もしも隣人部に友達の少ないヲタクが入部したら⁉︎ 作:中井 修平
ある日、3限と4限の10分休み。
トイレに行く為廊下を歩いていると、弁当箱を持った小鷹とすれ違う。
「おっ?早弁か?小鷹」
「あ、裕翔。いや、ちょっとマリアに弁当を届けるところ。マリア、ポテチばっかり食ってるから健康に悪いだろうって作って来たんだ」
小鷹は持っている弁当箱について説明する。
隣人部の顧問の幼女シスターへの昼飯らしい。
「ほーん」
「んじゃ、また部活でな」
「おう、また後でな」
小鷹はそれだけ言うと、礼拝堂に向かって歩いていく。
小鷹を見送ってトイレで用を足し、教室に戻って次の授業の準備をする。
昼まで後1限、放課後までまだ3限はある。
授業の時間が後5分でやって来る。
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「という訳で、小鷹が早弁しているという噂が流れたんだが」
部室に着くと、窓際で本を読んでいた夜空が小鷹に聞いている。
俺はソフトケースを置き、いつもの席に座る。
星奈はいつも通りテレビの前を陣取ってギャルゲに興じているし、幸村は皆にお茶を入れて回っている。
この間入った理科はパソコンで何やらやっている。
暫く理科を観察してみたが、最初の印象とは違い、良く考えると悪い奴じゃ無い。
ただ余りにもハッチャケすぎているので言動が目立つ部分は多々あるが、そこそこまともだ。
もちろん理科には俺の趣味を打ち明け済みだ。
苦い顔をしている小鷹に幸村がお茶を淹れて持って行く。
「もうしわけありませんあにき、わたくしのさしいれがたりませんでしたか?」
「い、いや……ありがと」
小鷹が幸村からカップを受けとる。
「いや、聞いてみたら、小鷹はマリアに弁当を持って行っているだけみたいだぜ」
「どうだか……」
夜空は余り信じていない模様だ。
そこへ、ガチャ、とドアを開けてマリアが入って来た。
「お兄ちゃん!」
マリアはそう言いながら小鷹に駆け寄り、腕に抱きつく。
「あのな、お弁当超うまかったぞ⁉︎あれに比べたら夜空のくれるポテチなんてう○こだな!う○こしかくれないう○こ夜空のバーカバーカ!」
「あ"あ"ん"?」
マリアが小学生レベルの"わるくち"で夜空を罵るが夜空はそんなマリアを黙らせる。
まぁマリアは実際小学生レベルだしな。
「ひっ!嘘でした!ポテチも美味しいです!」
「ふんっ!」
「幼女に"おにーちゃん"と呼ばせるなんて、小鷹先輩は妹萌えの人だったんですか?」
「俺が呼ばせてる訳じゃねーよ……」
理科はそんな小鷹を揶揄うが小鷹はそれを否定する。
「小鷹は実はお兄ちゃんだから、私もお兄ちゃんと呼ぶのだ!」
「小鷹、お前やっぱロリコンだったのか。ロリコンは病気だからな、早めに治せ」
「ちげーよ!」
俺はそう言葉を投げ、小鷹はまたそれを否定した。
と、そこに星奈がプレイしているギャルゲのBGMが流れてきた。
「あぁ……ゲームの中に入れたら良いのに……」
星奈はそう呟くと、夜空があからさまにドン引きする。
それを察したのか、星奈は顔を赤らめて弁明を始める。
「あっ、ち、違うわよ⁉︎今のはただの冗談って言うか、言ってみただけだからね⁉︎」
ばっ、と星奈はテレビに視線を戻す。
「そういえば、2次元に入るには自分を微分すれば良いらしいけど、現実世界にちょっと自分を残しておかないと積分で戻ってこれなくなるらしいな」
「それはどうでしょうかね……人体を微分する技術はありませんから……星奈先輩、ゲームの世界に入れるとまではいきませんが、似た様な体験が出来るゲームなら持ってますよ?」
「本当に……⁉︎」
理科が俺の言葉に反応し、星奈に語りかける。
「何でそんなの持ってるんだ?」
「開発のお手伝いをしていたら、試作品を頂きました。やりますか?」
「やる!やるわ!」
「わかりました!それじゃ、準備してきますねー?」
理科の提案に星奈が物凄い勢いで食いつき、理科がそのゲームを持って来るため一時退室する。
皆で理科がそのゲームを持って来るのを待った。
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「お待たせしました〜」
と、理科が段ボール箱を抱えて部室に戻って来た。
机に置くと、理科がパソコンを取り出してプログラムのセットを始める。
その間に小鷹は段ボールを開けて中のものを漁る。
「これを装着するのか……」
「おっ、
「その通りです!世界のラージハード社から、満を持して世の中に送り出される"かもしれない"、ヘッドマウントディスプレイの最新型。そしてこれが、同時発売される予定の専用ソフト!」
と言って理科はポケットからCDロムを取り出す。
「3D対応、超大作ファンタジーRPG!ロマンシング・佐賀 14の体験版です!」
ババーン!と効果音が付いているかの様に理科はそのソフトを掲げた。
「何で佐賀?」
「会社が佐賀県にあるからです」
星奈の問いに理科が答える。
何て安直な……
取り敢えず、皆でそのゲームをプレイしてみることにした。
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ヘッドマウントディスプレイを装着し、こめかみ部分にあるスイッチを押すと電源がオンになる。
そのあとでUSBハブに通じたコンピュータの方にCDロムを挿入し、理科がプレイの準備を行う。
電源を入れるが、まだ目の前は真っ暗で何も見えない。
マリアが装着した状態で何も見えないと言うと、理科はソフトの立ち上げ中だと言ってコンピュータを操作する。
暫くすると、BGMと共にLargehardのロゴが現れ、画面とBGMが切り替わりオープニングに入る。
目に映ったのは大自然、そのグラフィックの高さに皆が驚き、感嘆の声を上げる。
確かにこのCGは凄く迫力がある。
ナレーションが始まる。
『佐賀……それは最後のフロンティア』
「何でだよっ!」
小鷹の突っ込みは皆で流し、プロローグは進む。
『時の佐賀県知事は、この世界に終止符を打つべく、異世界から魔王を召喚し、その力で世界を滅亡させようと企んだ』
「オープニング長いので飛ばしますねー」
理科がオープニングを飛ばし、ロード画面に変わる。
「ちょっ!佐賀県のヴァルハラ城が超気になるんだけど⁉︎」
星奈はオープニングが気になる様だが、理科は構わずゲームの説明に入る。
「まずはキャラメイクですが、選ぶのは職業だけです。好きなのをどうぞ」
「うぅ〜、ヴァルハラ城……」
残念そうに声を上げた星奈だったが、そんな事を気にしていたらゲームは始まらん。
俺も職業を選択していく、操作は手元のコントローラで行う。
幾つかの選択肢があったが、俺の目にとまったものが1つあった。
"特殊部隊"
「おいおい、特殊部隊って……ファンタジーに良いのか?こんなの」
「ええ、裕翔先輩はそれ絶対選ぶだろうなぁと思って、体験版の設定を少しだけ弄りました。どうです?」
「めちゃくちゃありがたい」
俺は躊躇なく特殊部隊を選ぶと、視界が開けて平原が広がる。
「おおお……」
「何だ⁉︎すげぇ格好だな……」
既にログインしていた理科と小鷹が言葉を交わしていた。
確かに理科は胸当てにホルスター、ブーツと言った西部のガンマンの様な姿をしている。
対する小鷹は所謂"ヲタク系"ファッションで、背負っているリュックにはポスターらしき紙の筒が2本クロスして刺さっている。
「理科はガンナーを選んでみたんですけど……」
「それ、コルト・シングルアクション・アーミー"ピースメーカー"だな」
「おおっ⁉︎裕翔すげぇなその格好!」
俺が理科のホルスターの拳銃を記憶の中から探すと、小鷹が俺に気づく。
「ガンナーを選んだらこうなりました。メニューから装備を選べば、自分の姿を確認出来ます」
俺はメニューから自分の装備を選ぶ。
小鷹は自分の姿に驚いた様だが、俺は想定内だった。
まず武器はSCAR-L Mk16自動小銃、特殊作戦用アサルトライフルとホルスターにP226が入っている、どちらも良いチョイスだ。
しかも、SCARはEOTech553ホロサイトとinsight M3Xフラッシュライト、Tangodown BVG-ITIフォアグリップでカスタムされている。
そしてプレートキャリアの右脇には2つの手榴弾、MK3A2攻撃手榴弾とM67破片手榴弾と思われる物が1つずつ。
プレートキャリアはLBT-6094Aをモデルにしており、腹部の3つのマグポーチには予備弾倉が3本、胸部には拳銃の予備弾倉が2本入っている。
そして左脇に多目的ポーチと、背中側にメディカルポーチがある。
暗視装置は多目的ポーチの中に入っていた。
戦闘服はエルボーパッドの組み込まれたコンバットシャツと、ニーパッドの組み込まれたコンバットパンツ、ブーツは
まぁここまでは良いのだが……問題は背負っている2つの巨大な得物だ。
AT-4CS使い捨て無反動砲と、M240E6汎用機関銃……凄い重装備だ。
「良くこれ知ってたな……」
「調べましたので……ちなみに段数は気にしなくていいですよ、機関銃は無限ですし、ライフルには30発入っていますがリロードで復活します、拳銃も同様ですし、ロケットランチャーも戻せばまた使えます」
軍隊にしてみれば夢の様な能力だ。
要するに、小銃は30発撃ち切るとリロードで復活、捨てた予備弾倉はまた弾薬が満タンになった予備弾倉としてポーチに復活するという。
拳銃には15発、この辺は凄く忠実に出来ていて良い。
「俺は魔法使いを選んだはずだぞ⁉︎」
メニュー画面外から小鷹の叫びが聞こえたのでメニューを閉じて視線を戻す。
まぁ、ヲタク系ファッションだからそら驚くわな。
「ネットには30歳まで童貞を守り続ければ、魔法使いになれるという都市伝説がありまして、見事魔法使いになった男の姿です」
「そんな魔法使いは嫌だ……しかもこいつ魔法覚えてねぇし!設定弄ったのならこっちも変えてくれれば……」
「裕翔先輩のキャラを増やすのに時間かかっちゃって……」
理科の説明に落胆する小鷹、哀れ……
見事に武器も魔法もない役立たずの烙印を押されてしまう。
「でも、童貞を守り続けた強さはあるはずですよ?」
「そ、そうか?」
「まぁ、攻め込んだ事の無い兵士だけどな」
理科の励ましに若干の希望の光を見いだそうとしたが、俺がとどめを刺して叩き潰してしまった。
再び崩れ落ちる小鷹。
「何あんた達、その格好」
振り向くと、職業選択の終わった星奈が立っていた。
相変わらずこいつは刺激の強い格好をしている……何せ胸にはサラシを巻き、下は水着の様な格好をした上にニッカボッカの様なオプションを履き、安全靴を履いている。
しかし武器が特徴的、めちゃくちゃデカいハンマーを担いでいた。
「……人の事の言えないぞ星奈」
「え……?ちょっと待って……」
俺がそれを指摘すると、慌ててメニューを開く。
「はぁ⁉︎何よこれ!あたしは鍛冶屋を選んだのに⁉︎」
「言われてみれば鍛冶屋っぽいな」
「違うわよ!鍛冶屋ってのはもっと洗練された服を着て、魔法で呼び出した刀で、華麗に敵をやっつける!」
刀を横薙ぎに振るう仕草をすると、サラシに巻かれた胸が揺れる。
「どこの世界にそんな鍛冶屋が居るんですか……」
「はぁ……失敗したわ……こんなの、あたしに1番似合わない職業じゃない……」
星奈はハンマーを地面に突き立て、愚痴をこぼす。
そこに夜空が登場する。
「グズグズ言うな!肉!」
夜空も凄い格好をしていた。
端的に言えば、頭に薔薇を咲かせた全身タイツである。
あいつ、バラ少女を選んだな……
「開発者が適当に作ったっぽいですね……でも、攻撃力や魔法防御など、かなり高く設定されています」
「ふん、強いなら、まぁ良いか」
と言って飛び跳ねる。
「それ……気に入っているのか……」
「ふん」
「頭のそれ、重く無いのか?」
「特に思いとは感じ無いな……魔法の影響もあるかもしれない」
俺が頭の薔薇の事を聞くと、特に重くないという。
見た目4キロちょいありそうだが……
「あにき、わたくしのはどうですか?」
「まぁその……強そうだな」
今度は幸村が現れ、小鷹が幸村を褒める。
「幸村さんはサムライを選んだんですね」
「サムライっつーより鎧武者だろそれ」
俺がツッコミを入れる。
兜を被って鎧を着け、刀を持つその姿はまさに鎧武者だ。
サムライ……とは違うな。
「あぁ、で、星奈と幸村と夜空が前衛で、理科と裕翔が遠距離攻撃で、俺は……?」
「小鷹先輩は役立たず、ですね」
「俺は役立たずか……」
2度目の役立たずの烙印、もう慣れた様だ。
「俺は背中にメディカルポーチあるから回復も一応出来るが、専門の奴は?」
武器の都合上、俺が回復役をやる訳にはいかない……
「私が居るのだ!」
聞き覚えのある声。
「マリア?」
マリアを見た瞬間、既視感を覚えた。
白いシスター服を着たそれは、完全にとある○○の禁○目録のイ○デ○クスのそれだ。
唯一違う点は、魔法の杖を持っている事だけだろう。
「マリアさんは"シスター"を選んだんですね、回復系の後衛です」
「にしてもどっかで見た様な……」
小鷹も同じく既視感がある様だ。
あー、これは、気にしたら負けという奴だ。
「神の使徒は、いつでも神の使徒なのだ!ははは!」
「皆揃った様だし、そろそろ行くか」
夜空の一言で、ゲームを進める事になった。
次回も裕翔の趣味前回でいきます、お付き合い下さい。