もしも隣人部に友達の少ないヲタクが入部したら⁉︎ 作:中井 修平
現在時刻10:00、俺は部活に行く為の準備をしていた。
学校指定の夏服に袖を通し、夏用ズボンを履く。
いつものブーツに足を入れ、紐をしっかり縛る。
リュックの中には夏休みの課題、そしていつものソフトケース。
ソフトケース、リュックの順に背負う。
玄関のドアを開けると、熱風が吹き込んできた。
「クソ暑い……」
玄関の鍵を閉め、自分の自転車にまたがる。
自転車___CANAFF CT700のペダルを漕ぎ、学校を目指す。
学校まで大体4km、住宅街を抜けて田園地帯の真ん中を通り、市街地をかすめる。
途中のコンビニで昼飯を調達。
市街地から学校までは長閑な風景が続き、セミの大合唱の中、風を切って走るのが気持ち良く感じる。
柏崎邸の前を通ると、学校までは道一本だ。
この道、結構好きだったりする。
いつもの登校の様に自転車を駐輪場の駐輪機に停め、玄関___は通らず礼拝堂へ。
礼拝堂は一般公開されている施設なので土足で出入りが出来るのだ。
正面のドアが礼拝堂、談話室4は右の廊下の突き当たりだ。
ゴツゴツと履いているブーツが床を叩き重厚な音を奏でる。
「おーっす、っすぅ?」
ドアを開けた瞬間、涼しい空気が廊下へ流れ出る。
既に幸村が来ており、マリアはソファーに座ってポテチの袋を開けようとしていた。
「おつかれさまです、裕翔のあにき」
「この部屋冷房かけてんのか」
幸村はいつも通りメイド服を着てフラットな声で俺を労う。
廊下へ逃げようとする冷気を遮ってドアを閉め、リュックを下す。
「……うわぁ……」
リュックを背負って自転車を漕ぐため背中が汗でびっしょりだ、ベージュのワイシャツは少し色が変わってる。
「どうぞ」
「あぁ、ありがとう」
幸村が乾いたタオルを手渡して来た、礼を言って受け取り、体を拭く。
「背中はわたくしが」
「え?良いのか?」
「良いのです、お任せを」
「じゃあ頼む」
背中を拭いてくれると言うのでありがたく拭いてもらう。
暫くシャツは着ない方が良いな……風邪ひく。
「そうだ、持って来てたんだった」
「?」
背中を拭いてもらうと、俺はソフトケースの中から1枚の衣類を取り出す。
サバゲー用に購入したコンバットシャツだ。
「めいさいふくというものですか?」
「あぁ、コンバットシャツだ。1着4万するんだけど無理して買っちまった、快適なんだぜ」
俺は頭からコンバットシャツを被る。
これで一応風邪をひく心配はない。
コンバットシャツはボディーアーマーを着ることを前提としている為、胴体部分の生地が薄く無地のベージュだ。
その為着ると、筋肉が浮かび上がる。
「……裕翔のあにき、鍛えてますね」
「いや、そんなでもないけど……」
その時、部室のドアが開く。
入って来たのは星奈だった。
「……誰?」
「裕翔だよ」
「あぁ、裕翔。どうしたのよそれ」
俺が着ているコンバットシャツについて質問される。
「着てきたワイシャツが汗で濡れてな、風邪引くかもしれんから持ってきたこれ着てる」
「持って来たの……」
星奈はそのまま鞄を置いて床に座り、TVとプレ3の電源を入れる、またゲームを始めるらしい。
「お前も懲りねぇなぁ……」
「お互い様でしょ?」
「確かに」
俺と星奈は笑いあう。
とりあえず、課題は進めようと思い、リュックから夏季課題を取り出す。
英語の課題はもう4分の3は終わったし……数学に手をつけ始めるか……数学苦手なんだよな……
思いつつ、課題であるワークをやり始める。
教科書を参考に、わからない点は参考書や解答を……
「……〜〜わかんねー……星奈ぁ!」
「んー?」
俺はゲームを始めた星奈に声をかけた。学年1位の頭脳を誇る星奈だ、これ位は簡単だろう。
「ここわかんねーんだけど……」
「ここ?これはここを代入して表を出すでしょ?それからグラフを書けばいいのよ」
「頂点は?」
「こことここ、注意する点は増減ね」
「あー、なるほど。わかった、ありがとう!」
「この天才であるあたしに感謝しなさいよね!」
流石星奈、問題を見ただけで解き方を……そしていつもの調子だ。
俺はたまに星奈の助けを借りつつ、課題を進めていった。
時計の針が13時を指し、コンビニで調達した昼飯をちょうど食べている時、夜空が部室に来た。
「ん?裕翔……と、肉か……」
「おう、夜空も来たか」
「何だその格好は……」
「来るまでにワイシャツが汗でビショビショになってな……そのまま着ると風邪ひくから乾かしてる間にこれ着てる」
「ふむ……」
夜空はそう素っ気なく返事をすると、窓際のいつものポジションに腰をかけて本を読み始めた。
俺もこの課題は既に3分の1を終えた、このワークを半分まで……いや、それは明日でいいや。
夏休み前半には課題は全部終わりそうだ。
「〜〜あぁ、終わりっ!」
「もう終わったのね……」
「残りは後、さーて遊ぶぞー」
俺は持って来たソフトケースからライフルを取り出す。
冷房が効いているとは言え、夏のこの気温、ガスブローバックは絶好の気温だ。
安全装置確認!マガジンに弾が入っていない事確認!薬室内確認!弾は無い!
マガジン装填!チャージングハンドルを引く!
ヂャキッ!
チャージングハンドルはボルトを内部で引っ張り、バッファチューブ内のリコイルスプリングと共にボルトを後退させる。
チャージングハンドルから手を離すと、スプリングの力が解放されてボルトを元の位置へ押しもどす。
本来ならボルトストップがかかるが、そこを俺が押さえている為自然にボルトが戻る。
「あぁ……この音と感触がたまんねぇ……」
「うるさいぞ裕翔」
本を読んでいた夜空に小言を言われるが、仕方ない、俺はこの音と感覚が気に入ってるんだから。
「悪い悪い、でもこれが良いんだ……」
そう言って俺は暫く、その感覚を楽しんだ。
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「ふぇー……生き返る……」
15時くらいに小鷹が部活にやって来た。
今日は理科は来ていないが、それを除けば最も遅い出勤である。
「おつかれさまです、あにき」
「遅いぞ小鷹」
「いつも部活に来てる時間だろ?」
「まぁ、集合時間は言われなかったからな、仕方ないか」
俺は小鷹にフォローを入れる。
確かに集合時間を言われなかった為何時に集合するかはわからなかった。
小鷹は幸村に何時に来たか聞き、幸村は小鷹にお茶を出しながら答える。
「8時くらいです、あにきにおくれるようなことがあれば、せっぷくものですゆえ」
「そんな覚悟で部活来てんのか……」
「本日のお食事です」
と言って幸村は小鷹にコンビニパンとパックジュース、漫画雑誌を差し入れる。
「いや、飯食ってきたから……てか、夏休みまで俺の飯用意しなくて良いぞ」
「そ、そんな……わたくしはふようなそんざいということですか……かくなるうえはせっぷくしてはてるしょぞん……!」
「待て!お前必要!超必要だから!」
見てて面白いなこの2人……
その後マリアが寄ってきてパンをマリアにあげていた。
俺は変わらずライフルを弄る、たまに構える。
と、星奈がゲームをやっているのがふと目に入る。
「星奈ー」
「何よ、今ちょっと良いとこなんだけど!」
「あぁ……そか……」
邪険にされてしまった。
「戦場3」のランクがどこまで行ったのか聞きたかったんだけどなぁ。
「ふっ、裕翔。お前は相変わらず肉のゴマスリをやってるのか?」
「今のどの辺がゴマスリにみえたんだよ……お前もやるか?戦場」
「遠慮しておこう、私が強すぎてつまらなくなるとこまるからな」
「無理無理、絶対無理、リアルなシューティングで俺に勝ってから言え」
俺がそう言うと、夜空がムッとする。
「……良いだろう、私のセンスにひれ伏すといい」
「望むところだ」
俺は夜空の宣戦を受け入れた。
しかし、今ここには決闘を出来るだけのものが揃っていない。
後日という事になり、また今日も時間が流れていく。
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次の日、俺はいつもの様にソフトケースとリュックを背負って学校に向かう。
しかし、昨日とは明らかにケースの重さが違う。
ゴーグル、弾、ガスからほぼ全てが入っているからだ。
「……雨降りそうだな……カッパ持っていくか……」
天候が心配な為、カッパを持って自転車に乗った。
昨日と同じコースを走り、コンビニで昼飯を調達。
店員さん、頼むから怯えないで……強盗じゃないから……
学校に到着、昨日と同じく幸村がもう来ていた。
しかし、来ていたのは幸村だけでなく、小鷹もいたのだ。
「あれ、小鷹もいる」
「いちゃ悪いかよ」
「冗談だ。早いな」
「あぁ、昨日来た時は遅いって言われたからな」
時計の針は13:00、夜空が昨日来ていた時間だ。
俺は昼飯を食べ、暫く課題に没頭する。昨日の夜にもやっていたおかげで英語はもう直ぐ終わりそうだ。
「……そうだ、幸村」
「なんでしょう、裕翔のあにき」
ソフトケースの中の存在を思い出した俺は、幸村に声をかけた。
「真の男になる為の訓練、"闇夜に霜の降るごとく"って知ってるか?」
「いえ、そのようなくんれんはきいたことはありません。しかし、しんのおとこになるためにはやらねばならぬしれんのようです。どのようなものですか?」
食いついた食いついた。
「要するに狙撃手の訓練だ。幸村は動き回り……って感じじゃなさそうだからな」
「狙撃手⁉︎」
今度は小鷹が反応する。
まぁ、物騒な単語だし無理も無い……
俺はそう言ってソフトケースからライフルを取り出すと小鷹は、ああ、それね、と納得した。
俺が取り出したのは、VSR-10___又の名をレミントンM24。
レミントンM24スナイパーライフルをモデルにしたこの銃で、幸村を男にしてやろう、ということだ。
男じゃないがな……
小鷹もやってみたいという事で、一緒にやる事になった。
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今は使われていない旧校舎の廊下の奥に3つのアルミ缶が置かれている。
自販機で変えるジュースの空き缶だ。
その後ろには要らない段ボールが置かれている。
そして、廊下の反対側40mに、俺達が居た。もはや缶ジュースのラベルに書いてある字など読めない。
「流石に遠くないか?」
「あぁ、大丈夫大丈夫」
俺は
十時の
「すーー、はー……」
息を吸って、少し吐いて止める。そして引き金を絞り___
ボッ!
カァン!
「「おぉ〜」」
「サプレッサーつけてると弾道がちょっとブレるけど、後は慣れと腕を上げればこんな感じだよ」
やってみ、と言うと小鷹からチャレンジするらしい。
腹這いになって構える。
引き金を引く。
「あ、あれ?」
「どうした?撃てない?」
「あぁ、弾が出ないんだけど」
「あ、それボルトアクションだからだよ。セミオートならバンバン撃てるんだけど、それは精度重視だからな。映画とかみたいにレバーを起こして再装填してみ」
俺がやっておけば良かったのだが、すっかり忘れていた。
小鷹はボルトハンドルを起こし、手前に引いて押し込み、ハンドルを再び下げる。
そして再び引き金を引いた。
ボッ!
タン!
外したらしい。廊下の奥の段ボールに弾が当たる。
「あれ……当たらない」
「狙撃は意外と難しくてな、スコープの十字と自分の呼吸を合わせないとだから。あとは引き金は絞ること」
「なるほど……もう1回!」
どうぞ、と言うと、小鷹はもう一度コッキング。
ボッ!
カィン!
「命中確認」
「おぉ、当たったか!何かこう……良いなこれ!」
「だろ?」
何回か小鷹が練習すると、幸村にチェンジした。
俺は幸村が撃つ前に一言アドバイスをする。
「幸村」
「なんでしょう」
「旧日本軍では"闇夜に霜の降るごとく"って言ってな、狙撃兵は銃と自分を一体にしようとしたらしい」
「なるほど……実践してみます」
幸村が立て直した空き缶を狙う。
「すーーーー、はー……」
呼吸を整え、ゆっくりと引金を絞った。
ボッ!
カァン!
「ナイスショット!」
「いちおう、ラベルのもじをねらったつもりですが……」
「ビンゴだ幸村、初めてでこれは凄いぞ」
一通り練習し、引き上げることにした。
「ごしどうごべんたつ、ありがとうございました、裕翔のあにき」
そう言ってライフルを持ったまま幸村はお辞儀をする。
メイド服に武器……というか女の子と武器ってなかなか映えるな……
そんな事を思いながら、幸村に答える。
「おう、これからも小鷹に仕えられる様に精進したまえ」
外は雨が降り始めそうなので、部室に戻り、戻った途端に雨が降ってきた。
誰かがいるかな、と思ったが、誰も居ない。
「……結局誰も来ねえ……」
「おつかれさまでした、あにき、裕翔のあにきも」
雨で荷物が濡れるのが嫌なので、ライフルの入ったソフトケースは置いて行くことにした。
書き溜めが底を尽きました……次回の更新……1週間空けて待ってて下さい……