守護者たちと風呂に入ったアインズは、その中で、女性守護者たちが『がーるずとーく』なるものを開催していたことを知る。友人の息子や娘たちがどんな話をしているか興味津々なアインズは、マーレに「ぼーいずとーく」を命ずるのだった。
守護者たちと風呂に入ったアインズは、その中で、女性守護者たちが『がーるずとーく』なるものを開催していたことを知る。友人の息子や娘たちがどんな話をしているか興味津々なアインズは、マーレに『ぼーいずとーく』を命ずるのだった。
ぼーいずとーくの二次って絶対あるだろと思ってたんですが、無いんでしょうか。もしあれば是非教えてほしいです。
誤字脱字あれば教えて下さい
「あ、あの、えっと、今日は集まってくれて、ありがとう御座います」
造物主に渡された、自分の身長ほどもある杖を大事そうに抱きかかえたまま、マーレは目の前の二人に対して感謝の言葉を述べた。
おどおどとしながらも、深く丁寧なお辞儀だった。マーレの金色の髪が揺れる。
ゆっくりと頭が上がり、テーブルを挟んで向かい側にいる二名の人物――悪魔と巨体の蟲がマーレの視界に入った。悪魔のほうが微笑を浮かべながら、軽く頷いてマーレに答える。
「まさか君に呼ばれるとはね。全てはこの機会を与えてくださった、アインズ様の御陰さ」
悪魔は主人を称える言葉を出す。
その言葉に同調するように、もう一方も言葉を発する。
「デミウルゴスノ言ウ通リダ。マーレ、気ニスルコトハナイ」
「は、はい。デミウルゴスさん、コキュートスさん、あ、あの、ありがとうございます!」
マーレは再びお辞儀した。
今度はヒュンと風を切るような速さで、慌てて頭を下げた。
デミウルゴスはテーブルの上に肘を付き、手を組みながら、そんな様子のマーレを微笑ましく眺めていた。そして、穏やかな口調でマーレに問いかける。
「さて、<
同じ疑問を持っていたコキュートスは、言葉を出さず、頷きながらマーレを見ていた。
ここはナザリック地下大墳墓、第六階層の巨大樹の一室。
上は空から陽光が照りつける晴天、下は森と湖が広がるジャングル――ナザリックで最も広く大きい階層を一望できる、オープンテラスのようなこの部屋は、創造主によって双子の
――事の始まりはこうである。
慰安と交流というお題目で、寂しがり屋のアインズの思いつきが炸裂して、皆で九階層の大浴場に入った。皆と言っても、アインズが念に念を押して、男性守護者限定で秘密裏に集まろうとしたものだった。だが、いざ集まってみると、何故か女性守護者たちとばったり出会ってしまい、アルベドとゴーレムが暴れだしたせいで、十分に楽しめず、結局うやむやになってしまった集まりであった。
その僅かな交流でもアインズに収穫はあった。
それは女性側の情報。アルベドは剛毛――ではなく、デミウルゴスとコキュートスが仕事に戻り、残ったマーレと話している時に『アウラとシャルティアとアルベドの三人が、アルベドの部屋でお喋りをした』という情報を得ることが出来た。話題の内容はともかく、アインズは嬉しかった。24時間働きたいというNPCたちを無理にでも休ませているのが今のナザリックだ。女性守護者三人にも、半強制的に同日の休みを与えたほどである。しかし、聞けばその集まりは、アルベドが自発的に提案し行われたのだという。
プレアデスや一般メイドのような、設定でグループができている者を除き、NPCたちは自分の活動を最優先としており、あまり他のNPCたちと交流しようとしないことをアインズは知っている。だが、その設定とは関係なく、交流を深めるべく自主的に集まってお喋りをした。
アインズとしては、ナザリックはもっと楽しく、和気あいあいとした世界を望んでいた。
もしかしたら、自分の知らないところでNPCたちが交流しているかもしれない。自分がいると皆は畏まってしまう。普段皆がどんなことを話し合っているのか――セクハラ上司さながら興味津々だった。
「……そうなんだ。男性守護者たちだけで集まった話も知りたいなぁ」
アインズはポツリと呟いた。
至高の御方の言葉を聞き逃すような愚か者は、このナザリックにただ一人として存在しない。
当然、マーレもその一人として、ハッキリとアインズの言葉を聞いていた。
「あ、あの、じゃあ僕が二人とお話してご報告します!」
あのぷにぷにとした体からは想像もできないほど、決意を感じさせる声だった。
――まあ、男相手ならセクハラにならないかな?
異性ならアウトだけど同性ならセーフ。
そんな無茶苦茶な論理思考で、好奇心に駆られたアインズはマーレに指示を出すことにした。
「よし、じゃあ同日に休みを取らせるから――でも私の指示と言ってはいけないぞ?」
「あ、あの、アインズ様、何故でしょうか?」
「ああ、それは――」
――自然な姿が知りたいからだよ。
「お二人とお話がしてみたいと思ったんです」
言葉足らずなマーレは、呼吸を整えるように深い溜息をつき、椅子に座った。
デミウルゴスとコキュートスは、都合よく休みの日が重なったこともあり、久々に副料理長のバーに向かっている途中だった。その道中で、マーレから<
テーブルには三つのアイスティーが用意されている。
おそらくマーレか、メイドに用意させたのだろう。デミウルゴスは自分の前に用意されたものを一口飲んだ。
「なるほど、守護者同士は仕事以外では集まりにくいからね……」
カチカチと下顎を鳴らしながら、コキュートスも言葉を発する。
「ソウダナ。副料理長ニハ悪イガ、マタ次ノ機会トシヨウ」
「このメンバーが揃ったのはアインズ様と御入浴した時以来かな? 珍しいこともあるものだね」
「アノ時ハ水風呂ノ良サヲ伝エキレナカッタ……次コソハ……」
「君のその情熱は本当に謎だよ……自分の階層で勝手に埋まっていればいいんじゃないかね?」
「――ナルホド! ソノ手ガアッタカ! 流石ハデミウルゴス」
「……いや、……うん。どうも」
談笑する二人。
マーレはそんな様子をジッと見つめる。虎視眈々と――。
無言で見つめているマーレを見て、何を感じたのか、デミウルゴスが両手を広げておどけたように笑いかけた。
「ああ、すまない。今日の主催はマーレだったね。――では話をしようじゃないか」
コキュートスも冷気の白い息を深く吐き出し、三人で話しあうために気持ちを切り替えた。
「折角ノ機会ダカラナ」
注目され、おどおどとしたマーレは再び挨拶をした。
「は、はい。えっと、よろしくお願いします」
今度は座ったまま頭を下げるマーレ。
それに合わせ、二人も軽く頭を下げた。
「ああ、よろしく」
「……ウム」
――ぼーいずとーく、開始。
「…………」
「…………」
「…………」
暖かい風が、テラスにいる三人の間を優しく通り抜けていく。
陽光に照らされて、誰かのグラスの中の氷が溶けてカランと鳴った。耳を澄ませば、遠くの湖で遊ぶ
「……ン?」
「……うん?」
「……え?」
三人は仲良く疑問符を頭の上に出した。
これがユグドラシルのゲーム内であれば、『?』のエモーションがハッキリと表示されただろう。
「……あー、マーレ?」
「え? あ、はい。何ですか? デミウルゴスさん」
「――うん。今日は君の呼びかけで集まったわけだ」
「は、はい。そうです。ありがとうございます」
何度目かのお辞儀をしたマーレ。デミウルゴスは、それに鷹揚に頷き、話を続ける。
「私とコキュートスはね。時々だが、副料理長のバーで話をしているんだよ」
「そ、そうなんですか。すごいですね」
「マーレは私たちと、どういう話をしてみたいのかな?」
「どういう……ですか?」
神妙な顔つきをするマーレを前にして、コキュートスの硬質な声が鳴る。
「私モ、マーレガ何ノ話ヲシタイノカ興味ガアル。ソレガ目的ト言ッテモイイ」
「そうだね。ここに来るまでの間、それを二人で話していたんだよ」
本来であれば、
――君の興味のある話題が欲しい。
だが、マーレは非情だった。
「え、えっと、自然にお話をして貰えれば、何でもいいです」
早くも会合は終わろうとしていた。
カーテンが上から降りてくるような幻覚が見える。
――こんなときアウラがいれば……。
男ばかりだとこうなってしまうのか。
だが、いない人物に期待しても仕方ない。仕方がないので、デミウルゴスは最も聞きたかった事を聞く。
「……マーレ、今回このメンバーだったのは何故なのかな?」
「え、えっと、お姉ちゃんたちが集まって話をしたと言っていたので、お二人を呼びました」
「アルベド達ガ集マッタ時ノ話カ?」
「はい。そうです」
「なるほど、それに対抗する形。ということかな?」
「え? お二人とお話ができればいいんです」
いまいち掴みどころのないマーレの発言に、二人は困ってしまう。
マーレが何をしたいのかよくわからない。話をしたい――だが話題はない。男という生き物は、ゴールのない雑談が苦手であるが、コレは少々酷かった。
だが、マーレも内心困っていた。
目の前の二人が話をしてくれないのだ。これでは主人に報告できない。
(……さっきみたいに話をしてくれたらなぁ。僕が何か話をしたほうがいいのかな? でも僕はアインズ様の指示だって知ってるから、自然な姿じゃないし……どうしよう)
再び沈黙が訪れようとしたとき、それ破ったのは意外にもコキュートスだった。
カチンと軽く高い音が鳴る。
「……デハ、先ノ話ノ続キヲシヨウト思ウガ、ドウカナ?」
「はい! お願いします!」
願いがかなったマーレは、コキュートスの話題に飛び乗った。
主人絡みの話題ならナザリックNPCたち全員にとって、最も興味のある共通の話題だ。デミウルゴスも、その妙案に乗ることにした。この際、水風呂の話題だろうと目をつぶろうと思った。
「私ハ疑問ダッタノダ。何故アインズ様ハ、アノ時コノメンバーヲ御呼ビニナッタノカト……」
「男性守護者だけを集めた意味かい? まあ、女性側にはアレがいるからね」
(……アレってどっちのことだろう)
グイッと紅茶を飲んで、コキュートスの話は続ける。
「アノ時、アインズ様ハ異性愛者ダト仰ッタ。覚エテイルカ?」
二人は無言で頷いた。
この話、明らかに酷いオチが待っている。それに関してコキュートスは前科者だ。話を先読みしたデミウルゴスがコキュートスを止めに入る。
「ダガ、アインズ様ハ脱衣所――」
「待ちたまえ、待つんだコキュートス」
「止メナイデクレ、デミウルゴス。アノ時ノアインズ様ハ――」
「コキュートス、私は君を殴りたくない。君は大切な友人だし、その外皮は硬いんだ」
「あ、あの、どういうことですか?」
やや興奮気味のコキュートスは、白い息をハァハァ撒き散らしならがマーレを見た。
「ソウ、マーレダ! マーレナノダヨ、デミウルゴス!」
「へ? えっと、僕ですか?」
「コキュートス。それはマーレに伝えるべきことなのかね?」
「……ムウ。ソ、ソレハ」
「え? ええ?」
この無垢なるマーレに教えてはいけない。
マーレもある意味、コキュートスと同じく前科者ではあるのだが。
「……スマナイ。マーレ」
「あっはい」
マーレは、意味もわからずに謝罪を受け入れた。
デミウルゴスは、眉間にしわを作りながら大きくため息をつく。
以前、衆道がどうとかと唸っていたが、今回もそれなのだろうと確信していた。確かにアインズ様はマーレを見ていた。が、だからと言って決めつけるのはあまりに早計というもの。いくら裸を見たと言っても――そのとき、デミウルゴスに電流走る――!
――そういえば……アインズ様は私の裸もじっくりご覧になっていたような……。
自分の中に浮かんだ考えを必死に霧散させようとする。
目頭を抑えながら、首を左右に振り続けるデミウルゴスの姿は異様だった。
「…………」
再び沈黙が訪れた。
このままでは良くない。主人に報告するためにも、自分で動くことをマーレは決意した。
「あ、あの、コキュートスさん」
「ッ!? マーレ、ドウシタ?」
一瞬驚いたようにコキュートスは反応した。
マーレが初めて話を始めたことに、デミウルゴスも興味を示す。
「お風呂のときもそうでしたけど、コキュートスさんって、いつも裸なんですよね?」
「……マァ、ソウダナ」
相手がマーレだからこそ、コキュートスは肯定した。
それに、折角出た話題をいきなり終わらせるのも忍びなく感じたからだ。「また危ない話題だ」と、デミウルゴスが心配そうにコキュートスを見つめている。
「コキュートスさんは、いつも裸で恥ずかしくないんですか?」
マーレは質問した。普通に聞いた。
一切の遠慮無く投げかけられたそれは、コキュートス目掛けて豪速球で飛んでいった。
「マーレ。コキュートスは――」
慌ててフォローに入ろうとしたデミウルゴスを、コキュートスは片手を上げて言葉を遮った。
グラスに残った紅茶を飲み干して、それにゆっくりと答える。
「……マーレ、私ハ武人建御雷様ニ創造シテ頂イタ自分ニ誇リヲ持ッテイル!」
――故に恥など感じない。
ほう。と、デミウルゴスから感嘆の声が漏れた。
マーレもキラキラした眼差しをコキュートスに注ぐ。
「格好いいです! 誇りに思っているから裸でも平気なんですね!」
妙な間が三人の間に流れた。
「――ン? 違ウゾ。マーレ」
「――え? 違うんですか?」
首を傾げるコキュートス。その動きにマーレも釣られた。
「……違……ウ? 違ワナイ? ン? ン? ン?」
四本全ての腕を組み、コキュートスは思考の迷路に入り込んだ。
『違う』と言えば、造物主に対して不敬極まりない発言だ。勿論そんな事は考えてはいない。
だが、『違わない』と言えば、裸族の肯定だった。今まさにナザリックで、誇り高き裸族の戦士が爆誕しようとしていた。
「私ハ……私ハ……イヤ、チガ、裸族。誇リアル、裸」
蒸気機関車のように勢い良く白い息が口からモクモクと吹き出し始めた。
「あわわわわわわわ……」
「コキュートス! コキュートス! 落ち着くんだ。大丈夫だ。君は間違ってない」
「チガ……ウ? ン? チガワナイ? ――私ハ裸族ジャナイ!」
ハアハアと息を切らし始めたコキュートスを、見かねたデミウルゴスが支えるように立ち上がらせた。「違ウ、違ワナイ」を繰り返すコキュートスは、フラつきながらも出口に向かっていく。
「マーレ、すまないが今日はこれでお暇させてもらうよ」
「え、はい。わかりました」
マーレはペコリと頭を下げた。
「あの、ごめんなさい……」
「うん。まあ、コキュートスのことはあまり気にしなくても大丈夫だよ」
また機会があれば話そう。そう言い残して、二人は去っていった。
部屋に残されたマーレは、まだ冷たい紅茶を飲んで思考を巡らせる。
――これ、自然な姿なのかなぁ……
悩んだマーレだったが、答えは一つしか無かった。
ありのままにここで起こったことをアインズに報告した。
マーレからの報告書を受け取ったアインズは、一人自室で「違う! 俺はホモじゃない!」と精神安定化を繰り返しつつ、一日中マーレの体を思い出すことになった。ときどきデミウルゴスのことも。そして、ホモ疑惑をかけているアインザックの笑顔が脳裏によぎるのだった。
――おわり――