もしも隣人部に友達の少ないヲタクが入部したら⁉︎ 作:中井 修平
趣味バレした日、俺は部活終わりに自転車を漕ぎ、遠夜駅近くのミリタリーショップのバイトに向かった。
駅付近唯一のミリタリーショップで、沢山のお客様が集まる。
4時間のバイトを終え、自転車で帰宅。
帰宅する時、柏崎邸の前を通る。
星奈の家ってデカイな……
通り過ぎながらそんな事を思う。
帰宅、明かりが点いてるから、もう帰って来てるな。
「ただいまー」
「おかえり裕翔」
リビングには、ソファーに座っている兄_____高岡
両親は10年前に離婚、父は自衛官をしている為単身赴任、離婚後は父に着いて行き、この家をほぼ俺達兄弟が貰い受ける感じで引き継いだ。
家を維持しているのは、母親から嫌味のように毎月振り込まれる多額のお金だ。
俺達は母_____正確には
クソみたいな母親から金を受け取るのは癪だが、生きる為には仕方ない。
「そうだ裕翔」
「何?兄貴」
「俺、来週から1人暮らしするから」
唐突に切り出された。
兄が最近安く借りられる東京のアパートを探していたから、薄々感じてはいた。
「アパート決まったん?」
「ああ、一応な。お前は大丈夫か?ここで1人になるぞ?」
「大丈夫っしょ、今まで家事は交代制だったし、兄貴も向こうで頑張れよ!」
「おう、ありがとな」
兄と過ごすこの時間があと1週間で終わると思うと少し寂しいが、兄が東京に出て頑張ると言うのなら応援するしかない。
俺はその日、早めに風呂に入って寝る事にした。
今日は隣人部で趣味がばれたけど、皆理解のある人で良かった……
兄貴1人暮らし始めるのか……心配だな……
そんな事を思いながら目を閉じると、スゥッ……と意識が落ちていく。
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次の日、部室には星奈が1番乗りだった。
俺は2番目で、星奈は既にギャルゲーを始めていた。
大体星奈は最初に部室に来ている。
「おーっす」
「あぁ、裕翔」
短く言葉を交わし、俺は荷物を置いてソファに座る。
今日はソフトケースは持って来ていない。
「夜空と小鷹は?」
「2人共教室見てきたけど、夜空は欲しい本の発売日で休み、小鷹は用事があるんだってさ」
「ふ〜ん、今日はあの性悪女狐が居ないのね、落ち着いてゲーム出来るわ!」
性悪女狐って……よっぽどだな……
まぁ確かに、夜空は少し星奈に食いつき過ぎな点がある気がする。
何と言うか……夜空は星奈のプライドを折りまくって遊んでる気がする。
サドかよアイツ……
「今日はエロゲじゃ無いんだな」
「"聖剣のブラックスター"よっ!」
俺にツッコミを入れた後は、暫くゲームに集中していた星奈だったが、突然俺に聞き出す。
「ねぇ……裕翔ってさ、えと、泳げるの?」
「泳げる、人並みにはね」
本当⁉︎と星奈は振り向いて俺に詰め寄る。
「だったらさ、私に泳ぎ方教えてくれない?」
ちょ、星奈。座ってる俺にその姿勢は卑怯っすわ、目のやりどころに困るし……
胸が……星奈の立派なお胸様な目の前に……!
なるべく見ないようにして……目を見るようにして星奈と話す。
「星奈は泳げないの?」
「小学校の頃からずっと、水泳の授業なんて無かったから……」
「そか……でも何でまた?」
「そんな事もわかんないの⁉︎」
星奈は姿勢を変え、その立派なお胸様を張ってテレビを指差す。
テレビに映っているギャルゲには、キャラクターとプレイヤーが海で遊んでいる情景が映し出されている。
「夏美と友達になって、海とかプールとかに行った時に、泳げないと困るじゃ無いの!」
夏美って……ゲームかよ……
星奈はゲームの電源を落とし、俺に振り向く。
「それじゃ明後日の日曜日に、竜宮ランドね?」
「日曜日……何も無いから良いぞ」
「あ、あと裕翔、夜空のバカには私が泳げ無いって内緒ね?絶対馬鹿にするネタにされるから」
「わかってるさ」
こんな美味しいネタを夜空が食いつかない訳がない。
「それじゃ、楽しみにしてるわね」
ふふっ♪と星奈が笑う。
やっぱり、笑顔が1番似合うな……と思った雨の金曜放課後だった。
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次の日
星奈は午前中授業が終わった後、すぐに教室を出て行った。
部室に来た時は星奈は居なかったから、恐らく買い物にでも行ったのだろう。
今日はソフトケースを持って来ている為、壁に立てかけておく。
俺の次に来たのは夜空だ。
夜空が来てすぐ、小鷹が来た。
夜空は昨日買ったと思われる本を読みながら俺に問いかける。
「今日は肉は来ないのか?」
「買い物にでも行くってさ」
「通りで今日は実に快適だ」
星奈も星奈だが、夜空も夜空だよなぁ……
「その本、昨日買った奴か?」
小鷹が夜空に話しかける。
「……そうだ」
夜空は余程集中しているのか、本から視線を上げずに小鷹に答える。
「面白いか?」
「面白い」
夜空は小鷹の問いに淡白に答える。
今日もゆっくり時間が流れていく。
今日も今日とて、隣人部は平和だった。