もしも隣人部に友達の少ないヲタクが入部したら⁉︎ 作:中井 修平
今日は珍しく星奈と共に部室に向かった。
「そういえば、最近取り巻きの男共見ないな」
「あぁ、下僕の事?何かあたしが隣人部に入ってから小鷹に恐れてか、寄ってこなくなったのよ」
「へぇ〜……あいつ見た目ヤンキーだもんな」
「ま、もともと鬱陶しかったし、むしろ有難いくらいよ」
「なるほどね……ん?」
星奈と話していると、礼拝堂の部室前に到着。
扉を少しだけ開けて、夜空が何かしている。
「夜空、何してん……」
「しっ!静かにしろ!」
夜空が見ていた先には……小鷹が居る。
小鷹の視線は_____ソファーで寝ているシスターの格好をした幼女に向いていた。
夜空は蝶番が鳴らないようにゆっくりドアを開け、部室に入る。
小鷹はまだ気づいていない。
夜空が携帯を取り出したところで、俺もスマホを取り出す。
カメラモード、連写。
小鷹が幼女の頬を突いた瞬間を激写した。
カシャ、と1度夜空の携帯のカメラがなったところで。
カシャシャシャシャシャ!
「眠っている幼女に悪戯してるヤンキーの写真が撮れてしまった(棒)」
「小鷹……あんたロリコンだったの……」
「ちっ、違う!」
「それはこの写真を見た者が決める事だなぁ」
釈明する小鷹に夜空が携帯の写真を見せる。
「適当な画像掲示板にでもアップしておくか」
「誤解を拡散するな!裕翔も何か言ってくれ!」
「……すまん、これに関しては俺も庇えない……」
「そうだなお前も撮ってたもんな!」
ごそ、と小鷹の後ろで件のシスターが起き上がる。
目を擦ってこちらを確認した幼女シスターが、轢かれたカエルの様な声をだす。
「み、三日月夜空!」
「久し振りだなぁマリア、ようこそ私の部屋へ」
その幼女シスターはソファーからぽんと飛び降り、夜空を指差しながら喚く。
「何が私の部屋だ!私のお昼寝部屋だったのに、お前が騙し取ったんじゃないか!」
「知り合いだったのか?」
小鷹がマリアを指して夜空に聞く。
「前に教えただろう。高山マリア、学園に勤務するシスターで隣人部の顧問だ」
「「「顧問⁉︎」」」
初耳だ……というかシスターが顧問してたのか。
勤務ってこんな幼女が働けるって……日本の労働基準法は機能してんのか?
「こんな小さい子が?」
小鷹が全員を代弁する様に言うと、マリアという幼女シスターが反論する。
「小さいって言うな!私はれっきとした先生だぞ!」
「歳は幾つなのよ?」
「10才だ」
「見た目通りかよ……」
星奈が歳を聞くと、幼女は見た目通りの年齢を答える。
「ていうか、部室を騙し取ったってどういう意味?」
更に星奈が夜空に詳細を聞く。
すると、マリアが夜空に駆け寄って指差し、また言い出す。
「こ、この女はいきなり私の部屋にやって来て、私の右のほっぺをぶったのだ!それから、"主は仰った、右の頬をぶたれたら左の頬を差し出しなさい"と、なんて言って、左のほっぺまでぶって、痛かったのだ!」
「更に"主は仰った、左の頬をぶたれたら、次は部屋を差し出しなさい。更に、創部手続きの書類にサインして、印鑑も差し出しなさい"と」
絵面を想像すると完全に児童虐待か脅迫だ……
「後で調べたけど、そんな事聖書のどこにも書いてなかったぞ!嘘つき!泥棒!う○こ!」
それは聖書を知らないシスターが悪いんじゃ……普通気づくだろ……
いや、10才の子供に聖書を全部覚えてろって方が無理があるか……?
「いやそこは騙されるなよ……」
小鷹の突っ込み、やっぱりそんなもんだよなぁ……
普通気づくって……
「怖かったんだもん……抵抗したらまたぶたれると思ったんだもん……!」
マリアは思い出したのか、泣きそうな声で両頬を抑え、震えだす。
そしてハッとしたように小鷹を振り返る。
「ところでお前は誰なのだ?」
「俺は羽瀬川小鷹、この部の部員だよ」
「俺は高岡裕翔、同じく隣人部2年」
「お前達も夜空の手先が⁉︎」
んなアホな……
星奈は既に席に座り、マリアに反応する。
「失礼ね、あたしはこんなのの手先じゃ無いわよ」
「その通り、その肉は全く無関係の他人で部員ですら無い」
「部員だってば!」
星奈が机をバンと叩き身を乗り出す。
嗚呼、不毛な煽り合い……
「うるさい!とにかくこの部屋は私のものだ!よくわからない部活の顧問なんて辞めてやる!お前ら出てけ!」
あ〜ぁ、切れられちゃったよ……どうすんの?部長。
「所詮子供には荷が重かったか……」
「何だと⁉︎」
嗚呼、今度は夜空とマリアの煽り合い……
「はぁ……やっぱり子供に部活の顧問なんて無理があったのだな」
「くうぅっ……」
うわ、夜空は子供の痛い所をついて来やがる……
「私が馬鹿だった……大人だったら1度引き受けた役割を放り出す事も無かっただろうに……」
「わ、私は立派な大人だ!」
マリアが腕を振って反論するが、流石に無理があるぞ……
夜空は額に手を当てて言葉を続ける。
「無理はするな幼女、しかし天才少女のシスター・マリア先生なら大丈夫だと思ったんだが……見込み違いだったか……」
「う……ぅぅうぅううがーーーっ!私は大人だ!顧問くらい、私にかかればチョチョイのチョイだ!」
うう……この幼女の声が頭に響く……
「別に無理をしなくても良いのだぞ?」
「無理なんてしてないもんね!」
「ふむ……では顧問を続けるのだな?」
「もちろんだ!」
「では、"顧問がしたいです、やらせて下さい"と頭を下げろ」
夜空……段々論点がずれて来ている……いや、ずれてはいないのか?何かやり方が完全にアレだ。
「顧問がしたいです、やらせて下さい!」
それに素直に従うマリア先生……何かもう……
「この部屋を私の自由に使わせるんだぞ?神に誓えるか?」
「誓える!」
「もし、また顧問を辞めるなどと言い出したら、お前を全裸にしてその写真をネットにばら撒くが、構わないな?」
「構わない!」
夜空の言っている事が完全に犯罪者のそれだ……
「そうか、なら、高山マリア先生の顧問就任に拍手〜。ほら、お前達も」
「あ、あぁ……」
ぱちぱちぱち……少ない拍手でマリアがへへへと笑う。
手の上で上手いように転がされてるマリアもマリアだが……
「な、何だか照れるな……まぁ、私に任せておけクズども」
この部活、クズどもって表現好きだなぁ……星奈も言ってたし……
「毎日部屋の掃除をするんだぞ?それから喉が渇いたからお茶を淹れてこい」
「わかった!」
そういってマリアは部屋を飛び出していく。
「……馬鹿を騙す程簡単な事は無いな……ん?どうした裕翔」
「あー、さっきの録音、もしもの時に使おう」
と言って俺はボイスレコーダーからある一部分だけを再生する。
『顧問を辞めるなどと言い出したら、お前を全裸にしてその写真をネットにばら撒くが、構わないな?』
「なっ……!ふ、ふん!では、私は裕翔の趣味を触れて回ろう、"こいつは重度のミリタリーオタクでテロリストですよー"とな」
「別に隠しちゃいないが言いふらされると困るな……ま、これで合意としようか?」
「そうだな」
小鷹と星奈は苦笑いするしか無かった。
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「誰かに見られてる?」
星奈は小鷹に聞き返す。
小鷹と夜空はソファーに座り、俺は星奈の後ろの椅子に座ってゲームを眺めたり、本をめくったりしている。
この間、兄に言われた事を思い出してみた。
星奈が俺に惚れてる?んなアホな……現に俺に対する反応は変わっていない。
今日の話題は小鷹の相談事がメインだった。
「何か妙な視線を感じるんだ……これはその……ストーカーでは?」
一瞬の静寂。
「あっははははははは!」
星奈が腹を抱えて笑いだした。
「小鷹それ本気?つーか分かってる?ストーカーの動機の9割は、恋愛感情の縺れなのよ⁉︎この学校に来てから恋愛絡みで縺れましたかぁ〜?」
「ぐぐっ……もういい……!お前らに相談した俺が馬鹿だった!」
小鷹は怒って立ち上がるが、その方を夜空が抑える。
「まぁ待て小鷹同じ部の仲間が困っているのを放っては置けない、そのストーカーを捕まえるのに協力してやろう」
「俺も、何もしないとは言ってないぜ?」
「2人とも……!」
……星奈の株、暴落中だ。
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翌朝。
歩く先の生徒が左右に避けていく。
モーセが海を割って歩いたように、小鷹は生徒の波を割って歩く。
しかし、表情は苦い。
小鷹の後ろには夜空と星奈が並んでいた。
「ふむ……確かに視線を感じるな……」
「ええ、小鷹の妄想じゃなかったのね」
「これ……俺が言ってたやつじゃない……!すれ違った生徒全員からめちゃくちゃ注目されてんだよ!」
そりゃ、見た目ヤンキーな奴が美女2人連れてりゃ注目の的にもなるわ。
「あの視線を見つけるどころじゃねぇ……」
「星奈様、おいたわしや……」
「美少女2人をはべらしやがって……」
「何か弱みを握られているのかしら……」
ギャラリーがコソコソと何か言っているのが聴こえる。
「あぁ〜」「そういう事ね……」
今頃気づくなよ……おせーよ!
「違う!俺は……!」
キャー!キャー!と言ってギャラリーが次々と走って逃げていく。
「……今のがあれか、チンピラの"何ガンつけてんだよ、あぁん?"という奴か」
「実際に見るのは初めてね」
小鷹の落胆ぶりは、かなりのものだろう。
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小鷹視点
「(あいつらが勝手に来たのに、何で俺が悪役なんだ……)」
『小鷹、聞こえているな。聞こえていたら腕時計を見ろ』
小鷹は立ち止まり、腕時計を見る。
今小鷹の耳には受信専用の無線機のイヤホンが差し込まれている。
通信が入るのは裕翔からで、無線での指示がここに届く、無線もこのイヤホンも裕翔の私物だ。
肌の色に馴染む色をしている為、遠目ではわからない。
暫く学園を歩く、と、あの視線を感じた。
「(良し……来たな……)」
再び立ち止まり、鞄を開ける。
これが視線を感じた時の合図だ。
暫くして……
『小鷹、見つけた。お前の後方30フィート……だいたい10mにターゲット発見。茶髪ショートの中性的な顔をした生徒だ、服装から男子生徒と予測される』
なるほど……そいつが追い回している訳ね。
『次の角を曲がったら少し早歩きで廊下を曲がれ。アウト』
オーバー、アウト等、おそらく無線用語らしき単語が途中で混ざるが気にしない。
言われた通り、1度角を曲がり、早歩きで次の角を曲がる。
角で件の生徒が来るのを待つ。
軽い足音の後。
ドンっ
ぶつかった。
その生徒はぶつかって床に倒れる。
「お前が犯人か……」
『捕まったようだな、では俺は部室に戻る』
それっきり無線は切れる。
倒れた生徒は尻のポケットに手を突っ込むと、自らの財布を取り出してこう言った。
「……これがいわゆる、"カツアゲ"というやつですね」
「……違う!」
続きは来週更新します。