season in the sun   作:Orfevre

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ランニング

「今日から本格的な部活動でやんす」

 紅白戦の翌日、放課後に更衣室へと向かう響と美代子に矢部が声をかけてくる。それから、彼は廊下を自慢の俊足で駆け抜けていった。

 

「うわー、綺麗になってる!」

「本当だね」

 女子更衣室に入ると昨日より片付いていることに驚く響と美代子、雅が部活のあとに掃除してくれたのだろう。女子部員が入る前に乱雑していたスコアブックやデータ集なども、綺麗に片付いていた。

「やっぱり、着痩せしてて羨ましいなー」

 美代子が響の着替えを見ながら呟く。謎の早着替えスキルですでに着替え終わってる彼女としては暇なのだろう。響が着替え終わるのを待ちながら、戦闘力を計っていた。

 

 響から声をかけられると、二人はグラウンドへと出ていった。ウォーミングアップを終えると、響は一人の男子に声をかけられた。

「西田さん、今日はロードワークにでないかい?」

 声の主は美輪駿英、響と同じ1年生投手。昨日の紅白戦では虹を描くような軌道のカーブで田中山を併殺に打ち取る活躍を見せていた。

 

「ロードワークに出るなら、オレがコースを教えないとな」

 その二人に声をかけてきたのは新月高校のエース左腕、暮羽鋭次。紅白戦では惜敗こそしたものの、明らかに実力はチーム内では抜けており、田中山と並ぶものがある。その暮羽に雅が声をかけてくる。

「先輩、ありがとうございます。先輩のアドバイスが役に立ちました」

 監督への恩義が強い彼は、後輩を育てることが、監督を甲子園へと連れていく近道と考え、雅を含めた後輩とも積極的にコミュニケーションを取っていた。

 

「よし、それじゃいくぞ。着いてこい!」

 雅が練習へと戻ったのを確認した暮羽は響たちを引き連れ、ロードワークへと出ていった。

 

--くそっ、意外と体力あるじゃねーか、だけど、息が上がってきたな--

「よし。この辺で引き返すぞ」

 暮羽は響と美輪の息が上がったのを確認してから、引き返そうとする。暮羽自身もすでにバテているのだが、後輩への見栄と意地だけで走り続けていた。しかし、その様子を逆方向から一人の青年にその様子を大笑いされた。

 

 新月高校と同じ、青いツバの帽子に青く書かれた「A」の文字、間違いなく、それはあかつき大付属の野球部であった。しかも、あの大笑いが証明するように彼は息を切らしていない。

「この地区で上位校とされている新月高校の投手たちがここでスタミナ切れとは」

「猪狩……」

 美輪はその男の名を口にする。

「美輪、キミはそこへ進学してたのか、だがここはあかつきと新月の中間より手前、明らかにボクの方が長い距離を走っているようだな、ん?」

 猪狩は美輪に嫌み全開で再会の言葉をのべると、響に気がつく。

--見知らぬ選手だが、この二人のランニングについていけてるなら、ただ者じゃないようだ--

 響のことを値踏みするように見つめている猪狩、それに気がついた響は彼に言う。

「何か用ですか?」

「ああ、済まないね、ボクは猪狩守(いかりまもる)。キミは?」

 守は自分の名前を響に告げると、響に名前を聞いてくる。

「私は西田響、よろしく」

「西田響、いい名前だな、おっと、そろそろ並走相手が追い付く頃かな」

 響から名前を聞いた猪狩がそういうと、彼の背後から一人の青年がやって来る。

「戸井、遅いぞ!」

 響にはその青年に見覚えがあった、かつて1打席勝負で完勝した相手、そして中学野球でMVPにも輝いた逸材。

 

 雰囲気こそかなり変わっているが、間違いなく彼は戸井鉄男であった。




戸井と響の再会は果たして彼らに何をもたらすのか?

次回も必見です!
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