もしも隣人部に友達の少ないヲタクが入部したら⁉︎ 作:中井 修平
開きなおって使っている靴が足音を消している。
窓から入る午後の日光が俺の黒髪を照らし……微かに赤く染める。
確かにこの廊下の突き当たりが談話室4だった気がする。
『ちょっと何で閉めるのよ⁉︎あたしは入部したいだk』
『リア充は死ね!』
バゴォン!
早速、何かやってる。
件の談話室4のドアの前で、金髪美少女がドアと格闘している。
ドアを諦めたのか、廊下をズカズカと歩いて何処かへ行くその美少女は、蝶を模した髪飾りをつけ、少しだけ涙目だった。
おっと、といった感じで道を開け、何処かへ行くのを見送る俺。
あれは確か同じクラスの……
気を取り直して談話室4のドアの前に立つ。
コンコンコン、と言うノックの後、部屋の中から。
『リア充死ね!』と言う女の怒号が聞こえてくる。
俺は踵を揃え、背筋を伸ばして大きく息を吸い、ドアに向かって声を上げる。
「隣人部はここですか⁉︎入部希望者です!入室許可を求めます!」
その2秒後、遠慮がちにドアノブが周り、ドアが開く。
出てきたのは、綺麗な黒髪の女子生徒だった。
「……どうぞ」
「失礼します!」
室内へ一歩入る。
簡単な作りの部屋は狭くは無く、かと言って広くも無い。
部屋の中にはもう一人の男子生徒が居た、校章からして同学年だろう。
それにしても見覚えがあるな……染めるのに失敗した様なくすんだ金髪、悪い目つき……あぁ、春からの転校生か。
でも多分、目つきの悪さでは負けて無いだろうなぁ……
「え……と、入部希望者……?」
そのヤンキーみたいな男子生徒が口を開いた。
「はい、掲示板のポスターを見て……」
バンバンバン!
窓ガラスを叩く音。
外を見ると、さっき締め出された金髪の女子生徒が窓を叩いていたのだった。
「何だあれ……」
俺と話していた男子生徒が叩いていた窓を開ける。
するとその金髪の女子生徒は窓枠に身を乗り出し、声を上げた。
「何で意地悪するのよっ⁉︎このあたしが入部してあげるって言ってるのに!」
「冷やかしならお断りだっ!」
黒髪の女子生徒がつかつかと窓に寄り、窓を閉めようとする。
しかし閉めさせまいと金髪の女子生徒も抵抗して窓を押さえつける。
「冷やかしじゃ無いわよっ!"ともだち募集"ってポスター見てきたんだから!」
黒髪の女子生徒がそこでハッとした表情を見せる。
斜め読みのメッセージが解読されて驚いているみたいだ。
「あたしも友達が欲しいのよぉーーーーッ!」
金髪の女子生徒の叫び声が部屋中に響いた。
俺は片目を瞑って眉根を寄せる。
女の金切り声はやっぱり苦手だ……
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「あたしってほら、完璧じゃない?頭脳明晰、スポーツ万能、そして見ての通りの美少女」
俺はここで小さく溜息を吐いた。
いきなり何言ってんだこいつ……
「下品な乳牛の癖に……」
「あら、貧乳が何か言ってるわね」
こらこら……乳の言い争いは止めなさい……
「私は別に小さくない」
「中途半端な大きさの胸なんて、無いのと同じじゃない?」
「自分より胸の大きい女を全員殺せば、相対的に自分が巨乳になるな……私の栄えある計画の生贄1号になってもら_____」
「あぁ、えっと、友達が欲しいって話なんだけど……」
プリンを逆さにした様な髪色の男子生徒が口を挟んで止める。
俺がほぼ置いてけぼりになっている状況だ……
「そうよ」
「お前はいつも男に囲まれているだろうが」
この黒髪の女子生徒、どうしてこんなに突っかかるんだろうか……
「あれはただの下僕、あたしが欲しいのは友達、特に同性の。例えば家庭科や修学旅行のグループ分けの時に一緒になれる友達よ」
そこで一旦区切り、金髪の女子生徒があからさまな猫撫で声を出す。
「男子に人気あるんだからぁ、男子と組めばぁ〜?」
そこでまた区切り、机を拳でドンと叩く。
「なんてムカつくセリフを吐かれないように、あたしは友達が必要なの」
「そういえば、あんまりモテ過ぎたり優秀過ぎる女は同性に疎まれるって話は聞くなぁ……」
男子生徒が納得した様に頷く。
確かにそうだ、女子は基本的に男子が群がる女子に嫉妬を抱き、省ろうとする。
そして、女子のイジメは男子よりも更に陰湿だと聞く。
そこでまた金髪の女子生徒が口を開く。
「あんたヤンキーの癖にわかってるじゃない!踏んであげるから跪きなさい?」
「何で俺がお前に踏まれたりせにゃならないんだ⁉︎」
「うちのクラスの男子は喜ぶわよ?あたしに感心の無い男子はこいつだけよ」
と言って金髪の女子生徒は俺を横目で見る。
「……俺はあいにくそういう趣味は無いんでね……柏崎さんよ」
"柏崎星奈"がこの金髪に蝶の髪飾りをつけた巨乳美少女の名前だ。
2年3組で男子から最も人気があり、いつも男子の取り巻きができている。
それはやはり同性から嫌われる対象の様で、同性の友達がいるという話は聞いたことが無い。
理事長の娘で成績は常にトップ、美人で男子にはモテモテな為インパクトが強く、多分俺がクラスで最初に名前を覚えた人物だろう。
対する向こうも俺に見覚えがあるらしい、自分に構わない男子が珍しいのだろうか。
「ま、まぁいいか。男子がもう1人入ってくれるのはありがたいよ。俺は羽瀬川小鷹、君は……その……名前」
「俺は_____高岡
こうして俺と隣人部の交流が始まった。