二死二塁、打者は前の打席でタイムリーヒットを放っている雅、暮羽はピンチになってからギアを上げ、美代子と矢部を打ち取る。初回のような全力投球をしているが、2巡目からそれをしなかったのは、スタミナ不足によるものだと、雅は予測する。
雅は暮羽のストレートを見送って1ストライク。前の打席とは明らかに違うことをあらためて確認した。雅は2球目のストレートにバットを当てて、ファールボール。
「当たるぞ、雅!」
「いけー!」
ベンチ内からも応援の声がこだまするが、暮羽の投じた3球目に対して、雅のバットは空を切った。落差のある
フォークボール。スローカーブでもストレートでもない球種で裏をかかれ、連続三振となってしまった。
「っしゃあ!」
暮羽もマウンドでガッツポーズを見せ、このピンチを見事におさえた。
6回の裏、響がいよいよ、マウンドを踏む。塩原が彼女の元にやって来てサインを確認しあう。
「お前、球種はどうなんだ?」
「真っ直ぐと縦横のスライダー、サインは任せる」
塩原は守備位置に戻り、ナインに声をかける。
「しまっていこうぜ!」
「「「「オー!」」」」
佐藤監督がプレイを宣告すると、響は振りかぶって第1球を投じる。
「……!」
響が投じた初球、勢いのあるストレートは塩原のミットの上に当たり、弾かれた。
--今のボール、ホップしたのか!?--
塩原の疑念は次のボールで確信へと変わる。次の打者は高めに外れたボール球を空振りしたのだ。ホップするほどの伸びがなければあのコースには手が出ない。
2ストライクと追い込んだ響、塩原から送られたサインは縦のスライダー、コースは甘かったが、上への伸びに翻弄された打者のバットは空を切る。空振り三振で1アウト。
順調な出だしに思われたが、次の打者には、甘く入った横のスライダーをレフト前に運ばれてしまい、一死一塁。さらに続く打者への初球、縦のスライダーが1バウンドするワイルドピッチになり、得点圏へランナーが進んでしまう。
--変化球の制球は今一つだな、真っ直ぐを中心に見せ球程度に使うのがベターか--
塩原はリードの方針を立てながら、 響にサインを送る。ストレートでセカンドへのホップフライに打ち取り2アウト。
「オッケーオッケー、そのままの調子でのっていこう」
セカンドを守る茶来(ちゃらい)に響は元気付けられる。即席チームの中で彼は、持ち前の明るさでチームを盛り上げていた。
続く打者、投手の暮羽を迎える。茶来と暮羽はお互いを見合う。彼は響のストレートをピッチャー返し、二遊間を抜けるか、という当たりだったが茶来がこれを好捕、茶来のファインプレーでこのピンチをしのいだ。
--チッ、やるじゃねーか、伊達に治療費を出してもらった訳じゃねーな、だが、次の回で借りを返す!--
「茶来、ナイスプレー!」
「センキュー奥居、この回はオレにも回るからよろ!」
茶来と奥居がハイタッチをしながら、言葉を交わす。試合は終盤、7回表を迎え、この回の先頭打者奥居が打席へと入った。