もしも隣人部に友達の少ないヲタクが入部したら⁉︎   作:中井 修平

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お待たせ致しました!約束通り10月以内の投稿になりました!ギリギリでした……


星奈と裕翔と夜空と仲直りと

「ただいまー」

 

「お邪魔します……」

 

俺に続いて星奈が家に入る。

俺の家は極普通の2階建の1軒屋だ。

現在父は仕事の関係で3年に1度赴任地が変わる為、「子供達にこれ以上不便をかける訳には行かない」という事でこの遠夜市に1軒屋を建て、兄貴と共に住んでいた。

 

しかし現在、兄貴がこの間から東京で一人暮らしを始めた為、実質俺はこの家に一人暮らし状態だ。

 

「……取り敢えずリビングにはパソコンは無いから……あー、俺の部屋で良いか?」

 

「アンタ、変な事しないって……!」

 

「しねーよ、星奈の携帯治すために必要な機材が俺の部屋にしか揃ってないんだよ、一々リビングに持ってきてセットアップするのにも時間かかるから手っ取り早いんだ」

 

そう言って俺は自分の部屋に足を向ける。階段を上って2階の左の部屋だ。

星奈もブツブツ言いながらもついてくる、携帯電話が治るのには代えられないらしい。

 

俺は自分の部屋の電気を付ける。

余り綺麗な部屋では無いが、片付いている方だとは思う。

ベッド、テレビ、小さなテーブルと勉強机、ガンケース、そしてクローゼット。

ガンケースには銃(もちろんエアソフトガン)が並んでいる。

 

「……裕翔、アンタどんだけ銃持ってんのよ……」

 

星奈がため息混じりにそう言う、俺は肩を竦めながら答えた。

 

「皆サバゲーに使う奴、全部ではないけど、ここにある銃だけで……50万は行くかも」

 

「ご、50ま……はぁ……平民の裕翔が、どこからそんなお金を……」

 

「親父と離婚した母親が資産家でな、離婚の原因が母親の浮気、母親は非を認めて離婚後も養育費や生活の補助として多額のお金を振り込んでるけど俺達には嫌味にしか思えない、だからささやかな抵抗として無駄に浪費させてるって訳」

 

そう言うと、星奈は雰囲気を察したのか押し黙った。

 

「……その……悪かったわね……」

 

「独り言だ、誰が聞いていようが関係ない。お茶持ってくるから適当に座っててくれ」

 

俺はそう言うと、冷房とパソコンの電源を入れて1階の台所へと向かった。

食器棚からコップを2つ、それに氷を入れる。

……やべ、聞くの忘れたな、麦茶で良かったかな……?

 

まぁ、麦茶が嫌いという人は聞いた事がないから良いか。そう思ってコップに麦茶を注ぎ、お盆に乗せて持っていく。

 

「星奈ー、お待たせ……何してんの?」

 

ドアを開けて部屋に入ると、星奈がベッドの下を漁っていた。

俺はテーブルの上にお盆を置く。

 

「え?男子ってベッドの下に秘密の本を隠してるんじゃないの?部活でも謎の多いアンタの秘密を暴いてやろうと思ったんだけど……」

 

「どっから得た知識だそれは……」

 

星奈の隣には、ガスガンのグロック17とMP5A3サブマシンガンが1挺ずつ、更に警棒にも使える懐中電灯が2本。

どれも俺がベッドの下に隠してある物だ。

 

「残念、予想外れね」

 

「期待して貰っても困る」

 

苦笑いしながら星奈に答える、因みに俺の秘密の本はベッドの下じゃなくてクローゼットから入れる屋根裏に隠してある。

 

パソコンも立ち上がったので、パスワードとユーザーネームを入力してログインする。

 

自分の携帯電話を治す方法に興味があるのか、星奈は俺の隣には来た。

顔のすぐ左隣に星奈の顔があり、不意打ちで唇が奪えそうな程近くて緊張する。

 

「……星奈、中腰じゃ辛いだろ、待ってろ」

 

俺はクローゼットの中から折りたたみ椅子(と言ってもパイプ椅子ではなく、部屋用の物だ)を持ち出して星奈を座らせた。

 

……とは言っても、近いのに変わりは無い。

落ち着かない雰囲気の中、俺はカバンからUSBメモリを取り出してコンピュータに繋ぐ。

 

出てきたウィンドウに指定プログラムを打ち込む。

 

「星奈、携帯のケーブルあるか?」

 

「ええ、一応持ってるわ」

 

「本体ごと貸してくれ」

 

俺はそう言って星奈から携帯電話とケーブルを借りると、変換プラグを介してUSBの差込口に接続する。

 

「ところで、これ何なの?」

 

「聞きたい?」

 

星奈の問いに焦らすようにそう答える。

その間にも、星奈の携帯から割り出したメールアドレスを変換して打ち込んでいく。

 

「これは俺が開発した"対迷惑メール/スパムメール用プログラム"だ。俺と俺の兄貴、俺の中学の友達と一緒に開発した」

 

高校に入っても交友のあった友達と兄貴に感謝だ。

そう、今日理科に見て貰っていたのは、このプログラムのチェックだったのだ。

理科はプログラミングが優秀と言われるだけあって、作りかけのプログラムを渡したらあっという間に完成させてしまった。

 

俺と友達と兄貴の3人で7割、理科が3割の作業分担でようやく完成したプログラムだ。

 

「何それ?」

 

「迷惑メールの発信元に大量のメールを送り付ける」

 

現在星奈の携帯電話は許可したアドレス以外を着信拒否に設定している為にメールが鳴る事は無いが、そんな細工をしなくて済むのだ。

 

「え……それって大丈夫なの?法律的に?」

 

「一応大丈夫、見てろよ……」

 

俺は設定の為キーボードを叩く。

送信するメールアドレスの量を、毎分120通に設定。

 

「一斉送信始め!」

 

そう言ってエンターキーを叩く。

すると、プログラムが作動し、正常に作動した旨を伝えるウィンドウが出る。

 

「……え?何も変化無いじゃない」

 

「いやいや、変化はあるぞ、そろそろ着信拒否設定解除してみろ」

 

頭に疑問符を浮かべたまま星奈が携帯を開く。

着信拒否を解除すると、未だ鳴り続ける迷惑メール……だが結果はすぐに現れた。

 

明らかに迷惑メールの速度が落ちて居るのだ。3分ほどかけてゆっくり落ちていき、やがて鳴らなくなった。

 

「鳴らなくなった……」

 

「こいつ、迷惑メールだと判断した発信元から出るメールには自動的にジャミングをかけるようになってんだ」

 

「へぇ……」

 

"よく分からないが凄い"という声色で星奈が頷く。

 

「さて、奴らが対抗するか、俺の所に謝罪メールが来るか……どっちが先かな」

 

「でも裕翔は大丈夫なの?こんな事して標的にならない?」

 

心配そうに星奈が眉根を寄せるが、星奈が懸念しているような事にはならない。

 

「それも想定してフィルターも掛けてある、俺も星奈も携帯とパソコンは安全な筈だ」

 

「よかったぁ……」

 

星奈は携帯電話が治って安心したのか、ヘナヘナと座り込む。

俺はテーブルの上の麦茶を一口飲むと、星奈も倣ってコップの麦茶を飲む。

 

「助かったわ裕翔、ありがとう。あのバカ夜空のせいで、一時はどうなるかと思ったわ」

 

「まぁ、確かにな……夜空はやり過ぎだ。お前はやり過ぎんなよ」

 

「わ、分かってるわよ!」

 

星奈は若干心外だと言う様にそう言う。

でも星奈の事だからやりそうなんだよなぁ……

 

「気を付けろよ……さ、送っていくよ」

 

「う、うん」

 

俺は星奈を連れて家を出る、戸締りはした。

自転車を押しながら、星奈とバス停まで歩く、時間は既に7時を回っており、外は真っ暗だ。

星奈の事が気になり、歩きながら声を掛ける。

 

「親御さん、大丈夫なのか?」

 

「うん、大丈夫よ。学校で電話したら大丈夫って言ってたから」

 

「そうか、なら大丈夫だろ」

 

「ええ!」

 

バス停に到着、特に中身の無い他愛も無い話をする。

そんな話をしている時間に、俺は青春を感じていた。

 

バスがディーゼルエンジンの音を響かせながら走ってくる。

星奈の家方面、これに乗ればすぐに星奈の家に着く。

 

バスがバス停に止まり、乗車口を開ける。

 

星奈はバスのステップを一段上ると、くるりとこちらを振り返ってニカッと笑った。

 

「ありがとう、裕翔!」

 

俺はその笑顔に少しどきりとした。

でも、向こうには他意は無いだろうから、至って普通に返す。

 

「おう、また何かあったら言ってくれな。そいじゃ」

 

そう言って手を振ると、星奈も手を振り返す。

バスはドアを閉め、星奈が席に着いたのを確認すると、再びディーゼルエンジンを唸らせて走っていく。

 

俺は星奈の乗ったバスが見えなくなるまで、そこにいた。

 

===========================

 

後日、星奈の携帯には「仕事にならないから勘弁してくれ」と、複数の詐欺サイトから謝罪の電話やメールが入ったのはまた別の話。

 

え?夜空はちゃんと謝ったかって?

 

===========================

 

次の日……

 

「裕翔……」

 

部活に向かう俺を呼び止めたのは夜空だった。

 

「何だ?」

 

夜空は俯き、目を泳がせている。

 

「その……すまなかった……ごめん」

 

俺は頭痛をこらえる様に頭に手を当て、大きく溜息を吐く。

 

「……あのな、謝る相手が違うっつーの。俺じゃなくて星奈に謝れよ、お前が謝るべきなのは星奈だぞ」

 

夜空はそれを聞くとビクリと小さく震える。

……これじゃ俺が悪者みたいじゃねーか……

 

「……星奈なら先に部室に行ってる、俺は図書館寄ってくるから、言い難い様ならその間に言っとけ。小鷹も図書館にいるぞ」

 

「わかった……すまん、感謝する」

 

夜空はそう言うと、礼拝堂へと歩き出す。

俺も図書館へと歩みを進めた。

 

図書館に到着、小鷹と合流し、少し本を漁る。

何冊か借りて、小鷹と部室に向かう。

礼拝堂へ入って右、談話室のある廊下へ。

 

『〜〜〜』

『〜〜た』

 

何やら声が聞こえた。俺は立ち止まる。

 

「な、なぁ、どうした?」

 

「しっ!」

 

小鷹をジェスチャーで黙らせ、足音を殺してドアの近くまで寄る。

 

『その……すまなかったな肉。少し困らせてやろうと思っただけなんだ……』

 

『な、何よ急に改まって……』

 

『いやその……携帯電話は大丈夫だったのか?』

 

『ええ、裕翔が直してくれたわ!』

 

『そか……良かった、すまなかったな』

 

『き、急にそんな事言われても、水に流してなんかあげないんだから!』

 

俺は少し頬を緩め、複雑な表情を浮かべた。

ドアノブに手をかけ、部室に入る。

 

「星奈、謝罪は受け取るべきだぞ。お前まで意地張ってどうする面倒くせえ」

 

「なっ、ゆ、裕翔……聞いてたの?」

 

「まるっとな」

 

そう言うと、星奈は難しい表情を浮かべ、少し考え込む。

そして顔を上げると、夜空に言った。

 

「夜空、もうしないでね!」

 

「あ、あぁ」

 

和解は一応成立した様だ。

俺は椅子に座り、バッグから課題を出す。

さて、蟠りも解けたようだし、俺はとっとと残りの課題をやっつけよう。

 

そう思い、ペンを取る。

今日も隣人部は平和(?)です。




今度の更新は未定ですが、11月中に2回投稿出来たら良いなと思ってます。
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