season in the sun   作:Orfevre

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響ちゃんの里親の名前は
父が寿(ひさし)、母が美菜子(みなこ)。


入学式(1)

「行ってらっしゃい、響ちゃん」

「行ってきます。美菜子さん」

「ごめんなさい。仕事がどうしてもはずせなくて。寿さんがお昼休みにそっちに向かうけれど」

 ベージュのブレザーを着ている蒼みがかった銀髪の美少女、西田響は里親に見送られて高校の入学式へ向かおうとしていた。彼女が通うのは新月高校。

 

 新月高校は歴史こそ浅いものの、少人数教育による手厚い指導で確かな結果を残している新進気鋭の進学校であった。

 

 登校中の響に青い学ランを着こんだガラの悪い男子生徒が数人がかりで近寄ってくる。

「あ、君かわいいね。入学式なんかサボっておれたちと遊ばない?」

「その、困ります……」

 響は断ろうとするが、男たちは追求の手を止めない。

「新月高校なんて行ってもつまんないよ、とき青のおれたちが楽しませるからさ」

 その場を立ち去りたい響だが、人が多すぎるために、それができない。響としてはこんな不良連中に興味はないが、やはり相手はそういうのに慣れているのだろう。相手を逃がさないようなフォーメーションを組んでいる。

 

 そのとき、女性の声が聞こえた。

「やめなさいよ。あなたたち!」

 声のする方に男たちは振り向く。そこに立っていたのは、栗色の長い髪を春風に揺らす少女であった。彼女も響と同じ新月高校の制服を着ている。

 

「なんだ、やんのか?」

「でも、よく見ると君もかわいいね、どうせならまとめ……」

 不良たちの発言を聞いてその少女の目付きが変わった。先程までのふわっとした可愛らしい雰囲気も変わり、鬼神のような雰囲気を纏う。

「まとめられるのは……お前らだー!!」

 刹那、一迅の風と共に不良たちが1ヶ所にまとめられたように伸され、そこにはふわっとした雰囲気の少女と響だけが立っていた。響は少女から声をかけられる。

「だいじょーぶ?」

「は、はい。あなたの方は」

 パッと見では、怪我のひとつもないようだが、やはり、無事なのかは心配になる。

「あれくらいならだいじょーぶ、ミヨちゃんは大空美代子(おおぞらみよこ)。新月高校に入学する1年生だよ」

 

 新月高校に入学する1年生、ちょうど自分自身と同い年だ。響はそう思いながら、美代子に自己紹介する。

「私は響、西田響だよ。」

「響ちゃんだね、ミヨちゃんって呼んでよ。あ、急がないと……遅刻しちゃうよ!」

 美代子は学校へ向けて走り出す。響も遅刻せんとばかりに彼女を追って走り出した。

 

「セーフだが、次は気を付けろよ」

 ジャージ姿で竹刀を持ったいかにもアナクロそうな教師が、二人が駆け込んでくるのを見てそう呟く。なんとか二人は間に合ったのだ。

 だが、その教師も二人が全く息を切らしていないことには気がついていなかった。

 校舎の下駄箱前に張り出されているクラス割の表を二人は眺めている。

 

1年D組6番 大空美代子

1年D組7番 奥居紀明

1年D組8番 小山雅

……

1年D組25番 西田響

……

1年D組36番 矢部明雄

「うわぁ、同じクラスだねぇ」

「う、うん。そうだね」

 響と美代子は同じクラス、響と中学が同じだった矢部もどうやら同じクラスにいるらしい。響としては他人ではない人間が2人も存在することで幾分か気が楽になったような気がした。

 周囲の全員が他人、友達作りにおいて全員が同じ条件といえば聞こえはいいが、コミュ力の高い人間とそうでない人間にはあからさまな格差がある。中学時代の響も決してコミュ力の高い方ではなく、友達はそれほど多くなかった。

 

 体育館へと向かい、テンプレとも言える校長の長い挨拶があってから生徒代表の挨拶を行う。

「続いて、生徒代表の挨拶です。1年A組。紺野美崎さん。壇上へ」

 司会の声と共に、赤っぽい髪をツインテールにした小柄な女の子が壇上にたち、挨拶を行う。

 最後に校歌を流して、式は終了した。




新月高校校歌は次回の頭に載せています。気になる方はどうぞ
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