ってるって言いたいのかい!」
「誰もそうは言ってないぜ?でもそうだって思うんならそうなのかもな」
「ムキー!!」
暑さのせいかヘスティアに応対するネロも気だるげだ
もともと彼はあまり暑さに強い方ではないのだ
いや、むしろ嫌いと言ってもいいだろう
「なあ、こんな暑いんだし言い争いはもうやめようぜ。こんなの疲れるだけだぜ」
「そもそもキミが吹っかけてきたんじゃないかい!まったく、本当にネロくんは...」
ネロのその面倒臭そうな物言いがさらに癪にさわったのか隣で小言を言いつづけているヘスティア
そんなヘスティアに対してうるさそうに眉をしかめるともう取り合うつもりはないというかのようにプイッと前を向いた
「あー!そっぽ向いた!そっぽ向いちゃったよこの子!やってはいけないことをやってしまったねネロくん!天罰が下るよ天罰が!
天罰だなんだと他ならぬ神が入っているサマはなかなか滑稽なものがあったが、如何せんうるさすぎる
その喋りの熱さにこちらまでも暑くなってきそうだ
「
とやかましいヘスティアを黙らせようとそう言おうとしたそのとき、ネロの目に"異常"が飛び込んできた
もう太陽は完全にネロの頭上まで登っており、堂々たる輝きを放っていた
それに伴って大通りにもかなり人が増え、ごった返していた
そんな中に見つけたのだ
体格の良い者が多く歩いているその中に
筋肉の鎧をまとう大男がこちらを鋭くねめつけているのを
下手に歩みを止めるわけにもいかず、ネロは歩き続ける
隣で騒ぐヘスティアの声などもはや聞こえてなどいなかった
全神経をその男に
その男の一挙手一投足に
ネロは今最高に集中していた
徐々に2人の間の空間がなくなっていく
もう10歩も歩けばその空間は完全になくなるだろう
歩く、歩き続ける
とうとう2人の距離がゼロになり、通り過ぎる
とその時
ブォン、と小さく体の後ろで音が鳴った
その瞬間
「
「わ、わわっ!?」
隣にいるヘスティアの頭を掴んで下げ、それと同時に自分も上体を倒す
いわゆるお辞儀の体制だ
轟!
と音を立てて自分たちの上を何か大質量の何かが通り過ぎていく気配がした
いや、ここまできたらそれはもはや確信だろう
ネロ達は今、謎の人物に襲撃されたのだ
周りの人々もようやく事情を把握したらしく、悲鳴をあげながら逃げていく
おいおい、誰も加勢に来ねえのかよ、ガッカリだぜ
そう口の中でだけ呟きながら次の瞬間
「
ヘスティアを掴み、地を蹴ってその男との距離をあける
そうしてようやっと全体像が見えたその男
最初の印象通りその身体が頑丈な肉の鎧に包まれており、ともすれば剣戟すらも跳ね返しそうにすら思える
強敵であることはもはや言わずもがなである
そしてその手には1.5mはありそうな巨大な剣がしっかりと握られており、さらに背中には同じ大剣がもう一振り背負われていた
「誰!?ネロくんの知り合いかなんかかい!?」
「残念だがいきなり街中で切り掛かってくるお友達に心当たりはねえな。誰だテメェ」
そう男に言葉を投げかけたネロだったが男が返事をすることはなく、男は再び剣をネロに向けて構えた
どうやら男はヤル気らしい
ならば、と背中に背負っているレッドクイーンに手を伸ばす
スカッ
手が宙を切る
何も手につかむことができない
本来ならそこにあるはずの
そうだ、ヘスティアの家に忘れてきたのだ
ネロともあろうものが
よりにもよって命よりも大切なはずの商売道具を
「...ヤベェな」
ネロのほおを一筋、汗が伝う
それはおそらくは暑さのせいではないだろう
一転して焦燥感に襲われる
レッドクイーンもないとなればブルーローズももちろん持ってきていない
武器として使えるのはこの右手だけだ
だが力任せに殴りつけたとてこの大男に通じるとは到底思えない
さてどうするか
そう考えた時、相手が動いた
ダンッ!!
少し陥没する程の力でもって地を蹴った男がこちらへ直線的に、爆発的に近付いてくる
その速度は尋常ではなかったが、これまで何度も死線を潜ってきたネロにはしっかりとその目に捉えることができていた
男は剣を後ろに降り下げ、そこから一気にこちらを切断しようと腕をこちらへ振った
常人ならざる筋力で振られたその大剣は物凄い勢いでこちらへ迫ってきており、ネロは一瞬息が止まるのを感じた
「っ!!」
上体を思い切り後ろへそらしブリッジのような体制をとったネロ
顔の寸前すれすれを巨大な鉄の塊が通過していく
猛烈な速さのそれはついでとばかりにネロの髪を何本か奪っていく
剣が過ぎ去った後ブリッジの勢いそのままにバク転して体制を立て直す
一回一回の攻防ですらこの危うさだ
得物すらない状態ではほぼ勝つのは不可能だ
すると男が構えを解いた
そして口を開いた
「...避けるだけか?」
「
そうおどけたように返すと男は意外な行動に出た
その背中に背負っていたもう片方の一振りをネロに向かって投げてきたのだ
投げられたその大剣はネロの目の前に突き刺さった
「何のつもりだ?」
それは純粋な疑問だった
ネロを突然襲ってきた張本人が武器を渡してよこしてきたのだ
疑問に思うのは当然であった
ネロが武器を持っていないのはむしろ好都合ではないのか
この男の目的が分からなくなる
ただの暴漢なのか?
「...本気で来てもらわねばあの方の命に背くことになる」
「あの方?」
あの方、とその男は言った
やはりただの暴漢などではなかったのだ
確たる目的を持ってネロに攻撃を仕掛けてきている
しかしそこまではわかってもその目的はさっぱりわからなかった
だがこちらに敵対する意思があっちにある以上ネロも自ら、ひいてはヘスティアを守るために戦わなくてはならない
自分の眼の前に刺さる大きな剣に目を向けそう結論付けるとその持ち手を左手で握り、地面から勢いよく引き抜いた
ガッ
と重厚な音を立てて引き抜けた大剣
その重さはレッドクイーンと同等か少し重いくらいで、自分にはちょうど良い重さであった
剣を何度かブンブンと素振りして感触を確かめてから肩にガツン、とかける
それから恭しく一礼してその右手を胸に当てる
「
男とネロとの戦いが本当の意味で今、始まった
先に動いたのはネロ
地を蹴り空へ飛んだ彼
落下の勢いを利用して男に剣を叩きつける
その顔には嗜虐の笑みが浮かんでいた
「らぁっ!」
勢いよく剣を男に振り下ろす
しかし
「フンッ」
男にそんな単純な一撃が通用するはずもなく
ガキンッ!
と耳を塞ぎたくなるような金属同士が擦れ合う音を立てて斬り結ぶ
上空から勢いを載せた斬撃を放ったはずなのに今ネロは押し返されていた
バッ!
身を翻して後ろへ飛ぶネロ
「この程度か」
「あぁ?」
馬鹿にした、というよりはむしろ少し怒りの色が混ざった言葉を男は紡いだ
少しカチンときたネロは荒々しく返す
「あいにく温室育ちなんでね。粗暴な筋肉バカとやりあった経験は少ないのさ」
皮肉にもかなりの毒が混ざっていた
もちろんネロは温室育ちでも喧嘩慣れしていないわけでもない
むしろ喧嘩はたくさんしてきた方だ
だからこそ男の物言いはネロの怒りを買うのに十分なものであった
しかしネロのそんな皮肉も意に介せずに男は
「あのお方の選んだ男がこの程度とはと失望しただけだ。弱きものは死ぬ、ただそれだけだ」
そう言って男がこちらに背中を向けて帰っていく
その背中は完全に脱力しきっており、ネロは自分の脅威になるなど全く考えていなかった
何かが切れたような音がした
「OK、そうかい。それじゃあ見せてやろうじゃねえか」
その言葉に億劫そうにこちらへ体を向けたオッタル
彼のその瞳はしかと捉えていた
その耳はしかと聞き届けていた
脆弱だと判断を下した男のその目が
キラリと一度真紅に染まるのを
そしてその口から発せられる声を
「
そしてその男の姿が
目の前から消えるのを
「
男は気付けば目の前まで迫っていた
頭で判断するより先に体が今までの経験をもとに動いていた
狙いは腹
そう判断し刹那のうちに剣を横にして防御体制をとったオッタルはしかし下から打ち上げられる勢いそのままに宙を浮いていた
一瞬状況が把握できなくなるオッタル
それは慢心によるものではない
単純に青年の力量を読み違えていた
確かにオッタルは最強であった
最強の男は神は知っていても悪魔の存在を彼は知らなかった
神に仇なす存在を
そしてやっと現在自分が宙に浮いているのだと把握したその頃には
「Double Down!!!!」
その腹に大剣が突き刺さっていた
猛烈な土煙とともに地面に叩きつけられたオッタル
その土煙からネロが勢いよく飛び出してくる
「チッ、仕留め損なったかよ。バケモノか?」
今の攻撃が有効打とはなっていないことを彼はわかっていた
もうもうと土煙がたっている
次第に薄れていくその中に
「....」
男は憮然として立っていた
つい数瞬ほど前にネロが剣を突き立てたその腹には傷1つなく、無傷なまま
前言撤回、やはりこの男は世界最強なのかもしれない
「...なるほど。先ほどまでの発言は撤回しよう。確かにお前は、強い」
「無傷で言われても説得力ゼロだぜ」
「いや効いたぞ、少しな」
「...バケモノめ」
あっけらかんと言い放つ男に辟易したように言うネロ
先ほどの攻撃は間違いなく全力で叩き込んだつもりだった
もし相手が上級の悪魔でも消し飛ばせるくらいの力を込めて放ったはずだった
にもかかわらずこの男は傷1つなくいまそこにたっている
はっきり言ってこの耐久力は異常だ
ネロがいうことではないかもしれないが普通じゃない
だが、攻撃は当たる
決して倒せない相手ではないのだ
それならばネロは
「来いよデク、相手してやる」
全力で叩きのめすだけだ
ネロが韋駄天のごとく飛び出すと同時に相手も勢いよくこちらへ駆けてくる
猛烈なスピードで距離を詰める2人
お互いに剣を振るう
ガキィン!ガキンッ!ガキッ!
剣を打ち合わせる
ネロが勢いよく剣を振るうのを男は受け流し、攻撃に転ずる
それをネロが身をかがめてよけ、仕掛ける
防御、攻撃、回避
その連続だった
「オラァッ!!」
裂帛の気合いとともに繰り出される斬撃
2人の攻防は次第に熱を帯び、激化の一途をたどっていた
1人の男がギルドに慌てて駆け込んできた
受付嬢、エイナ・チュールがそちらを見やると
「大変だ!冒険者通りで戦闘が起こってる!」
ギルドの職員、エイナ・チュールに切迫した様子でそう報告する冒険者
「冒険者通りで...?誰と誰が?」
そう聞き返すエイナ・チュール
彼女はこのオラリオの冒険者たちが集うギルドの職員で、主にダンジョンへ入っていく冒険者の手続きなどを行う受付嬢だ
彼女の耳は
そして澄んだ
セミロングのブラウンの髪は光沢を放っていた
美しいその容姿はエルフのように完璧に冴え渡っているわけではなく、どこか角が取れた風貌
細い体はギルドの制服である黒のスーツとパンツを綺麗に着こなしていた
仕事人然としていながらも親しみやすいともっぱらの評判の妙齢の彼女は、ヒューマンとエルフのハーフである
彼女のその返答を受け、いま報告してきた冒険者は少し緊張した様に早口で話す
「オッタルさんと、あともう1人はわかりません...銀髪の、多分
「...えぇっ!?オッタル氏とヒューマンが!?」
彼の報告の心底驚いたような顔をするエイナ
それはそうだろう、この都市最強と名高いオッタルが一般人と戦っているのだと聞いたのだから
いますぐ止めに行かなければいけない
相手が八つ裂きになってしまう前に
ギルドの職員にいま冒険者から聞いた旨を話し、同行してもらうことにした
(そもそも噂ではオッタル氏は冷静な人だと聞いてるんだけど...)
そう疑問にも思いながらギルドの職員を連れて急いで出ていくエイナ
表には大勢の人たちがおり、おそらくは件の2人が戦っている冒険者通りから退避してきたのだろう
ガヤガヤとしており、皆冒険者通りの戦闘が気になるらしい
しかしそんなことを気にしている暇はなかった
「すいません!ちょっと通してください!」
人混みをかき分け、冒険者通りを目指す
冒険者通りはギルドから近いところにあり、すぐにでも見えてくるはずだった
人混みを抜け、エイナが見たのは
「オラァァァァァ!」
鬼神の如く闘っている青年の姿であった
「オラァァァァァ!」
渾身の一撃を打ちこむ
が、効かない
危なげなく受け流されたネロ
そのまま何合か斬り結ぶ両雄
人ならざる速度で打ち合わされる斬撃を目で追うことは当人たち以外もはやその場の誰にもできなかった
「...すごい。オッタル氏と互角に...」
信じられないものを見る様な口調でそういったエイナ
それはそうだろう、彼は紛れもなくこの都市最強の男だ
その彼にいまどこの誰ともわからぬ青年が互角にやりあっているのだから
2人の攻防はさらに他者を寄せ付けないものになっていく
片方が力強く打ち込めば、もう片方は軽く受け流し、一瞬のうちに反撃をする
そんなことの繰り返しが起きていた
オッタルとここまで打ち合いをしたのは世界広しといえど彼だけなのではなかろうか
そしていま2人の剣が重なり合った
激しく鍔迫り合う
ネロが力負けし、飛ばされる
軽く吹き飛ばされた彼にすぐさまオッタルの剛腕とともに大剣が迫る
しかしながら常人が触れればひとたまりもなく吹っ飛び戦闘不能になる事請け合いであろうその一撃をネロは見切っていた
いや、見切っていたのではない
この大振りの一撃を
しかしその大振りの一撃ですら男の剛腕にかかれば凄まじい速度に変化する
そんな一撃をネロは
「
高速でその身体を一歩分後ろへと移動させただけで回避した
ネロの顔面すれすれをオッタルが握る無骨な剣が途轍もない風圧とともに過ぎ去っていった
ネロの銀髪がその吹きすさぶ風で揺れる
いとも簡単に己の斬撃を躱されたオッタルの目に驚愕の色が宿る
そのオッタルの目がネロを捉える
そこにはすでに両腕で剣を握り、まるでバッティングのような体制をとっている男の姿があった
視覚ではなく本能で危険を感じて防御姿勢をとろうとするオッタル
しかし先ほどとは違いその防御が間に合う事はなかった
次の瞬間には青年がもうすでに目の前にいたのだから
ネロはその手に握る大剣を下から猛スピードですくい上げる様に振り上げ
「
Shuffle
一度大きく後ろへバックステップで相手の攻撃をかわしたあと素早く踏み込み大振りの一撃を加える大技
そのネロの攻撃は今度こそ確かに、オッタルのその身に突き刺さっていた
「あぁっ、いいっ!すごくいい...」
甘美な声が部屋に響き渡る
人間も、神ですら虜にする彼女はいま
「あの子すごく...すごく綺麗」
口の端から涎すら垂れさせつつ女神は恍惚とした表情で熱心に鏡を覗いていた
そこでは彼女すら認める最強の従者、オッタルが青年に痛烈な一撃を喰らっていた
彼の輝きが一層増しており、もはや眩しいほどだ
手に入れたい
なんとしてでもあの青年を自分の手元に置きたい
可愛がりたい
愛情を注ぎたい
彼女の中にはいまその感情しかなかった
暗い部屋の中で美の女神はただひたすらに鏡を見続けていた
ネロは息も絶え絶えに見ていた
自分の攻撃を受けてなおそこに立っている男を
その顔は少し、ほんの少しだけ苦痛に歪んでいる様にも見えた
先の攻撃が男に与えたダメージは如何程だったのだろうか
効いたのか、効いていないのか
それすらもわからない
手応えはあった
だがそれだけだ
すると男は
「これで十分だ。また相見えることもあるだろう」
そう一言だけ呟くと跳躍した
屋根伝いに走っていく男の姿はすぐに見えなくなってしまった
あっけにとられたのはネロだけではなかったらしく、いつの間にか来ていた見物客も唖然としていた
うそ、あのオッタルさんが...や、あいつ一体誰だ?などの観衆の声も聞こえてきていたが、ネロはそれを一切合切シャットダウンしていた
そして観衆達のその中にはヘスティアの姿もあり、おそらくは保護されたのだろう
安堵すると同時に今までのはなんだったのだろうと思わずにはいられないネロ
「一体なんだったんだ?」
次の瞬間、観衆の大歓声が通りに響き渡った
いかがでしたでしょうか?
ネロくんのスタイリッシュさを引き出そうと誠意頑張った結果でございます笑
スタイリッシュさのその一部だけでも皆様に伝われば感無量ですね
そもそもネロくんをかっこいいと思ってこの気持ちをみんなにも知って欲しいと思って書き始めたものなんです笑
それでは改めてこれからの宜しくお願い致します!