TCG初心者が遊戯王の世界に行くとこうなる 作:ねこののこと
―――どうしてこうなった。
よくネットでみるスラングだ。主に想像の斜め上をいく状況において使われる。
が、しかしだ。この俺、真田裕(15)が置かれている状況は想像の斜め上どころか、
真上にマッハで突き抜け大気圏外だ。オゾンの上だから問題しかない。
人生に於いて予想外のハプニングに見舞われることは多々あれどもこれほど意味不明
な状況になることも無いだろう。非日常系のライトノベルなんかはこうして始まるんだろうなぁ…やっべ、俺ってば主人公じゃないですかやだぁ! アレでしょ? 一話から
超絶美少女の裸見れるんでしょ? 楽しみですわぁ!
……さて、現実逃避はやめだ。そろそろ今の状況を確認するんだ。
時刻は、朝の7時を少しばかりすぎたところか。俺は自分で言うのもアレだが
朝は強い。毎日6時には起きていることを考えれば、遅い時間だ。だが、問題は
これから。まず、全く知らない部屋にいるんだが……おかしい。昨日の夜は、明日の
用意を済まして12時には布団に入った。それが、朝起きたら全く知らない部屋に。
考えられるとするなら、拉致。だが、待て待て。拉致されたとしてだ。こんなふうに
ごくごく普通の部屋に寝かされるか? 普通なら何処かに閉じ込められるのではないだろうか。だが、ここはごく普通の民家の一室。それは考えられないよなぁ。
「と、なれば。アレしかないな――――異世界転生、だ。いや、死んだ覚えがないから
異世界転移と言うべきだろうな」
拉致だとか記憶喪失だとか色々考えられるが、これが一番しっくりくるな。
思春期男子なら誰もだ夢見る現象だろう。そう考えたら、興奮してきた。
冒頭でライトノベルうんぬんを否定したが、これは期待してもいいのか!
「問題はここがどのような世界なのか。だな」
RPGでもまず最初に自室から探索は基本。傷薬とかやくそうが出るかもしれない
からな。俺はその鉄則に則り部屋を探る。まず手始めに机からだ。窓際に置かれた
ごく普通の学習机だ。机の上には教科書と、無造作に置かれている……これは。
「カード、ゲーム?」
なにやらモンスターのイラストと文などが書かれたそれは、カードゲーム。
TCG。トレーディングカードゲームと呼ばれる類のモノだろう。俺は、こういった
ものの経験がないので、やはりここは異世界なのだろう。だが、置かれているもの。
例えば時計やその他の家具が、俺の元居た世界の物と類似していることから、文化
などは変わりないのかもしれないな。言語も日本語だし。となると、平行世界とか
なのかもしれない。
机の上にはカードの山がいくつも立ち並んでいる。こいつどんだけカード持ってんだよ……。TCGをやっている友人に聞いた話では、TCGをやるには結構な金がかかるらしいが。そんなカード達を見るとその中でも目を惹かれたのは、このカード。
「こいつ、かっこいいな……なになに、《バスター・ブレイダー》、か」
剣を構えている剣士のイラストだ。なんというか、RPGに出てきそうで格好いい。
結構かっこいいじゃねぇか。このカードゲーム。ほうほう……なるほど。
……1時間後……
「うおーこんなやつもいるんだな。すげぇ……」
俺はすっかりこのカード達に惹かれていた。ドラゴン、剣士、魔術師。
かっこいいカードばかりで見ているだけでも楽しい。
ピピピピピピ……
そんな時、枕元で音がした。俺は「なんだ?」と思い、枕元をみる。
そこには携帯電話があった。ガラケーである。まだ生きておったか……
パカっと開くと、どうやらメールが入っているようだ。ガラケーの操作は
大体万国共通だったようだ。何となくでも弄れる。送り主には「母」とある。
文の内容は……要約すると、「受験大丈夫? 頑張りなさい」とのことだ。
「受験? そういや、この辺に……」
確か、さっき受験票的なはがきを見たな……あ、これこれ。
《デュエル・アカデミア 高等部入学試験受験票》と書かれたはがき。
「………はッ!?」
これ、日付が今日なんだけど! しかも集合、9時! 海馬ランドってどこ!?
「やばいやばい……行くべきだよなぁ」
宛名もしっかり俺の名前書いてあるし。けど、どういう原理だろう。
俺、今日この世界に来たんだよな……? 分からない。
「とりあえず行動だ! 持ち物は……書いてある!」
なになに、持ち物。デッキ、デュエル・ディスク、受験票、筆記用具……。
デッキとデュエル・ディスクって何だよ!? 訳が分からない単語が多い!
どうするか頭がショート寸前になっていると、再び携帯が鳴る。また、メールか。
だが、今度のメールは差出人の名前が空白になっている。無視する気にもなれずに俺は、それを読む。
「……デッキっていうのは、カードの束。机の上にケースに入って別にしてあるものが
ある? ……これか。んで、デュエル・ディスクは……この機械か!」
そのメールには俺の疑問に対する答えが全て書いてあった。
まるでそこで見られているかのように、だ。
「海馬ランドは電車で……まだ間に合うか。っし!」
俺は、学生服に着替え準備を済ませると家を飛び出した。
「チュートリアルなしとか、きつすぎるぞ!!」
だが、これが新しい始まり。なら、やる他ない!